【中編集】そのままの君が好きだよ

鈴宮(すずみや)

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4.『王太子の耳』だけど、黙ってばかりじゃいられません!

4.吐露(2)

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「だったら、どんな男がタイプなんだ?」

「……そうですねぇ。可愛い系よりカッコいい系がタイプです。背が高くて凛々しくて、見てるだけで目が悦ぶみたいな。
あと、強くて頼りになって、いざという時に守ってくれる人。優しくて温かくて、ダメなところも全部ひっくるめて愛してくれるような、包容力のある人が良いです」


 思いのほか条件が多くなってしまったことに驚きつつ、うっとりと胸をときめかせる。だって、理想ぐらいは好き勝手に想い描いて良いじゃない。王子様みたいな素敵な人が、この苦境から救い出してくれる――――そんな夢を見たって仕方がないと思う。


「なるほどね……」


 だけどアルヴィア様は、わたしのことを全然バカにしなかった。寧ろ、妙に感じ入った様子で、何やら考え事をしている。


「そういうアルヴィア様はどうなんです? どうせ、めちゃくちゃ可愛い婚約者がいるんでしょう?」


 わたし達の年齢なら、婚約者が居る方が普通だ。あと二年も経てば、わたしは立派な嫁き遅れ。職はあれども、貴族としては中々に苦しい立場に立たされてしまう。やっかみ半分で尋ねた質問に、アルヴィア様は声を上げて笑った。


「残念ながら婚約はまだだよ。
だけどそうだね、俺のタイプは頑張り屋の女性かな」


 そう言ってアルヴィア様は、目を細めて笑った。その表情が何とも魅惑的で、思わずドキッとしてしまう。


(変なの。ただ微笑まれただけなのに)


 このぐらいでドキドキされては、アルヴィア様の方も不本意だろう。気を引き締めなおし、わたしは彼の方へと向き直った。


「頑張り屋って、中々に抽象的な例えですね」

「そう? かなり具体的なんだけどな。
真面目で、不器用で、意地らしくて。苦しくてもそれを乗り越えようって努力しているのも良いし、堪えきれずに落ち込んでしまう様子も可愛いと思う。向上心が高いと、自然浮き沈みが激しくなるからね。
あと、周りに気を遣って、自分のことを後回しにしてしまう子だから、俺が守ってあげたいと思うし、甘やかしてあげたくなる。
それから、優しさの本質を履き違えていないのも良い。相手に嫌われてでも、本当に相手のためになることをする人間の方が好ましい。
正直にものを言うから、あまり周囲に理解されないし、好かれるタイプじゃないかもしれないけど、俺は好き」

「…………なんだか本当に具体的ですね」


 具体的、というより最早、既に特定の誰かがいるといった方がしっくりくる。


「アルヴィア様は案外、情熱的な人なんですね」


 爽やかな雰囲気に反し、その内側はかなり熱い。端正な顔立ちをしているし、スタイルも抜群だし、彼が愛を囁けば、大抵の女性は呆気なく堕ちると思う。


「そう? リュシーの瞳にそんな風に映ったなら光栄だな」


 そう言ってアルヴィア様はわたしの髪を一筋掬う。それだけでもドキッとするのに、彼はあろうことか、そのままそこに口づけた。


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