白露の蜘蛛はあなたを愛しましょう ~転生者以上にチート過ぎませんか~ (仮)

志位斗 茂家波

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出会いましょう、新しい世界と共に

第四十八話 祝い事の裏側で

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…王都への化け物の襲撃を乗り越え、復興したことに人々が喜んでいた。
 だが、その裏では元凶となった者たちは苦々しげな表情を浮かべていた。

「…結局は、失敗か」
「聖女の生み出す結界を破ることが出来たのが一番の成果だが…それでも、落とすまでいかなかったとはな」

 王都からかなり離れたとある山奥の中にある洞窟。
 そこに集った者たちは、今回の件を報告書にまとめ上げたのだが、中身を改めて確認していた。

「特殊寄生植物を活用した人為的なモンスターハザードに、討伐後に積みあがる死骸を再利用し生み出す化け物…ここまでのデータが得られた」
「これで、王都を落とす…国の中心部を壊滅させられるだけの成果があればよかったのだが、あと一歩のところでまさか、魔獣に邪魔をされるとはな」
「事前に調べ、魔獣の類なのには変わりないからということで、利用目的があったが…まさか、利用されるどころか逆にパワーアップの糧にしてしまい、より上回る力を手に入れさせてしまうとは何たる失態か」


 ある程度まで、自分たちの思い通りに進んでいたところを考えると、他者から見れば成功と思えるかもしれない。
 だがしかし、たった一体の魔獣の手によって妨げられたことは、彼らにとって大失敗と言えるのだろう。

 利用しようと考えていたのにうまくいかず、むしろより凶悪な脅威へと変えてしまったのだから。


「魔獣学会では、変異したハクロという魔獣…アラクネの名称を付けていたが、大幅に姿が変わったことで新たにネオ・アラクネという名称に変更することにしたようだが、ふざけているのかと言いたい」
「利用するべき魔獣が、我々の作りだしたものよりも力を増すとは…何たることか」

 彼らの目的は、人々の知るところではない。
 ただ一つだけ言えるとすれば、魔獣側からしても邪悪に思えるような研究に手を染めており、どれほどの人々の犠牲が出たとしても心が全く痛むことが無い外道というところだろうか。

「しかし、これはこれで興味深いな…従来の魔獣よりも強力な魔獣な時点で実験体として活用する方法を選べないだろうか」
「無理だろう。我々の作り出したあの化け物花粉…魔獣の神経に作用して命令を行うための特殊な超小型の人工魔獣の命令にも従わなかったからな。強固な意志による賜物で、反動による自壊を受けてダメージを受けたはずだが…」
「回復した上に耐性を追加し大幅にパワーアップ…ふざけているのかと叫びたくなるな」
「より人に近い姿を得たようだが、魔獣としては弱体化したとは言えないのか」
「あの光景を見てそれを思えるのは頭がお花畑か?大体、研究の過程でわかっているはずだろ!!人の姿に近くなっていく魔獣ほど、その魔獣としての力はより強まるとな!!」

 理由がないわけではない。
 研究の過程でどういうものなのか彼らはある程度理解しており、どうしてそうなっているのかというのを確信を持っている。

 だからこそ、姿を変貌させたハクロがどれほどのものなのか、嫌でも理解させられてしまうのだ。


「何にしてもだ、今後の大きな障害になるのは間違いないだろう。調べたところ、彼女の行動原理としては、番となっている少年に害さえ与えなければ無害で行けそうなものなのだが…」
「残念ながら、我々の研究はどこかで彼らに害を与えようとすることがあり、衝突は避けられぬか…」
「亡き者にしたほうがはかどりそうだが、それが容易くいくような相手ではあるまい」

 はぁぁっと溜息を吐きつつも、彼らは悪事をやめる気というのはない。
 最初から覚悟無くしてやることはできず、だかラこそ引き下がることもできないのだ。

「そう考えると…今は、ほとぼりが冷めるまでおとなしく待ちつつ、機会をうかがうのが吉か」
「ああ、今ならばまだ、王都を救った功績で評価が高いだろうが…魔獣なことに変わりはない。強い力も持ち、容姿も美しいが、それは時として他者の欲望のもととなり、そこに隙ができるだろう」

 一時的な平和というのは、人に取って休まる時なのかもしれない。
 だが、その中で平和を打ち破るような愚者が生じてしまうこともあり、その愚者を利用しない手はないのだ。

「それでは、今はおとなしくするとしよう…何も、そこまで長くはかからまい。良きものが育つには長い時間を必要とするが、愚者が育つには短い時間で済むからな」
「人の歴史の中でその事実は覆せず、だからこそ利用のし甲斐がある」
「愚者の選定を行い、進めていくとしようか…」

 彼ら自身も愚か者と言って良いのだが、それ以上に利用しやすい愚者はいつでもどこでも生れ落ちる。
 それは元々生まれ持っていた才能か、はたまたは環境のせいなのか、あるはその両方がそろうことで生じているのかはわからない。
 でも、確実に生まれてくるのは間違いなく、愚かさに付け込んでより愚かな行為に手を染めさせることが出来るのも、愚者の得意とすること。

 不気味な笑みを浮かべつつも、彼らはゆっくりと溶け込むようにその場から消えるのであった…




「…ところで、敵対することが確定だが…容姿が良いのは認めざるを得ないな。いっそ、研究を進める中で今度は見た目に気を使うのはどうだろうか」
「それはそれでいいかもしれないな。性能向上も目指したいが、出来ればもうちょっとマシなものを操りたい」
「流石に、アレの見た目の嫌悪感は誰もが抱いて研究しづらくなる部分があるからな…ちょっとは改善できれば、助かる…だろうか?」
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