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第二章「傷だらけの汐苑」
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その後、汐苑は怪我の治療のために数ヶ月の入院延期が決まった。
が、入院延期に汐苑は胸が躍る喜びだった。
診断した医者は、目立った外傷がないのにも関わらず骨や筋肉が損傷していることに首を傾げた。
(・・・穂積、ありがと)
なぜか汐苑は紗南に対して、今までの憎しみの気持ちとは逆に感謝の気持ちを覚えずにはいられなかった。
翌日、雪重荘の3階に引っ越してきた家族がいて、由希と結衣が手伝い当番となった。
たった三人家族なのにもかかわらず、やたらと衣類や美容器具が多かったため、作業が終わった頃にはすでに午後10時を回っていた。
「由希さん、ウチでご飯食べて行きませんか? 実家から送られてきた松前漬けがあってとても美味しいんですよ。ぜひ食べてみてほしくて」と結衣。
「そうですか。じゃあ、お言葉に甘えて」
203号室に入ると、電気はすでに消えていた。
「ただいま・・・ って紗南、もう寝ちゃったか」
居間の電気をつけると、壁のあちこちには、結衣と紗南が仲睦まじそうに映った写真や、紗南が幼稚園の頃に書いてあげた結衣の似顔絵がたくさん貼られている。
松前漬けはとても美味く、由希はついご飯をお代わりしてしまうほどだった。
結衣は冷蔵庫から発泡酒を取り出すと、ゆっくりと、それを旨そうに飲んだ。
さも、それが極上の美酒であるかのように。
「男って基本弱いからさぁ~ これから由希ちゃんも気を付けなよぉ~」
「は、はあ・・・」
発泡酒ひと缶飲んだ後の結衣はひたすらに捲し立てる。
普段見る、幸薄そうな結衣とは真逆の印象だが、案外これが素の性格なのかもしれない。
(お酒入ると、結構グイグイくるなあ。結衣さんって・・・)
「前の旦那と離婚した時なんかさ、ホントこれからどうやって生きていくかって不安だったんだ。でもね、紗南がいるから私、ここまで頑張ってこれた。紗南を守っていくつもりが逆に守られちゃったのかな」
(アルちゃんの言った通りかもしれないな・・・)
由希は小説家という仕事柄、自分の人間観察眼には自信があるつもりだったが、まだまだ認識が甘かったことを反省した。
すると、戸を開けて寝ぼけ眼の紗南が起きてきた。
「由希さん・・・?」
「あ、紗南ちゃん。起こしちゃったね。お邪魔してます」
「ウチの娘、ホント可愛いっ!!」
結衣は紗南を無理やり抱きしめて、頬擦りした。
「お母さん、由希さんの前だよ・・・」
「いいじゃん、いいじゃん。毎日やってるでしょ」
紗南は照れ臭そうにしたが、その後まんざらでもなさそうな笑みを浮かべた。
ある日曜日の事。
一階のイートインコーナーで、由希と少女たちは気怠い日曜日の午後を過ごしていた。
「莉愛ちゃんの将来の夢とかってあるの?」と由希。
莉愛は新商品のプリンを食べながらニコリと微笑んで、
「うん。莉愛ねえ、大人になったらパパの後を継いで、このコンビニの店長さんになりたいな」
「・・・グスッ」
近くで品出しをしながら耳をそば立てていた克巳は思わず鼻を鳴らした。
「そしてどんどん支店を作ってってね、莉愛、お金持ちになって由希姉と紗南にでっかいお家立ててあげる」
「ゆ、夢が大きくていいね・・・」
すると徐に、何かを手にぶら下げた汐苑が店の中に入ってきた。
「あ! あんた! どの面下げてきたの!」と莉愛。
「・・・来て悪いかよ」
「悪いに決まってるでしょ! 大体あんたねぇ・・・!!」
ふと汐苑が由希を見ると、目線が合い、顔を背けた。
莉愛は女の勘が働き、全てを悟る。
「はっは~ん。全て分っちゃった。あんた、由希姉のこと好きになっちゃったんでしょ」
「ばばばばばば馬鹿かお前。僕がそんなこと・・・」
紗南はその様子を横目で見て、
(富士子達が見たらなんて思うかな・・・)
と考え、思わず笑いそうになった。
「こら、莉愛ちゃん、からかわないの。もう退院したの?」
由希が優しく汐苑に微笑むと、汐苑の顔は爆発しそうなくらい赤くなった。
「は、はい。おおおおおおお陰様で・・・ あああああの、これ。ほんの御礼です・・・」
汐苑は手に持っていた箱を由希に渡すとその中には、ひどく不格好な形のクッキーが入っていた。
「わあ、クッキー」
「こここここれ、ぼぼぼぼぼ僕が作ったんです。由希さん、甘い物食べたいっていってたから・・・・」
莉愛が一つつまんで口に入れた。
「うん。割と上手くできてるじゃん。でもちょっと焼き加減が甘いかな」
「ふふ。ありがとう。これからも遊びに来てね」
由希がそう言って汐苑の頭を優しく撫でると、その場に倒れ、頭を打ち気絶した。
そしてまた、病院に戻る羽目になってしまった。
が、入院延期に汐苑は胸が躍る喜びだった。
診断した医者は、目立った外傷がないのにも関わらず骨や筋肉が損傷していることに首を傾げた。
(・・・穂積、ありがと)
なぜか汐苑は紗南に対して、今までの憎しみの気持ちとは逆に感謝の気持ちを覚えずにはいられなかった。
翌日、雪重荘の3階に引っ越してきた家族がいて、由希と結衣が手伝い当番となった。
たった三人家族なのにもかかわらず、やたらと衣類や美容器具が多かったため、作業が終わった頃にはすでに午後10時を回っていた。
「由希さん、ウチでご飯食べて行きませんか? 実家から送られてきた松前漬けがあってとても美味しいんですよ。ぜひ食べてみてほしくて」と結衣。
「そうですか。じゃあ、お言葉に甘えて」
203号室に入ると、電気はすでに消えていた。
「ただいま・・・ って紗南、もう寝ちゃったか」
居間の電気をつけると、壁のあちこちには、結衣と紗南が仲睦まじそうに映った写真や、紗南が幼稚園の頃に書いてあげた結衣の似顔絵がたくさん貼られている。
松前漬けはとても美味く、由希はついご飯をお代わりしてしまうほどだった。
結衣は冷蔵庫から発泡酒を取り出すと、ゆっくりと、それを旨そうに飲んだ。
さも、それが極上の美酒であるかのように。
「男って基本弱いからさぁ~ これから由希ちゃんも気を付けなよぉ~」
「は、はあ・・・」
発泡酒ひと缶飲んだ後の結衣はひたすらに捲し立てる。
普段見る、幸薄そうな結衣とは真逆の印象だが、案外これが素の性格なのかもしれない。
(お酒入ると、結構グイグイくるなあ。結衣さんって・・・)
「前の旦那と離婚した時なんかさ、ホントこれからどうやって生きていくかって不安だったんだ。でもね、紗南がいるから私、ここまで頑張ってこれた。紗南を守っていくつもりが逆に守られちゃったのかな」
(アルちゃんの言った通りかもしれないな・・・)
由希は小説家という仕事柄、自分の人間観察眼には自信があるつもりだったが、まだまだ認識が甘かったことを反省した。
すると、戸を開けて寝ぼけ眼の紗南が起きてきた。
「由希さん・・・?」
「あ、紗南ちゃん。起こしちゃったね。お邪魔してます」
「ウチの娘、ホント可愛いっ!!」
結衣は紗南を無理やり抱きしめて、頬擦りした。
「お母さん、由希さんの前だよ・・・」
「いいじゃん、いいじゃん。毎日やってるでしょ」
紗南は照れ臭そうにしたが、その後まんざらでもなさそうな笑みを浮かべた。
ある日曜日の事。
一階のイートインコーナーで、由希と少女たちは気怠い日曜日の午後を過ごしていた。
「莉愛ちゃんの将来の夢とかってあるの?」と由希。
莉愛は新商品のプリンを食べながらニコリと微笑んで、
「うん。莉愛ねえ、大人になったらパパの後を継いで、このコンビニの店長さんになりたいな」
「・・・グスッ」
近くで品出しをしながら耳をそば立てていた克巳は思わず鼻を鳴らした。
「そしてどんどん支店を作ってってね、莉愛、お金持ちになって由希姉と紗南にでっかいお家立ててあげる」
「ゆ、夢が大きくていいね・・・」
すると徐に、何かを手にぶら下げた汐苑が店の中に入ってきた。
「あ! あんた! どの面下げてきたの!」と莉愛。
「・・・来て悪いかよ」
「悪いに決まってるでしょ! 大体あんたねぇ・・・!!」
ふと汐苑が由希を見ると、目線が合い、顔を背けた。
莉愛は女の勘が働き、全てを悟る。
「はっは~ん。全て分っちゃった。あんた、由希姉のこと好きになっちゃったんでしょ」
「ばばばばばば馬鹿かお前。僕がそんなこと・・・」
紗南はその様子を横目で見て、
(富士子達が見たらなんて思うかな・・・)
と考え、思わず笑いそうになった。
「こら、莉愛ちゃん、からかわないの。もう退院したの?」
由希が優しく汐苑に微笑むと、汐苑の顔は爆発しそうなくらい赤くなった。
「は、はい。おおおおおおお陰様で・・・ あああああの、これ。ほんの御礼です・・・」
汐苑は手に持っていた箱を由希に渡すとその中には、ひどく不格好な形のクッキーが入っていた。
「わあ、クッキー」
「こここここれ、ぼぼぼぼぼ僕が作ったんです。由希さん、甘い物食べたいっていってたから・・・・」
莉愛が一つつまんで口に入れた。
「うん。割と上手くできてるじゃん。でもちょっと焼き加減が甘いかな」
「ふふ。ありがとう。これからも遊びに来てね」
由希がそう言って汐苑の頭を優しく撫でると、その場に倒れ、頭を打ち気絶した。
そしてまた、病院に戻る羽目になってしまった。
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