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出会いましょう、新しい世界と共に
第四十五話 人だってやるときはやるんです
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【ジョゲァァァァァァァァァァ!!】
「全員、第一、第二投擲開始!!」
「槍が尽きたら次は魔法兵団へ!!続けて斧や剣で援護!!」
「火は使うなよ!!相手が植物っぽい化け物とはいえ、間違ってでも大火事になったらそれこそシャレにはならねぇ!!」
「交代いそげぇ!!攻撃による負傷者はすぐさま後方へ搬送を!!」
「聖女様への負担をなくすように、結界への攻撃を受け流しつつ、栄養補給源とみられる死体の撤去、蔓が生えてきたら即座にぶった切って供給を断て!!」
巨大な植物の牛のように成り果てた化け物に対して、人々は騎士団長や衛兵長、その他の指示に従って動き、一体となって対抗を行う。
相手がいかに桁外れな化け物だとしても、今ここで終わるわけにはいかないと心を一つにしており、なるべく効率よく動くことによって被害を減らす。
「よいしょぉ!!次の人、手当てを頼む!!」
「足の骨折だが、このぐらいはどうにかなる!!」
「いや、ここは休め!!休むのが嫌なら手は動くから、投擲武器作成場へ動かせ!!」
後方支援場所…主に化け物への攻撃を粉う中で、相手の遠距離攻撃手段なのか蔓や生えてきた棘を飛ばしてくる攻撃によって負傷した人たちが運ばれてくるテント内も今、戦場と化していた。
「ああもう、こっちもこっちで忙しい!!そこの人、新しい包帯を!!」
「はいはい!!」
「こっちは薬を頼む!!ポーション赤色瓶、青はあっちへ!!」
「ほいほいっ!!」
そんな中で、ルドは今、そのテントの救護作業を手伝っていた。
流石に学生の身であるし、戦うにはまだ向いていない身なのが悔しいが、やれることはやらなければいけない。
そう思い、こっちの作業のほうを手伝ているのだが、猫の手も借りたいほど大忙しな状態になっているのである。
「ふぅ、これがハクロだったら糸で素早く手渡すけど、人の身だとこれが厳しいか…」
あちこちドタバタと動きつつ、そう口にする。
彼女は今、あの糸の玉の中に籠っており、動けない状態。
あの化け物によって人を襲いかけていたようだが、それでも彼女の中にある理性がとどめて、自ら人を害さないようにしたらしい。
ただ引きこもるだけではなく、どうにかしようとしているようだが、まだまだ出てこれないようで、糸の球を見ると不安になる。
けれども、そんな彼女が出てきたときには大丈夫なようにしたいと思い、彼女のことを慕う人全員が一致団結して、あの化け物へ対抗しているこの状況で弱音を吐くわけにはいかないだろう。
「…それに、俺だってハクロにはいつも助けられていたからなぁ。こういう時ぐらい、いいとこ見せないとね」
戦えないのが残念だが、自分の実力を考えても現状は後方支援を行うのが現実的である。
これでうっかり前に出て、あっさり命を奪われたその時には、ハクロが出てきたらそれこそやばい大惨事が広がる未来しか見えない。
ならもうちょっと安全な場所ということで、戦えない人たちがいる避難場所のほうでおとなしくしていろと言われそうだが、ここでどうにかできなければいずれあの化け物は王都内を蹂躙して、結果として大差ないことになるだろう。
そんなことになるぐらいなら、少しでも化け物の進撃を抑えるために、後方支援を徹底して行うことで力を尽くしたほうが良い。
「化け物の状態はどうだ!!」
「いまだ健在!!攻撃を受けて欠けても、すぐさま再生するもよう!!」
「ただ、供給源になっていたと思われる魔獣の死骸の撤去作業を行う前と比べると、回復力は激減!!このままいけば、そのうち攻撃が回復を超えるかと!!」
戦場の状態が聞こえてくるが、戦況としては悪くはないらしい。
被害を抑えるために的確に判断しつつ動くことで、悪化を避けることが出来ているようだ。
前世とは違い科学技術等は未発達な部分が多いが、それでも自ら動く人が多いからこそ多くの視点から見て動けるのだろう。
この様子ならば、どうにかなるかと思われていた…その時だった。
【ジョゲジョゲジョゲジョゲェェェェッ!!】
大きな咆哮が化け物がいる方向から聞こえてきた。
どうやら、戦況は切り替わったようだ。
「っと、不味いぞ、何かでかい攻撃が来るぞ!!」
「奴の口内に、何か収縮されているぞ!!アレはブレスの類か!?」
【ジョゲバァァァァァァァァァ!!】
バウッ、バキッ、ドォォォォォォォォォン!!
「「「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
バウッと短い音が響いたかと思えば、次の瞬間には何かが砕ける音共に、強烈な爆風が襲い掛かってきた。
「不味いぞ!!今の攻撃で、聖女様の結界が破壊された!!」
化け物によって放たれた攻撃…ブレスのようなものが聖女様の作り上げた結界をいともたやすく破壊し、貫通したようだ。
幸い、射程が短かったのか直撃というよりも着弾後の余波で生じた爆風のようで、まだ全員の傷は浅い。
けれども、結界を貫通された…穴が出来たということが、問題になる。
【ジョゲジョゲラァァァァァァ!!】
「いかん!!救護エリアのほうに向かって進撃を開始し始めたぞ!!」
「進行方向にいる人たちを急いで避難させろ!!」
化け物が侵入し、一気に中へ向かって突き進み始める。
その進行方向は、ルドたちのいる後方支援用の救護エリア。
「全員、急いで逃げろ!!」
「ぐっ、相手のほうが早いぞ!!」
大慌てで進行方向から逃げようとするも、先ほどの爆風のショックで動けない人が多いようで、迅速な避難が間に合わない。
どしんどしんと踏み鳴らし、蔓で出来た巨大な牛のような化け物が迫ってくるのが見えてくる。
勢いはすさまじく、人の速さで回避や逃走ができるものではない。
目の前にまで迫ってきて、もう逃れることは叶わない。
いや、足元の人たちには眼中がないようで、奴が目指すのは…
「ハクロの、糸の玉のところか…!!」
狙っていたのだろうか。奴の進行方向の先には糸玉がある。
あの中で、奴に操られないようにと抵抗したハクロが籠って動いていない。
あの化け物には、あそこにハクロがいることが分かっているのだろうアか。
だとしたら、その狙いは何だ?中から無理やり出して、操ろうとしているのか、それとも…
「…まさか、食べようと!?」
死体の供給が失せ、回復手段を失いつつある化け物。
ならば、その代わりになるようなものを求めるのであれば、ハクロはまさに奴にとってはうってつけの魔獣なのだろう。
喰われたらどうなるのか、それはわからない。
凄まじい回復力を得てしまうのか、それとも彼女の力を取り込むのか…どっちにしても、最悪な未来しかない。
だが、どうなるのかわかっていても、一介の人間に何が出来ようか。
戦うこともかなわない、そもそも何の力にもなれないようなものに。
…でも、それが何だというのか。
「う、あああああああああ!!」
化け物が狙うよりも早く、距離的に近かったルドが全力をふりしぼって糸玉へ向かって駆け始める。
たとえ、あの化け物前には大した障害にならないとまでも、それでも…ハクロを、彼女を守るために。
ちっぽけな人が、あの巨体に叶うわけがない。
それでも、蟷螂の斧の抵抗だとしても、やらずにいられない。
「だって、いつも守ってもらっているのは…俺の方だから!!」
初めて出会った時も、助けてくれたハクロ。
運命の番とか言って押しかけてこられて最初は戸惑いもしたが、彼女と過ごす中でいつの間にか、かけがえのない相手だと思う気持ちもあった。
しかし、彼女の力の大きさを考えると、そもそも釣り合っていないんじゃないかと、何か間違っているのではないかと思う時もあったが…そんなことは、どうでも良い!!
無駄だとしても…大好きになった彼女のために、命を賭けないやつがどこにいる。
「来るなら来い!!化け物!!」
【ジェゲラァァァァァァァァァァ!!】
糸玉の前に立ちふさがるルドの姿を確認したのか咆哮をあげる魔獣。
あの勢いのままならば、一緒に食べれば済む話だと思われていそうだが、そんな単純に終わらせられてたまるか。
「食われたなら、さながら一寸法師のように、脱出ができなくても限界までかみついたり殴ったりお腹の中で大暴れをしてやるからなぁ!!」
【---いえ、旦那様。その必要は…ございませんよ】
「!?」
最後まで抵抗を見せてやろうと叫んだその時、糸玉の中から声が聞こえた。
【だって…私が、そう簡単に喰われるとでも思いますか!!いえ、性的な意味で旦那様に食べられるならともかく、得体のしれない、気持ちの悪い化け物に喰われて命を落とすのなら嫌ですからね―――――――――!!】
さらっと何か余計な一言が混ざっていたような気がしなくもないが、叫びながら糸玉を突き破って何かが飛び出す。
いや、何かではない。
あれは間違いなくハクロだが…その姿が、変わっていた。
大きな蜘蛛の体が失せており、腰あたりに小さく名残のように残っているのみ。
人の脚のようにも見えた食指部分が鋭く伸びており、人の脚のようではなく鋭くとがった形状になっているのだが、それでもあっという間に駆け抜けて魔獣の前に飛び掛かる。
【新しく足が生えてできるようになった、ドリルドロップキーック!!】
ギュリギュリギュリィィィィィィィィ!!
【ジョゲェェェェェェェェェェ!?】
ドリルのように回転して行われたドロップキックを、化け物の顔面にお見舞いするハクロ。
しかも、切れ味が増すようになのか同時に切断用の糸らしきものも一緒に纏っており、喰らわせるとそのまま貫通した。
たまらず、叫び声をあげる化け物。
喰らおうとしていた相手に攻撃された上に、自分の中身をえぐり取るようにして貫通されたのだから溜まったものではない。
【貫通だけじゃないですよ!!内部にまで攻撃を通しやすくしただけで…トドメはこちらです!!光魔法最大出力!!『ホワイトノヴァカノン』!!】
ドウォッ!!
キュイィィィィンッと一瞬にして光が集約し、化け物へめがけて極太の光線が解き放たれる。
混じりけのない、純粋な白い光線があっという間に化け物全体を飲み込み、地上への被害を出さないように考慮してかそのまま空へ向かって打ち上げられていった。
【ジェゲジェゲジャゲェェェェーーーーー………!!】
断末魔を上げ、光に飲み込まれた化け物は肉体が崩壊し、焼き付くされる。
そして、光が過ぎ去った後には何も残らず、きれいさっぱりと消滅したようであった…
【ふぅ、疲れましたよ、旦那様…なのでここは、ご褒美に思いっきり褒めて撫でてくださぁぁぁい!!】
ドドドドド、ドムギュゥ!!
「うぐぇっ!?」
疲れたと言っておきながら、凄い速度で飛び掛かかってこないで!!
しかも、なんか前より力が強いし、化け物よりもハクロの手によって命を落としそうなんだけどぉぉぉぉぉぉ!!ああ、しかも豊満な双丘で顔が抑えられて、何も言えないしメッチャ苦しい!!誰か、タスケテェェェェェェ!!
「全員、第一、第二投擲開始!!」
「槍が尽きたら次は魔法兵団へ!!続けて斧や剣で援護!!」
「火は使うなよ!!相手が植物っぽい化け物とはいえ、間違ってでも大火事になったらそれこそシャレにはならねぇ!!」
「交代いそげぇ!!攻撃による負傷者はすぐさま後方へ搬送を!!」
「聖女様への負担をなくすように、結界への攻撃を受け流しつつ、栄養補給源とみられる死体の撤去、蔓が生えてきたら即座にぶった切って供給を断て!!」
巨大な植物の牛のように成り果てた化け物に対して、人々は騎士団長や衛兵長、その他の指示に従って動き、一体となって対抗を行う。
相手がいかに桁外れな化け物だとしても、今ここで終わるわけにはいかないと心を一つにしており、なるべく効率よく動くことによって被害を減らす。
「よいしょぉ!!次の人、手当てを頼む!!」
「足の骨折だが、このぐらいはどうにかなる!!」
「いや、ここは休め!!休むのが嫌なら手は動くから、投擲武器作成場へ動かせ!!」
後方支援場所…主に化け物への攻撃を粉う中で、相手の遠距離攻撃手段なのか蔓や生えてきた棘を飛ばしてくる攻撃によって負傷した人たちが運ばれてくるテント内も今、戦場と化していた。
「ああもう、こっちもこっちで忙しい!!そこの人、新しい包帯を!!」
「はいはい!!」
「こっちは薬を頼む!!ポーション赤色瓶、青はあっちへ!!」
「ほいほいっ!!」
そんな中で、ルドは今、そのテントの救護作業を手伝っていた。
流石に学生の身であるし、戦うにはまだ向いていない身なのが悔しいが、やれることはやらなければいけない。
そう思い、こっちの作業のほうを手伝ているのだが、猫の手も借りたいほど大忙しな状態になっているのである。
「ふぅ、これがハクロだったら糸で素早く手渡すけど、人の身だとこれが厳しいか…」
あちこちドタバタと動きつつ、そう口にする。
彼女は今、あの糸の玉の中に籠っており、動けない状態。
あの化け物によって人を襲いかけていたようだが、それでも彼女の中にある理性がとどめて、自ら人を害さないようにしたらしい。
ただ引きこもるだけではなく、どうにかしようとしているようだが、まだまだ出てこれないようで、糸の球を見ると不安になる。
けれども、そんな彼女が出てきたときには大丈夫なようにしたいと思い、彼女のことを慕う人全員が一致団結して、あの化け物へ対抗しているこの状況で弱音を吐くわけにはいかないだろう。
「…それに、俺だってハクロにはいつも助けられていたからなぁ。こういう時ぐらい、いいとこ見せないとね」
戦えないのが残念だが、自分の実力を考えても現状は後方支援を行うのが現実的である。
これでうっかり前に出て、あっさり命を奪われたその時には、ハクロが出てきたらそれこそやばい大惨事が広がる未来しか見えない。
ならもうちょっと安全な場所ということで、戦えない人たちがいる避難場所のほうでおとなしくしていろと言われそうだが、ここでどうにかできなければいずれあの化け物は王都内を蹂躙して、結果として大差ないことになるだろう。
そんなことになるぐらいなら、少しでも化け物の進撃を抑えるために、後方支援を徹底して行うことで力を尽くしたほうが良い。
「化け物の状態はどうだ!!」
「いまだ健在!!攻撃を受けて欠けても、すぐさま再生するもよう!!」
「ただ、供給源になっていたと思われる魔獣の死骸の撤去作業を行う前と比べると、回復力は激減!!このままいけば、そのうち攻撃が回復を超えるかと!!」
戦場の状態が聞こえてくるが、戦況としては悪くはないらしい。
被害を抑えるために的確に判断しつつ動くことで、悪化を避けることが出来ているようだ。
前世とは違い科学技術等は未発達な部分が多いが、それでも自ら動く人が多いからこそ多くの視点から見て動けるのだろう。
この様子ならば、どうにかなるかと思われていた…その時だった。
【ジョゲジョゲジョゲジョゲェェェェッ!!】
大きな咆哮が化け物がいる方向から聞こえてきた。
どうやら、戦況は切り替わったようだ。
「っと、不味いぞ、何かでかい攻撃が来るぞ!!」
「奴の口内に、何か収縮されているぞ!!アレはブレスの類か!?」
【ジョゲバァァァァァァァァァ!!】
バウッ、バキッ、ドォォォォォォォォォン!!
「「「わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」
バウッと短い音が響いたかと思えば、次の瞬間には何かが砕ける音共に、強烈な爆風が襲い掛かってきた。
「不味いぞ!!今の攻撃で、聖女様の結界が破壊された!!」
化け物によって放たれた攻撃…ブレスのようなものが聖女様の作り上げた結界をいともたやすく破壊し、貫通したようだ。
幸い、射程が短かったのか直撃というよりも着弾後の余波で生じた爆風のようで、まだ全員の傷は浅い。
けれども、結界を貫通された…穴が出来たということが、問題になる。
【ジョゲジョゲラァァァァァァ!!】
「いかん!!救護エリアのほうに向かって進撃を開始し始めたぞ!!」
「進行方向にいる人たちを急いで避難させろ!!」
化け物が侵入し、一気に中へ向かって突き進み始める。
その進行方向は、ルドたちのいる後方支援用の救護エリア。
「全員、急いで逃げろ!!」
「ぐっ、相手のほうが早いぞ!!」
大慌てで進行方向から逃げようとするも、先ほどの爆風のショックで動けない人が多いようで、迅速な避難が間に合わない。
どしんどしんと踏み鳴らし、蔓で出来た巨大な牛のような化け物が迫ってくるのが見えてくる。
勢いはすさまじく、人の速さで回避や逃走ができるものではない。
目の前にまで迫ってきて、もう逃れることは叶わない。
いや、足元の人たちには眼中がないようで、奴が目指すのは…
「ハクロの、糸の玉のところか…!!」
狙っていたのだろうか。奴の進行方向の先には糸玉がある。
あの中で、奴に操られないようにと抵抗したハクロが籠って動いていない。
あの化け物には、あそこにハクロがいることが分かっているのだろうアか。
だとしたら、その狙いは何だ?中から無理やり出して、操ろうとしているのか、それとも…
「…まさか、食べようと!?」
死体の供給が失せ、回復手段を失いつつある化け物。
ならば、その代わりになるようなものを求めるのであれば、ハクロはまさに奴にとってはうってつけの魔獣なのだろう。
喰われたらどうなるのか、それはわからない。
凄まじい回復力を得てしまうのか、それとも彼女の力を取り込むのか…どっちにしても、最悪な未来しかない。
だが、どうなるのかわかっていても、一介の人間に何が出来ようか。
戦うこともかなわない、そもそも何の力にもなれないようなものに。
…でも、それが何だというのか。
「う、あああああああああ!!」
化け物が狙うよりも早く、距離的に近かったルドが全力をふりしぼって糸玉へ向かって駆け始める。
たとえ、あの化け物前には大した障害にならないとまでも、それでも…ハクロを、彼女を守るために。
ちっぽけな人が、あの巨体に叶うわけがない。
それでも、蟷螂の斧の抵抗だとしても、やらずにいられない。
「だって、いつも守ってもらっているのは…俺の方だから!!」
初めて出会った時も、助けてくれたハクロ。
運命の番とか言って押しかけてこられて最初は戸惑いもしたが、彼女と過ごす中でいつの間にか、かけがえのない相手だと思う気持ちもあった。
しかし、彼女の力の大きさを考えると、そもそも釣り合っていないんじゃないかと、何か間違っているのではないかと思う時もあったが…そんなことは、どうでも良い!!
無駄だとしても…大好きになった彼女のために、命を賭けないやつがどこにいる。
「来るなら来い!!化け物!!」
【ジェゲラァァァァァァァァァァ!!】
糸玉の前に立ちふさがるルドの姿を確認したのか咆哮をあげる魔獣。
あの勢いのままならば、一緒に食べれば済む話だと思われていそうだが、そんな単純に終わらせられてたまるか。
「食われたなら、さながら一寸法師のように、脱出ができなくても限界までかみついたり殴ったりお腹の中で大暴れをしてやるからなぁ!!」
【---いえ、旦那様。その必要は…ございませんよ】
「!?」
最後まで抵抗を見せてやろうと叫んだその時、糸玉の中から声が聞こえた。
【だって…私が、そう簡単に喰われるとでも思いますか!!いえ、性的な意味で旦那様に食べられるならともかく、得体のしれない、気持ちの悪い化け物に喰われて命を落とすのなら嫌ですからね―――――――――!!】
さらっと何か余計な一言が混ざっていたような気がしなくもないが、叫びながら糸玉を突き破って何かが飛び出す。
いや、何かではない。
あれは間違いなくハクロだが…その姿が、変わっていた。
大きな蜘蛛の体が失せており、腰あたりに小さく名残のように残っているのみ。
人の脚のようにも見えた食指部分が鋭く伸びており、人の脚のようではなく鋭くとがった形状になっているのだが、それでもあっという間に駆け抜けて魔獣の前に飛び掛かる。
【新しく足が生えてできるようになった、ドリルドロップキーック!!】
ギュリギュリギュリィィィィィィィィ!!
【ジョゲェェェェェェェェェェ!?】
ドリルのように回転して行われたドロップキックを、化け物の顔面にお見舞いするハクロ。
しかも、切れ味が増すようになのか同時に切断用の糸らしきものも一緒に纏っており、喰らわせるとそのまま貫通した。
たまらず、叫び声をあげる化け物。
喰らおうとしていた相手に攻撃された上に、自分の中身をえぐり取るようにして貫通されたのだから溜まったものではない。
【貫通だけじゃないですよ!!内部にまで攻撃を通しやすくしただけで…トドメはこちらです!!光魔法最大出力!!『ホワイトノヴァカノン』!!】
ドウォッ!!
キュイィィィィンッと一瞬にして光が集約し、化け物へめがけて極太の光線が解き放たれる。
混じりけのない、純粋な白い光線があっという間に化け物全体を飲み込み、地上への被害を出さないように考慮してかそのまま空へ向かって打ち上げられていった。
【ジェゲジェゲジャゲェェェェーーーーー………!!】
断末魔を上げ、光に飲み込まれた化け物は肉体が崩壊し、焼き付くされる。
そして、光が過ぎ去った後には何も残らず、きれいさっぱりと消滅したようであった…
【ふぅ、疲れましたよ、旦那様…なのでここは、ご褒美に思いっきり褒めて撫でてくださぁぁぁい!!】
ドドドドド、ドムギュゥ!!
「うぐぇっ!?」
疲れたと言っておきながら、凄い速度で飛び掛かかってこないで!!
しかも、なんか前より力が強いし、化け物よりもハクロの手によって命を落としそうなんだけどぉぉぉぉぉぉ!!ああ、しかも豊満な双丘で顔が抑えられて、何も言えないしメッチャ苦しい!!誰か、タスケテェェェェェェ!!
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