審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

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第二章 わたし、めりーさん

『霊媒師?』

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「沢村の言う通りだな。そもそも怪異なんてそう転がってる訳じゃねえし、お前はお前らしく行動してれば良んだぜ」

 月島が歯を見せて笑うと、千堂も安堵したようだ。

「お前ら、ありがとうな!」

 やっと千堂も心からの笑みを浮かべる。

「話を戻すと、千堂の言う通り、メリーは携帯にいたんだ」

 この場合、携帯に憑りついていたという話ではない。メリーは教室にもフィールドを展開していたが、実際の意味合いは異なる。――誰かの携帯からフィールドを展開していた。つまり教室内にその携帯があったからこそ、教室にもフィールドが展開されていたという訳だ。

「え!? じゃあ、俺たちが拾って来たあの携帯に……」
「それは違う。拾って来た携帯は起点に過ぎない。フィールドが展開したあの時、メリーはあのクラスの誰かの携帯に乗り移ったんだ」

 誰かの息を呑む音が聞こえてくる。――この理屈だと。

「メリーの正体は自分でも分からないってことだ。無自覚の内に、メリーに操られていた可能性だってある。それでも俺たちはメリーがいる携帯の持ち主は誰なのか、考えなくてはいけない」
「でも、それは難しいじゃない! だって、自覚が無いってことは、何にも情報なんて……」

 沢村が絶望に濡れた声音で叫んだ。

「いや、俺たちにはもう一人、役割を持っている」
「……役割?」

 呆然と聞き返す沢村。

「立川が占い師、神官は俺、狩人は不明だが存在している。もう一人、答えを知る者がいる」
「んなら、霊媒師じゃねえのか?」

 千堂が眉を八の字にさせて言うので、「いや、霊媒師だったら月島や樋脇が情報を掴んできただろうな」と否定する。

「……???」

 沢村の頭に、はてなマークが飛び出てくる。

「答えを知る人――答えとは何か。俺たちは人狼ゲームという盤面にいる。人狼ゲームで言う答え、それは人狼だ。つまり答えを知る人はメリーの正体を知っているってことじゃないか?」
「……それなら、確かに。言い方が少しおかしいと思ったのよね。結果を知る、なら理解できるけど。でもさ、正体を知っているなら、どうして誰にも言わないのかな」
「知らねえんじゃねえか?」

 月島が確信を持って告げた。沢村が「え?」と、足元に座る月島を見る。

「自分が知っていることに気付いてねえんだよ」
「どういうことよ!? よくわかんないんだけど!」

 何かを知っている月島に、苛立ちをぶつける沢村。すぐに俺へと視線を向け、目で訴えてくる。

「……月島。さっきお前が言いかけたことを教えてくれ」
「花を持たせてくれるのか?」

 ふざけるように笑う月島に、「要点だけ言え」と返すと、「ノリが悪いな」と肩を竦められる。

「この怪異が、オレたちの知っているメリーさんの電話を基盤にしているんだとするならさ。沢村がメリーからの電話に出た時、こう言ったんだろ? ――『私、メリーさん。今、貴方の後ろにいるの』って」
「え、ええ。そうね、確かにそう言ってたわ」

 記憶を思い出そうと、沢村は一瞬固まり、朧げな反応が返ってくる。

「――その時、沢村の後ろにいたのは誰だ?」

 月島がそう告げた途端、静まり返った。時計の音だけが聞こえてくる。呼吸音も、物音も一切しない。不気味な空気だった。この場にいる全員があの日の記憶を辿る。
 あの時、沢村の背後にいた人物。
 携帯を持った沢村へと駆け寄った月島と千堂。立川は俺の隣に立っていた。
 緩やかな時間が過ぎ、先に動いたのは沢村だった。考え込まなくても、俺も月島も立川も知っていた。千堂だって知っていた。だが、思考にギアが掛かり、結論を導くまで時間が必要だったのだ。
 沢村はゆっくりと顔を上げて……。

「……千堂、くん?」

 ぽつりと零れた一言を契機に、音が一斉に戻ってきた。全てが歯車のように回り出す。自然と息を詰めていた沢村が、呼吸を思い出したかのように息を吸って、咳き込んだ。

「俺がメリーさん? え?」

 千堂も頭が追い付かないのか、当惑する。

「そうだ。千堂がメリーだ。そう考えれば、何故立川が嘘を吐いたのか辻褄が合うんだ」

 そう本人へと視線を向ければ、彼は静かに足元を見つめるばかりだ。俺の話を黙って聞いている時点で、諦観の意思もあったに違いない。

「おま、何で……俺を占って、黒だって知って……いや、何でだよ。何で……」
「……」

 立川は何も答えないまま、突っ立っている。短気な千堂は、激高して立川の胸倉を掴み、顔を覗き込んだ。

「どういうことなんだよ! 何で俺がメリーだと知って、すぐに言わなかったんだ! そしたら全て、解決してたんだろ。誰かが困ることも無かっただろ!」
「……僕はただ、疑い深いからお前をすぐに占ったに過ぎない。身内を白で固めておきたかったんだ」

 胸倉を掴まれ、体を何度も揺さぶられた立川は、静かに言葉を吐く。
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