【本編完結済】ヤリチンノンケをメス堕ちさせてみた

さかい 濱

文字の大きさ
76 / 120

春日部 28

しおりを挟む
  
    デートの心得。

    よく分かんねぇからスマホで検索してみても、全く参考にならねぇアドバイスばっか。
話題に困ったらとか、どうやって次の約束を取り付けるかとか、俺たちにはそんな心配は無縁だし、服装だって町屋が決めたから迷う必要なんてねぇ。

『男性は車道側を歩きましょう』

    結局、ネットで漁った成果はこれだけ。

    デート相手も男なんだけどな、ってスマホにツッコミ入れて、ぜってー当日は車道側を歩いてやることに決めた。



    当日、俺の運転で目的地に着いて、バック駐車を一発で決めて気分良く車から降りたら、町屋がつつつ、って俺に近寄ってきた。

    どうした?って聞こうとしたけど、もしかしてこれが恋人の距離感なのかって思い至って、町屋の顔を見た。笑ってるし、多分そういうことなんだって理解したらニヤけそうになった。

    町屋が積極的に動いてくれたのが嬉しくて。

    あの男にデートを見せつけることに躊躇がねぇってこと、デートの初っ端から行動で示してもらえて、安心した。
    なんも相談しねぇで、あの男への対抗心で「デートする」なんて言っちまったから、いくら町屋が乗り気に見えても悪趣味なことしちまってんじゃねぇか、って不安があったから。


    おまけに、なんか胸がぞわぞわして擽ってぇ。

    こんな距離、家に居る時は普通だけど、人がいっぱい居てしかも雲一つねぇ青空の下だから、特別感もある。

    町屋は俺のだ、って言って回ってるみてぇで更に気分が良かった。

    あんま他人にジロジロ見られんの嫌なんだけど、今日は見てもらって構わねぇ。

    前に町屋が俺のことを、トイレでやった時も青姦したときも乱れてたから人に見られたい願望があるんじゃねぇのか、みたいなこと言ってきたことがあった。

    マジでそうかもしれねぇ。

    今も最高に気分がいいから。

    もっと正確に言えば、見られてるのが快感ってワケじゃねぇ。見られても構わねぇって町屋の態度が、俺を満たしてくれてる。

    だから人前で町屋と仲良くすんのは気持ちいい。



    でも、途中で急に女達に話しかけられて、気分は急降下した。
    ヘラヘラ対応してる町屋見てたらイライラしちまって。

    町屋は女のことは好きにはなんねぇ、って分かってんのに目の前で女に愛想良くされるとムカムカが止まんねぇ。
    かっこいい、って言われて「ありがとー」って笑顔振り撒く町屋が俺の知ってる町屋じゃねぇみてぇで嫌だ。
    町屋は俺がカッコいい、って褒めるとちょっと恥ずかしそうにはにかんで喜ぶんだってこと、この女達に教えてやりてぇ。

    イライラが募って、気が付いたら話に割り込んでた。デート中だから邪魔すんな、って言っちまった。

    ポカンとする町屋と女達見て、やっちまったって思ったけど、言っちまったもんは仕方がねぇ。
    自分達は今日は偽物とはいえ恋人同士で、俺は「邪魔すんな」って言える立場にあるハズだって頭ん中で屁理屈捏ねた。

    とは言え、やっぱ気まずくてその場からさっさと逃げ出した。


    また、嫉妬。

    認識したばっかの感情だからなのか、制御の仕方が分かんねぇ。
    この感情はやたらめったら俺をイラつかせて傷付ける。それに思い余ってあんな独占欲丸出しのことまで言って暴走しちまって。

    いくらなんでも、嫉妬が過ぎるから自分にブレーキかけなきゃ、って反省しようとしたのに町屋は俺を甘やかせる。

    呆れるどころかニコニコ笑って、俺のこと「彼氏」って言ってきて。

    男同士だから、彼氏・彼女じゃなくて、彼氏・彼氏。
    すげぇ違和感あんのに、言葉の響きは魅惑的で頭が混乱した。
    今日だけの、ごっこ遊びみてぇなモンだって分かってんのに、『親友』よりも『彼氏』や『恋人』って言葉が俺を惹き付ける。

    どうしてなのか。

    多分、何が違うのか俺にも分かってきたから。

    親友と恋人の立場の違いは『説得力』。

    町屋のことで、本人や他人にとやかく言える権利があんのが恋人。

    町屋に手出すな。
    邪魔すんな。
    他の奴、見んな。
    一生俺だけだと誓え。

    親友の立場じゃそれを言っても、あの男に笑われたみてぇに「何言っちゃってんの?」って説得力がねぇ。

    俺が望む形で町屋の傍にいるには、親友じゃダメなのかもしれねぇ。
    町屋に対して何の権利も主張できねぇから。


    そこまで分かったけど、どうしたらいいのかが分かんねぇ。


『春日部、誰も見ないで僕だけを見てよ。……僕たちは恋人同士、なんだから』

    俺と同じじような想いをぶつけてきた町屋。

    こんなこと言われるなんて微塵も思ってなくてびっくりしたけど、ジワジワと嬉しくなって、でも同時に、こんなこと今日だけなのか、って思ったら寂しくもなって。
    俺達をまだ見つけられてねぇらしいあの男を巻いちまって、デートをずっと続けてたくなった。



    人気の洋食屋のオムライス。
    40分も並んでやっとありつけたのに、テーブルの下で絡ませた小指が気になって味がよく分かんねぇ。
    左手にスプーン持って、食いづらそうなのに俺の指を離さねぇ町屋がいじらしくて、やべぇ。

「美味しいけど、春日部のオムライスの方が好き」って言ってくる町屋が、もう、すげぇ、愛しい。


「町屋、ソース付いてるぞ。」
「え、どこ?」

    ソースなんて付いてねぇ唇に指を滑らせながら思った。

    俺は町屋のホンモノの恋人になりてぇ。

しおりを挟む
感想 234

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...