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【2章】婚活令嬢、攻略開始
19.クローヴィスの策略
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(クローヴィス殿下がセリーナ殿下と一緒に隣国に行くなんて……)
いや、よくよく考えればありえないことではない。二人は年齢が近いし、クローヴィスは外交に長けていると聞いたことがある。ただ、ロゼッタに行くと約束を取り付けてから、クローヴィスの同行を後出ししてきたセリーナに対して『どうして!?』という気持ちが強いだけで。
『(お兄様に頼まれちゃったの。この埋め合わせはあとでちゃんとするから)』
と、見ればセリーナがクチパクでロゼッタに訴えてきている。ロゼッタはムッと唇を尖らせつつ、目の前のクローヴィスに向き直った。
「まあ! クローヴィス殿下がいらっしゃれば、セリーナ殿下も安心ですね」
今はトゥバルトもいることだし、下手な対応はできない。
……というか、クローヴィスがとんだ曲者であることは、先日のやり取りで学習済みだ。心の奥底で彼が今、なにを考えているかわからないので、しっかり探りを入れようと気合を入れる。
「セリーナは関係ないよ。ロゼッタ嬢は俺が一緒なことを喜んでくれないのか?」
クローヴィスはそう言ってニコリと微笑む。
「え? ええと……」
なんともこたえづらい質問をしてくるものだ。ともすれば、トゥバルトのロゼッタに対する好感度が一気に下がってしまうし、今後結婚候補として見てもらえなくなるだろう。なんといってもクローヴィスは王族で、彼と争ってまでロゼッタとどうこうなりたいと思うような人間はそういないはずだ。
ふと見れば、クローヴィスはちらりとトゥヴァルトのほうを向き、その後でロゼッタの瞳を覗き込んでくる。彼は挑戦的な笑みを浮かべると、そっと目を細めた。
(なるほど。これが狙いでしたのね)
クローヴィスはロゼッタがウィルバートだけでなく、トゥバルトを狙っていることも把握していたのだ。だからこそ、二人が急接近するのを防ぐため、今回の公務に同行することを決めたのだろう。
だとしたら、ロゼッタも本気で対応を考えねばならない。
「もちろん、わたくしも殿下とご一緒できることを大変光栄に思っておりますわ」
「そうだろう? 俺はこの機会にロゼッタ嬢との親睦を深めたいと思っているんだ」
相変わらず、クローヴィスは外面がいいというか、この間の食事会で見せた雰囲気とは別物だ。はたから見ればキャーキャー騒がれるようなロマンチックな口説き文句だが、実際には二人の間で相当な腹のさぐりあいがなされている。ロゼッタは「まあ」と微笑みつつ、内心でため息をついた。
「クローヴィス殿下もロゼッタ嬢をご存知だったのですね」
と、これまで黙っていたトゥバルトが口を挟む。ロゼッタがピクリと反応をすると同時に、クローヴィスが「ああ」と返事をした。
「妹お気に入りの侍女だからね。かなり前から仲良くしているんだ。なあ、ロゼッタ嬢」
「殿下ったら、わたくしは殿下と仲良くしていただけるような女ではございませんよ」
思わせぶりな発言に笑顔を向けられ、ロゼッタはやんわりと『特別な仲』ではないと否定をする。
「もっと言えば、こうして直球で口説いているのに、中々いい返事がもらえていないんだ。だが、そこがまた魅力的だと思っている」
すると、ロゼッタを逃がすまいとクローヴィスが追い打ちをかけてきた。ロゼッタはうっと口ごもった。
(どうしましょう? このままではトゥバルト様と結ばれるルートが潰えてしまいますわ)
彼はロゼッタの結婚候補者の中でも一番のお金持ちで、身分的にも申し分ない相手だ。没落の可能性が圧倒的に低いからお相手として理想的で、現段階で脱落するのは絶対に避けたいというのに――と、ロゼッタが必死に考えを巡らせているさなか「へぇ……」とトゥバルトが小さく呟く声が聞こえた。
「クローヴィス殿下はロゼッタ嬢を気に入っていらっしゃるのですね」
「気に入っているのではない。好きだと思っているし、妃にと望んでいるんだ」
ドキッと色んな意味でロゼッタの胸が大きく跳ねる。これまで平静を装っていたセリーナの護衛や侍女たちも、これには少しざわついた。
「ですが、ロゼッタ嬢からは現状色よい返事がもらえていない……と。それでは、まだ俺にも可能性はありますよね?」
「まあ……!」
トゥバルトからの思わぬ切り返しに、ロゼッタは顔が赤くなる。
(まさか、トゥバルト様がこんなことをおっしゃってくださるなんて)
クローヴィスがここまではっきりロゼッタを『狙っている』と公言したのだ。大抵の男性は戦意と興味を喪失し、フェードアウトするだろう。
しかし、トゥヴァルとはロゼッタが思っていた以上に好戦的な性格のようだ。物腰が柔らかいから忘れがちだが、彼はとてつもなく強い男性――騎士団の団長なのだと改めて感じる。
「――そうかもしれませんね」
ニヤリ、とクローヴィスが笑う。彼は熱っぽくロゼッタを見つめると、もう一度ぎゅっと手を握った。
「隣国行きが楽しみだな、ロゼッタ嬢」
「……ええ」
ロゼッタは高鳴る鼓動に気づかないふりをしつつ、ニコリと微笑み返すのだった。
いや、よくよく考えればありえないことではない。二人は年齢が近いし、クローヴィスは外交に長けていると聞いたことがある。ただ、ロゼッタに行くと約束を取り付けてから、クローヴィスの同行を後出ししてきたセリーナに対して『どうして!?』という気持ちが強いだけで。
『(お兄様に頼まれちゃったの。この埋め合わせはあとでちゃんとするから)』
と、見ればセリーナがクチパクでロゼッタに訴えてきている。ロゼッタはムッと唇を尖らせつつ、目の前のクローヴィスに向き直った。
「まあ! クローヴィス殿下がいらっしゃれば、セリーナ殿下も安心ですね」
今はトゥバルトもいることだし、下手な対応はできない。
……というか、クローヴィスがとんだ曲者であることは、先日のやり取りで学習済みだ。心の奥底で彼が今、なにを考えているかわからないので、しっかり探りを入れようと気合を入れる。
「セリーナは関係ないよ。ロゼッタ嬢は俺が一緒なことを喜んでくれないのか?」
クローヴィスはそう言ってニコリと微笑む。
「え? ええと……」
なんともこたえづらい質問をしてくるものだ。ともすれば、トゥバルトのロゼッタに対する好感度が一気に下がってしまうし、今後結婚候補として見てもらえなくなるだろう。なんといってもクローヴィスは王族で、彼と争ってまでロゼッタとどうこうなりたいと思うような人間はそういないはずだ。
ふと見れば、クローヴィスはちらりとトゥヴァルトのほうを向き、その後でロゼッタの瞳を覗き込んでくる。彼は挑戦的な笑みを浮かべると、そっと目を細めた。
(なるほど。これが狙いでしたのね)
クローヴィスはロゼッタがウィルバートだけでなく、トゥバルトを狙っていることも把握していたのだ。だからこそ、二人が急接近するのを防ぐため、今回の公務に同行することを決めたのだろう。
だとしたら、ロゼッタも本気で対応を考えねばならない。
「もちろん、わたくしも殿下とご一緒できることを大変光栄に思っておりますわ」
「そうだろう? 俺はこの機会にロゼッタ嬢との親睦を深めたいと思っているんだ」
相変わらず、クローヴィスは外面がいいというか、この間の食事会で見せた雰囲気とは別物だ。はたから見ればキャーキャー騒がれるようなロマンチックな口説き文句だが、実際には二人の間で相当な腹のさぐりあいがなされている。ロゼッタは「まあ」と微笑みつつ、内心でため息をついた。
「クローヴィス殿下もロゼッタ嬢をご存知だったのですね」
と、これまで黙っていたトゥバルトが口を挟む。ロゼッタがピクリと反応をすると同時に、クローヴィスが「ああ」と返事をした。
「妹お気に入りの侍女だからね。かなり前から仲良くしているんだ。なあ、ロゼッタ嬢」
「殿下ったら、わたくしは殿下と仲良くしていただけるような女ではございませんよ」
思わせぶりな発言に笑顔を向けられ、ロゼッタはやんわりと『特別な仲』ではないと否定をする。
「もっと言えば、こうして直球で口説いているのに、中々いい返事がもらえていないんだ。だが、そこがまた魅力的だと思っている」
すると、ロゼッタを逃がすまいとクローヴィスが追い打ちをかけてきた。ロゼッタはうっと口ごもった。
(どうしましょう? このままではトゥバルト様と結ばれるルートが潰えてしまいますわ)
彼はロゼッタの結婚候補者の中でも一番のお金持ちで、身分的にも申し分ない相手だ。没落の可能性が圧倒的に低いからお相手として理想的で、現段階で脱落するのは絶対に避けたいというのに――と、ロゼッタが必死に考えを巡らせているさなか「へぇ……」とトゥバルトが小さく呟く声が聞こえた。
「クローヴィス殿下はロゼッタ嬢を気に入っていらっしゃるのですね」
「気に入っているのではない。好きだと思っているし、妃にと望んでいるんだ」
ドキッと色んな意味でロゼッタの胸が大きく跳ねる。これまで平静を装っていたセリーナの護衛や侍女たちも、これには少しざわついた。
「ですが、ロゼッタ嬢からは現状色よい返事がもらえていない……と。それでは、まだ俺にも可能性はありますよね?」
「まあ……!」
トゥバルトからの思わぬ切り返しに、ロゼッタは顔が赤くなる。
(まさか、トゥバルト様がこんなことをおっしゃってくださるなんて)
クローヴィスがここまではっきりロゼッタを『狙っている』と公言したのだ。大抵の男性は戦意と興味を喪失し、フェードアウトするだろう。
しかし、トゥヴァルとはロゼッタが思っていた以上に好戦的な性格のようだ。物腰が柔らかいから忘れがちだが、彼はとてつもなく強い男性――騎士団の団長なのだと改めて感じる。
「――そうかもしれませんね」
ニヤリ、とクローヴィスが笑う。彼は熱っぽくロゼッタを見つめると、もう一度ぎゅっと手を握った。
「隣国行きが楽しみだな、ロゼッタ嬢」
「……ええ」
ロゼッタは高鳴る鼓動に気づかないふりをしつつ、ニコリと微笑み返すのだった。
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