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探しましょう、あなたとの夢を
第五十一話 冬支度は念入りに
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…暑い季節が過ぎ去れば、次は寒い季節がやってくる。
これは当たり前のようでありつつも、異世界では前世の場所とは同じような気候にならないと思うところもあるのだが、このガルトニア王国ではそのあたりの常識は似ているところがあるらしい。
そもそも、前世の記憶を持つ人っぽいのが過去にもいたようで、探せば分かる人には見つけられる痕跡があるだろう。
特に、夏季休暇なんてものがあれば、当然冬期休暇もあるということだが…
「…でも今年は、帰郷無しか」
【冬季の大雪警報で、辺境のほうに向かう馬車が止まるようですからね】
夏季休暇同様の休みとして、普段寮に住まう生徒たちも、冬期休暇では故郷に帰ることが出来た。
だがしかし、天気予報的な魔道具が存在しているようで、その魔道具による警報が発令されてしまい、まさかの冬季の帰郷ができないようだ。
「既に、馬車での行路に雪が降り始めたところもあるようで、食糧難にならないように王都内に食料が大量に入ってきているか…」
前世ならば除雪車とか除雪装置など色々と対策があっただろうが、今世の科学技術レベルは流石に及ばず、雪に対しての対策よりも積雪後のほうの対策を優先して行っているらしい。
魔道具という科学ではわからないようなものもあるというのに、自然に対して強く出られないのはどこの世界でも同じものなのだろうか。
【まぁ、歴史の授業では、いっそ雪を全て降らせないように上空で焼き尽くすという魔道具を開発した人がいるって話もありましたけど…大失敗に終わったそうですしね】
「焼き尽くすつもりが魔道具が耐え切れなくなって、周囲一帯が焼け野原になった『ボンバー平野の大惨事』ってやつか…うーん、そんなので歴史に載るのはなんかいやだな…」
幸いなことに物理的被害ではなく、何故か魔法的な被害として半径30km県内の人の頭がアフロになってしまったと言われている悲劇よりも喜劇に近い事件だが、そんな例もあってか積雪前の対策よりも積雪後の対策のほうを重点に置かれているのが、この国らしい。
一応、あくまでも交通網限定の影響で、そんな物凄いドカ雪になるって話でもないようだが、安全を考慮するならば今年の冬期休暇は寮で過ごすのが良いだろう。
【それに、私も寒い時期は動きづらいですから、むやみに出る機会が無いほうがありがたいですよ】
「蜘蛛の魔獣…虫だから寒さに弱いの?」
【んー、それもありますけど、魔獣全般、火山地帯などに生息する一部などは除いて、冬期は活動が鈍りやすいんですよ。私たち、食べたもの全てを自分の活動するエネルギーに変えられますが、冬期だと餌になる獲物が見つけにくいので、エネルギー消費を避けるためにというのが主な理由になりますね】
魔に堕ちた獣と言われている魔獣だが、魚や虫系の魔獣でも、寒い季節の不便さを本能的に理解しているようで、無駄に活動しないように動きを鈍くするらしい。
食べたものを全て自身のエネルギーに変換できるようだが、流石に冬期は魔獣以外の獣や木の実など、自然の恵み自体が大幅に減少するのもあってか、冬眠に近くなるものもいるようだ。
【私も例外ではないですし、おとなしくなりますよ。…ただ、冬期は過ごす場所を間違えると、地獄を見るので、今はこの人の生活圏内で過ごせていることが本当に…本当、ありがたいです】
「強調したようだけど、何かあったの?」
【過ごしやすい場所にいたくなるのは当然のことですが、昔放浪の旅をしていた際に、ある狭い洞窟でみっちり詰まって身動きが取れず、あちこちで魔獣たちが少しづつ窒息死していき、次は自分の番かと恐怖した記憶が…うう】
雪山遭難よりも過酷そうな状況だが、もう少し隙間を開けるとかいう工夫はできなかったのだろうか。
何がどうなってそんな状況に陥ったのかはわからないが、恐怖体験だったようだ。
「そんな恐怖体験が…って、あれ?密着系にトラウマを持ちそうな割には、ハクロは普段くっついてくるよね?」
【それはそれ、これはこれですよ。旦那様にくっつくのは例外ですし、窒息死することは無いですかね!】
ハクロはないが、位置によってはこちらが窒息死することもある。
過去の経験からルドはしっかりそのことを学んでいるのだが、流石に言う気はならなかった。
ここで言い出せば最後、確認のためとか言ってくっついてきて、危機がより身近に迫ってくる可能性があることを十分理解しているからだ。
本望だという人がいるならば、実際に味わってみるがよい。永遠の眠りにつくだろう。
とにもかくにも、そんな話もしつつも木枯らしが吹き、冷え込んでいく。
寒い季節の到来は、どこの世界でも早く過ぎ去ってほしいものだとルドは思うのであった…
【ちなみに今年は大丈夫ですよ!!こんなこともあろうかと、防寒着をすでにいくつか作って、収納していますからね!!】
「具体的には?」
【えっと、羽毛羊毛その他毛を詰め込みまくったコートや、意外に首を温めれば寒さもマシに感じやすいマフラーなどありますね。まぁ、いくつかは手直しの必要があるのですが…】
「え?なんで?」
【下部分、大きかった部分ように調整していたので、修正しないと着にくいんですよ…】
身軽になっていた体だったが、まさかの弊害がここで生じたようである。
考えたら、衣服の調節とかかなり変えないといけなくなるのか…主に下部分。
これは当たり前のようでありつつも、異世界では前世の場所とは同じような気候にならないと思うところもあるのだが、このガルトニア王国ではそのあたりの常識は似ているところがあるらしい。
そもそも、前世の記憶を持つ人っぽいのが過去にもいたようで、探せば分かる人には見つけられる痕跡があるだろう。
特に、夏季休暇なんてものがあれば、当然冬期休暇もあるということだが…
「…でも今年は、帰郷無しか」
【冬季の大雪警報で、辺境のほうに向かう馬車が止まるようですからね】
夏季休暇同様の休みとして、普段寮に住まう生徒たちも、冬期休暇では故郷に帰ることが出来た。
だがしかし、天気予報的な魔道具が存在しているようで、その魔道具による警報が発令されてしまい、まさかの冬季の帰郷ができないようだ。
「既に、馬車での行路に雪が降り始めたところもあるようで、食糧難にならないように王都内に食料が大量に入ってきているか…」
前世ならば除雪車とか除雪装置など色々と対策があっただろうが、今世の科学技術レベルは流石に及ばず、雪に対しての対策よりも積雪後のほうの対策を優先して行っているらしい。
魔道具という科学ではわからないようなものもあるというのに、自然に対して強く出られないのはどこの世界でも同じものなのだろうか。
【まぁ、歴史の授業では、いっそ雪を全て降らせないように上空で焼き尽くすという魔道具を開発した人がいるって話もありましたけど…大失敗に終わったそうですしね】
「焼き尽くすつもりが魔道具が耐え切れなくなって、周囲一帯が焼け野原になった『ボンバー平野の大惨事』ってやつか…うーん、そんなので歴史に載るのはなんかいやだな…」
幸いなことに物理的被害ではなく、何故か魔法的な被害として半径30km県内の人の頭がアフロになってしまったと言われている悲劇よりも喜劇に近い事件だが、そんな例もあってか積雪前の対策よりも積雪後の対策のほうを重点に置かれているのが、この国らしい。
一応、あくまでも交通網限定の影響で、そんな物凄いドカ雪になるって話でもないようだが、安全を考慮するならば今年の冬期休暇は寮で過ごすのが良いだろう。
【それに、私も寒い時期は動きづらいですから、むやみに出る機会が無いほうがありがたいですよ】
「蜘蛛の魔獣…虫だから寒さに弱いの?」
【んー、それもありますけど、魔獣全般、火山地帯などに生息する一部などは除いて、冬期は活動が鈍りやすいんですよ。私たち、食べたもの全てを自分の活動するエネルギーに変えられますが、冬期だと餌になる獲物が見つけにくいので、エネルギー消費を避けるためにというのが主な理由になりますね】
魔に堕ちた獣と言われている魔獣だが、魚や虫系の魔獣でも、寒い季節の不便さを本能的に理解しているようで、無駄に活動しないように動きを鈍くするらしい。
食べたものを全て自身のエネルギーに変換できるようだが、流石に冬期は魔獣以外の獣や木の実など、自然の恵み自体が大幅に減少するのもあってか、冬眠に近くなるものもいるようだ。
【私も例外ではないですし、おとなしくなりますよ。…ただ、冬期は過ごす場所を間違えると、地獄を見るので、今はこの人の生活圏内で過ごせていることが本当に…本当、ありがたいです】
「強調したようだけど、何かあったの?」
【過ごしやすい場所にいたくなるのは当然のことですが、昔放浪の旅をしていた際に、ある狭い洞窟でみっちり詰まって身動きが取れず、あちこちで魔獣たちが少しづつ窒息死していき、次は自分の番かと恐怖した記憶が…うう】
雪山遭難よりも過酷そうな状況だが、もう少し隙間を開けるとかいう工夫はできなかったのだろうか。
何がどうなってそんな状況に陥ったのかはわからないが、恐怖体験だったようだ。
「そんな恐怖体験が…って、あれ?密着系にトラウマを持ちそうな割には、ハクロは普段くっついてくるよね?」
【それはそれ、これはこれですよ。旦那様にくっつくのは例外ですし、窒息死することは無いですかね!】
ハクロはないが、位置によってはこちらが窒息死することもある。
過去の経験からルドはしっかりそのことを学んでいるのだが、流石に言う気はならなかった。
ここで言い出せば最後、確認のためとか言ってくっついてきて、危機がより身近に迫ってくる可能性があることを十分理解しているからだ。
本望だという人がいるならば、実際に味わってみるがよい。永遠の眠りにつくだろう。
とにもかくにも、そんな話もしつつも木枯らしが吹き、冷え込んでいく。
寒い季節の到来は、どこの世界でも早く過ぎ去ってほしいものだとルドは思うのであった…
【ちなみに今年は大丈夫ですよ!!こんなこともあろうかと、防寒着をすでにいくつか作って、収納していますからね!!】
「具体的には?」
【えっと、羽毛羊毛その他毛を詰め込みまくったコートや、意外に首を温めれば寒さもマシに感じやすいマフラーなどありますね。まぁ、いくつかは手直しの必要があるのですが…】
「え?なんで?」
【下部分、大きかった部分ように調整していたので、修正しないと着にくいんですよ…】
身軽になっていた体だったが、まさかの弊害がここで生じたようである。
考えたら、衣服の調節とかかなり変えないといけなくなるのか…主に下部分。
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