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出会いましょう、新しい世界と共に
第三十九話 誰かがツッコミを入れなければ、滅亡する
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…ルドたちが辺境から変わりつつある故郷で過ごしていたその頃。
離れた場所にある国…メラドゥス帝国にて、皇女ディアはある報告をまとめて悩んでいた。
「うむむ…これはこれで、面倒事ですわね」
「どうなされましたか、皇女様」
集められた資料を読んでしかめっ面をする皇女の姿を見て、問いかける臣下たち。
ここしばらくの間、加護によって活発になった皇女の悪党つぶしのたびに東奔西走させられており、だいぶ落ち着いてきてゆっくりしてきたところに、厄介ごとの予感を感じ取って不安を覚えたのである。
「前に、わたくしが眠っている間に、襲われた記録がありましたわよね」
「ええっと、そういえばありましたな。王国のほうの聖女様への解呪願い道中で…ああ、こちらの記録ですね」
「そう、これよこれ…この時に、あったのがこれね」
かつて呪いで眠っていた時があった皇女だが、その際に起きていたことに関しての情報もしっかりと残していた。
「その時に出てきたのが、魔道具をもって襲撃してきた賊…しかも、それに飲み込まれて魔獣と成り果てた姿になったことがあったようね」
「ええ、そのようです。騎士たちの報告によれば、人を取り込み魔獣へ…いや、どちらかといえば魔獣とも違うような、化け物に成り果てたということのようです」
皇女ディアが眠っている間に起きた、襲撃事件。
仕組まれた賊による襲撃だったようだが、そのものたちが持っていた魔道具に大問題があった。
「これまでいくつか潰してきたけれども…どれもこれも似たようなものがあっても、まだまだ足りないと言って良いものばかりだったのよねぇ」
「普通の皇女様が組織を潰しまくるのはどうなのかと思うところもありますけれどね」
「実際、かなりの数が潰されたよなぁ」
「帝国内の膿を出しているのは良いけど、巷では爆砕姫とか粉砕姫とか暴風姫とか…色々と出てきているというべきか」
加護によって超強化されてしまった皇女に目を付けられて、潰されて行った悪の組織の数々。
消え去ることで帝国内の大掃除が出来て、皇族が率先して動いたことで民からの信頼などを勝ち取るのは良いのだが、事後処理が色々と大変である。
上が積極的に動くのは良いのだが…そのせいで色々と苦労するのは下の方である。
それはともかくとして、今皇女が気にしているのはその報告に関してのことだろう。
「…この手の魔道具、作成には相当資金やその他色々と使うはずだけれども、潰してきたのは規模が足りなかったわね。似たような組織を出して潰したように誤認させていたようだし…つながるような別案件も出てきたのよねぇ」
「何かありましたか?」
「先日、海辺の町…あそこでクラーケン大量発生事件があったじゃない」
「ああ、海のほうに出た組織つぶしに向かったら、そこの首領が奥の手として大量に魔獣を呼び寄せる魔道具を起動させて、クラーケンが出てきたあれですね」
大量のクラーケン…イカの魔獣の中でも巨大な類のものが出てきたときは恐ろしかったが、そうなる可能性も考慮して、ある程度の兵士たちを連れてきていたおかげで、被害を食い止めることはできた。
大半のクラーケンが、海の上を船を使って飛び跳ねて移動して飛び蹴りする皇女によって沈められていったのはさておき、その事件に何か思うところがあるようだ。
「…後日のほうで、あの海から巨大な魚の魔獣が確認されて、遡上したようなのよね」
「それは一大事では?」
「でも、それはもう解決したわ。…遡上先には水上都市があって、そこにいた別の魔獣に潰されたそうよ」
「別の魔獣…いや、それはそれで問題なのでは」
普通の獣とは違う、魔獣という存在。
さらに言えば、海で生息していた魔獣となると、人の手による討伐が難しくなるためより数が増え、その中で生き延びるためにより強靭になるものが多く、上陸されればそれだけでもかなりの脅威になるだろう。
そんな魔獣の中のクラーケンをほぼ一人で壊滅させた皇女もかなりやばいとは思うが、それよりも陸地に上がってきたものを潰した魔獣というのも気になる話だ。
「安心していいわ。その魔獣、知り合いだったようなのよ」
「知り合いの魔獣?皇女様とだと…もしや」
「ええ、王国のほうにいる白蜘蛛姫の名で通っている魔獣アラクネ、ハクロさんね」
帝国の諜報員たちにも念のために調査を行ってもらったが、ほぼ間違いないようである。
皇女の身に加護を施した、規格外の魔獣アラクネ…ハクロ。
どうやらちょっとした小旅行で訪れていたようで、人的被害が出る前に抑えてくれたのは他国であっても人の命を案じる皇族の立場としては良かったことである。
「けれども、大勢に目撃されたのは厄介ごとになりそうなのよねぇ…彼女の噂は帝国内にも出ているけれども、これより濃くなってくると余計に面倒よ」
記録によれば、ハクロの実力を見ていた人は大多数いるようだ。
水上都市、観光地として発展しているだけあって大勢の人物が行きかいしており、滞在して偶然その光景を見ていた者たちが多い。
それに、かつての皇女への襲撃があった際にも、何者かの監視の目があったらしいことも考えると…
「…彼女の存在をより強く世間が認識して、その手の悪い組織もより情報を集めてしまうわね。そうなってくると、余計に面倒ごとを引き起こされる可能性が大きいのよねぇ」
彼女に関しての情報は、日夜更新されているだろう。
出てくれば出てくるだけ、理解されていくのはまだいい。
…問題なのは、理解したつもりになっている者が、余計なやらかしをしでかすことだ。
既に、彼女にとっての大事な番となる少年を害すれば、どういう末路を辿るのが良い一例が出来ているのはわかっている。
しかしながら、自分ならば別の方法でやればよりうまくやれるだろうと考える輩が出るかのせいも同時に秘めており…万が一を考えれば、多くを巻きこむ損害があってもおかしくはない。
「はぁぁ…なんでこうも、厄介事があるのかしらねぇ」
(((皇女様も十分引きこすだけの素質もありますけれどね)))
加護を得てからはきはきと動き、元気になってくれたのは喜ばしいこと。
その反面、活発過ぎてどんどんやっていくので、周囲が気疲れしてしまう。
魔獣に関しての悩みを抱えるのも良いが、もうちょっと自分自身に関して振り返ってほしい。
人の振り見て我が振り直せという言葉は、どこの者が言った言葉だったか。
そう臣下たちは思ったのだが、誰一人として口に出せる者はいないのであった…
「皇女様、元気になられたのはよかったが、これはこれでどうなのか」
「今度、王国へ隠れて訪問して、聖女様に加護をもう少しだけ弱められないか相談するべきなのか」「でも、この活発な加護のほうは聖女様よりそのアラクネからのものらしいが…出来ると思うか?」
「「…どうなんだろうなぁ」」
離れた場所にある国…メラドゥス帝国にて、皇女ディアはある報告をまとめて悩んでいた。
「うむむ…これはこれで、面倒事ですわね」
「どうなされましたか、皇女様」
集められた資料を読んでしかめっ面をする皇女の姿を見て、問いかける臣下たち。
ここしばらくの間、加護によって活発になった皇女の悪党つぶしのたびに東奔西走させられており、だいぶ落ち着いてきてゆっくりしてきたところに、厄介ごとの予感を感じ取って不安を覚えたのである。
「前に、わたくしが眠っている間に、襲われた記録がありましたわよね」
「ええっと、そういえばありましたな。王国のほうの聖女様への解呪願い道中で…ああ、こちらの記録ですね」
「そう、これよこれ…この時に、あったのがこれね」
かつて呪いで眠っていた時があった皇女だが、その際に起きていたことに関しての情報もしっかりと残していた。
「その時に出てきたのが、魔道具をもって襲撃してきた賊…しかも、それに飲み込まれて魔獣と成り果てた姿になったことがあったようね」
「ええ、そのようです。騎士たちの報告によれば、人を取り込み魔獣へ…いや、どちらかといえば魔獣とも違うような、化け物に成り果てたということのようです」
皇女ディアが眠っている間に起きた、襲撃事件。
仕組まれた賊による襲撃だったようだが、そのものたちが持っていた魔道具に大問題があった。
「これまでいくつか潰してきたけれども…どれもこれも似たようなものがあっても、まだまだ足りないと言って良いものばかりだったのよねぇ」
「普通の皇女様が組織を潰しまくるのはどうなのかと思うところもありますけれどね」
「実際、かなりの数が潰されたよなぁ」
「帝国内の膿を出しているのは良いけど、巷では爆砕姫とか粉砕姫とか暴風姫とか…色々と出てきているというべきか」
加護によって超強化されてしまった皇女に目を付けられて、潰されて行った悪の組織の数々。
消え去ることで帝国内の大掃除が出来て、皇族が率先して動いたことで民からの信頼などを勝ち取るのは良いのだが、事後処理が色々と大変である。
上が積極的に動くのは良いのだが…そのせいで色々と苦労するのは下の方である。
それはともかくとして、今皇女が気にしているのはその報告に関してのことだろう。
「…この手の魔道具、作成には相当資金やその他色々と使うはずだけれども、潰してきたのは規模が足りなかったわね。似たような組織を出して潰したように誤認させていたようだし…つながるような別案件も出てきたのよねぇ」
「何かありましたか?」
「先日、海辺の町…あそこでクラーケン大量発生事件があったじゃない」
「ああ、海のほうに出た組織つぶしに向かったら、そこの首領が奥の手として大量に魔獣を呼び寄せる魔道具を起動させて、クラーケンが出てきたあれですね」
大量のクラーケン…イカの魔獣の中でも巨大な類のものが出てきたときは恐ろしかったが、そうなる可能性も考慮して、ある程度の兵士たちを連れてきていたおかげで、被害を食い止めることはできた。
大半のクラーケンが、海の上を船を使って飛び跳ねて移動して飛び蹴りする皇女によって沈められていったのはさておき、その事件に何か思うところがあるようだ。
「…後日のほうで、あの海から巨大な魚の魔獣が確認されて、遡上したようなのよね」
「それは一大事では?」
「でも、それはもう解決したわ。…遡上先には水上都市があって、そこにいた別の魔獣に潰されたそうよ」
「別の魔獣…いや、それはそれで問題なのでは」
普通の獣とは違う、魔獣という存在。
さらに言えば、海で生息していた魔獣となると、人の手による討伐が難しくなるためより数が増え、その中で生き延びるためにより強靭になるものが多く、上陸されればそれだけでもかなりの脅威になるだろう。
そんな魔獣の中のクラーケンをほぼ一人で壊滅させた皇女もかなりやばいとは思うが、それよりも陸地に上がってきたものを潰した魔獣というのも気になる話だ。
「安心していいわ。その魔獣、知り合いだったようなのよ」
「知り合いの魔獣?皇女様とだと…もしや」
「ええ、王国のほうにいる白蜘蛛姫の名で通っている魔獣アラクネ、ハクロさんね」
帝国の諜報員たちにも念のために調査を行ってもらったが、ほぼ間違いないようである。
皇女の身に加護を施した、規格外の魔獣アラクネ…ハクロ。
どうやらちょっとした小旅行で訪れていたようで、人的被害が出る前に抑えてくれたのは他国であっても人の命を案じる皇族の立場としては良かったことである。
「けれども、大勢に目撃されたのは厄介ごとになりそうなのよねぇ…彼女の噂は帝国内にも出ているけれども、これより濃くなってくると余計に面倒よ」
記録によれば、ハクロの実力を見ていた人は大多数いるようだ。
水上都市、観光地として発展しているだけあって大勢の人物が行きかいしており、滞在して偶然その光景を見ていた者たちが多い。
それに、かつての皇女への襲撃があった際にも、何者かの監視の目があったらしいことも考えると…
「…彼女の存在をより強く世間が認識して、その手の悪い組織もより情報を集めてしまうわね。そうなってくると、余計に面倒ごとを引き起こされる可能性が大きいのよねぇ」
彼女に関しての情報は、日夜更新されているだろう。
出てくれば出てくるだけ、理解されていくのはまだいい。
…問題なのは、理解したつもりになっている者が、余計なやらかしをしでかすことだ。
既に、彼女にとっての大事な番となる少年を害すれば、どういう末路を辿るのが良い一例が出来ているのはわかっている。
しかしながら、自分ならば別の方法でやればよりうまくやれるだろうと考える輩が出るかのせいも同時に秘めており…万が一を考えれば、多くを巻きこむ損害があってもおかしくはない。
「はぁぁ…なんでこうも、厄介事があるのかしらねぇ」
(((皇女様も十分引きこすだけの素質もありますけれどね)))
加護を得てからはきはきと動き、元気になってくれたのは喜ばしいこと。
その反面、活発過ぎてどんどんやっていくので、周囲が気疲れしてしまう。
魔獣に関しての悩みを抱えるのも良いが、もうちょっと自分自身に関して振り返ってほしい。
人の振り見て我が振り直せという言葉は、どこの者が言った言葉だったか。
そう臣下たちは思ったのだが、誰一人として口に出せる者はいないのであった…
「皇女様、元気になられたのはよかったが、これはこれでどうなのか」
「今度、王国へ隠れて訪問して、聖女様に加護をもう少しだけ弱められないか相談するべきなのか」「でも、この活発な加護のほうは聖女様よりそのアラクネからのものらしいが…出来ると思うか?」
「「…どうなんだろうなぁ」」
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