【R18】1LDK、イケメン悪魔憑きアパートに引っ越しました。

さかい 濱

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魔女

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「ただいま。」

「おかえりなさい。早かったね。お隣さん、まだ帰って来ないよ。」

青山くんは、カフェにもいなかった。今までのパターンとして夕方にいない場合は、もう帰ったか、仕事が休みなはずだ。アザリ君が言うように部屋に帰って来ていないなら、休みだったのだろう。実家にでも帰っているのだろうか。
お試し期間があと3日しかないのに、ちょっと残念だ。

私は手に持っていた買い物袋から食材を取り出し、冷蔵庫に入れた。
アザリ君はそれを不思議そうに見た。

今日は、夕御飯を家で食べようと思って買い物をしてきた。
私はいつも夕御飯はカフェで食べている。そして朝食は食べない派だ。だからこのアパートに越して来て初めての料理をすることになる。

流石にカフェに半年も通っていると、カフェ飯にも飽きてくる。
今日は青山くんもいなかったし、家で和食でも作ろうと思ったのだ。

「悪魔って、和食、食べられるの?」

何か食べているところを見たことはないけど、ハーブティーが飲めるなら食べることもできるはずだ。

「えっ!?僕の分もあるの?」

「あるよー。」

「食べる!」

アザリ君がキラキラした目で、そわそわと出来上がるのを待っている。その姿は少年のように可愛らしい。きっと食べ盛りの息子を持つお母さんの気持ちって、こんな感じなんだろうなと、心がほわっと温かくなった。


「できた。」

ダイニングのテーブルに料理を並べ終えて、アザリ君に声を掛けた。

「凄く、美味しそう。」

和食と言っても私が作ったのは、親子丼、小松菜のお浸し、味噌汁という家庭科実習メニューだ。だから、そんなふうに言われると、少し申し訳ない気分になってくる。

お箸の持ち方を教えながら食べ始めた。

私が味噌汁に口をつけると、アザリ君も見よう見まねで、味噌汁のお椀に口をつけた。

「これ、すごく美味しい!」

笑顔の彼を見て私もつられて微笑んだ。

「ありがと。味噌汁好きな悪魔なんてアザリ君くらいかもね。」

「そうかも。僕の母様、日本人だから味覚が合うのかもね。」

親子丼を不馴れな箸で苦戦しながら食べつつ、彼はサラリとカミングアウトした。

「え、アザリ君のお母さんって人間なの?」

「うん。元人間。」

彼は鶏肉をもぐもぐ噛みながら頷いた。

「……元?」

なんだ、元って。

「今は、魔女だよ。あ、これも美味しい!」

アザリ君は小松菜を箸で持ち上げた。

「……どうして、魔女になったの?」

私は食べる手を止め、箸を置いた。

「ん?悪魔と体の関係を持つと、人間の女の人は魔女になるんだよ。」

私は絶句した。

……なんだその『知らないの?』みたいな言い方は。


危なかった!

デリヘル嬢を、魔女にしてしまうところだった!仕事をしていたら、知らずに魔女になってしまうなんて悲惨過ぎる。

「そういう大事なことは初めに言ってよ。契約に関わることなんだし。」

契約する気はなかったけど、知らないでいたら、アザリ君に、誰か別の女の子を紹介していたかもしれない。

私はなるべく冷静に言ったつもりだったけど、アザリ君には怒りが伝わったらしく、肩をすぼめて箸を置いた。

「ごめんなさい。昔からそうだから、みんな知ってることだと思ってた。」

昔からそうだ、と言われても、悪魔が実在すること自体みんな知らないと思うけど。
私自身、何度もアザリ君の不思議な能力や現象を見ても、まだどこか信じられていないというのに。

「あの、でもっ、契約のことなら大丈夫だから。」

アザリ君に泣きそうな顔で見つめられた。

どうもこの顔をされると弱い。
母性本能が刺激されているのだろうか。

「僕は、成体、じゃないから、女の人を魔女に変えてしまうくらいの魔力が、ないんだ。」

「じゃあ、筆おろしだけなら大丈夫ってこと?」

アザリ君は頷いた。

嘘は言ってなさそうだけど、だからと言って別の人に紹介もできない。だってその女の子がアザリ君を気に入ってしまったら、二回目をした時に魔女になってしまうってことだから。

あ、でも逆に考えれば、魔女になりたい人を探してくればいい話なのかも。

「魔女になると、どうなるの?」

「えっと――」

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