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酔っ払い
しおりを挟む結局、居酒屋代は三人でワリカンにして、店を出た。
駅で別方向の堀田と別れ、春日部と二人で僕の家に向かった。
少し飲み足りなかったらしく、春日部はコンビニで酒とつまみを買ったのだが、それはデカイ袋二つ分にもなった。金は春日部が出した。宿泊費のつもりなのかもしれない。
今日は金曜だから、どれだけ飲んでもかまわないが、酔い潰れると危険な目に遭うぞとは忠告してやれない。
以前、堀田と三人でこの部屋に入ったことのある春日部は、勝手知ったるといった様子で『先にシャワー借りるなー』とバスルームに向かっていった。
取り敢えず冷えてた方がいいものは冷蔵庫に入れ、学生の一人暮らしにしては、広い間取りのリビングで春日部を待った。
入れ替わるようにシャワーを浴びようとして、無防備な春日部の姿が目に入る。僕が貸したTシャツから見える腕は程よく筋肉が付いていて、長めの首の途中にある喉仏は僕よりも出っ張っている。
いつもの無造作風セットではない、濡れた髪。
水分の重さを持った毛先は真っ直ぐ伸びていて、顔に影を作りいつもより色気が増していた。
耐えられず、バスルームで一発抜いた。
風呂から出ると春日部は缶ビールを一本空けていた。
「しかし、広くていい部屋だよな。このマンションで一人暮らししでんのってお前だけじゃね?」
「どうなんだろ?あんまり他の住人と交流ないから。」
「掃除もハウスキーパーがやってんだろ?生活感なくてモデルハウスみたいだよなぁ。」
「物があんまりないからそう見えるのかもね。」
「部屋も空いてるみたいだし、俺もここに住みてぇよ。」
「ラブホ代わりにするつもりでしょ。」
「しねーって。」
春日部の住む部屋は大学生の一人暮らしに特化したアパートだ。大学が近く家賃が安い代わりに少々壁と床が薄く、少しでもうるさくすると隣人や上下階から壁床天井ドンをされるらしい。うるさいのは多分女の子の喘ぎ声だ。
完全なる自業自得だが、住み心地は良くないのだろう。
二人の会話は堀田がいない分だけ落ち着いているが、深夜二時を回った頃には、春日部も僕もさすがに酔いが回ってきた。
頬と目の回りをピンク色にしている春日部は可愛くて色っぽい。ごくりと喉が鳴りそうになって、誤魔化す為に一口残っていたハイボールを飲み干す。
「春日部ぇ、そろそろ寝るかぁ?」
「わはははっ、お前呂律やべぇぞ。」
「あははー、お前もなー。」
「いやいや、お前だよ。」
女の子がやったら気付くであろうあざとく酔った振りも、まさか友人がそんなことをするとは微塵も思っていない春日部は気付く素振りもない。そればかりか、酔った友人に無防備な笑顔まで向けている。
一体どうやって堕としてやろうか。
「どこで寝るぅ?部屋空いてるけど来客用の布団、ないんだよねぇ。」
「ソファーでいいよ。」
「じゃあ、何か、かけるもの持ってくるー。」
「わりぃ。」
「いーえ。」
ふわふわした足取りで立ち上がり、春日部の横を過ぎる時、体をふらつかせてみる。
「わっ。」
「っ、危ねぇなぁ。お前こんなに酔っ払う奴だったっけ?」
春日部は咄嗟に立ち上がり僕を支えてくれた。触れた腕が熱くて、それだけの接触で勃ちそうになる。
「ごめ。楽しくて飲み過ぎた。」
「まぁ、夕方からずっと飲んでるもんな。」
春日部は僕の肩を支えながら、寝室まで付き添ってくれるようだ。僕よりも8センチほど身長の高い春日部は少し腰を曲げるようにしている。
いつにない距離感で、整った春日部の顔が間近にあって、舐め回したい衝動に駆られる。
一回限りだと知りながらも体を開く女の子の気持ちがよく分かった。
焦るな。間違えれば逃げられる。自分に言い聞かせても、酔いもあって抑えられない。
寝室までたどり着いて、ふざけた振りをしてベッドに春日部ごとダイブした。押し倒すような形で。
キングサイズのベッドは軋む音も出さずに僕たちを受け止めた。
うわっ、と間抜けな声を出した春日部は僕の下敷きになったまま舌打ちをした。
「何すんだよ、酔っ払い。」
「あははー。」
「あははじゃねぇよ。お前が女なら俺にヤられてっぞ。」
「えー?やられるのは、やだなぁ。僕、オトコノコだから。」
「何、当たり前なこと言ってんだ。ほら、退けろよ。布団かけてやっから。」
「春日部、なんかお兄ちゃんみたいー。妹か弟いたっけー?」
「弟が二人、だな。……おい、そろそろマジで退けろ。」
抱き合っているような形になっているのに、いつもと変わりない春日部の態度が少し面白くない。
大概の男なら、少し位は平静を失うものなのに。
僕は『儚げな美人』と称されるくらいには、中性的な顔をしている。
ここは、寝た振りでもしておくか。
僕はしっかりと春日部にしがみついたまま、なんか眠いと呟いて、目を閉じた。
春日部は焦ったように、おい、寝るなと体を揺すったが、僕は反応しなかった。やがて起こすことを春日部は諦め、無理やり僕を剥がそうとした。しかし細い割りには力のある腕をうまく外せなかったようで、何なんだよと呟いた。
体幹を鍛えておいて良かった。
ったく面倒くせーな、だとか、堀田より酒癖が悪いだのといった悪態をついた春日部だったが、酔いもあって睡魔には勝てずにやがて寝息をたて始めた、
僕は寝た振りを続けながらしばらく待ち、春日部が深い眠りについたあたりで体をまさぐってみた。
ほぼ反応がないことを確かめて、Tシャツを捲り上げ、春日部の慎ましい乳首にそっと触れた。
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