白露の蜘蛛はあなたを愛しましょう ~転生者以上にチート過ぎませんか~ (仮)

志位斗 茂家波

文字の大きさ
47 / 59
出会いましょう、新しい世界と共に

第四十三話 迫る危機はすぐそこに

しおりを挟む
【…ぜぇ…ぜぇ…さ、流石に…きつかった…です】
「ハクロ、大丈夫?」

 ぷしゅううううっとすさまじい湯気を出して、ぐったりと倒れこむハクロ。
 流石に馬数頭、馬車数台、乗車している人数の重量もあわせると相当なものなうえに…

「まさか、辺境の地から王都まで一週間はかかる距離を、一時間はかからずに全力疾走するなんて…無茶苦茶し過ぎよ」
【だ、旦那様の身の安全のために、振り切っても余裕があるようにとして…力を使い過ぎました】

 ぽううっと光を手から放ち、ハクロを癒すのは聖女クラウディア様。

 先ほど、王都に到着した際に騒ぎに気が付いてすぐに駆け付けてくださったようで、体力を使い果たして動けなくなったハクロへ癒しの魔法をかけてくれているのである。

「それにしても、モンスターハザードとは…道中の村々は大丈夫なのか?」
「駆け抜けながら急いで知らせつつ、すぐに守りを固めるようにしてもらったけど、かなりやばそうだな」

 ハクロやルド、その他馬車に乗っていた面々の説明を聞いて集まった騎士たちがすぐに対応するために動きつつ、そう口を漏らす。
 モンスターハザード、名前の通り魔獣による災害というのもあって対応が遅れればそれだけ被害が甚大になるというのもあり、誤った情報で動かないように正確な情報を整理して、適切な対応を行おうとしているようだ。


【でも、アレはただのモンスターハザードではなさそうですよ】
「どういうことかしら?」
【聖女様、先日の話ですけれども、帝国の皇女様への襲撃事件がありましたよね】

 何とか回復魔法によって癒されて、ぐぐっと身を起こしながらハクロが感じていたことを話す。

【あの時、賊の一人が明らかにヤバそうな魔道具を使って化け物になったことがありましたが…今回の件、そのハザードの魔獣たちからも…同じような、気配を感じたんです】
「…そう考えると、これは相当不味いわね。もしかして、人為的なものかしら」
【可能性はあるかと…っと、近づいてきたようです】


『王都内緊急連絡および避難勧告!!モンスターハザードによる魔獣たちの進撃での砂埃が確認された!!聖女様の結界があるが、万が一に備えて各自王都内の中央避難エリアへ移動せよ!!繰り返す繰り返す!!』

 王都全体に魔道具によって響き渡る、緊急警告の声。
 どうやらただ事ではないのは間違いないようで、既に魔獣たちの群れは王都まで接近しているようだ。

「早いわね、道中の人々を襲わずに、一直線に駆け抜けてきたのかしら」
【というよりも…ええ、間違いないです。彼らの声に、目的があります】
「目的?」
【私自身も魔獣なので、魔獣の声の中身が分かるのですが…不気味な声でずっと、叫んでます。『結界を壊せ、王都を蹂躙しろ』と…明確な、悪意が感じ取れます】
「「「明らかにヤバい奴だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」





 王都の外にて、取り囲むように集いつつある魔獣の群れ。
 聖女クラウディアの手によって結界が施されており、そうたやすく魔獣が侵入することは叶わないだろう。

 結界周辺に設けられている都市防衛用の城壁から、衛兵たちが遠距離で魔法などによる攻撃を与えて駆逐することで、自然とモンスターハザードに加わっていた魔獣の数が減っていき、その脅威は抑えられる…はずだった。


 しかしそれは、あくまでも自然発生したものに対してのこと。
 人為的にゆがめて作り上げられた、このハザードはただ引き起こされたものではない。




 それを証明するように、離れた場所からその光景を見ている者たちがいた。

「…凄まじいものだな。辺境の地より、あっという間にここまで踏破してしまうとは…命令に忠実にさせつつ、限界を超えて酷使させるだけでこうもうまくいくとは」
「元々、魔獣の身体能力に関しては人と同じように、生きていく以上の力を発揮することは本来ない。だが、我々の開発した魔道具によってその枷を外して従わせるだけで、ここまでのポテンシャルが発揮できるのだ。忠実すぎたがゆえに、道中の村や町を蹂躙しきれなかったが…それでも、ここまでやるのは大成功と言えるだろう」

 集まりつつ観察しつつ、その状況を見てそう口にする。

「しかし、結局は聖女の結界によって阻められてしまうか」
「そこは仕方がないことだが、問題はない。既に、手は打ってある。外からの魔獣に対しては、確かに聖女の結界は効力を発揮する。だが、それがすでに内部にいる魔獣の手であれば…どうだ」
「入り込んでいる者には効力はない、か…うまくいくだろうか」
「何も知らずに、奴らが駆逐を続ければ…減り過ぎたら内部がどうにかできても厳しくなるが…程よいところで、発芽し、牙を向けられるはずだろう。何しろ、結界は確かに魔獣の肉体を通すことはないが…それ以外のモノ・・・・・・・ならば…ふふふ」


 不気味な声を上げ、様子を観察する者たち。
 実験の過程である程度の段階は成功していることを確認しており、十分なデータはとれている。
 けれども、やれそうであれば勢いを利用し、より活用できる情報を増やしたい。
 
 その欲望は、ゆっくりと王都へ向かって悪意の形で発現していくのであった…
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

俺の伯爵家大掃除

satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。 弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると… というお話です。

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。 それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。 それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく… これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。 ――― 感想・指摘など可能な限り受け付けます。 小説家になろう様でも掲載しております。 興味があれば、ぜひどうぞ!!

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

二本のヤツデの求める物

あんど もあ
ファンタジー
夫の父の病が重篤と聞き、領地から王都の伯爵邸にやって来たナタリーと夫と娘のクリスティナ。クリスティナは屋敷の玄関の両脇に植えられた二本の大きなヤツデが気に入ったようだ。 新たな生活を始めようとするナタリーたちだが、次々と不幸が襲いかかり……。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...