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24.白龍と武官と華凛(2)
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「あっ、華凛ちゃん!」
その時、数人の男性がわたしの元に駆け寄ってきた。
鍛錬された逞しい身体に日に焼けた肌。どうやら彼等は武官らしい。
「おはようございます、皆さん」
本当は名前を呼んで然るべきなんだろうけど、二か月間後宮にいたわたしは、当然彼等のことを知らない。
適当に会話をしながら情報収集するしかないって分かっているけど、これは中々に面倒だ。
これからこういう機会が続くんだろうなぁと思うと結構憂鬱になる。
「華凛ちゃんが欲しがってた簪、手に入れたよ!」
「俺は帯飾り」
「俺は口紅ね!」
「え……?」
目の前に捧げられる煌びやかな品々。
膝を突き、キラキラと瞳を輝かせる武官たちに、正直わたしはドン引きだ。
(嘘だろう? 華凛の奴、何やってるんだよ)
男たちを手玉に取るとは、全く良い度胸をしている。
きっと華凛は「頂戴」と口にしたわけじゃない。巧妙に、彼等が自ら捧げたいと思う様に仕向けたんだろう。女神のような笑顔で、男たちを思うがまま操ったに違いない。
同じ顔だけど、わたしには絶対にできない芸当だ。素直にすごいと思ってしまう。
(あーーあ、奮発したんだろうなぁ、この人たち)
見たところ、金持ちのボンボンばかりだけど、持ち寄られた品は、後宮でしかお目に掛かれないような超一級品ばかりだ。
わたしには無用の長物。着けていく場所も、機会もないし。
だけど、要らないと突き返すのはあまりにも気の毒だろう。
「ありがとうございます、皆さん」
わたしはそう言って手を差し出す。
けれどその時、白龍がわたしの前に立ちはだかった。
「華凛、受け取ってはいけません」
「まあ、どうしてですの?」
「そうだ! 何でだよ、白龍」
武官たちは眉間に皺を寄せ、白龍へと詰め寄った。
一触即発。拳を握り、今にも飛び掛かりそうな雰囲気だ。
(おっ、やる気か?)
久しぶりに感じる闘気に、背筋が震える。
だけど、たとえ荷物で両手が塞がっていても、三人がかりであっても、この武官たちは恐らく白龍には勝てない。身のこなしが、纏う空気が違い過ぎる。それが分かっていない辺り、この三人に勝ち目はない。
「主の命令です。華凛にはまだ結婚は早いと。近づく男は排除するよう命令を受けています」
「なんでだよ⁉」
「ついこの間までそんなこと言ってなかっただろう⁉」
武官たちは不満げに声を上げたが、命令を出したのが皇太子である憂炎ならば引くしかない。悔しそうに顔を歪めながら、すごすごと引き下がっていった。
(まったく。華凛に結婚は早い、ねぇ?)
双子の姉である『凛風』を己の妃にしてる癖に、随分と身勝手な話だ。
完全なダブルスタンダード。上に立つ人間として如何なものかと思う。
そうは言っても、わたしは当分結婚する気はないし、指摘するのも面倒だ。
あいつ、ただでさえ機嫌悪いし。
(贈り物、あとでこっそり貰いに行こうかな)
このままでは、華凛に乗せられた武官たちがあまりにも可哀そうだ。
下心はあったにせよ、華凛の喜ぶ顔が見たかったんだろうし、既に金を払ってしまっているのだから。
(それにしても、憂炎は馬鹿だ)
わたしのことなんて放っておいてくれたら良いのに。
――――いや、あいつが今気にしているのは『華凛』であって、わたしではないのだけれど。
胸のあたりがモヤモヤする。
小さくため息を吐きつつ、わたしは唇を尖らせた。
その時、数人の男性がわたしの元に駆け寄ってきた。
鍛錬された逞しい身体に日に焼けた肌。どうやら彼等は武官らしい。
「おはようございます、皆さん」
本当は名前を呼んで然るべきなんだろうけど、二か月間後宮にいたわたしは、当然彼等のことを知らない。
適当に会話をしながら情報収集するしかないって分かっているけど、これは中々に面倒だ。
これからこういう機会が続くんだろうなぁと思うと結構憂鬱になる。
「華凛ちゃんが欲しがってた簪、手に入れたよ!」
「俺は帯飾り」
「俺は口紅ね!」
「え……?」
目の前に捧げられる煌びやかな品々。
膝を突き、キラキラと瞳を輝かせる武官たちに、正直わたしはドン引きだ。
(嘘だろう? 華凛の奴、何やってるんだよ)
男たちを手玉に取るとは、全く良い度胸をしている。
きっと華凛は「頂戴」と口にしたわけじゃない。巧妙に、彼等が自ら捧げたいと思う様に仕向けたんだろう。女神のような笑顔で、男たちを思うがまま操ったに違いない。
同じ顔だけど、わたしには絶対にできない芸当だ。素直にすごいと思ってしまう。
(あーーあ、奮発したんだろうなぁ、この人たち)
見たところ、金持ちのボンボンばかりだけど、持ち寄られた品は、後宮でしかお目に掛かれないような超一級品ばかりだ。
わたしには無用の長物。着けていく場所も、機会もないし。
だけど、要らないと突き返すのはあまりにも気の毒だろう。
「ありがとうございます、皆さん」
わたしはそう言って手を差し出す。
けれどその時、白龍がわたしの前に立ちはだかった。
「華凛、受け取ってはいけません」
「まあ、どうしてですの?」
「そうだ! 何でだよ、白龍」
武官たちは眉間に皺を寄せ、白龍へと詰め寄った。
一触即発。拳を握り、今にも飛び掛かりそうな雰囲気だ。
(おっ、やる気か?)
久しぶりに感じる闘気に、背筋が震える。
だけど、たとえ荷物で両手が塞がっていても、三人がかりであっても、この武官たちは恐らく白龍には勝てない。身のこなしが、纏う空気が違い過ぎる。それが分かっていない辺り、この三人に勝ち目はない。
「主の命令です。華凛にはまだ結婚は早いと。近づく男は排除するよう命令を受けています」
「なんでだよ⁉」
「ついこの間までそんなこと言ってなかっただろう⁉」
武官たちは不満げに声を上げたが、命令を出したのが皇太子である憂炎ならば引くしかない。悔しそうに顔を歪めながら、すごすごと引き下がっていった。
(まったく。華凛に結婚は早い、ねぇ?)
双子の姉である『凛風』を己の妃にしてる癖に、随分と身勝手な話だ。
完全なダブルスタンダード。上に立つ人間として如何なものかと思う。
そうは言っても、わたしは当分結婚する気はないし、指摘するのも面倒だ。
あいつ、ただでさえ機嫌悪いし。
(贈り物、あとでこっそり貰いに行こうかな)
このままでは、華凛に乗せられた武官たちがあまりにも可哀そうだ。
下心はあったにせよ、華凛の喜ぶ顔が見たかったんだろうし、既に金を払ってしまっているのだから。
(それにしても、憂炎は馬鹿だ)
わたしのことなんて放っておいてくれたら良いのに。
――――いや、あいつが今気にしているのは『華凛』であって、わたしではないのだけれど。
胸のあたりがモヤモヤする。
小さくため息を吐きつつ、わたしは唇を尖らせた。
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