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1.そのままの君が好きだよ
1.婚約破棄の本当の理由(2)
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「殿下! 陛下は本当に、わたくし達の婚約破棄をお認めになったのですか?」
「認めるさ。それが我が国の伝統だ。聖女には、聖女にしか出来ないことがあるだろう?」
殿下は淡々とそう口にする。胸がズキズキ痛んだ。
確かにわたくしには病気を治すことも、飢えを満たすこともできない。祈りが神に届くことも、国を護ることも出来ないのかもしれない。
「ですが……」
わたくしにできて、ロサリア様に出来ないことだってある筈だ。そうお伝えしたかったというのに、殿下はわたくしの前に手を広げ、首を大きく横に振った。
「正直僕は、新しい聖女が現れて安心したんだ」
「え……?」
「これで大手を振って君との婚約を破棄できる。――――ディアーナと一緒に居ると、僕は疲れるんだ」
そう言って殿下は大きなため息を吐いた。胸が引き裂かれそうな程に痛い。頭の中が真っ白になった。
殿下は虚ろな瞳でわたくしのことを見つめる。そこには一切の愛情はなく、憎しみにも似た何かが横たわっていた。
「知っているかい? 僕はいつだって、弟や君と比べられてばかりだ。
『あの二人はあんなに優秀なのに。あの二人を見倣え』
――――そう言われ続ける僕の気持ちがディアーナに分かる? 本当に地獄みたいな日々だったよ。
君の側に居ると、僕は責められているような気持ちになるんだ。気持ちが少しも休まらない。辛いばかりだ。
けれど君は、そんな僕の気持ちに気づこうともせず、上ばかり見ている。もっと上に、もっともっと……ってね」
「そ……それは! 殿下の妃に相応しい女性になりたいと思ったからで……」
「そうだろうね。だけど、それが僕にとっては負担だった。このタイミングで聖女が誕生したのは実に幸運だったよ」
そう言って殿下はゆっくりと席を立つ。侍女たちが淹れてくれたお茶が冷めきって、波紋を描いていた。ティーカップに映った殿下の表情があまりにも冷たい。わたくしは絶望的な気持ちのまま、そっと顔を上げた。
「慰謝料は払おう。だけど、君は僕の妃にはなれない。――――もう二度と、僕の前に顔を出さないで欲しい」
そう言って殿下は部屋を後にした。残されたのはわたくし一人。涙で前が見えず、しばらくの間、わたくしはその場を微動だにすることが出来なかった。
「認めるさ。それが我が国の伝統だ。聖女には、聖女にしか出来ないことがあるだろう?」
殿下は淡々とそう口にする。胸がズキズキ痛んだ。
確かにわたくしには病気を治すことも、飢えを満たすこともできない。祈りが神に届くことも、国を護ることも出来ないのかもしれない。
「ですが……」
わたくしにできて、ロサリア様に出来ないことだってある筈だ。そうお伝えしたかったというのに、殿下はわたくしの前に手を広げ、首を大きく横に振った。
「正直僕は、新しい聖女が現れて安心したんだ」
「え……?」
「これで大手を振って君との婚約を破棄できる。――――ディアーナと一緒に居ると、僕は疲れるんだ」
そう言って殿下は大きなため息を吐いた。胸が引き裂かれそうな程に痛い。頭の中が真っ白になった。
殿下は虚ろな瞳でわたくしのことを見つめる。そこには一切の愛情はなく、憎しみにも似た何かが横たわっていた。
「知っているかい? 僕はいつだって、弟や君と比べられてばかりだ。
『あの二人はあんなに優秀なのに。あの二人を見倣え』
――――そう言われ続ける僕の気持ちがディアーナに分かる? 本当に地獄みたいな日々だったよ。
君の側に居ると、僕は責められているような気持ちになるんだ。気持ちが少しも休まらない。辛いばかりだ。
けれど君は、そんな僕の気持ちに気づこうともせず、上ばかり見ている。もっと上に、もっともっと……ってね」
「そ……それは! 殿下の妃に相応しい女性になりたいと思ったからで……」
「そうだろうね。だけど、それが僕にとっては負担だった。このタイミングで聖女が誕生したのは実に幸運だったよ」
そう言って殿下はゆっくりと席を立つ。侍女たちが淹れてくれたお茶が冷めきって、波紋を描いていた。ティーカップに映った殿下の表情があまりにも冷たい。わたくしは絶望的な気持ちのまま、そっと顔を上げた。
「慰謝料は払おう。だけど、君は僕の妃にはなれない。――――もう二度と、僕の前に顔を出さないで欲しい」
そう言って殿下は部屋を後にした。残されたのはわたくし一人。涙で前が見えず、しばらくの間、わたくしはその場を微動だにすることが出来なかった。
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