28 / 49
【3章】攻略対象、混戦中
28.価値観の変化
しおりを挟む
「助けてくださってありがとうございます」
「どういたしまして」
ロゼッタはすぐに男性へお礼を言った。男性は謙遜するでもなく、すんなりとロゼッタのお礼を受け入れる。
「うちのお姫様が『どうしても気になる』ってうるさいものだから、ずっと様子をうかがっていたんだ」
「お姫様って……」
「自己紹介が遅れたね。僕の名前はランハート。王太女ライラ殿下の婚約者だよ」
「あなたが……! はじめまして。わたくしはセリーナ殿下の侍女、ロゼッタと申します」
ロゼッタが深々と頭を下げると、ランハートはクスクスと笑い声を上げた。
「さっきは大変だったね。あんなふうに絡まれて、面倒だっただろう?」
「え? えぇ……と」
面倒、とはっきり口にするのは憚られる。相手が隣国の人間ならなおさらだ。
「気を使わなくていいよ。僕も君と同じタイプだから、わかるんだ」
ランハートがそっと目を細める。ロゼッタは小さくうなずいた。
「傍から聞いていて中々に面白かったよ。『目に見えないものになんの価値がある』ってはっきり言い放つんだもん。……だけどそれって、真理だよね。ああいうタイプには一番効く言葉だと思う。あの女性も、さっきは君に向かって手を振り上げていたけど、多少は自分を見直すんじゃないかな?」
「そうだといいのですが」
クローヴィスの侍女は今後も目に見えないものを必死に磨き、誰かに気づいてもらうことを願い続ける気がしないでもない。ロゼッタは苦笑を漏らした。
「お手を煩わせてしまって本当に申し訳ございません。本来ならば、身内で解決すべきことですのに」
「構わないよ。本当に面白かったし。セリーナ殿下やクローヴィス殿下が君を庇うと、嫌がらせがひどくなっただろうし、あの女性の気持ちも落ち着かなかったと思う。だから、今回の件は僕が適役だったんだよ」
「そう言っていただけるとありがたいです」
セリーナやクローヴィスが侍女の動きを把握していなかったとは思えない。おそらくは知っていて、静観していたのだとロゼッタにもわかっていた。
だからといって、二人が薄情だとも思わない。ランハートの言うとおり、王族が口を挟むことで、かえって事態が悪化していた可能性が高いからだ。おそらく、トゥバルトも同じ理由で、二人の間に入ろうとはしなかったのだろう。
「それで? さっきの女性はクローヴィス殿下が好きなのかな? で、クローヴィス殿下は君のことが好き、と」
「……まあ、そのようなものです」
「その様子だと、ロゼッタ嬢はクローヴィス殿下と結婚することに乗り気じゃないんだね? なにか理由があるの?」
「ええ、まぁ……端的に申し上げれば価値観の相違がございまして」
ロゼッタが返事をしたあとも、ランハートは興味津々といった様子でこちらを見つめ続けている。己がまったく絡まない恋愛事情というのは、聞いていて面白いものなのだろう。ロゼッタは少しだけ肩をすくめた。
「あの、ランハート様はどうして王配になることを選んだのですか?」
「え? 僕? どうしてそんなことを尋ねるの?」
急に話題を振られたランハートは驚きつつ、そっと首をひねる。
「だって、王族には様々な義務が伴いますし、一介の貴族より自由が効かないでしょう?」
特にお金が、とはさすがのロゼッタにも言えない。ロゼッタがじっとランハートを見つめると、彼はそっと目を細めた。
「なるほど……あなたの考えはなんとなくわかりました。ただ、僕の場合は元々王族なので、義務や自由が制限されるという感覚はありません」
「まあ、そうでしたか……」
前提条件が違うのでは、参考にならないだろうか? ロゼッタはしゅんと肩を落とす。
「加えて、ライラ様が逃げ出して王太女にならなかった場合、僕自身が王太子に選ばれていた可能性もあったんです。自分が王太子になるのは面倒くさいし、だったら王配になったほうがマシだ、というのが婿候補に選ばれた当初の僕の考えでした。ですから、正直言ってライラ様のお相手に選ばれなかったとしても構わなかったんです」
「え……」
ロゼッタほどではないかもしれないが、なかなかにあけすけな本音だ。彼の言わんとしたいこと、価値観が理解できるからこそ、ロゼッタは少しだけ戸惑ってしまう。
(もしかして、わたくしがお金と男性の話をしているとき、他の方もこんな気持ちになっているのかしら?)
ロゼッタが少しだけドキドキしていると、ランハートがクスリと小さく笑った。
「だけど、ライラ様と出会って――自分の運命に戸惑いながらも前を向くライラ様を見て、少しずつ気持ちが変わっていきました」
彼の視線の先には、セリーナと談笑しているライラがいる。ロゼッタも一緒になってライラを見つめた。
「十六年間もただの平民として過ごしてきた女の子が、いきなり未来の王様になれと城に連れて行かれて、傷ついたり戸惑ったりしている様子を見て最初は気の毒だと思いました。けれど、僕のそんな気持ちを綺麗さっぱり吹き飛ばすほど、ライラ様は強かった。平民として生きてきた自分だからこそ、王になってできることがあるんじゃないかと笑うライラ様は美しかった。そんなライラ様に、僕は惹かれていったんです」
ランハートが言う。こちらの視線に気づいたのか、ふとライラがこちらを向いた。すると、それまで王族として凛とした美しい表情を浮かべていたライラが、拗ねたような、困ったような笑みを浮かべる。ランハートがふわりと目元を和らげた。
「ですから僕は、ライラ様の隣を歩くと決めました。王太女として、普通の女の子として、ライラ様には幸せになってほしいんです――僕が幸せにする。絶対、誰にも譲れないと思いました」
「そう……ですか」
人の価値観は変わる。ロゼッタにもそれはわかっている。
けれど、たとえばロゼッタが恋に落ち、お金よりも愛を取る――なんてことがあるのだろうか?
「さて、そろそろライラ様のもとに戻らないと。僕からライラ様の愛情を奪い取ろうとしている男が多くて、油断も隙もないんです」
ふと見れば、初日にロゼッタを案内してくれたバルデマーという男性が、ライラの手を握っている。どうやらダンスに誘っているようだ。
「ロゼッタ嬢、どうか自分の気持に正直に。後悔のない選択をしてください」
「ええ。ありがとうございます」
ランハートがまっすぐにライラのもとへと戻っていく。その表情はとても温かく、優しくて、ロゼッタの胸が小さく疼いた。
(恋愛感情を――愛されることを羨ましいと思うなんて……)
違う、そんなことは思わない。あってはならないことだ。
ロゼッタは小さく首を横に振り、夜会会場へと戻るのだった。
「どういたしまして」
ロゼッタはすぐに男性へお礼を言った。男性は謙遜するでもなく、すんなりとロゼッタのお礼を受け入れる。
「うちのお姫様が『どうしても気になる』ってうるさいものだから、ずっと様子をうかがっていたんだ」
「お姫様って……」
「自己紹介が遅れたね。僕の名前はランハート。王太女ライラ殿下の婚約者だよ」
「あなたが……! はじめまして。わたくしはセリーナ殿下の侍女、ロゼッタと申します」
ロゼッタが深々と頭を下げると、ランハートはクスクスと笑い声を上げた。
「さっきは大変だったね。あんなふうに絡まれて、面倒だっただろう?」
「え? えぇ……と」
面倒、とはっきり口にするのは憚られる。相手が隣国の人間ならなおさらだ。
「気を使わなくていいよ。僕も君と同じタイプだから、わかるんだ」
ランハートがそっと目を細める。ロゼッタは小さくうなずいた。
「傍から聞いていて中々に面白かったよ。『目に見えないものになんの価値がある』ってはっきり言い放つんだもん。……だけどそれって、真理だよね。ああいうタイプには一番効く言葉だと思う。あの女性も、さっきは君に向かって手を振り上げていたけど、多少は自分を見直すんじゃないかな?」
「そうだといいのですが」
クローヴィスの侍女は今後も目に見えないものを必死に磨き、誰かに気づいてもらうことを願い続ける気がしないでもない。ロゼッタは苦笑を漏らした。
「お手を煩わせてしまって本当に申し訳ございません。本来ならば、身内で解決すべきことですのに」
「構わないよ。本当に面白かったし。セリーナ殿下やクローヴィス殿下が君を庇うと、嫌がらせがひどくなっただろうし、あの女性の気持ちも落ち着かなかったと思う。だから、今回の件は僕が適役だったんだよ」
「そう言っていただけるとありがたいです」
セリーナやクローヴィスが侍女の動きを把握していなかったとは思えない。おそらくは知っていて、静観していたのだとロゼッタにもわかっていた。
だからといって、二人が薄情だとも思わない。ランハートの言うとおり、王族が口を挟むことで、かえって事態が悪化していた可能性が高いからだ。おそらく、トゥバルトも同じ理由で、二人の間に入ろうとはしなかったのだろう。
「それで? さっきの女性はクローヴィス殿下が好きなのかな? で、クローヴィス殿下は君のことが好き、と」
「……まあ、そのようなものです」
「その様子だと、ロゼッタ嬢はクローヴィス殿下と結婚することに乗り気じゃないんだね? なにか理由があるの?」
「ええ、まぁ……端的に申し上げれば価値観の相違がございまして」
ロゼッタが返事をしたあとも、ランハートは興味津々といった様子でこちらを見つめ続けている。己がまったく絡まない恋愛事情というのは、聞いていて面白いものなのだろう。ロゼッタは少しだけ肩をすくめた。
「あの、ランハート様はどうして王配になることを選んだのですか?」
「え? 僕? どうしてそんなことを尋ねるの?」
急に話題を振られたランハートは驚きつつ、そっと首をひねる。
「だって、王族には様々な義務が伴いますし、一介の貴族より自由が効かないでしょう?」
特にお金が、とはさすがのロゼッタにも言えない。ロゼッタがじっとランハートを見つめると、彼はそっと目を細めた。
「なるほど……あなたの考えはなんとなくわかりました。ただ、僕の場合は元々王族なので、義務や自由が制限されるという感覚はありません」
「まあ、そうでしたか……」
前提条件が違うのでは、参考にならないだろうか? ロゼッタはしゅんと肩を落とす。
「加えて、ライラ様が逃げ出して王太女にならなかった場合、僕自身が王太子に選ばれていた可能性もあったんです。自分が王太子になるのは面倒くさいし、だったら王配になったほうがマシだ、というのが婿候補に選ばれた当初の僕の考えでした。ですから、正直言ってライラ様のお相手に選ばれなかったとしても構わなかったんです」
「え……」
ロゼッタほどではないかもしれないが、なかなかにあけすけな本音だ。彼の言わんとしたいこと、価値観が理解できるからこそ、ロゼッタは少しだけ戸惑ってしまう。
(もしかして、わたくしがお金と男性の話をしているとき、他の方もこんな気持ちになっているのかしら?)
ロゼッタが少しだけドキドキしていると、ランハートがクスリと小さく笑った。
「だけど、ライラ様と出会って――自分の運命に戸惑いながらも前を向くライラ様を見て、少しずつ気持ちが変わっていきました」
彼の視線の先には、セリーナと談笑しているライラがいる。ロゼッタも一緒になってライラを見つめた。
「十六年間もただの平民として過ごしてきた女の子が、いきなり未来の王様になれと城に連れて行かれて、傷ついたり戸惑ったりしている様子を見て最初は気の毒だと思いました。けれど、僕のそんな気持ちを綺麗さっぱり吹き飛ばすほど、ライラ様は強かった。平民として生きてきた自分だからこそ、王になってできることがあるんじゃないかと笑うライラ様は美しかった。そんなライラ様に、僕は惹かれていったんです」
ランハートが言う。こちらの視線に気づいたのか、ふとライラがこちらを向いた。すると、それまで王族として凛とした美しい表情を浮かべていたライラが、拗ねたような、困ったような笑みを浮かべる。ランハートがふわりと目元を和らげた。
「ですから僕は、ライラ様の隣を歩くと決めました。王太女として、普通の女の子として、ライラ様には幸せになってほしいんです――僕が幸せにする。絶対、誰にも譲れないと思いました」
「そう……ですか」
人の価値観は変わる。ロゼッタにもそれはわかっている。
けれど、たとえばロゼッタが恋に落ち、お金よりも愛を取る――なんてことがあるのだろうか?
「さて、そろそろライラ様のもとに戻らないと。僕からライラ様の愛情を奪い取ろうとしている男が多くて、油断も隙もないんです」
ふと見れば、初日にロゼッタを案内してくれたバルデマーという男性が、ライラの手を握っている。どうやらダンスに誘っているようだ。
「ロゼッタ嬢、どうか自分の気持に正直に。後悔のない選択をしてください」
「ええ。ありがとうございます」
ランハートがまっすぐにライラのもとへと戻っていく。その表情はとても温かく、優しくて、ロゼッタの胸が小さく疼いた。
(恋愛感情を――愛されることを羨ましいと思うなんて……)
違う、そんなことは思わない。あってはならないことだ。
ロゼッタは小さく首を横に振り、夜会会場へと戻るのだった。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】レイハート公爵夫人の時戻し
風見ゆうみ
恋愛
公爵夫人である母が亡くなったのは、私、ソラリアが二歳になり、妹のソレイユが生まれてすぐのことだ。だから、母の記憶はないに等しい。
そんな母が私宛に残していたものがあった。
青色の押し花付きの白い封筒に入った便箋が三枚。
一枚目には【愛するソラリアへ】三枚目に【母より】それ以外、何も書かれていなかった。
父の死後、女性は爵位を継ぐことができないため、私は公爵代理として、領民のために尽くした。
十九歳になった私は、婚約者に婿入りしてもらい、彼に公爵の爵位を継いでもらった。幸せな日々が続くかと思ったが、彼との子供を授かったとわかった数日後、私は夫と実の妹に殺されてしまう。
けれど、気がついた時には、ちょうど一年前になる初夜の晩に戻っており、空白だったはずの母からの手紙が読めるようになっていた。
殺されたことで羊の形をした使い魔が見えるようになっただけでなく『時戻しの魔法』を使えるようになった私は、爵位を取り返し、妹と夫を家から追い出すことに決める。だが、気弱な夫は「ソラリアを愛している。別れたくない」と泣くばかりで、離婚を認めてくれず――。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ
汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。
※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
白い結婚は終わりました。――崩れない家を築くまで
しおしお
恋愛
「干渉しないでくださいませ。その代わり、私も干渉いたしません」
崩れかけた侯爵家に嫁いだ私は、夫と“白い結婚”を結んだ。
助けない。口を出さない。責任は当主が負う――それが条件。
焦りと慢心から無謀な契約を重ね、家を傾かせていく夫。
私は隣に立ちながら、ただ見ているだけ。
放置された結果、彼は初めて自分の判断と向き合うことになる。
そして――
一度崩れかけた侯爵家は、「選び直す力」を手に入れた。
無理な拡張はしない。
甘い条件には飛びつかない。
不利な契約は、きっぱり拒絶する。
やがてその姿勢は王宮にも波及し、
高利契約に歪められた制度そのものを立て直すことに――。
ざまあは派手ではない。
けれど確実。
焦らせた者も、慢心した者も、
気づけば“選ばれない側”になっている。
これは、干渉しない約束から始まる静かな逆転劇。
そして、白い結婚を終え、信頼で立つ家へと変わっていく物語。
隣に立つという選択こそが、最大のざまあでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる