ゼクスト・クランケンハオス ― 第六病院 ―

ふぁーぷる

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【俺は日本人だからね】

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 朝日の眩しさで眼を覚ます。
 俺は泪橋のたもとに流れ着いていた。

 意識を失った俺は、羽黒山の地下河川に投げ出されていた。
 撃ち抜かれた眉間はタングステンの額当てが、弾丸を逸らしてくれていた。

 頭は今一つ明瞭としないが橋を渡る温泉治療の老人5人がはしゃぎながら畑に向かう姿を見上げる。
 意識せずに苦笑いが出る。
 人生百年と音頭だけは賑やかだが何の施策もない無責任な現実。
 生体的な進歩も解決する手立ての飛躍的な向上も無いままに単に生き長らえる延命だけの世界に無力な老人を放り込む。
 人生百年は金か?延命装置か?

 畑に向かう老人たちが笑いながら通り過ぎてゆく。
 彼らの身体はサイボーグでも、その暮らしは平凡そのもの。

 ――延命か。幸福か。
 俺にはもう判じられない。

 ただ一つ分かった。
 夜行列車が運び続けているのは、滅びゆく世界では守れない「子供」と「日常」なのだ。

 それを解決して余りある世界を築いているこの村、その中心である第六病院。

 無策な現実から派遣された犬である俺も考えるよな。

 あのP38のサイボーグは子供らを守る盾となる行動を瞬時に行った。
 苦笑いだなこれも。

 宣教師が残した記録に西欧文化を最たるものとして広めようとして己の文化よりも進んでいる日本の精神文化、思いやりを自然呼吸の様に生活する庶民生活を壊す事を自問自答している記録が沢山残っている。

 何か同じような感慨深さがある。

 俺は宣教師じゃ無いから日本人を守るさ。

 黒頭巾を脱ぎ、マイクロCCDで録画された記録媒体のSDカードを川に投げ捨てる。

 報告は。
 第六病院は多くの都市伝説を内在する。
 ただただ歴史の古い病院。
 調査する価値無し…。

 マリア・オルシックの微笑も、ロンメルと呼ばれたサイボーグの盾も――都市伝説として葬られる。

 だが俺は知っている。
 夜行列車は今も、真夜中に走り続けている。
 終着駅が、人類の未来そのものだと気づく者は、まだいない。

 あのサイボーグ、ロンメルってまさか。
 ハハハハハ。まさかね~。


 ~〇
 幸せに暮らす老人たち。
 超科学でほぼ不死を得ていても、いつも通りの畑仕事を平々凡々と全うする。
 変わらない日常。
 村と住人らは身の丈の生活をただただ繰り返し継続する。

 超科学の提供側が守るのは、純粋無垢の高尚な品位を持つパーフェクトヒューマンの子供たち。

 そして守護者として蘇った英雄。

 超科学の力でさえ、守ろうとするのは結局――「平凡な生活」と「未来の命」だった。
 ~〇
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