【R18】1LDK、イケメン悪魔憑きアパートに引っ越しました。

さかい 濱

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幻覚の解除

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「アザリ君、ごめんね。」

私は、コートのポケットに入れたままになっていた、手錠を取り出し、彼の右手にそれを着けた。

「な、なにを。」

そして、私の左手にもそれをはめた。

よし、このまま、家まで連れて帰ろう。
そうすればまたアザリ君と一緒に生活できる。

「ま、待て。」

私は、彼を引き摺るように離れの玄関に歩いて行った。

「あら、うまく捕まえたわね。」

玄関の前には、ディルと青山くんがいた。

「見てたんですか?」

アザリ君しか見えてなくて気が付かなかった。
思いっきり縋っているところを、二人に見られていたかと思うと恥ずかしい。

「そりゃ、あんなに揺れたり、風が吹いたりすれば気が付くわよ。タクオとサーニャは熟睡してるみたいだったけど。」

「すみません。」

ディルに、今なら青山くんの幻覚を解除出来るかもしれないと言われ、その場で解いてもらうことにした。

青山くんは、もう嫌だとは言わなかった。アザリ君を目の前にして、自分が本当に術を掛けられて、幻覚を見ていると自覚したのかもしれない。

アザリ君も"欠片"を受け入れてくれる気になったようで、気の抜けるほどあっさりと作業は終了した。

「術が解けたのだから、早くこれを外せ。」

アザリ君は、手錠のはまった右手を私の目の前に持ってきた。
欠片を戻しても、ディルが言っていたように、アザリ君にはこれといった変化はないように思われた。

仕方ない。

でも私はアザリ君を捕まえた。
逃がすつもりはないので、思い出してもらえるチャンスはまだあるはずだ。

「ディルさん、ありがとうございました。胸、出来れば痛くないように持っていってもらえますか。」

私はアザリ君の言うことを無視して、ディルに話し掛けた。
そして胸を突き出すようにして立ち、目を瞑った。

さようなら、湯に浮かぶほどの脂肪。

覚悟を決めて、待ったのだがいつまでもそれらしい衝撃は襲って来ない。恐る恐る目を開けると、ディルと青山くんの笑顔が見えた。

「ふふっ。アタシは、アオヤマと契約したの。だからお嬢ちゃんの胸はいらないわ。」

「ええっ!? そんな訳にいかないですよ。」

どうして、青山くんが?

悪魔との契約には相応の見返りが必要なのだ。それを青山くんに払わせる訳にはいかない。

「安心して、爽子ちゃん。ディルには、いらないものを引き取ってもらうだけだから。」

青山くんは、幻覚を解いたのにも関わらず優しい笑顔を私に見せてくれた。

「でも。」

言い淀む私にの頬に、青山くんは触れた。そして、――私を安心させる為なのだろうか、そこを優しく撫でた。

「それは俺には必要のないもの、だから。」

切ないような、晴れやかなような、色々な感情の入り混じった笑顔は、私にそれ以上の反論を言わせなかった。




「色々と、ありがとうございました。朝ご飯までごちそうになってしまってすみませんでした。」

翌朝、私は離れの玄関で拓夫さんにお礼を言った。

「こちらこそ。悪魔に許してもらえて助かったよ。」

拓夫さんはアザリ君に、以前のことを謝った。
アザリ君は、封印され2年間閉じ込められていたことは覚えていたものの、拓夫さんを許した。そればかりか、サーニャたんの幻覚の術のやり直しをしてもいいとまで言った。

きっとアザリ君は、自分の失敗をずっと悔いていのだろう。

姿は大人へと変化し、目つきや喋り方も変わってしまったけれど、悪魔のくせに妙に真面目なところは変わっていないようだ。
私の知っているアザリ君を感じられて嬉しくなる。


しかし、拓夫さんはアザリ君の申し出を断った。

「例え代償がいらないとしても、このままでいい。サーニャは、この姿のままで、いいんだ。そのままのサーニャを俺は愛しているから。」

そう言って、照れたように隣を見て笑った拓夫さんは、とても幸せそうだった。




「拓夫さん、サーニャたん、お元気で。お幸せに。」

不在の拓夫さんの祖父母にも、伝言でお礼を伝えてもらうようにお願いした後、車に乗り込んだ。

一緒に食事をした時、拓夫さんの祖父母はディルを見ても特に何も言わなかった。
見えてはいないものの、サーニャたんをお嫁さんのように扱っていたので、羽が生えた友人くらいでは驚きもしなかったのかもしれない。


「拓夫さん、幸せそうだった。」

「そうだね。」

私の独り言のような呟きに、そう返事をしたのは青山くんだった。


「お嬢ちゃん、アタシが、アザリシェルムを逃げないように見張っててあげるから、手錠外したら?山道、それじゃあ運転出来ないでしょう。」

ディルは青山くんの部屋で見返りをもらう約束をしたようで、一緒に車に乗ってきていた。
もちろん、手順で繋がれたアザリ君も一緒なので四人でのドライブになる。

「お願いします。」

私はアザリ君から手錠を外し、車を走らせた。
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