初恋ビギナー

トモハシ

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初恋ビギナー

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 会社から帰り、我が家の郵便受けのダイヤル・ロックを解く事に、多少なりとも心を躍らせている自分に気づいたのは、二十五歳を越えてからではないか、と而立(じりつ)手前の二十九歳の西条(さいじょう)慎(しん)二(じ)は、実際にロックを施錠している最中に顧慮してみた。またそんな感慨に突然襲われた理由は、夜空に浮かぶ雲がかった艶っぽい月輪(がちりん)のせいではなく、単に日頃から溜まった疲労が原因である、という事も同時に理解して。
 とはいえ、どうして二十五歳からなのか。
 それは当時の社内検診の際、ブドウ糖負荷テストの空腹時の血糖値が120mg/dlと判定され、糖尿病予備軍と診断された、成人式よりリアルに大人の仲間入り感を果たした年齢だから、だったからか? とはいえ、どうしてそれが理由で郵便受けを開ける事に妙な期待をするようになったか。
 西条は無駄に思案する。
 それは大人になったイコール自分に見切りをつけ始めたから。あ、俺ってこの辺りの人間なのね、と安手のニヒリズムにも似たアイデンティティの確立。自分には最早あまり期待できる可能性はない。だから己の内に待望するのではなく、外部で起こりうる身の回りの当て所もない些細な事柄に、意味不明なトキメキを抱くようになった西条慎二・二十九歳、加齢臭が気になるお年頃がいる。
「例えば音信不通だった昔の女友達から、何の前触れもなく携帯電話にメールが来るとかさ」
 軽く斜に構えて独言。つまり、郵便受けの中に俺の思惑外の何らかの届け物が紛れ込んでいるのではないか。しかもそれは俺をエンターテインメントしてくれる、励ましにも癒しにも似たアトラクティブなブツなのではないか! という西条自らに都合の良い、無根拠かつ淡い他力本願的嘱望。
 が、どうやらハガキや手紙の類いはない。メール便らしき包み物もない。入っているのはチラシとポケット・ティッシュのみ。それらを一応大事そうに抱えて西条は階段を上り始めた。たどり着くべき場所は205号室。我が家と言っても賃貸のマンションで一人暮らし。その実、親の経営しているマンションの一室を借りて生活しているのである。未だに生まれ育った地元の近辺にはびこりながら、親のスネをかじりながら。
 ガチャリ。
 ドアを開けると自動的に部屋の明かりが点くシステム。オート・ロックの設備がないわりに、無駄な部分で金をかけているよな、と西条は時々思う。ならばついでにドアを開けた際、「お帰りなさい、ご主人様」とメイドの撫でるような声で迎え入れてくれるサービスも付けてほしいものだ。これまた独身貴族を切なくも謳歌している西条のAKB的な発想が萌える。
 西条はがさつにアタッシュ・ケースをテーブルに置くと、郵便受けから持ってきた紙類をチェックし始めた。ピザ屋の期間限定海鮮ピッツアのお知らせチラシ、パチンコ店のグランド・オープンのご報告チラシ、近隣のスーパーマーケットのセールのチラシ、出会い系サイトの淫靡(いんび)な誘惑の広告ティッシュ等々、毎日届かれている馴染みの一群。何の変哲もない、何の異常もない色彩豊かなカラープリント。それらは一寸の狂いもないほど、毎度同じ形式で近隣に頒布(はんぷ)されている。
〈よくもまあ、何の変化もなく〉
 不可解な思いにとらわれる西条慎二・二十九歳。さらに、
「サッカー日本代表メンバー発表並みのビッグ・サプライズってのは、そうそうないのかなあ」
 チラシの一団をテーブルに広げながら、独り言を吐き捨て、勝手に溜飲を下げる。いちいち何かに期待するのは疲れを助長させる、と溜め息交じりに暮れながら。
「ん?」
 チラシのそれらを握りつぶしてゴミ箱に捨てようとしている途中、その中に日々の見慣れない一枚が見受けられた。地元の景観を壊すな! 鳴海沢(なるみざわ)公園の廃園撤去及び、高層マンション建設に絶対反対! と題されたそれが。つまりは、公園を潰して新築のマンションを建てる事への反対を促すビラなのだが、西条はそれの右下隅に記されている名前に、何やら喉に小骨が引っかかる感触を覚えた。
 
 ~よろしかったら反対運動への署名及び参加にご協力ください
      連絡先・090-××××-××××
                                           代表・服部 優子~

「…………」
 しばらく黙ってビラに目線を向ける西条。
〈鳴海沢公園に服部(はっとり)優子(ゆうこ)……妙にしっくりと符号が合うな〉
 西条はビラを片手に、冷蔵庫から缶ビールを取り出すと、ゆっくりとそれを口に含み始めた。いつもより苦味が薄い。不意にそう感じた。
「何でもない」
 その呟きもまた不意の産物だった。
〈何でもない、か〉
 反芻し連鎖するその思いもやはり同じく。
                    *
 土曜日。空は曇天。
「いや、やや晴れ気味だろう」
 爪楊枝を片手に、舌打ちしながら、西条は言う。
 テーブルの上にはスープのみを残したカップ・ラーメン。西条の休日のいつものブランチ。生めんタイプのカップ・ラーメンだけに、シコシコとした弾力があった具材の一群。その中にあったホウレン草が歯に挟まり、西条はそれを取り除いたのだが、その後も無聊に爪楊枝をスルメのようにかじっている。
 一昨日の夜に見たマンション建設反対のビラ。昨日はそれが気にかかり、仕事が手につかなかった、という程ではないが、退社後の週末恒例の飲みの誘いは珍しく断った。付き合っている彼女がいるわけでもないのに。特に予定があるわけでもないのに。
〈明日、晴れたら電話して……みようかなあ〉
 妙な条件を自分に課す西条。
〈晴れなかったら、家でゴロゴロしながらナンプレか数独でもしてよう〉
 たいして気にする事でもないだろう、と決め込んで寝酒をあおった昨晩から約十時間睡眠後の午後一時。空は全天灰一色。どんより立体感のある、ねずみ色の綿アメ型の雲海をして、むしろ雨に転じそうな勢いの天候。間違いなく晴れには見えない。にも関わらず心の内で煮え切らない妥協よろしく、
〈いやあ、何かギリギリ晴れているからなあ。だったら、昨日の俺の約束は裏切れないからなあ〉
 といちいち無駄な言い訳を自分にしながら電話を手にする、西条慎二・二十九歳のアンニュイな初秋の午後。
 さて、と一息つきダイヤルをプッシュしようとする……が、その指は止まる。ふと我に返る。俺は何のために電話する、と。今さらながらの逡巡。
〈つまりはキーワードなんだよなあ。服部優子に鳴海沢公園〉
 それに、
「何でもない」
 とボソリと一言。
 普段の生活の上では、何の端緒もない期待を手前勝手に、言わば受動的に待っているだけだった自分。だが、今度は自らが率先していつもの生活パターンにはなかった試みをしようとしている。それはマンション建設反対に参加する云々ではない。電話をかける、ただそれだけの行為に際して、西条はビッグ・サプラーイズ! と感じているのである。
「何でもない、何でもない。そうか、何でもない、ことなんだよな」
 西条はブツブツと独り言を続けながら、止まっていたその指を電話の子機の上で踊らせ始めた。その指の舞いはオスカー・ピーターソンばりの速弾きのよう。
「あ、ああ、もしもし」
 三回目のコールで電話の相手は出た。予想以上に早く電話を取られたので、西条は多少慌ててしまった。そして、当時も電話、いや、ポケベルの返事を返すのは早い奴だったよな、と俄かノスタルジィに見舞われた。
                    *
「びっくりしたわよ、本当に」
 彼女はまるでエンゲージ・リングを手渡されたかのようなリアクションで西条の、偶然ってあるもんだなあ、の台詞に応じた。また西条は、アールグレイが放つ柑橘系の芳香は、それを口に含む者を凛として引き立たせる。そのシチュエーションが純喫茶なら尚更。そう勝手に想像してみた。
「西条慎二って名前を聞いた時は。え? って思って。中学時代の同級生だった西条君なのって。そうしたら本当にそうなんだもん。びっくりって感じ。ホント、偶然の再会ってあるのね。そういえば電話の時はさ、俺のこと覚えてたって、私に聞いたけどさ、西条君こそ本当は私のこと覚えていてくれたの?」
 西条とテーブルを挟み向き合う彼女、服部優子は、屈託なき笑顔でさらに語りかける。
〈服部はコーヒーじゃなくて紅茶派だったんだ〉
 西条は服部の問いとは絡まない事を思案しつつも、
「覚えていたって。ゴザル、ゴザルのハットリ君、じゃなくてハットリさんなんだから」
 忍者ハットリくんの口癖である『ゴザル』が中学時代のあだ名になっていた服部優子。
「もう、そんな事が覚えていた理由なの。子供っぽいわねえ」
 少し不機嫌そうに顔をしかめる。だが、その豊かな表情を見ると、彼女の方がよっぽど幼い、と西条は掛け値なしで思う。一方で仏頂面をしながらも、アールグレイのアイス・ティー・セットに付いてきたアップル・パイを、ナイフを使わずフォークで器用に切り取り口に運ぶ服部。
〈三十も近いというのに、マックで雑談する女子校生みたいな喋り方。それに大げさなジェスチャー。変わっていない、というか成長してないというか。こういう娘だったんだよな〉
 まるで父親目線の見方だな。一瞬西条は自分がオヤジ化した錯覚に襲われた。
 電話をかけた翌日の日曜日、つまり今日。西条は服部と会う約束をした。当初は、服部優子の家にお呼ばれでは? と密かに西条は期待したが、待ち合わせ場所は段取り良く服部が指定してしまった。地元では有名な老舗の純喫茶店。場所は中学校の通学路に則している。何やら敷居が高くて中学時代は入れなかったが(というより中学生は入店できないのだが)、いつか一緒に行きたいね、と服部と口約束を交わした気がする、とかなり希望的観測かつ曖昧な記憶にすがる西条慎二、齢二十九歳の、普段は飲まないコーヒーの苦味をこらえて飲んでいる姿がここにあった。
〈一度だけだったからな。いや、一度だけだったからこそ逆に鮮明に覚えているものではないか。じゃあ、やっぱりそんな約束をしたという事にしとくか。その方がドラマな感じがして締りが良い〉
 西条は自己満足的帰結に陥りつつも器用に話す。
「いやいや、しっかりと覚えていたって。人生つらい日には中学の卒業アルバムに写った服部の姿を見て何度癒されたことか」
「相変わらず心のこもってない台詞を言うわね。それに何かストーカーちっくで怖いんですけど」
「あ、やっぱりあんまり巧くないヨイショだったか」
 服部は大きく溜め息を吐き、
「ふう、軽口はあの頃と一緒。本当に変わってないな」
「変わっていないのは服部の方だよ。中学の時とノリがまったく遜色がない」
「それはまだまだ若々しいという捉え方で良いのかしら?」
 アイス・ティーのストローをくわえながら、澄ました顔で服部は言う。
「子供っぽいって事だよ」
「詰まる所は若いってことね。そう前向きに解釈させてもらうわ」
 イタズラっぽく笑う服部。目じりに小じわが見え隠れしたが、その懐かしい笑顔には、西条が覚えていた当時の面影が深く残っていた。今、口に含んでいるアンティグア・コーヒーの後味よりも深く。そして、酸っぱく。
「でも何年振りくらいかな、会うの。西条君、クラス会とか一度も来なかったから」
「中学卒業してからすぐに、親父の勝手な仕事の都合で、地元からつかず離れずの、中途半端な距離に引っ越しちゃったからさ。そっちとは疎遠になっちまって。ちょっとは集まりの事とか聞いていたんだけど、都合もなかなか合わなくてさ。だから実際、中学卒業以来と言ってもいいんじゃないかな」
「じゃあ、本当に今回は邂逅(かいこう)ってやつね」
「カイコウ? そうだな。カイコウだな」
 服部の言った台詞の意味も分からないまま、西条は一人満足そうに頷いた。
「それにしても偶然の再会より驚きなのは、西条君がマンション建設の反対に関心があったってこと」
「へ?」
「え? だって……」
「あ! そうそう」
 西条は刹那、キョトンとした表情を見せたが、一度咳払いをすると、
「うん、いや俺もね、街の景観を壊しね、やたらとマンションが乱立するのはどうかと思ってさ。ベッド・タウン化ってやつ。それはそれで地元の良さを損なうみたいな」
 ウチの両親もマンション経営に手を出しているけどね。それが原因で中途半端な引っ越しをかましたんだけどね、と内心秘めつつ口上した。
「そうなのよ。新しく変わった市長が政令指定都市を目指しているから、都市開発に躍起になってどんどん緑地スペースとか運動場の敷地とかを、建物で埋めていっているのよ。規定人口とか都市的機能がどうとかが政令指定都市の要件にあるらしいけど、それにしたって公共施設を潰してまでやる事かしら。今じゃ地元じゃ数少ない公園よ」
「だよな。でも、市に対してそんな苦言を漏らす連中がいることはいるんじゃないの」
「まあ、いない事もないけど、今度の市長って意外と雇用問題の方にも力を入れててさ。市に色々な卸とか小売企業なんかを誘致したのよね。それで就業率を上げたって評価があって賛否両論な感じなの。本当はその実、市全体の第一次産業の就業者比率を10%以下にしたいって目論見があったんだけど。これも政令指定都市に絡んでくる要件らしくてさ」
「はあ、難しい事よく知っているな。さすがは代表だ」
「ううん、私はそんなに詳しくないの。あ、そうそう。実は木内さんもマンション建設反対に参加してくれているんだ」
「木内さん?」
「あ、ごめん。えーと、大友さん。大友(おおとも)由(ゆ)梨(り)絵(え)さんよ。中学の時に生徒会長をした事もあった同級生の大友さん」
「大友? 何か二人ぐらいそんな名前の女子がいた気がしたけど。ああ、頭の良い方の大友な。胸のデカい方の大友じゃなく」
「あのね、何なのよ、その覚え方。セクハラかつ女性蔑視ぃぃ!」
 服部は舌を出しながら、語尾を延ばした間の抜けた口調で言った。西条は鼻で一笑すると、
「まあまあ。それで何で大友が木内さん、なんだ?」
「あ、大友さんさ、結婚したから木内って名字に変わったの。それで木内さんなわけ。その木内さんこと大友さんから、色々と市の市政方針とか政令指定都市のウンチクとかを聞いたの」
「なるほど。ふうん、あいつ結婚したのか」
 西条は眉を吊り上げると軽く舌打ちし、コーヒーに手を伸ばした。
「そういえば服部はどうなの?」
「何が?」
 西条は紙の濡れおしぼりで口を拭うと、煙草を取り出そうとした。
「いや、結婚とか」
「結婚、ね。実は一度失敗しちゃっているんだ」
 口に運んだ煙草に火を点けようとした西条の指が一瞬止まった。だが、すぐに火を灯すと、
「ほう」
 と気色を変える様子もなく、淡々と返した。
「驚いた?」
 やや上目目線で西条の様子を窺うように尋ねる服部。
「まあ、多少は」
 と西条は答えると、決まりの悪さを感じてか、薄味な苦笑いを浮かべ、火の点いた煙草を口から離し、一度もそれを吸わないまま、灰皿に押し付けてしまった。
「西条君はどうなの。ご結婚は?」
「俺はずっと一人さ」
「本当に? 中学の時はモテてたじゃない」
 モテてた、か。西条は服部が発した過去形のその響きを特に拒む事なく、
「そうそう。そんな余裕があるから、あえて結婚なんかしないの」
 とうそぶいて見せた。
「でも取りあえずは、三十路前にしてお互い負け組ってやつじゃない?」
 ニヤっと笑語する服部。
「そりゃ女にだけ当てはまる台詞。男は仕事に逃げ込めるから」
「また女性差別的な発言。女だって仕事があります。逃げ込むって言ったら語弊はあるけど」
 店の駐車場に止まろうとした車のフロント・ライトが、ガラス窓越しに服部の横顔を射した。その時、彼女の唇がグロスがかっている事に西条は気づいた。
〈考えてみれば十何年も経っているんだな〉
 隣席から漂うカモミールの香りが、おもむろに西条の鼻につく。
「それにマンション建設の反対運動もあるから今は忙しいし」
 声を張って服部がそう言うと、西条は所在無さげに指をテーブルに打ちつけながらリズムを取って、
「でも、どんなもんなんだろうね。街並みが変わっていくのは発展していくってわけでもあるし。諸行無常じゃないけど、何かを失って、何かを得るってのは、仕方ない事なんじゃないかな。市だって別に嫌がらせで公園をぶっ潰すわけではないだろ。一応は良かれと思っての行動なわけじゃん。それにニーズがあるからそういう事を……」
 やや早口の喋り。またその声のトーンは心なしか尖って聞こえる。
「ちょっと、なあに。さっきと言っている事が違うじゃない。西条君はマンション建設反対じゃないわけ?」
 少し苛立ちながら、怪訝そうな表情を浮かべる服部。西条は打ちつけていた指の動きを止めると、
「あ、いやいや、反対だよ、反対。だからここにいるんじゃん。ただそういう解釈もあるんじゃないかなあ、とちょろっと思っただけ」
「確かに街の振興は大切だけど、一方でゆとりというのも大事な気がするの。ただノスタルジィに浸りたいからとか、古いものを残し続けることが手放しで正しいとかじゃなく。急ぎすぎてあくせくと街を開発し、埋め尽くしていくということが、景観を損ねる云々だけではなく、私たちの心の隙間、これは良い意味での隙間ね。余裕とか、さっき言ったゆとりとかの心の隙間のこと。そういったメンタルな部分での意味合いもあって、私はマンション建設にNOを突き出しているの」
 ゆとりという名の心の隙間、か。西条は不意に得心した。
〈言われてみれば不況になってからは、バブルの残滓の建設予定だった空き地とかも、コインパーキングに様変わりしたし、近所に並ぶ店はフランチャイズ系のものばかりだ。一方で郊外ではマンション建設ラッシュで、日照権がどーのこーの、地域格差がどーのこーの状態だし。はたして地元が振興しているのかしてないのかは迷うが、好況にしろ不況にしろ、景気が安定してない時って街そのものが忙しく動くもんなんだな〉
 西条は服部に向かって指差すと、
「へえ、何か哲学が入っている気がする。ちょっとしたウーマン・リブってやつ」
「ウーマン・リブの使い方が全然違うんだけど。運動は運動でもウーマン・リブは女性解放運動の事で、フェミニズムとかジェンダーとか……」
 大友由梨絵からの影響か、饒舌に、そして、精力的に服部は自らの口で自らの言葉を、おカタく言えば自身の信念を語る。だが、何処か疲れた表情を呈しながら、それらを述べているように西条は感じられた。
 いつの間にか外の景色からは、昨日より続く曇天により、雨傘を頭上に飾る人々の姿が見受けられ始めた。
                    *
 驟雨(しゅうう)。その後、嘘のように空は晴れ上がり、ビードロを溶かして延ばしたような茜色の陽が、陰影を刻む雲を塗り上げ、また街を染め上げていた。
 夕立後に吹く潤んだ風が、西条の頬を微かに涼める。水溜りが出来るほどではない、夕日が鈍く反射する濡れたアスファルト。その具合がまた西条の内を涼める。
 そして、ぽつねんと歩いている。
 雨上がりを機に喫茶店を出た西条と服部。また連絡ちょうだいね、と服部は言い残し、西条と別れた。
〈また連絡をする、か。だけど一体何を理由に連絡すればいいのだろう? 本気でマンション建設反対運動に参加する意志を固めました、とでものたうちまわるか〉
 自嘲気味の西条。一方足取りは自然と鳴海沢公園に向かっていた。
〈別に俺と服部は付き合っていたわけじゃないけど、ただ……アイツは俺に気があったんじゃないかなあ、と〉
 その考え事とは別に、西条の足は思い出ナビによって、勝手に目的地までたどり着いた。公衆トイレ独自の鈍いアンモニア臭が漂うエントランス付近。その馨しい香りを身に感じる事が、鳴海沢公園に入るための新旧脈々と続く通過儀礼。その懐かしい匂いはあの頃と相変わらず。
〈ホント、あの頃が一番モテてたよなあ〉
 その香りをして西条曰く、本人が輝かしかった中学時代を追想させる。
〈結局、ガキの頃ってのは勉強が出来る出来ないとかより、ちょっと不良っぽいとか、スポーツができるとかの方が、男子にとっては異性を惹きつかせる要素は高かったわけだ。俺もサッカー部なんぞに所属し、なまじキャプテンなんてのをやっていたから、まあイイ感じに女にはモテてたよなあ。今考えれば中学生にしてちょっとしたハーレム気分を味わっていたんじゃいかって思うほど。ホント、贅沢な思いをさせてもらいましたって感じ。つーか、大友由梨絵だよ、大友由梨絵。思い出したよ。大友のファースト・キスを奪ったのだって俺だぞ。胸だって軽く揉んだのに。アイツ、俺の許可なく勝手に結婚しやがってよお〉
 公園のベンチに座りながら、何やら神妙な面持ちで考え込んだ様子を見せてはいるが、その思索は限りなく低次元。とはいえ西条にとっては重要な記憶の懸案事項。
〈でもまあ、当時は別に女子にモテてたどうこうだけが、肝心ってわけじゃなかった。何てたってあん時は夢とやらにも愚直に向かって生きていたし。一時は本気でサッカー選手を目指していたからな。朝練とかも必死こいてやったり、地元のフットボール・クラブとかにも通っていたんだ。いやあ熱かったなあ、俺。でも、楽しかったよな〉
 西条は靴の踵を地面に軽く押し付けてみた。雨でぬかるんだ芝の地面は可塑性を帯び容易に歪みを作る。
「はあ、認めたくねえなあ。中学時代が俺の人生においての全盛期だったってことは」
 頭をポリポリと掻きながら大きくうな垂れる西条。雨が上がったばかりの公園内ゆえ周りには人の姿がなく、ミゼラブルに浸る西条の様子を訝しがる気配はない。
「…………」
 顔を上げ我に返る西条。手持ち無沙汰に周りを見回してみる。禿げた桜の木や、雨に濡れた草紅葉。漕いだら軋む音が聞こえてきそうな鎖が錆び付いたブランコ。中途半端な高角度のすべり台。地面に半分埋もれている渡りタイヤの遊具。それらは寸分たがわずあの頃と変わらない。そこにおける位置も意味も価値も。いっその事全部ぶっ壊してしまった方が良いんじゃない? と西条はどうしてか苛立ちながら思った。
〈実際ムリだろ、反対運動を起こしたところで。アイツの話を聞く分には運動そのものの規模も小さそうだし、今度の市長はイケイケのワンマン実践主義者だし。所詮同好会レベルでシュプレヒコールを挙げても、行政執行は免れんだろ。現実的に考えてもマンションは建っちまうよ〉
 焦心の中にも、幾分冷静さをもって、考えを巡らせる西条。だが、無駄と分かっていながら、鳴海沢公園に来てしまった自分。
「何しにここに来たんだ、俺」
 やるせない溜め息。ベンチの背もたれに片肘を掛け、足を組みながら遠い目をしてみる。
〈そうか。ちょいとした確認をしに来たんだ〉
 目をつむりほぐすように軽く首を回す。
〈一度だけ、そう、中学の時に一度だけ俺は服部とデートをした。いや、デートと呼べるかどうか。兎に角、あの頃は調子に乗っていたから色んな女の子に声をかけまくっていて、服部もその一環だったよな。断られるってのはまずなかった。やっぱあの頃はモテてたんだなあ。まあ、その後は方々から恨みはかっていたけど。その点、服部はサバサバしていたな。というより割り切っていたというか。一緒にいる時は、さも無邪気にはしゃいでいる感じだったのに、その実、私は軽薄な人はキラいだから、何て言うんだもんな。ま、それは後から人づてに聞いた話だったけど。それって俺の事じゃないって思ったら、実際俺の事みたいで二度目の付き合いはなかったし。それにしても中学生がケーハクなんて言葉使うかね。そうだよ。服部って天真爛漫って感じの女みたいだった気がしたけど、結構大人な部分もあったんだな。無垢な笑顔の裏で実は……みたいな。いや、女ってのはみんなそんな生き物だったか。やっぱ女って怖い〉
 服部優子に対する記憶の軌道修正。ひいては西条の一般的女性観の再認識。とはいえ気に留めているのは前者。子供っぽさが印象に強かった服部優子。しかし、服部の離婚の事実一つにして、何やら西条の中の服部への意識が変わってきている。それは男性側にとって都合の良かった、イコン化した女性像の軋みに似ているかも知れない。今までファンだった清廉潔白純情アイドルが、実は煙草を吸っていた事実を露呈されて、軽い目眩と失望を覚えるマニアな心境にも。
 だが、それとは別に西条の中で存在する、服部に対する打算を排した思いへの拘泥。
「何でもない」
 霞むような西条の呟き。だが、その一言に服部へのこだわりが収斂していた。その台詞は今も強く残っている。年を経るにつれ、歳を重ねるにつれ、思い出は、記憶は、灯のようにおぼろげになっていくのに。幾度となく様々な他人が入れ替わり、その中で幾度となく自分に妥協したり、自分が気に入っていた自らの善い所を捨て去ったりもしてきたのに。それにも関わらず、西条は鮮明に、そして、大切に「何でもない」を覚えている。
〈ケーハクだった俺は、手を出した女の子にはすぐ簡単に、好きだからさ、なんて言ってたけど、服部に対してだけは……〉
 一度だけの服部優子とのデート。夕暮れ時、たどり着いた場所は鳴海沢公園。そこで最後には気を持たせるような台詞を吐こうと思ったのだが、出てきた言葉は、
『実はさ……』
 おぼつかない口調で話しかける西条の顔を覗きこむ服部。そして、しばしの沈黙の後、
『何でもない』
 と西条の一言。
〈甘酸っぱい、というよりも青酸っぱいなあ、おい。何の面白みもない台詞だった。シャイぶっていただけだったじゃないか。あの時は何を恥ずかしがっていたんだ。それとも妙な夢想でもしていた……〉
 雨後のベンチ。座る前に軽く服の袖で、濡れたベンチを拭いたのだが、ジワリとお尻が水で染み始めている事に西条は気づいた。
〈いや、夢想は今も変わらないか。服部は俺とデートした思い出の公園を守るために、実はマンション建設反対をしているんだ、と勝手に考えているんだからな。こりゃ夢想というよりも誇大妄想の域に達しているか〉
 それはありえないことだよ、と一応は冷静に否定してみる西条。
 そして、
〈という事は、やたらと鳴海沢公園に対して意味深に捉えている俺はつまり、あの時はシャイぶっていたと思っていた俺はつまり、つまり、つまり、服部が俺に惚れていたというのではなくて、俺が服部を好きだったってことか?〉
 中学当時は調子に乗りすぎ、女子の方から恋心が勝手に寄ってきて、それらの想いをぞんざいに扱っていた西条。恋とは女子が一方的にすることであって、あくまで俺は受身だから、という西条のある種責任回避のスタンス。だが、それは西条自身の想いもおろそかにしていた事を意味する。自分自身の想いに鈍くなる。絣ガラスを通して見たような、ひどく曖昧で玉虫色な心情というそれに。
 つまり、
〈気づかなかったんだな、俺って。服部を好きだったってことに。知らなかったんだな、俺って。恋するってことを。この歳になるまで。今の今まで〉
 んなアホな、と内心ノリツッコミしてみる西条。だが、白いTシャツに染みたカレーうどんの汁よりも、その想いは頑固にこびり付き、消すことができない。
「一度だけのデート、何でもない、鳴海沢公園、服部優子……」
 自らの頭に巡るキーワードを諳んじてみせる西条。
〈だから俺はそれらの言葉を、自分の都合の良いように並べていたのか。それにしたって俺との思い出を残すために、公園を守るなんてのは乙女チックな発想にも程がある〉
 苦笑いしつつ西条は煙草を取り出した。
「やっぱ疲れてんのかなあ」
 立ち上る副流煙が霞みのように頼りなく揺れる。また、先ほどまで公園に広がっていた夕映えは、徐々に陰りを見せ始めていた。
〈疲れってか、ルーティン化した仕事に生活。言っちまえば人生そのものがパターン化してきているからなあ。つまりは変わらないってことか。そいつが原因か、もしかして。結局、両親のすねをかじるような形で、ほとんど地元のような場所で暮らしてるし。仕事場が近いから引っ越す理由もないし。その仕事もまあまあな内容だし。そうなんだよな。なあなあな感じで今まで来ちゃってるから、何かキッカケがあってどうのこうのってのが……かと言って脱サラする勇気はないし、というかそいつをする事の意味が見出せないし。ま、両親のマンション経営を引き継ぐってのもありか。よりいっそう地元にはびこってさ……て、そんな事考えてるから変われねえっての。逆にもっと疲れるわ〉
 半生を反省。青臭い西条の自問自答は、やや自虐的な趣を帯びてきた。可もなく不可もない人生。最大公約数の範疇の人間はそうやって生きてきてるし、生きていくんだよなあ、俺も含めて……と、そのような達観で三十路前の、ナイーブな揺れるオトコ心に、西条はケジメを着けようとした。だが、
〈そうだよ。三十なんだよな、もうすぐ。三十歳になったら自分の顔に責任を持てって言うけど、アイツの顔、何かやつれていた感じがするな〉
 不意に西条は、活き活きと熱弁を振るう服部優子が、その表情の裏に見せた、複雑な暗部を思い出した。時折覗かせた精気の薄い落ち窪んだ瞳。あどけないエクボに見え隠れする、その笑顔には反した翳りあるこけた頬。それらは果たして西条の深読みだったか。それとも西条自身の負の心情がシンクロして、そのように見えてしまったのか。
〈マンション建設の反対は心の余裕がどうのこうのって言ってたけど、勝手に変わっていく、そう、自分をおいて勝手に変わっていくこの地元の街に嫉妬していたんじゃないか。恐れているとか。自分が取り残される事への寂しさ、焦り、空しさ。そんな感情がアイツを急き立てて、インセンティブよろしく運動に駆り出した。街が変わることへの苛立ち。結局、離婚した理由だって自分が変われなかったから……いや、考えすぎにも程があるな。こいつは俺の詮索すべき事じゃない。ぶしつけな妄想だ〉
 西条にとっては珍しく倫理的な判断をもって思考停止をした。
「何かネガティブな発想だよなあ。だったら……」
 その接続詞に、
〈俺とのデートの思い出があるから、この公園を残そうとしているんだろ? と決めた方がロマンチックなんじゃないの〉
 この想像の台詞、口に出して言ってみたら、おそらく語尾のイントネーションは上がっていた。そのような我意的な前向き発想をして、煙草の煙をフィリップ・マーロウばりに吐いてみせる西条慎二・二十九歳、身悶え悩める年頃。
 相変わらず公園の周りには誰もいない。既に陽は完全に西の彼方へ沈み、もやっとした夜が街を支配し始めた。たっぷり水を含んだ風が肌寒さすら覚えさせる。
 一方、第三惑星における唯一の衛星だけは、その実体の半身にして、夜空にはびこる雲海を貫き、独り強く輝赫(きかく)している。西条はその贅沢な明かりを、大きく背伸びをして、体全体で浴びようと思った。
                    *
 一週間後。
「俺もやってみるよ」
 その一言は、もう一度服部優子と会うためにかこつけた台詞だったのか。それとも本当に消えゆく公園の事を憂い、マンション建設反対を示す証左だったのか。真意は発言をした西条本人にも、的確には掴めていなかった。
 ただ、
〈思い出の公園を守りたがっているのは、実は俺の方かな〉
 と自らの純な心意気に、ナルシズムに近い感心を勝手に膨らましている、西条慎二、齢二十九歳の夢見がちな半分オヤジがいた。
 兎にも角にも、西条は鳴海沢公園の廃園撤去反対運動に加わるアンガージュマンを、高々とマニフェストしたのである。
 またその行為に派生して今、西条は服部と歩いている。その訳は、
「行ってみようか」
 と服部が笑って言った一言が示した先が、鳴海沢公園であるから。同じ目的を持った者同士、同じ歩幅の同じ速度で。そして、手をつないでも不思議ではない距離で、互いは歩く。
 空は蒼く、陽は緩い。
「ありがとう」
 不意に服部が呟いた。
「何が?」
「反対運動に参加してくれて」
「よせよ。礼を言われる筋合いはないよ。俺がそう決めたんだから。ただ……」
「ただ?」
 一瞬西条は伏し目がちにして躊躇ったが、何処か心配そうに聞き返してきた、服部のその表情が、西条の迷いを取り除かせた。
「おそらく無理だろうな」
 その台詞の後にすぐ、公園は潰されてしまう、と西条は付け加えようとしたのだが、
「そうね。多分無理でしょうね」
 と服部が勘も鋭く即答してしまった。意外な返事。西条は思った。だが、直に服部の顔を覗く事はなかった。ただ一瞥をしてみた。その刹那に垣間見られた服部の表情。そこにはやつれた色彩の中に、どうしてか晴れた気色も窺えた。
〈そうか。服部は何か変わるキッカケが掴みたかったんだな。それがたまたま鳴海沢公園だったのか〉
 自発的に何か行動を起こしてみる。始まりはそれでいい。中身は二の次。人に迷惑がかからない程度なら、その行動の質に是非は問わない。それを以ってして自らの生活の、風呂敷を大きく広げて言ってみれば、人生のターニング・ポイントとして捉えてみてもいいのではないか。つまり、生き方を変えていくというキッカケとして。西条は前向きに慮る。
〈そうだったんだ。いや、俺もそうだったんだ。俺もちょこちょこっとでいいから、何かをしたかったんだ。人任せ、ではなく自分から動き出して〉
 思わず顔を崩す西条。そんな西条の表情を察して服部は、
「どうかした?」
「いや、別に」
「何か一人で楽しそうだけど」
「そうか? 気のせいだろ」
「ふうん」
 二人は暫時沈黙した。両者は相変わらず付かず離れずのまま平行に歩き続ける。
 やがて鳴海沢公園にたどり着いた西条と服部。二人は公園の入り口の前で立ち止まる。清々しい天候の下にある、服部曰く心の余裕を促す目前の空き地には、先週とは異なり老若男女問わず多くの訪問者がいた。古びたブランコを楽しそうに漕ぐ少年。砂場で砂団子を作る子供を見守る母親。鉄棒を手すり代わりに一輪車の練習をする少女。イカつい面構えのパグを引きつれ散歩をする老夫婦。そんな風景を服部は微笑みながら、懐かしい瞳をして眺めている。そして、そして、そんな服部の笑顔を西条は横目でチラチラと見ていた。
「でも本当は西条君が一緒にやってくれるとは思っていなくて、実はちょっと驚いているんだ」
 出し抜けに発した服部の台詞。まだ彼女の目線は公園から変えずにいる。
「そうかな。やっぱケーハクな俺には似合わないか行動か」
「軽薄? どうして」
「いや、だって……」
 はにかむような顔で西条は戸惑いを見せたが、
「いや、俺と一度さ、この公園に来た事あったじゃん。覚えている?」
「中学の時でしょ。うん」
「そん時、じゃなくてその後か。確か山本、野球部の山本な。ホクロだらけフェイスの山本。アイツから聞いたんだけど、俺ってケーハクみたいな、つーか、服部はケーハクな男は嫌い、みたいな」
 口をこもらせながら、語尾はカミカミに喋る西条。
「なあに、それ。そんな事言った記憶ないんだけど」
「へ?」
 服部の顔が西条の方に向いた。目を軽く見開いた、オーバーアクション気味の服部の表情に、西条はあの頃の面影を一瞬見た気がした。
「確かに情報大好きのホクロ顔の山本君に、色々と聞かれたりした記憶はあるけど、軽薄な人が嫌いとは言ってないわ。はっきりしない人が嫌いとは言ったけど」
「はっきりしない人?」
 はっきりしない人。さらに西条は頭の中で反芻する。その想定外の言葉に対して。
 西条慎二と服部優子。二人は顔を見合わせた。それは妙な間だった。
「ふ、ふうん」
 ぎこちない冷静さを装い相槌する西条。そして、
〈試金石〉
 だしぬけに西条の脳裏にそんな言葉が浮かんだ。服部は黙って西条を見続ける。その視線が何やら小悪魔的視線に西条には感じた。全てを彼女はお見通し、とも。
〈変わる、という事は自らが動くこと、だったよな〉
 西条はのど仏が動かないくらいに、ゆっくりと唾を飲み込むと、
「なあ、服部」
「なあに?」
 服部はさらに強い瞳で西条を見つめた。
「…………」
 見失った台詞を頭の中で検索する西条。
〈ただ一言でいいんだ。告白として有効なあの台詞を言わないと。き、君の事が、す、す、す……〉
 公園の入り口で立ち止まって、中学時代の淡い思い出の中を泳いでいる二人の男女の間を、邪魔そうに通り抜ける親子連れ。不意に?風(しゅうふう)も二人の男女の間を通り抜けた。
 やがて男は口を開く。
「な、何でもない」
 捻り出すように言った、男のその一言を。すなわち西条のその一言。
〈やっぱ、青酸っぱいわ、俺って〉
 服部の気配を無視して、まだまだ青春してるなあ、と勝手に括ってしまった西条慎二、齢二十九歳、初恋ビギナーがいた。

   

                                    了
   

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