水色と恋

和栗

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※姉弟

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待ち合わせの時間を2時間過ぎた頃、我慢ができなくなって自転車にまたがって真喜雄の家に向かった。
恐る恐るインターホンを押す。家の中でドタドタと音がした。
『はい』
女の人の声だった。母親だろうか。
「あ、すみません・・・水出と申します。真喜雄くんと、会う約束をしてたのですが・・・」
『水出・・・あー!はい、開けるから待ってね!』
え?知ってる?何で?
ドアが開き、出てきたのは若い女性だった。真喜雄と顔がそっくり。違うのは輪郭。真喜雄は面長だけど、彼女は丸顔。真喜雄が幼くなったような顔だった。短く切った髪、サイドは刈ってある。寒そうだった。
「初めまして。姉です」
「・・・こんにちは、水出と、」
「うん、知ってる。透吾くんだよね?中どうぞ」
静かに中に入る。手招きをされて階段を登り、ドアを開ける。覗き込むと、真喜雄が床でブランケットにくるまって寝ていた。
テレビはサッカーの試合の映像が流れている。
「ごめんね、こんなんで。さっきから私が掃除機かけたって何したって起きないのよ」
「・・・疲れてるんだと、思います」
「優しいね。ありがとう。下きて。お茶淹れるから」
素直に従って居間に移動すると、メダルやトロフィーが並んでいた。ソファに腰掛けてぼんやりと見つめる。全部真喜雄のだろうか。
大きなテレビ、額縁に入った表彰状、揺れるカーテン、大きなキッチン。真喜雄が育った家に、今僕がいることが、不思議だった。
「はい。あ、私ね、アキ。愛に喜びって書くの」
「・・・愛喜さん」
「兄が美喜雄、私が愛喜、で、真喜雄」
「・・・揃ってますね」
「母はユキっていうの。友に喜び。よく男だと思われたって言ってた。ねぇ、真喜雄、迷惑かけてない?」
「え?全然・・・。いつも、仲良くしてくれて・・・」
「あはは!固いねー。大丈夫。知ってるよ。真喜雄と付き合ってるんだよね?」
う・・・やっぱりバレてたか。
息をつくと、ケラケラと笑った。真喜雄とは性格が真逆のようで、感情が表に出るようだ。
お茶を飲みながら、ちらりと顔を見る。うん、真喜雄にそっくり。
なんか、女の子になった真喜雄を見てるようだった。
「真喜雄さー」
「え?」
「サッカーばっかでしょ。寝ても覚めてもサッカー。できない時は筋トレ。遊び方知らないしサッカーのことしか頭にないから、ある意味無垢な子なんだよね」
「・・・はい」
「だからさー、世間知らずだし何もできないし、何も知らないんだよ。疑うことも知らない。だから、怖いものがないの。だからさ、透吾くん」
愛喜さんの顔をもう一度見る。
優しい顔をして僕を見ていた。
きっと、すごくすごく、真喜雄のことを大事にしているんだろう。
普段あまり話さないけど仲は良いようだし、羨ましかった。
何か言いかけていたはずなのに、それ以上何も言わずに、微笑んだ。
「透吾くんの話、毎日聞かされてる。今日はこーしたあーしたって、筋トレしながら」
「・・・恥ずかしいです」
「顔に出ないけど、楽しそうだなって思ったよ。あんなに誰かの話をするなんて、滅多にないことだから、お母さんも嬉しいみたい」
「・・・あの、僕のこと・・・」
「大丈夫大丈夫、私しか知らないし。母さんは単純に、透吾くんの名前が出始めてからテストの点が上がったから喜んでるだけ」
またケラケラ笑う。釣られて笑ってしまう。
すると、ドタバタと階段を降りる音がした。
「どーしよう、どーしよ・・・」
磨りガラスの向こうに人影が見えた。真喜雄の声だった。情けない声で同じ言葉を繰り返し、ウロウロして別の部屋に入ったようだ。
「あー、あれはテンパってるわ」
「え、」
「面白いからここで待ってよう」
バタンバタンと扉の閉まる音。シャワー浴びに行ったな、と、ボリボリとせんべいを食べながら呟いた。
ソファの下に座るように促された。大人しく言うことを聞いて腰を落とす。愛喜さんがキッチンに移動した時、ドアが乱暴に開いた。
「どーしよう、どーしよー・・・!おれ、どーしよー・・・」
真喜雄の声だ。
なんか半べそ。時折鼻をすする音もする。
「姉ちゃん、どうしよう、おれ嫌われたかもしれない・・・おれ、やっちゃった・・・寝坊した、しかも、2時間以上・・・!どーしよう・・・!」
あれ?いつも姉貴って呼んでるはずなのに。なんか可愛いな。なるほど、確かにテンパってる。
「めちゃくちゃ電話きてた・・・なんで気づかなかったんだろう・・・!電話かけても繋がらないんだ。おれ、どーしよう、姉ちゃん、おれどうしよう!あー、どーしよぉ・・・!絶対怒ってる、嫌われる・・・!姉ちゃぁん・・・!」
「いーからパンツ履けバカ。チビ」
「んっ、・・・!どーしよ、・・・パンツない・・・外出れない・・・どーしよぉ、せっかく、せっかく・・・へ?」
「あっ、」
真喜雄が、ソファのところへ来てしまった。
ノーパンで、半べそで、なんとも可愛らしい姿で。
僕を見て呆然としている。濡れた髪から雫が落ちていく。
「・・・あ、・・ごめん、心配で、来ちゃったんだ・・」
「・・・・・・う、ぐっ、・・・!」
顔も体も真っ赤になって、真喜雄は素っ裸のまま居間から飛び出して行った。愛喜さんがゲラゲラとお腹を抱えて笑っていた。
なんだかとてもいたたまれなくて、真喜雄に同情してしまう。きっといつもからかわれて遊ばれてるんだろうな。末っ子の宿命なのかも。
「あーおかしい!はぁ、笑った笑った。あの子さ、結構甘えんのよ。透吾くんの前じゃカッコつけてるでしょ」
「んと、いつも、はい、かっこいいです」
「未だに私のこと、愛喜ちゃんって呼ぶときあるんだよ。可愛いでしょ。あの子テンパると冷水浴びる癖あるから、タオル持ってってもらっていい?」
落ちたバスタオルを渡される。頷くと、ソファに置いてあったカバンを担いでドアを開けた。
「ごめんね、騒がしくてさ。もっと猫被ればよかったんだけど、毎日君の話聞かされてるから初対面な気がしなくて。私出かけるから、ゆっくりしてってね」
とてもサバサバと言われて笑ってしまった。表裏がないのは真喜雄と同じだった。
「はい、あの・・・さっき言いかけた事って、なんですか?」
つい尋ねると、キョトンとした顔になった。これも同じだった。目がクリクリと開き、じっと見つめてくる。
「うーん、いいや。大したことじゃないから。これからも真喜雄をよろしくね」
「はい」
「あーあ、あの子のせいで1個後ろの回になっちゃった。最近ジムのエアロビハマってるんだよね」
もしかして真喜雄が起きるのを待っていたのだろうか。なんて優しい人なんだろう。多分、慌ててしまう真喜雄を落ち着かせるために家にいたのだ。
じゃぁね、とラフに挨拶をして、部屋から出て行った。玄関の閉まる音がして、鍵もかけられた。
カバンから携帯を取り出すと、折り返しの着信がたくさん掛かってきていた。メッセージも大量だ。悪いことしたな。
階段を登り、ノックして部屋に入ると、ベッドが丸く膨らんでいた。テレビを消してカーテンと窓を開ける。冷たい風が吹き込んできて、すぐに閉めた。
「真喜雄、今日寒いからもう一度お風呂に入ってきなよ」
「・・・」
「パンツはいた?」
「・・・」
「・・・真喜ちゃん」
モゾリと動いた。目と鼻を真っ赤にして、布団から顔を出した。ブスッとしている。
「ごめんね、勝手に来て。心配だったんだ。無事でよかったよ」
「・・・ごめん」
「いや、謝らないでいいよ。いい事あったし」
「・・・」
「可愛かったよ。今度僕にも甘えてよ」
バシッと肩を叩かれた。バランスを崩して後ろにひっくり返る。笑うと、裸のまま馬乗りになってきた。
「~っっ!!忘れろよ!バカ!」
「無理。可愛かったもん。甘えん坊なんだね」
「だって、起きたら、こんな時間だし、透吾、電話でないし、頭真っ白で、おれ、・・・だって、さぁ・・・」
すん、と鼻をすする。起き上がり、抱きしめる。体が少し冷たいようだった。何度も摩ってやる。
「ねぇ、お風呂入っておいでよ」
「・・・透吾も冷たい」
「え、そうかな」
「・・・ごめん、寒い中、待たせて・・・。ごめん」
「いいんだよ。試合のDVD観てたんでしょ?研究?」
「うん・・・。自分の癖、とか・・・観てたら、止まらなくて、気づいたら、寝てて・・・起きたら、その・・・ごめん、約束、破った」
「言ったでしょ、無事なら安心したって。可愛い姿も見られたしね。正直勃起したし」
あまりにも可愛くて、もぞもぞしたのは事実だ。今だって、一糸まとわぬ姿で僕の上にいるのだ。単純な体と脳みそはすぐに反応する。
「・・・見られたくなかった」
「ごめん」
「・・・姉貴、他になんか言ってた?」
「愛喜ちゃんって呼ばないの?」
思い切り頰をつねられた。痛くて顔を歪めると手が離された。これ以上言うと本気でヘソを曲げそうだから、もうやめよう。
「ところで君、お姉さんに僕のこと話しすぎじゃない?」
「だ、だって、他に話せる人いないし・・・」
「恥ずかしくないの」
「・・・だってさぁ、自慢、したい・・・」
可愛いことを言ってくれる。
もう限界だ。
「真喜雄、お風呂一緒に入っていいかな」
「え?」
「触りたいんだけど」
そっと前を撫でる。真喜雄は顔を隠すと、うん、と小さく返事をした。


************


お風呂は広かった。驚いていると、ご両親がお風呂が大好きで大きく設計したらしいと話してくれた。熱いシャワーで浅黒く焼けた肌を撫でると、顔を背けた。
「なんか、自分ちでこんなことすんの、恥ずかしい・・・」
「僕も恥ずかしかったよ」
「・・・うん、」
「・・・真喜雄の体、本当に綺麗だね」
見惚れてしまう。まるで彫刻のような体。腕が動き、抱き寄せられた。そのまま反転し、背中が壁につく。冷たさで鳥肌が立ったが、すぐにシャワーが降り注いだ。真喜雄は壁に手を着くと、じっと見下ろした。シャワーはすべて、真喜雄に当たって落ちていく。頭や肩から流れるお湯を掬うと、顔が寄せられた。顎を上げて唇を重ねる。啄ばむように唇を何度も動かしてキスを繰り返す。熱っぽいため息をつくと、きゅっと胸の中心を摘まれた。
「ふっ、・・・ん、びっくりした・・・」
「・・・ぷっくりしてて可愛かった」
「言わないでよ、」
「・・・透吾、可愛い」
「恥ずかしい」
真喜雄は少しかがむと、胸に唇を寄せた。唇で撫で、吸われ、舐められ、甘噛みする。腰が跳ね、喉が引きつった。もう片方を指先で嬲る。そのまましゃがみ込み、ずるりと僕のペニスを飲み込んだ。快感が駆け上ってくる。
「ひっ!?や、やめっ、」
「ん、」
「あっ!あっ、あ゛!」
生ぬるい口の中は言葉に表せなかった。堅い歯、滑らかな舌、柔らかな頰。口をすぼめれば切なくなり、緩めれば期待する。性に幼い僕からしたら、とてつもない快楽。これだけで、もう、目の前に絶頂が迫る。
「真喜雄っ、いやっ、もう、膝っ、膝がっ・・・!あ、あぁ!あ゛、ゔぅーっ、!」
「透吾、我慢しなくていいからな。これ気持ちいいもんな。おれも、早かったもん」
「は、はっ、ひっ・・・!真喜雄・・・!」
冷静でいられない。唇を舐め、また咥え込む。目がチカチカする。気持ちいい。
「ぅあっ、あぁっ、!あーっ、あーっ!」
「とぉご、かわい、・・・ん、」
「もうイく、イくっ!離して、あぁっ!」
強く吸われた。全身を震わせて射精する。重たい精液が真喜雄の口の中であふれ、自分のペニスに絡むのが分かった。滑る舌先で先端をくすぐりながら、口を離した。ずるずると膝が崩折れ、へたり込む。
慌てて真喜雄を見ると、ペロリと舌を出して唇を舐めていた。
「の、飲んだの・・・?」
「うん。前も思ったけど、不思議な味がする」
「はぁっ・・・はぁ・・・すごく、早かった、」
「おれも30秒くらいでイっちゃったし、フェラチオ?ってこんな感じなんじゃないかな。気持ちいいよな、温かくて、舌がチロチロって動いて」
「・・・まだ、ジンジンする・・・」
「・・・続き、部屋でしよう」
抱え上げられた。バスタオルに包まれて、部屋へと向かう。
足に力が入らなかった。このまま眠ってしまえそうな倦怠感。うとうとして、何度も瞬きをする。ベッドに寝かされて気持ちよくて目を閉じようとすると、ペニスが温かな熱に包まれた。
「あっ・・・」
胸が切なくなる。舌が、亀頭を包むたびに喉が引きつった。
「あ、はぁあ・・・気持ちいい・・・気持ちいぃ・・・!真喜雄、気持ちいいよぉ・・・」
「ん、ん・・・もっと、教えて・・・。知りたい、透吾の気持ちいいところ」
「あ、それ、そこ、」
「こう?な、透吾・・・」
ぐっと上半身を起こす。
真喜雄の舌が、優しく先端を舐めていた。ヒクヒクとペニスが切なげに揺れ、腰が動く。
視線が僕をとらえる。
目の前が霞んだ。
「真喜雄、嫌だ・・・もう、嫌だ・・・」
「どうして?美味しいよ、透吾」
「あ、あ・・・!ごめ、イく・・・!」
唇が、ぢゅ、と鈍い音を立ててペニスを吸った。
火花が散る。泣きじゃくるように喘いで、情けなく腰を揺らして射精した。
力をなくすことなく、ペニスは天井を指したままだった。
力を抜いて倒れこもうとした時、ぐっと引っ張られた。
真喜雄に覆いかぶさる。ぽとぽとと、水滴が頰に落ちていく。慌ててぬぐい取ろうとしたら、褐色の指先が伸びてきて目元を拭われた。
「気持ちよすぎて、泣いてるの?」
「・・・多分、そう・・・」
「・・・分かる。なんか、どうしようもないよな。感情も快楽も、ぐちゃぐちゃになって、吐き出して、ぼんやりする・・・贅沢だなって、思う」
「・・・痺れてる」
「何が?」
「・・・下半身が、」
「分かんない。どこ?」
「な、何、言わせたいの・・・」
「これ?痺れるの」
きゅっと包まれた。くすぐったいような、痛いような、もぞもぞする感覚。
「ん、むっ・・・!ちょ、少し、たんま、・・・!」
「な。これ、何・・・?これが痺れる?」
「やだってば!やめて、あ、いやだ、んぁっ、あっ!」
「これ何?透吾・・・」
「い、あ、・・・ペニス、あ、あ、」
「んー、・・・」
「ぅ、くっ・・・!離してよ、も、教えた、」
「ペニスっていうんだな、透吾は」
「あ、あ、あ!」
「・・・すごい、硬い・・・。な、ちんこって言ってみてよ」
「、なんでっ!う、うっ!あ、ち、ちんこ!痛いってば!」
「ちんちんは?」
「んぁっ!ちんちん、痛いから、も、離して・・・!」
手が離れた。ぐしゃりと腕が折れて、真喜雄の上に落ちる。しっかりと腰を抱かれた。
ぐったりしていると耳をそっと撫でられる。
「・・・ごめん、まだ痛い?」
「ん・・・」
「・・・あのさ、お尻触ってていい?」
返事をする前に手が伸びてきて、もみくちゃにされた。くすぐったい。
「あのな、部活のやつが、言葉ってエロいって言っててな。彼女にもっともっと卑猥なこと言ってほしいって言ってて、おれも言われたいなーって思った」
「ん・・・!と、突然すぎるよっ、」
「ん。何言ってほしいか分からないからとりあえず、ちんちんって言ってもらおうと思って、言ってもらったけど、エロいっていうか、可愛かった」
「・・・も、お尻、ムズムズするから、やめて・・・」
「あ、今のヤバイ」
「え?」
「今の、ヤバイ。エロい。すっごく、可愛い。透吾のお尻ちっちゃくて可愛いからもっとしたい」
「やだってば、くすぐったいよ。僕も触りたい」
「えー・・・あ、じゃぁ向き変えて」
と言いつつ手の動きは止まらない。
つい睨み付けると、ふにゃりと顔を崩して笑った。
「可愛い・・・すっごく可愛い、透吾」
「怒るよ?」
「んんっ、・・・それは嫌だ。でも、お尻、もう少し・・・癒される・・・」
はー、と深く息をついて目をとじた。
癒されるって・・・男の尻だけど・・・。瞼を撫でると、ふにゃりと笑った。なんか今日は感情表現が素直だ。可愛い。
唇を押し付ける。青臭い。僕のを舐めたんだった。忘れてた。口の中がムズムズして、真喜雄のペニスを咥えたいなと思った。なんか、よだれが垂れそう。
「う、」
「ん?どしたの」
「・・・なんでもない」
「・・・なんか、透吾美味しそう」
「え?」
「ヨダレ垂れそうだ」
あ・・・。今、きゅんってした。
ときめくって、こういう事だろうか。
嬉しくなってしまって、起き上がって体を下げる。少し力をなくした真喜雄のペニスを持ち上げて口に押し込むと、ぐっと頭を掴まれた。
「ん、何、するの?僕はしちゃダメなの?」
「向きが違うから・・・」
「え?」
「・・・透吾のお尻、こっちに向けてほしい」
「は!?嫌だよ!」
「えー・・・嫌って言うなよー・・・」
悲しそうに顔を歪めた。胸が切なくなる。どうしてそんな顔ができるんだ。末っ子って、怖い。
「今日、だけだよ・・・」
「え、やだ」
「じゃぁ遅刻した事許さないからな」
「嫌だ。どっちも嫌だ」
「ワガママ」
「絶対気持ちいいし、また次もしたいって絶対思うし、次はおれが乗る」
「・・・本当に?」
「ん。代わり番こ」
「・・・仕方ないなぁ」
結局甘やかしてしまうのは、僕が長男気質だからだろうか。
仕方なく体の向きを変えて跨ると、真喜雄は、わぁー、と感動したように声を漏らした。
「すごい・・・透吾のちんこ、目の前にあるのに、透吾がおれの舐めてくれるんだ・・・」
「ち、ちんことか、言わないでよ。バカ」
「お尻も触れる・・・ここも、舐めていい?」
かぷ、と陰嚢に噛み付かれた。チリチリと柔らかい快感が下半身を走る。
「ふ、ぅう・・・!あ、や、」
「柔らかい・・・つるつるする。ここ、あまり生えてないんだな」
「き、君だって濃くはないでしょ。いちいち言わないでよ」
「可愛い・・・あ、でも、ちょっと柔らかくなっちゃったな。なぁ、もっと腰、こっちに向けて」
ぐいっと持ち上げられ、引きずられた。慌てて踏ん張ると、ぐいぐい引っ張られる。
「ちょ、痛いよ」
「んー、先っちょしか舐められない・・・」
「・・・もー、恥ずかしいな・・・」
ずりずりと移動する。いちをこていして、真喜雄のペニスを舌で擽ぐると、すぐに力がこもった。
ヒクヒクっと足が揺れる。
しっかり根元を支えて陰嚢を指先でこすりながら口にふくむと、真喜雄の手のひらがするりと腿の裏を撫でて尻たぶに移動した。
ぱくりと口に咥えられ、舌で撫でる。
なんか、変な気持ちだ。下半身にある刺激も、口の中にある刺激も、緩やかに感じる。
舐めたり吸ったりする事に集中していると、突然強く吸い付かれた。
「わぁっ!」
「透吾、すごいやらしい・・・」
「びっくりした・・・」
「なんか、透吾の舐めながらしてもらうの、すごく気持ちいい。ずっとこうしてられる。なんか、口に集中してるからかな。いつもより時間かけられる気もする・・・」
「・・・僕も、さっきより快感が緩やかで、お湯の中にいるみたいで、気持ちいいよ・・・」
爆発の準備をするようなせり上がってくる刹那的な快楽も好きだけど、焦らすように満たすようにゆっくりと全身に染み渡る快楽も大好きだった。
「透吾、ごめん、舐めるの1回、休んでいい・・・?」
「うん。ろう、ひたの・・・」
「ぅ・・・あ、気持ちいい・・・」
「・・・向き変えていい?」
「ん・・・あの、えーと、・・・じゃぁ、その、こっち」
ずるっと僕の下から体を抜くと、足を床に落として座った。同じように隣に座ると、恥ずかしそうに俯いて床を指差した。
「・・・ここで、してほしい・・・」
「・・・君は本当に、ムッツリだな」
「・・・ごめん」
「・・・次は君だよ」
「うん・・・」
ピクピクとペニスが跳ねた。期待しているのだろう。床に腰を下ろして足の間に座る。
一気に根元まで咥え込むと、口の中で小刻みに跳ねた。
「ふ、ぐぅ・・・!う、あ、・・・びっくりした・・・きもちい、」
「ん、」
「苦しくない・・・?う、く、」
こんなに深く押し込んだのは初めてだった。顎が少し痛い。咥え込んだはいいけど、舌が動かせないし、結局どうしたらいいのか分からず、とりあえず強く吸ってみる。頭にある真喜雄の手の力が少し強くなった。誤魔化すようにサラサラと髪を撫でてくる。
脚を撫でながら吸い続ける。普段触ることのできないしなやかな筋肉がついた脚は綺麗で、すごく官能的だった。
筋肉に沿って少し強めに指を這わすと、ガクガクと大きく震えた。
「ん・・・それ、くすぐったい、」
「むぅ・・・」
「透吾・・・脚ばっか・・・こっち見てよ・・・」
見上げると、汗をかいて肩で息をする姿が上にあった。目つきが鋭くなる。
ぐっと後頭部を掴まれ、更に咥えこむように腰を押し付けられた。苦しくて足を掴む手に力が入る。
「あ゛っ!透吾、気持ちいい・・・!もっと、」
「ん゛ぐっ、」
「可愛い・・・可愛い・・・ごめん、苦しいのに、ごめんな、ごめん・・・イきそ、」
嬉しくなって更に強く吸うと、口の中でペニスが大きく跳ねて喉に熱いものが当たった。
鼻から青臭さが抜けていく。飲み込めば、ゆっくりと喉を伝う感触があった。
「はぁっ!はぁっ!ごめっ、苦しくないか、」
「ん・・・大丈夫だよ・・・」
顔を離すと、ぷるんと可愛らしく揺れてペニスが口から抜けた。
まだ芯があり、天井をさしている。
手を添えて先端に唇を押しつけると、ビクリと揺れた。
「こしょばゆい」
「ん、・・・」
「う、あぁ・・・」
ため息のような喘ぎ声が漏れた。体を丸めて、耐えているようだった。
舌先でくすぐってそっと手を添えスライドさせると、頭を抱え込まれた。髪をくしゃくしゃにして、少し力を入れて掴む。
「んくっ、」
「も、待って・・・!透吾、」
「気持ちいい?」
「ん・・・!く、ぅ・・・!」
休めることなく刺激を繰り返す。ピクピクと跳ねるペニスは真っ赤になっていた。少し歯を立てると脚が大きく揺れる。僕の頭に額を押し付けて、深く呼吸を繰り返した。
「はー、はー、」
「真喜雄・・・」
「いっ・・・あぁっ・・・!」
「わっ、」
口を離した時、少量の精液が顔にかかった。熱かった。
指で掬うと少し透明がかっていた。荒い呼吸が繰り返される。
芯を失いかけたペニスを優しく撫でると、ぐっと手を抑えられた。
「ちょ、・・・今、やばいって・・・」
「またいきそう?」
「うん・・・あ・・・ごめん、顔に・・・」
ティッシュを数枚だし、顔をグチャグチャと拭かれた。
隣に腰掛けると、肩を寄せられ、そのまま倒れ込んだ。覆いかぶさるとまたお尻に手が伸びる。
「・・・お尻可愛い」
「あんまり嬉しくないなぁ。ね、僕にも触らせて」
ベッドに寝転がると、少し恥ずかしそうに覆いかぶさってきた。
すべすべの肌を堪能して両手でほぐすように揉む。気持ちよかった。少し硬めなのに、不思議だ。
「・・・可愛いね」
「・・・本当だ、あんま嬉しくないな」
「ふふ、」
「へへっ、」
気がすむまでお互いの体を触り合い、愛喜さんが帰ってくる前にシャワーを済ませて家を出た。
あたりはすでに薄暗く、街灯がポツポツとついているだけだった。そっと指を握られる。
「今日、ごめんな」
「全然。触れられてよかったよ」
「・・・また、しような」
照れてしまう。指を握り返し頷くと、白い歯を見せて笑ってくれた。
寒さで赤くなった鼻を擦ってみる。くすぐったそうに顔をくしゃくしゃにして、やっぱり笑ってくれた。





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