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【3章】攻略対象、混戦中
26.プレゼント
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セリーナとクローヴィスは順調に公務をこなし、あっという間に隣国で過ごす最終日を迎えた。
「完っ璧ですわ!」
今夜は二人を見送るための夜会が開かれる。ロゼッタはセリーナをドレスアップして、満足げに微笑んだ。
「ありがとう、ロゼッタ。あなたに任せたら間違いないって思っていたけど、こんなに綺麗にしてもらえるなんて」
「当然ですわ。わたくしがどれほどたくさんの夜会に出席したとお思いです? これまで培った知識に加え、こちらの国の流行も押さえてありますから、今夜のセリーナ殿下はパーティーの花になること間違いなしです!」
いわばロゼッタは夜会のプロ。主催者や出席者、ターゲットがどんな服装や雰囲気を好むかを熟知している。
隣国の王太女であるライラとは色やコンセプトがかぶらないよう、あらかじめ調整をしてあるし、ヘアメイクには絶対の自信があった。
と、セリーナの部屋の扉がノックされる。
「こんばんは、ロゼッタ嬢」
「クローヴィス殿下、ごきげんよう」
訪問者は夜会服に身を包んだクローヴィスだ。白を基調とした上品なデザインで、美形なクローヴィスによく似合っている。ロゼッタですら思わず見惚れてしまった。
「セリーナの準備は終わった?」
「ええ。いかがでしょう?」
セリーナに確認してからクローヴィスを招き入れると、彼は「さすが」と満足そうに微笑んだ。
「夜会通いは伊達じゃないね」
「……褒め言葉と受け取ってよいかはわかりませんが、ありがとうございます」
ロゼッタがクスリと笑う。クローヴィスは少し目を細めると、後ろからついてきた騎士の一人に目配せをした。
「妹を素敵に着飾ってくれたロゼッタ嬢に、これは俺からのプレゼントだ」
「プレゼント?」
騎士が差し出したのは綺麗に放送された大きな包みだ。促され、ロゼッタはその場でプレゼントを開封してみる。
「まあ……!」
中身はパーティー用の豪華なドレスだった。ロゼッタによく似合う濃いめのピンク色のシルク地に、レースや刺繍がふんだんにあしらわれている。
「今夜のパーティーに着ていくといい」
「わたくしが、ですか? けれど……」
「美しい侍女を連れていることは、セリーナの評判にもつながるだろう? もちろん、セリーナも了承済みの話だ」
ロゼッタがチラリとセリーナを振り返る。セリーナはうなずきつつ、照れたように微笑んだ。
「ありがとうございます。まさか、そんなことを考えていらっしゃったとは……」
「少しは驚いてもらえたかな?」
クローヴィスがロゼッタの手を握る。ロゼッタは思わずドキッとした。
「ええ、もちろん」
「それはよかった」
満足気に笑うと、クローヴィスはロゼッタの頭をポンポンと撫でた。
「それじゃあ、会場で会えるのを楽しみにしてるよ」
クローヴィスがセリーナの部屋を後にする。と同時に、セリーナが「へぇ……」と感嘆の声を上げた。
「お兄様って本当にロゼッタにベタ惚れなのね」
「どうしてそう思いますの?」
ドレスを抱えながらセリーナのもとに戻ると、セリーナは「そのドレスよ」と指を指した。
「ロゼッタの良さを最大限に引き出すデザインになってるでしょう? ちゃんと見ていないと、このドレスは選べないと思うの。食事会の時に贈っていたピンクダイヤも、ロゼッタのために作られたってことがすぐにわかる一品だったし」
「そう……なのでしょうか?」
お金を基準に動くロゼッタからすれば、クローヴィスの行動はよくわからないことだらけだ。本当に自分を好いてくれているのか、正直言って自信もない。
もちろん、もらえるものはもらう主義だし、こんな機会をみすみす逃すロゼッタではないのだが。
「ほらほら、早く支度をしなさい。ロゼッタと一緒に夜会に出席するのははじめてだから、結構――ううん、本当はかなり楽しみにしていたの」
「セリーナ殿下……」
ロゼッタはキュンと胸をときめかせつつ、ドレスをぎゅっと抱きしめる。それから「ありがとうございます」と目を細めた。
それから数十分後、ロゼッタは無事に準備を終えた。本来ならばもっと時間をかけるのだが、今回は急な話だったし、目的はセリーナを引き立たせることだから十分だ。プライベートならまだしも、公務のために来ているのに、他国の男性を相手に婚活をするのは難しい。
(もしかしたら、純粋に夜会を楽しめるのは今回がはじめてかもしれないわね……)
ロゼッタはそんなことを考えながらクスリと笑う。
自分の部屋からセリーナの部屋に戻ろうとしたそのときだ。
「こんばんは、ロゼッタ嬢」
「トゥバルト様」
トゥバルトから声をかけられた。今夜のトゥバルトは式典用の騎士服を身にまとっており、爽やかでとてもカッコいい。何より、胸元で輝く大きなダイヤのブローチが、彼の財力を物語っている。どうやら護衛としてではなく、パーティーに参加をするらしい。
「素敵ですわ……!」
心からの称賛を浴びせると、トゥバルトは照れた様子で「ありがとう」とお礼を言った。
「クローヴィス殿下から聞いたよ。夜会に参加するそうだね」
「ええ。突然の話だったので、とても驚いてしまいました」
ロゼッタはクスリと小さく笑う。トゥバルトはそっと目を細めると、ロゼッタの背後へと回り込んだ。
「あの……?」
「そのドレスはクローヴィス殿下からの贈り物だろう?」
「え、ええ。そうですが」
ロゼッタが首を傾げる。とともに、首周りに冷たいチェーンの感触を覚え、ロゼッタは目を丸くした。
「殿下がドレスを発注したのに感づいて、急いで用意をしたんだ。今夜のドレスに似合うようで、よかったよ」
「トゥバルト様……!」
ロゼッタは急いで視線を落とす。胸元で大粒のルビーが輝いていた。
「わたくしがいただいてもよろしいのですか?」
「もちろん、ロゼッタ嬢のために用意した宝石だ。君にしか似合わない。……だろう?」
トゥバルトが満足そうに笑うと、ロゼッタは瞳を輝かせた。
「ありがとうございます! そう言っていただけて、とても嬉しいですわ!」
「それじゃあまた、会場で。ロゼッタ嬢と踊れるのを楽しみにしているよ」
トゥバルトが颯爽とその場を去る。
「――お兄様が不機嫌にならなきゃいいけど」
部屋からそっと顔を出したセリーナがボソリとそうつぶやくのだった。
「完っ璧ですわ!」
今夜は二人を見送るための夜会が開かれる。ロゼッタはセリーナをドレスアップして、満足げに微笑んだ。
「ありがとう、ロゼッタ。あなたに任せたら間違いないって思っていたけど、こんなに綺麗にしてもらえるなんて」
「当然ですわ。わたくしがどれほどたくさんの夜会に出席したとお思いです? これまで培った知識に加え、こちらの国の流行も押さえてありますから、今夜のセリーナ殿下はパーティーの花になること間違いなしです!」
いわばロゼッタは夜会のプロ。主催者や出席者、ターゲットがどんな服装や雰囲気を好むかを熟知している。
隣国の王太女であるライラとは色やコンセプトがかぶらないよう、あらかじめ調整をしてあるし、ヘアメイクには絶対の自信があった。
と、セリーナの部屋の扉がノックされる。
「こんばんは、ロゼッタ嬢」
「クローヴィス殿下、ごきげんよう」
訪問者は夜会服に身を包んだクローヴィスだ。白を基調とした上品なデザインで、美形なクローヴィスによく似合っている。ロゼッタですら思わず見惚れてしまった。
「セリーナの準備は終わった?」
「ええ。いかがでしょう?」
セリーナに確認してからクローヴィスを招き入れると、彼は「さすが」と満足そうに微笑んだ。
「夜会通いは伊達じゃないね」
「……褒め言葉と受け取ってよいかはわかりませんが、ありがとうございます」
ロゼッタがクスリと笑う。クローヴィスは少し目を細めると、後ろからついてきた騎士の一人に目配せをした。
「妹を素敵に着飾ってくれたロゼッタ嬢に、これは俺からのプレゼントだ」
「プレゼント?」
騎士が差し出したのは綺麗に放送された大きな包みだ。促され、ロゼッタはその場でプレゼントを開封してみる。
「まあ……!」
中身はパーティー用の豪華なドレスだった。ロゼッタによく似合う濃いめのピンク色のシルク地に、レースや刺繍がふんだんにあしらわれている。
「今夜のパーティーに着ていくといい」
「わたくしが、ですか? けれど……」
「美しい侍女を連れていることは、セリーナの評判にもつながるだろう? もちろん、セリーナも了承済みの話だ」
ロゼッタがチラリとセリーナを振り返る。セリーナはうなずきつつ、照れたように微笑んだ。
「ありがとうございます。まさか、そんなことを考えていらっしゃったとは……」
「少しは驚いてもらえたかな?」
クローヴィスがロゼッタの手を握る。ロゼッタは思わずドキッとした。
「ええ、もちろん」
「それはよかった」
満足気に笑うと、クローヴィスはロゼッタの頭をポンポンと撫でた。
「それじゃあ、会場で会えるのを楽しみにしてるよ」
クローヴィスがセリーナの部屋を後にする。と同時に、セリーナが「へぇ……」と感嘆の声を上げた。
「お兄様って本当にロゼッタにベタ惚れなのね」
「どうしてそう思いますの?」
ドレスを抱えながらセリーナのもとに戻ると、セリーナは「そのドレスよ」と指を指した。
「ロゼッタの良さを最大限に引き出すデザインになってるでしょう? ちゃんと見ていないと、このドレスは選べないと思うの。食事会の時に贈っていたピンクダイヤも、ロゼッタのために作られたってことがすぐにわかる一品だったし」
「そう……なのでしょうか?」
お金を基準に動くロゼッタからすれば、クローヴィスの行動はよくわからないことだらけだ。本当に自分を好いてくれているのか、正直言って自信もない。
もちろん、もらえるものはもらう主義だし、こんな機会をみすみす逃すロゼッタではないのだが。
「ほらほら、早く支度をしなさい。ロゼッタと一緒に夜会に出席するのははじめてだから、結構――ううん、本当はかなり楽しみにしていたの」
「セリーナ殿下……」
ロゼッタはキュンと胸をときめかせつつ、ドレスをぎゅっと抱きしめる。それから「ありがとうございます」と目を細めた。
それから数十分後、ロゼッタは無事に準備を終えた。本来ならばもっと時間をかけるのだが、今回は急な話だったし、目的はセリーナを引き立たせることだから十分だ。プライベートならまだしも、公務のために来ているのに、他国の男性を相手に婚活をするのは難しい。
(もしかしたら、純粋に夜会を楽しめるのは今回がはじめてかもしれないわね……)
ロゼッタはそんなことを考えながらクスリと笑う。
自分の部屋からセリーナの部屋に戻ろうとしたそのときだ。
「こんばんは、ロゼッタ嬢」
「トゥバルト様」
トゥバルトから声をかけられた。今夜のトゥバルトは式典用の騎士服を身にまとっており、爽やかでとてもカッコいい。何より、胸元で輝く大きなダイヤのブローチが、彼の財力を物語っている。どうやら護衛としてではなく、パーティーに参加をするらしい。
「素敵ですわ……!」
心からの称賛を浴びせると、トゥバルトは照れた様子で「ありがとう」とお礼を言った。
「クローヴィス殿下から聞いたよ。夜会に参加するそうだね」
「ええ。突然の話だったので、とても驚いてしまいました」
ロゼッタはクスリと小さく笑う。トゥバルトはそっと目を細めると、ロゼッタの背後へと回り込んだ。
「あの……?」
「そのドレスはクローヴィス殿下からの贈り物だろう?」
「え、ええ。そうですが」
ロゼッタが首を傾げる。とともに、首周りに冷たいチェーンの感触を覚え、ロゼッタは目を丸くした。
「殿下がドレスを発注したのに感づいて、急いで用意をしたんだ。今夜のドレスに似合うようで、よかったよ」
「トゥバルト様……!」
ロゼッタは急いで視線を落とす。胸元で大粒のルビーが輝いていた。
「わたくしがいただいてもよろしいのですか?」
「もちろん、ロゼッタ嬢のために用意した宝石だ。君にしか似合わない。……だろう?」
トゥバルトが満足そうに笑うと、ロゼッタは瞳を輝かせた。
「ありがとうございます! そう言っていただけて、とても嬉しいですわ!」
「それじゃあまた、会場で。ロゼッタ嬢と踊れるのを楽しみにしているよ」
トゥバルトが颯爽とその場を去る。
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