【本編完結済】ヤリチンノンケをメス堕ちさせてみた

さかい 濱

文字の大きさ
79 / 120

春日部 29

しおりを挟む
  
    俺は町屋の恋人になりてぇ。

    『恋人のデート』つーのをしてみてマジでそう思った。
    俺だけのモンだって、他人にも町屋にも宣言してぇけど、恋人じゃねぇと説得力がねぇから。

    俺の恋人になってくれって町屋に伝える。

    そう決意して「話がある」なんて改まって町屋と向かい合ってんのに、いざ言おうとすっと、口が動かなくなっちまった。
    その後も何回かチャレンジしてんのに、やっぱり言えねぇ。

    わりぃ、何でもねぇって謝ると、町屋はニコニコして「大丈夫だよ」って赦してくれてっけど、同じやり取り何回すんだよって、そろそろ呆れられちまいそうで恐い。

    でも、勇気が出ねぇ。

    俺はこんな情けねぇ奴だったのかって、自分にイラつくけど、もし親友のままでいいじゃねぇかって言われちまったら、って思うと二の足を踏んじまう。
    『俺の恋人になってくれ、町屋』ってすっげー簡単な文章なのにな。

    俺は思ったことすぐに口に出すタイプで、それで失敗することもあんだけど、このことになると口がセメントで固まっちまったんじゃね?ってくらいに動かねぇ。


    今日こそはぜってー言う。

    スマホに入ってる町屋の画像見て、勇気を貰う。

    これはあの男が送ってきた画像。

    俺と町屋のデートを見たいと言ったあの男は「諦めが付いたお礼」と言って町屋の画像を送ってきた。自分はもう消すからって。

    画像の町屋は今より少しあどけねぇ顔して笑ってる。高校の制服のブレザー着て。

    俺と出会う前の町屋。
    この笑顔は、撮影者のあの男に向けられたもんだ。

    いい写真なだけに、すっげぇ悔しい。

    この先、自分の知らねぇ町屋を作らねぇ為にも俺は恋人になる。


    俺は町屋に恋はしてねぇ、ってずっと思ってた。

    そもそも『恋』が何なのかよく分かんねぇし。
    俺の知ってる唯一の『恋』は女から一方的に押し付けられるモンしかなくて、その想いに誠実に向き合ってこなかった俺は自分に置き換えてみることも出来ねぇ。

    でも町屋への想いを熱い友情、家族愛って分類すんのに違和感が出てきた。

    町屋に対する感情は清く正しいモンだけじゃねぇ。

    町屋がモテてんの見ると、誰にも相手にされねぇくらいに汚してやりてぇって思っちまうし、飯の作り方教えてって言われても、ずっと必要とされてたいから「お前には向いてねぇ」って言って教えてやらねぇ。


    この汚ぇ想いが『恋』なのか?

    分かんねぇ。



    俺は結局その日も町屋に、恋人になってくれって言えなかった。


    不甲斐ねぇ自分が嫌で、これだけはプライドが許さねぇと思っていた事に頼った。






「そりゃー、恋だね。春日部チャン。」


    いつもの安居酒屋に堀田を呼び出した。町屋がスポーツジムに行ってる間に。
    堀田は、相談があるって言ったら、彼女と約束があったみてぇだけど、一時間だけなら、って時間を取ってくれた。

「キメェからチャン付けはよせ。あと、俺の話じゃねぇからな?知り合いが悩んでんだからな?」
「はいはい。じゃ、その知り合いは恋に落ちてると思うよ、どっぷりと。」
「そうなのか……で、でもよ、恋って常にキュンキュンとしてドキドキしてふわふわしてウキウキしてるモンじゃねぇのか?」
「うはははっ、キュンキュン、ふわふわって……ぷ、お前の口から出てくるとやべぇな。くくっ。」
「笑うなよ。一時間しかねぇんだから。」
「お前が笑わせたんだろ。」
「で、違うのか、どうなんだ? つーか大体、恋って何だよ?」
「恋とは何だ。哲学だなー。」
「うるせぇ、やっぱお前に聞いたのが間違いだった。」
「愛する彼女との約束一時間もずらして来てやったのに酷いっ。」
「そりゃ悪かったけどよ。」

    『恋か友情か悩んでる知人』のことを相談、つーことで話を聞いてもらったけど、さっぱり参考にならねぇ。

    堀田も恋愛初心者みてぇなモンだし仕方ねぇかって諦めて、コーラ飲んでたら、堀田が自分の分の生ビールを追加注文した。

    すぐにやって来たビールを堀田は嬉しそうに受け取って俺のコーラのグラスにぶつけてきた。

「これから彼女んトコ行くのに酔っ払って大丈夫なのかよ?」
「いいのいいの、友人の、遅い初恋に乾杯しなきゃなんねぇから。しっかし、俺が彼女とイチャコラしてる間にそんなことになってたとはねー。今度、紹介しろよ?」
「だから、俺の話じゃねぇって。」
「はいはい。」

    ホントは俺のことで相手は町屋なんだけど。

    町屋にもし恋人になってもらえたら、堀田には時期を見て言ってもいいよな?言ったら堀田はどんなリアクションすんだろ?派手に驚いてくれんだろうな。で、多分否定はしねぇと思う。喜んでくれる気もする。
    ……いや、そんな楽しげな想像は「恋人になってくれ」って言えねぇ腑抜けがしたら駄目なヤツだ。

    大体、町屋は堀田のことが好きだったんだよな。俺とは全然タイプが違う。

    きっと堀田のくそ明るいトコが好きで恋してたんだろう。俺だって今まで何度も堀田の明るさに助けられてきた。

    堀田は、いいな。

    恨めしい思いで堀田を見たら、また俺を見てニヤニヤ笑ってやがった。

「あ? なンだよ?」
「春日部、俺、お前と付き合いなげーけど、そんな顔してんの初めて見た。」
「どんなツラだよ?」
「恋に悩む男の顔?」
「……。」
「うっそー、そんなの俺には分かんねぇし。ただ、すっげー自信無さげなツラしてるよ。イケメンが台無しでちゅねー。」 
「うっせー。」
「うはは。でもよ、お前にそんな顔させる子すげぇよ。これは間違いなく恋だと俺は思うよ。……その子とうまくいくといいな、春日部チャン。」
「……だから俺の話じゃねぇって。」
「はいはい。」
しおりを挟む
感想 234

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...