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【第四章】資金調達編
【第六十話】
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ゼフナクトとガンテスは、唖然としていた。
「カイト、本気で言っているのか?」
首を横に振りながら、ゼフナクトが言った。
「本気です。蓮牙山もセトラ村も、人が集まり始めています。資金を調達しなければ、人が集まっても戦うどころか、食べていく事すら出来ません」
面と向かって言うと、ゼフナクトは押し黙った。
資金調達の課題は、ゼフナクトもよく分かっているはずだ。
敵の王国軍なら、税金という財源がある。
しかし、我々は自分たちで銭を産み出さなければならないのだ。
それも、莫大な銭を、である。
「良いのか? 塩を強奪して売りさばいたとなると、正真正銘の【塩賊】になるのだぞ。王国軍に知られれば、その追求はこれまでとは比べ物にならないものになる」
ガンテスは、今まで見たことが無いほど真剣な表情で言った。
「やるべきだと、俺は思います。オトラス王国という腐敗した大国を倒すための戦いなのです。これくらいの覚悟は、持つべきです」
しばらく、頭領の二人は黙っていた。
並べられた太平車をひと目見ようと、兵たちが広場に集まっていた。
大量に積まれた塩を見て、声を上げている者もいる。
沈黙を破ったのは、ガンテスだった。
「ゼフナクト、俺はやろうと思うぞ」
言われたゼフナクトは、考える仕草をしたまま視線だけをガンテスに向けた。
「長い目で見たら、やはり戦費は必要不可欠だ。ここにある塩を売るだけでなく、長期的に銭を産み出す仕組みも必要だろう。それを実現するのに、塩以上のものは無い」
ゼフナクトが、目を閉じて唸った。
「分かった、やろう。しかし、表立ってはやらん。可能な限り王国には察知されないような方法を取ろう。少しでも、時間稼ぎをしなければならない」
ゼフナクトはまだ苦い表情をしていたが、ガンテスは笑っていた。
俺はそんな二人を見ていて、良い組み合わせなのだと改めて感じた。
塩を売る算段は、ゼフナクトが考えることになった。
こういった頭を使うことは、ガンテスは得意ではない。
太平車に積まれた塩は広場に留められ、三日が経った。
「この三日、王国政府に気付かれずに塩を売る方法を考え続けた。しかし、監視が厳しい王国政府から逃れるのは、至難の業だ。そこで、闇の流通に詳しい者に頼むことにした」
ゼフナクトが、ガンテスや俺、重立った将校を集めて言った。
「そうか、あいつに頼むのだな」
ガンテスが言った。
どうやら、知り合いに詳しい者がいるそうだ。
「俺が、直接話を付けに行こう。品物が品物だ。頭領である俺が、直接行った方がいい」
ゼフナクトが立ち上がってそう言うと、ガンテスは頷いた。
「分かった。山寨の留守は任せろ、ゼフナクト」
「お前も一緒に着いてこい、カイト」
不意に名前を呼ばれて、俺は驚いた。
「最初に発案したのは、お前だ。お前も、話に付き合ってもらうぞ、カイト。それに、お前には様々な物を見て、経験して貰わなければならん」
ゼフナクトがどういうつもりなのか、俺にはよく分からなかった。
経験を積ませて、どうするのか。
ふと疑問が湧いたが、あまり気にしない事にした。
「分かりました。お供します」
◆◆◆◆◆
翌朝、俺とゼフナクトは旅人の身なりで馬に乗り、山寨を出立した。
セトラ村から連れてきた自警団は、数日の間蓮牙山へ留まり、ガンテスが調練をすることになった。
時を見てガンテスが判断し、セトラ村へ戻らせるという。
現在、蓮牙山とセトラ村の道中に大規模な王国軍部隊は展開されていないので、行き来は心配無いはずだ。
ゼフナクトが会おうとしている人物は、蓮牙山から南西に二日ほど進んだ先にある、【ガルミド】という街に居るらしい。
その人物は情報屋として、賊徒や闇社会では知られているらしい。
先日の王国軍の輸送隊の情報も、その人物から知らされたのだと、ゼフナクトは教えてくれた。
ゼフナクトはその人物のことを信頼出来ると言っていたので、俺は余計な心配はしない事にした。
山寨を出て二日後、荒野の中にある街が見えてきた。
「あれが【ガルミド】だ、カイト。あまり治安が良くない街だが、俺から離れなければ問題無い」
ガルミドは、他でよくあるような街と違って、城壁に囲まれていなかった。
茶色の荒野に、石造りの建物が寄せ集まっているだけである。
おそらく正式な街ではないのだろう、と俺は思った。
街の中は、程々に荒れていた。
区画整備されていない街並みで統一感も無く、見掛ける人々の格好は小汚いものが多い。
大通りと呼べるような道のわきには、家が無い人達が地べたで生活していた。
ゼフナクトが言う通り、あまり治安が良くなさそうだった。
通りから少し奥まった所にある建物に入った。
周りの建物と同じように、石造りだ。
中には幾つかの卓があり、奥に厨房のようなものが見えた。
棚には酒が多く並べられているので、食堂と酒場が一緒になった店のようだ。
ゼフナクトは、その中の卓に座っている男性に向かった。
「ゼクトア、俺だ」
男は、酒を飲んでいた。
しかし、顔は全く酔っていない。
「なんだ、蓮牙山の頭領様か。珍しい」
「商談がある」
「カイト、本気で言っているのか?」
首を横に振りながら、ゼフナクトが言った。
「本気です。蓮牙山もセトラ村も、人が集まり始めています。資金を調達しなければ、人が集まっても戦うどころか、食べていく事すら出来ません」
面と向かって言うと、ゼフナクトは押し黙った。
資金調達の課題は、ゼフナクトもよく分かっているはずだ。
敵の王国軍なら、税金という財源がある。
しかし、我々は自分たちで銭を産み出さなければならないのだ。
それも、莫大な銭を、である。
「良いのか? 塩を強奪して売りさばいたとなると、正真正銘の【塩賊】になるのだぞ。王国軍に知られれば、その追求はこれまでとは比べ物にならないものになる」
ガンテスは、今まで見たことが無いほど真剣な表情で言った。
「やるべきだと、俺は思います。オトラス王国という腐敗した大国を倒すための戦いなのです。これくらいの覚悟は、持つべきです」
しばらく、頭領の二人は黙っていた。
並べられた太平車をひと目見ようと、兵たちが広場に集まっていた。
大量に積まれた塩を見て、声を上げている者もいる。
沈黙を破ったのは、ガンテスだった。
「ゼフナクト、俺はやろうと思うぞ」
言われたゼフナクトは、考える仕草をしたまま視線だけをガンテスに向けた。
「長い目で見たら、やはり戦費は必要不可欠だ。ここにある塩を売るだけでなく、長期的に銭を産み出す仕組みも必要だろう。それを実現するのに、塩以上のものは無い」
ゼフナクトが、目を閉じて唸った。
「分かった、やろう。しかし、表立ってはやらん。可能な限り王国には察知されないような方法を取ろう。少しでも、時間稼ぎをしなければならない」
ゼフナクトはまだ苦い表情をしていたが、ガンテスは笑っていた。
俺はそんな二人を見ていて、良い組み合わせなのだと改めて感じた。
塩を売る算段は、ゼフナクトが考えることになった。
こういった頭を使うことは、ガンテスは得意ではない。
太平車に積まれた塩は広場に留められ、三日が経った。
「この三日、王国政府に気付かれずに塩を売る方法を考え続けた。しかし、監視が厳しい王国政府から逃れるのは、至難の業だ。そこで、闇の流通に詳しい者に頼むことにした」
ゼフナクトが、ガンテスや俺、重立った将校を集めて言った。
「そうか、あいつに頼むのだな」
ガンテスが言った。
どうやら、知り合いに詳しい者がいるそうだ。
「俺が、直接話を付けに行こう。品物が品物だ。頭領である俺が、直接行った方がいい」
ゼフナクトが立ち上がってそう言うと、ガンテスは頷いた。
「分かった。山寨の留守は任せろ、ゼフナクト」
「お前も一緒に着いてこい、カイト」
不意に名前を呼ばれて、俺は驚いた。
「最初に発案したのは、お前だ。お前も、話に付き合ってもらうぞ、カイト。それに、お前には様々な物を見て、経験して貰わなければならん」
ゼフナクトがどういうつもりなのか、俺にはよく分からなかった。
経験を積ませて、どうするのか。
ふと疑問が湧いたが、あまり気にしない事にした。
「分かりました。お供します」
◆◆◆◆◆
翌朝、俺とゼフナクトは旅人の身なりで馬に乗り、山寨を出立した。
セトラ村から連れてきた自警団は、数日の間蓮牙山へ留まり、ガンテスが調練をすることになった。
時を見てガンテスが判断し、セトラ村へ戻らせるという。
現在、蓮牙山とセトラ村の道中に大規模な王国軍部隊は展開されていないので、行き来は心配無いはずだ。
ゼフナクトが会おうとしている人物は、蓮牙山から南西に二日ほど進んだ先にある、【ガルミド】という街に居るらしい。
その人物は情報屋として、賊徒や闇社会では知られているらしい。
先日の王国軍の輸送隊の情報も、その人物から知らされたのだと、ゼフナクトは教えてくれた。
ゼフナクトはその人物のことを信頼出来ると言っていたので、俺は余計な心配はしない事にした。
山寨を出て二日後、荒野の中にある街が見えてきた。
「あれが【ガルミド】だ、カイト。あまり治安が良くない街だが、俺から離れなければ問題無い」
ガルミドは、他でよくあるような街と違って、城壁に囲まれていなかった。
茶色の荒野に、石造りの建物が寄せ集まっているだけである。
おそらく正式な街ではないのだろう、と俺は思った。
街の中は、程々に荒れていた。
区画整備されていない街並みで統一感も無く、見掛ける人々の格好は小汚いものが多い。
大通りと呼べるような道のわきには、家が無い人達が地べたで生活していた。
ゼフナクトが言う通り、あまり治安が良くなさそうだった。
通りから少し奥まった所にある建物に入った。
周りの建物と同じように、石造りだ。
中には幾つかの卓があり、奥に厨房のようなものが見えた。
棚には酒が多く並べられているので、食堂と酒場が一緒になった店のようだ。
ゼフナクトは、その中の卓に座っている男性に向かった。
「ゼクトア、俺だ」
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