座敷童様と俺

渡辺 佐倉

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 化け物は食わなくても死なない。
 彦三郎の言葉通り、台所に冷蔵庫はあったが中身が何もない。

 化け物は死ななくても、人は食事をしなければ死ぬ。
 本家の親戚は帰り際に現金を少しばかり置いていった。それに、家を出る時に母にも少しばかりおこずかいだと言われて現金を持たされた。

 この年になっておこずかいというのも笑っちゃう話だけれど、おこずかいが似合いそうな座敷童様はこの家から出られない。

「何か、食べたいものはあるか?」

 彦三郎にこの部屋を使えと宛がわれた部屋に荷物をおいて、それから建物の中を一人でざっと見て回った。
 あの札だらけの部屋の雑誌だのなんだのをざっと片付けた後、元々客間であろうソファーの置いてある部屋でゴロゴロしている彦三郎に声をかける。

「あ? そうだな。
あのアイスってやつがまた食ってみたいな」

 妖怪とアイスの組み合わせは、なんていうか意外で少し面白い気がした。

 けれど、面白いと思えたのは屋敷を出て、スマートフォンで近所のスーパーを調べた瞬間までだった。

 このあたりに店舗らしい店舗は無い。
 一番近い店でも片道3キロほどだ。バスは1日数本しかないし、タクシーを呼ぶような金も無い。

 もしかして、このとけやすい時期にアイスを頼んだのは嫌がらせの一種なのだろうかと玄関の前で途方に暮れたところで室内から声が聞こえる。

「納屋に自転車ってやつが置いてある筈だからそれを使え!」

 ところで、兄さんは自転車って乗ったことあるかい? 変な質問だと思った。
 大体の人間が自転車には乗れる。
 大人になって最近乗ってないという人間はいるだろうけれど、乗れない人間は少数派だ。

 それを態々聞くことに違和感があるけれど、それよりも自転車を納屋から出すことに考えが移ってしまう。

 納屋というよりは普通の物置小屋があってその中に、最近買ったように見える自転車が置いてあった。
 あの子供は外に出れないのに当たり前の様にある自転車は少し奇妙だが、それよりもタイヤに空気がきちんと入ってそうなことの方が重要に思えた。

 小さなスーパーへの道は車も人もいない。
 田んぼの間を自転車で走るのは思ったよりも気持ちがいい。今日初めて少しだけ楽しいと思ったところで、今日どころじゃなくて最近楽しいなんて考えていなかったことに気が付いた。
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