俺が思ってたバンドLIFEはこんなはずじゃなかった!

さくもも

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エピソード1 -勘違いに気づかず、何もかもがうまくいかない1日になるでしょう。-

scene3 〔 ユキ 〕

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「で、ここはどほなんでふか?」
 ここは駅前のカフェ。あのあとユキは結局、今目の前でパンケーキを頬張るダサ女を期待のチームメイトだと信じ、事前に調査済みだったカフェに入った。しかし───

 見れば見るほどこいつがサイトで見つけたチームメイトではないような気がしてならない。
 プロフィールに【パンケーキの食べ方】などという項目は無かったから仕方ないのだが、この見るからにがさつな女を本当にメンバーに引き入れていいものなのか...非常に迷いどころである。

「東京の喫茶店でパンケーキが食べれるなんて夢のようです~‼」
「そ、それはよかった...」
 よくない。全然よかない。これでいいはずがない。
 あのとき天使の言うことなどさっさと無視してこいつとの縁を切っていれば今頃は、などと思い返してみればめまいがしてくるが、今さら駅の出口を案内して帰ってもらうことなどできない。
 少なくともこいつのパンケーキのお会計を済ませるまでは。

「と、取り敢えず大事な話があるから口の回りについているクリームを落としてくれないか」
「大事な話?そんなことより、おかわりってできますか?」
 おかわり...
 頼むからやめてくれ。

 子梅が口の回りのクリームを拭き終え、静かになったことを確認してユキは口を開いた。
「僕は高橋ユキ。某公立高校に通う高校生です。そっちは?」
「??本多子梅...ですけど」
 なるほど、子梅だから梅小路。認めたくはないがそこは納得できる。本番はここからだ。
「ちょっとこれから話すことを聞いて、身に覚えがあるか判断してほしいんだけど。」
子梅は小首を傾げたあとキョトンとしたまま頷いた。
「よし。」
ユキは深呼吸をして語り始めた。


時は遡ること3週間前───

「バンドメンバーを募集します‼割りと本気で活動したいので、週2ぐらいで集まれる方で年齢は中学生~大学生です。男女はどちらでも構いません。演奏に興味がある方なら初心者でも大歓迎なので、以下のアドレスにメールを送ってください。お待ちしております‼」

 とある掲示板に書き込んだバンドメンバーの募集に最初の反応があったのは僅か2日後だった。

「参加を希望します‼高校1年生で女子なのですが大丈夫でしょうか?楽器の演奏経験それなりにあります‼詳しいことはサイトのプロフィールを見ていただけるとありがたいです♡」

 演奏経験があると聞いてユキはほっと肩を撫で下ろした。
 初心者大歓迎とは書いたものの、メンバー全員が楽器に触れるのが初めて、などとなると彼が思い描いている理想の実現はほど遠いものとなってしまう。
 ユキは早速、一週間後に最寄り駅で会う約束をつけたのであった。

「で、どう?こういう経緯で僕は駅にいたんだけど、君もこういうことでいいかな」
「え?あ、はい。いいと思います。東京ではよくある出会いのパターンなんじゃないでしょうか?」
「ん?」
「あ、いえいえ、続きをどうぞ」
ユキは妙な風の吹き回しに一瞬戸惑ったが、取り敢えず話を続けることにした。
「で、演奏経験っていうのはどんな感じなの?」
せめて一通りのコードと簡単な曲くらいは演奏できるというのが理想なのだが...

 しかし、子梅の口からこぼれたのは衝撃の言葉だった。
「演奏経験ですか?えーっと...幼稚園のお遊戯発表会では毎年カスタネットを担当してました。何せ断トツで簡単だったんでね。」
「.....は?」
「タンバリンと迷ったんですけどね、なにせあれはシャラランとバンの二パターンの動きがありますから、そういう高度な技術を必要とするやつは専門じゃないんですよ、私。あ、もちろん鍵盤ハーモニカとかもありましたよ?でも私、どーもその手の指を別々に動かす系の動きが苦手でして。お恥ずかしいことに。」
 お恥ずかしい?そんなレベルではない。よくもその程度の茶番を演奏と呼んでくれたものだ。
 カスタネットどーこーの前に幼稚園時代のお遊戯会ごときで『演奏経験はそれなりにあります』などと書き込んだことが恥ずかしいことだということにこいつは全く気付いていない。

「え、じゃあもしかして...」
「弦楽器?触れたこともないですよ、そんなもの。」

 殴りたい、今すぐにでも。

 初対面の相手にこれほどの殺意を抱いたのは初めてである。

    
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