白露の蜘蛛はあなたを愛しましょう ~転生者以上にチート過ぎませんか~ (仮)

志位斗 茂家波

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出会いましょう、新しい世界と共に

第四十二話 大人でもあり、常識人でも…常識人?

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…ついに来てしまった、夏季休暇期限までに王都へ帰還する馬車への乗車日。
 馬車でメダルナ村改めメダルナ街と化したここから王都へ向かうまでは、通常は一週間程度の道のりがある。
 その道中での村や町で他の子どもたちも乗せていき、時間をかけてたどり着く。

 だがしかし、夏季休暇期限間近というのもあって、予想されている事態があるからこそそれに備えた特別な馬車も、この時期限定で同時運行されているのである。

「それが、王都到着までに休暇中の課題をしっかりと終えさせるためのカンヅメ部屋というべきような、『課題牢獄馬車』か…後方をついてきているとはいえ、滅茶苦茶ガッチガチな護送車にも見えるよな…」
【あの中では、夏季休暇中に盛大に遊び惚けてしまい、うっかり課題をやり損ねていた子供たちが、予想できていた教師たちによってしっかり監視されながら課題をこなしているらしいですね…】

 前世の学校とかでもたまにある、夏休みの宿題を忘れる生徒の姿。
 それはこの世界では学内で見ることはないようだが、その代償というべきように学外で思いっきり遊び惚けた付けを支払わせるようなことをしているらしい。

 基本的に、学園の学習は自主勉強なところもあり、ある程度の自由もあるようだが…それでも、与えられた課題を予定通りこなせなければ終えるようにさせるための仕組みもある模様。
 昨今だと児童虐待とか言われかけないような気もするが、一応平均的な量が出されているらしく、休暇中の行動に関してはその課題の残量で見事に艇を現しているようなものになっているようなので…うん、まぁ、何とも言えないというか、自業自得としか言いようがないだろう。
 ルンバたちも、あそこに囚われたんだよなぁ…同じ村で一緒に遊んだりしたのに、まさか計画通りにやっていなかったとは、どうしようもないのか。

「きちんと計画的にやるのは大事なんだと、アレを見て思うな」
【実際、あの課題牢獄馬車が導入されたのは数年ほど前と歴史は浅いようですが、それでも課題提出率の向上が夏季課題に限らずに、他の授業での課題などでも向上しているらしいですよね】

 目に見えてわかる地獄があるからこそ、反面教師として役に立てているのだろうか。
 学問の模索はいまだに発展途上な部分もあるようで、色々と試されていることはあるらしい。


…なお、数年ほど前に導入されたというが、これは平民側の学園でのシステムの話。
 貴族側の学園の場合、実はこれよりもきついものがあるそうだ。
 貴族って言うと、何かこう権力とかでうやむやにしそうなイメージとかもあるが…そういうのが出ないようにということで、よりやばいのが用意されているらしい。
 だが、その実態は平民側には見ることが出来ないようで、知らないほうが良いとまで言われている。






 とにもかくにも、時間をかけて王都まで向かうのだが、到着すれば休暇は終わってしまうことになる。
 夏の休みが長いようで短く感じるのは、前世であろうと今世であろうと変わらない感覚なのかもしれない。

 しみじみとそう思いながらも、馬車に揺られて移動していた…その時だった。

【…キュル?】

 ふと、道中暇だからということで、学園へ入学した時の経路同様に他の生徒たちと本日は神経衰弱で遊んでいると、ハクロが何かに気が付いたように立ち上がった。

「どうしたの、ハクロ?」
【んー、今何か、風に乗って何か感じて…っ!?】

 魔獣であるからか普通の人間以上の嗅覚は有しているのか、何か感じ取ったらしい。
 改めて嗅ぎなおした瞬間、ハクロの顔が険しいものになった。

【これは、まさか!!すいません、旦那様、他の皆様方!!ちょっと馬車を止めてください!!】
「え、えどうしたのハクロ!!」
「何があったの!?」

 素早くハクロが馬車を飛び降り、瞬時に進行方向とは真逆の咆哮へ駆け抜けてあっという間に姿見えなくなる。
 進路を戻ってどうしたのかと思っていると、すぐに戻ってきたが…その表情は厳しいものになっていた。

【御者さん!!馬車を急がせてください!!全速力で、この場所から離れないと!!】
「うぉいうぉい、どうしたんだ?何があったんだ?」
【魔獣の群れが、大型の熊や虎やその他諸々、多くの魔獣が凄い速度で走ってました!!あと数分もしないうちに、このルートだと巻き添えになります!!】
「「「何だってぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」
【魔獣学の授業で、教員が話していた突発的な魔獣の群れの進撃災害…大規模魔獣進撃災害こと『モンスターハザード』です!!しかも、普通じゃない気配のものなんですよ!!】

 急いでと言われている間に、よく見ると後方から土ぼこりが上がっているのが見えてきた。
 普通の様子ではなく、尋常ではない何かが接近しているようで、徐々に周囲の地面が揺れ始めてその存在を目視できる距離へ近づいていく。

「そ、そんなことを言われてもこの馬車は特急用の馬で引いてないぞ!モンスターハザードでは、逃げ切れん!!」
【なら、私が全力で引きます!!】

 そういうとハクロは素早くぶっとい糸の束を作り上げて、他の馬車と接続させる。
 馬たちも速度についていけないと判断したのか、その辺の木々をとっさに切り捨てて作った即席の荷馬車に乗せる。

「ハクロ、全員牽引できるの?」
【このぐらいならば、何とか!!全員、舌を嚙まないようにしてください!!荒っぽいですが全速力で無理やり引っ張ります!!】

ギャリ、ギャリリリリリリリリリリィ!!


 ハクロが足を全速力で動かし、普通では聞こえないような音を響かせる。
 牽引力向上のためかいつの間にか蜘蛛の脚部分にごつい靴の様なものを履いており、少々空転したかと思えばすぐにぶっ飛んだ速度で馬車が動き出した。

ドドドドドドドドドドド!!
「「「「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
【無茶苦茶ですが、このまま一気に魔獣に対しての結界がある王都まで駆け抜けます!!道中の村々にはハザードの警告を出しつつ、逃げますよ!!】

 ガタガタゴタバキと馬車そのものが悲鳴を上げそうな音を立てながらも、駆け抜けながらハクロがそう口にする。
 すさまじい勢いに対して、ルドたちは馬車の中を盛大に振動で跳ねさせられながらも、何とか振り落とされないようにするので精いっぱいになるのであった…
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