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第二章 わたし、めりーさん
僅かなサイン
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三人しかいない教室の空気が重たくなる。沢村も何処か気まずそうに、立川から顔を逸らした。
「……黒川くん、あれで良かったの」
俺に顔を向けることなく囁いた。それには応えず、俺は見えない線を探し続けた。
沢村の言う通り、今回の怪異は正攻法では無理だ。つまり、メリーとは何か。定義することを捨てる。ある程度、消去法で選択肢を消した上で、要所要所からメリーの正体を導き出す方が早い。
まあ、一番手っ取り早いのは全員の携帯を見せてもらうことだ。月島に頼み込めば、九割の生徒が見せてくれるだろう。師堂周辺の生徒は、樋脇に頼めば見せてくれる可能性はある。だが全員が協力するかと言われると微妙なところだ。特に立川の言うことしか聞かない生徒だっているからな。あの状態の立川に説得は頼めない。
――そういった行動を起こすよりも早くに、立川がメリーの正体を暴いた。
「……」
俺は静かに立川を眺めた。普段の彼とは少し違和感がある。立川は誰よりも冷静で、誰かの前に立ち、そのさいを振るうことが出来る。そう、いつもの平静さが足りないんだ。何度か眼鏡に触れ、参考書を捲るスピードも微かに早い。逆を言えば、それ以外では普段通りだ。その僅かなサイン。焦燥を感じているのか? だが、理由は――?
立川は他のクラスメイト同様に怪異の存在を信じていない。だが強制的に占わされたとも言っていた。
初日では、俺たち全員の携帯にメールが送られてきた。それを併せれば、俺たちの携帯が一時的にメリーに乗っ取られていてもおかしくはない。ただ立川の目には奇怪に映っただろう。おそらくハッキングを疑っただろうが、占いをさせるために誰かがハッキングと言う犯罪行為をするのか、沢村と言いあっていたあの時の立川からして、そう考えるとは思い難い。
……怪奇現象に対する恐れ、なんだろうか。
「今夜、沢村の部屋に集まるぞ」
そっぽを向いていた沢村が「へ?」と振り返る。俺の顔をまじまじと見つめ、「まじ?」ともう一声。「ああ」と大きく頷けば、沢村はわなわなと震え始めた。
「それってさ、まさかだけど……月島くんも呼ぶとか?」
「その通りだな」
「いやいやいや! ちょっと勘弁してくれない? あいつを呼ぶとか鬼か」
沢村の顔に、そういや鬼だったなと如実に表れている。
「鬼でも悪魔でもないからな。次言ったら、覚えてろよ」
「は、はい。……まだ何も言ってないんだけど」
まだ言い訳するので、沢村を一瞥すると視線を逸らされた。
「タイムリミットは今日の深夜までだ。投票は夜だからな。一条がメリーだったとしても、熟考する必要があるだろ。メリーもその時間まで活動を続けるに違いない。夫々の家にいても狙われるのは確実だ。分かるな?」
「う、うん」
自分で言いながらも気になる点はある。もっと何かしらの現象が起きても良い筈だ。
それだけじゃない、教室の空気だって別物だ。初日は、禍々しくもどんよりとした空気だった。メリーの気配、生徒同士の不安が交じり合った気持ち悪さ。それが二日目には消えていた。代わりに新芽でも生える季節かと思う程、清々とした空気になっていた。
……浄化。その二文字が頭に思い浮かぶ。樋脇だとは思えない。鏡の怪異の使者を消してしまったあいつが、果たして浄化を選択するだろうか。それなら、誰が浄化することが出来る? そも怪異に浄化が効くのか? 次々と疑問が出てくる。
「……うん、分かったわ。そんな話を聞かされれば、一人ではいたくないわよ」
沢村が嫌々ながらも、俺の話を受け入れた。
さて、舞台は整った。疑問と推測を継ぎ接ぎにし、俺は今夜のことを想う。一体どうなることやら。
「……黒川くん、あれで良かったの」
俺に顔を向けることなく囁いた。それには応えず、俺は見えない線を探し続けた。
沢村の言う通り、今回の怪異は正攻法では無理だ。つまり、メリーとは何か。定義することを捨てる。ある程度、消去法で選択肢を消した上で、要所要所からメリーの正体を導き出す方が早い。
まあ、一番手っ取り早いのは全員の携帯を見せてもらうことだ。月島に頼み込めば、九割の生徒が見せてくれるだろう。師堂周辺の生徒は、樋脇に頼めば見せてくれる可能性はある。だが全員が協力するかと言われると微妙なところだ。特に立川の言うことしか聞かない生徒だっているからな。あの状態の立川に説得は頼めない。
――そういった行動を起こすよりも早くに、立川がメリーの正体を暴いた。
「……」
俺は静かに立川を眺めた。普段の彼とは少し違和感がある。立川は誰よりも冷静で、誰かの前に立ち、そのさいを振るうことが出来る。そう、いつもの平静さが足りないんだ。何度か眼鏡に触れ、参考書を捲るスピードも微かに早い。逆を言えば、それ以外では普段通りだ。その僅かなサイン。焦燥を感じているのか? だが、理由は――?
立川は他のクラスメイト同様に怪異の存在を信じていない。だが強制的に占わされたとも言っていた。
初日では、俺たち全員の携帯にメールが送られてきた。それを併せれば、俺たちの携帯が一時的にメリーに乗っ取られていてもおかしくはない。ただ立川の目には奇怪に映っただろう。おそらくハッキングを疑っただろうが、占いをさせるために誰かがハッキングと言う犯罪行為をするのか、沢村と言いあっていたあの時の立川からして、そう考えるとは思い難い。
……怪奇現象に対する恐れ、なんだろうか。
「今夜、沢村の部屋に集まるぞ」
そっぽを向いていた沢村が「へ?」と振り返る。俺の顔をまじまじと見つめ、「まじ?」ともう一声。「ああ」と大きく頷けば、沢村はわなわなと震え始めた。
「それってさ、まさかだけど……月島くんも呼ぶとか?」
「その通りだな」
「いやいやいや! ちょっと勘弁してくれない? あいつを呼ぶとか鬼か」
沢村の顔に、そういや鬼だったなと如実に表れている。
「鬼でも悪魔でもないからな。次言ったら、覚えてろよ」
「は、はい。……まだ何も言ってないんだけど」
まだ言い訳するので、沢村を一瞥すると視線を逸らされた。
「タイムリミットは今日の深夜までだ。投票は夜だからな。一条がメリーだったとしても、熟考する必要があるだろ。メリーもその時間まで活動を続けるに違いない。夫々の家にいても狙われるのは確実だ。分かるな?」
「う、うん」
自分で言いながらも気になる点はある。もっと何かしらの現象が起きても良い筈だ。
それだけじゃない、教室の空気だって別物だ。初日は、禍々しくもどんよりとした空気だった。メリーの気配、生徒同士の不安が交じり合った気持ち悪さ。それが二日目には消えていた。代わりに新芽でも生える季節かと思う程、清々とした空気になっていた。
……浄化。その二文字が頭に思い浮かぶ。樋脇だとは思えない。鏡の怪異の使者を消してしまったあいつが、果たして浄化を選択するだろうか。それなら、誰が浄化することが出来る? そも怪異に浄化が効くのか? 次々と疑問が出てくる。
「……うん、分かったわ。そんな話を聞かされれば、一人ではいたくないわよ」
沢村が嫌々ながらも、俺の話を受け入れた。
さて、舞台は整った。疑問と推測を継ぎ接ぎにし、俺は今夜のことを想う。一体どうなることやら。
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