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とある妖精の話 その1
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『……ううっ、どうしてこんなことになったのー』
その妖精の少女、ディアは今、涙を流しながらそうつぶやいた。
今、彼女は大きなビンの中に入れられた状態で、大勢の人間の前に出されていた。
「さぁ!!本日の目玉は。偶然にもネズミ捕りにかかっていた珍しい羽の色をした妖精だぁ!!最初の金額は金貨20枚からでどうぞ!!」
司会と名乗る人間がそう叫び、会場中では大勢の人間たちが次々と争っていく。
なぜこうなったのか、ディアは思い返した。
――――――――――――――
……ここ数カ月ほど、妖精間である噂話が流れていた。
妖精は本来人とは交わることをせず、離れて暮らしているのだが、どうやら次々と仲間たちが消えうせているという話であった。
なんでも、ある国で国王陛下の大事な娘の王女様が病にかかったそうで、特殊な翅をした妖精を煎じて飲むしかないという噂が流れ、求める者たちが密漁しているというものであった。
妖精たちはそんな話を知らないし、本当にそうなのかもわからない。
だがしかし、人の欲望とは恐ろしいもので、困っている物にはむしろつけ込むような悪人もおり、そのために妖精を求める者たちがいるのだとか。
ゆえに、身の危険を感じた妖精たちが次々と安全そうな場所へ隠れていく中、ディアだけは何もしていなかった。
自分はちょっとばかり変な翅の色をしており、その噂話に当てはまりそうだが、人間に捕まるほど馬鹿ではないと、自身を持っていたのである。
そして数日前、自身を見つけて求めあう人たちをからかいながら逃れ、少し休憩をと思って休む場所を探していたら、美味しそうなチーズを見つけ、いただいてトンズラしようとしたところで……
バチンッ!!
『いったぁぁぁぁぁぁぁあ!?』
「おお!!ついにいたずら鼠が捕まって‥‥‥あれ?」
……何やらそこには最近鼠が出没していたようで、捕縛用の罠が駆けられており、それにかかってしまったのであった。
―――――――――――――――――――――
あまりにもマヌケすぎる自分の捕まり方に顔を隠したくなるほどの恥ずかしさを覚えたが、今はそうしてもいられない。
あれよあれよという間に準備が整えられ、逃げられないように瓶詰めされ、オークションとやらに賭けられてしまったのである。
『ううっ、どうしたらいいのー』
嘆くのだが、どうにもならず、どうやらついにオークションの方では決着がついたようであった。
「おおっと!!金貨3000枚!!これ以上の価格が無いのであれば、競り落とさせられまーす!!・・・・・いませんね?では、これで終了!!」
「ぶはーはっはっはっはは!!僕ちんが競り落とせたのでブゥ!」
なにやら不快な声が聞こえ、見てみれば、その競り落としたのは油まみれの男…‥‥いや、中年とかではなく、まだ若そうなのに、完全にでっぶぅんと肥えたおっさんであった。
「ぐふふふふ!!これで妖精が手に入ったでブゥ!!」
馬車の中に連れ込まれ、ディアが怯えている間にも得意げそうにそのおっさんはそう口にした。
「国王陛下にすぐさま届け、煎じるのも悪くない……だが、しかし、もったいないでぶぅな」
にやぁっと見る人が見れば不快感を与えるであろう不気味な笑みをおっさんは浮かべる。
「まだ生きの良いうちに、ちょっとばかり遊ぶのも悪くないでブゥ!!そう、例えば重りを付けた上で犬に追わせるとか、四肢をもぐとか‥‥‥」
『いやぁぁぁぁぁー!!』
色々と最悪すぎる言動に、ディアは後ずさりをするが瓶の中にいるがゆえにそれ以上下がれない。
「ああ、その恐怖に歪んだ顔もいいでブゥ!!さっさと邸へ帰り、もっと色々と‥」
怯えるディアに対して、サディスティックな感性が刺激されたのか、続々と震わせながらそのおっさんが言葉を続けようとした…‥その時である。
「‥‥‥そうされると、色々と困るな」
「!?だ、だれで」
「眠れ豚」
突然、誰かの声が聞こえ、おっさんが振り向こうとしたところで、その顔面にキレのいい右ストレートが直撃する。
馬車のからおっさんは壁をぶち抜け飛び出し、そのまま後方へ吹っ飛んでいった。
『…‥だ、誰ー?』
先ほどまで馬車にはあのおっさんしかいなかったというのに、突然現れた人物にディアは目を丸くする。
ぶちぬかれた馬車に日差しが入り、その姿をあらわにした。
日の光に反射して輝く銀色の髪に、赤い目。
美青年と言うべきなのだろうけれども、人間とは違う雰囲気。
「俺か?ただの気まぐれで、お前を助けようとした者だ。名乗るほどでもないが‥‥‥」
その言葉に悪意はなく、一生懸命助けよ撃としたわけでもなく、本当に気まぐれな感情をディアは感じ取った。
「まぁ、ついでにあの豚おっさんを殴ったらどれだけスカッとするか、ちょっとばかりストレス発散するために来たというのもあるがな」
『……それが本音だねー?』
少々呆れる様な声が出たが、少なくとも敵ではなさそうである。
ふと気が付けば、どうやら馬車が停止しており、外にいたおっさんの仲間たちの気配がしたが、その者はそっとディアが入った瓶を懐に入れる。
次の瞬間、景色が反転したかともうと、何処かの森の中にいた。
『え……?ど、どうなっているのー?』
馬車から飛び降りたわけでもなく、ぶち抜かれた場所から見えた風景の場所でもない。
本当に一瞬で、どこか別の場所へ来てしまったことに、ディアは驚愕する。
「転移しただけだが‥‥‥まぁ、今は適当にここへ来ただけだ。とりあえず、お前、帰りたい場所があればここから自力で帰れ」
そういうと、その青年はパチンと指を鳴らした。
すると、ディアがいれられていた瓶が消えうせ、外の空気に直接触れる。
そして、その青年はその場から姿を消したのであった…‥‥‥
『……なんだったのー?』
助けられたのは良いのだが、どうもあとは放置らしい。
色々と驚愕しすぎて、しばらく彼女は動けず、そしてすぐ後にこの場所が全然わからない場所であるということに気が付くのであった。
その妖精の少女、ディアは今、涙を流しながらそうつぶやいた。
今、彼女は大きなビンの中に入れられた状態で、大勢の人間の前に出されていた。
「さぁ!!本日の目玉は。偶然にもネズミ捕りにかかっていた珍しい羽の色をした妖精だぁ!!最初の金額は金貨20枚からでどうぞ!!」
司会と名乗る人間がそう叫び、会場中では大勢の人間たちが次々と争っていく。
なぜこうなったのか、ディアは思い返した。
――――――――――――――
……ここ数カ月ほど、妖精間である噂話が流れていた。
妖精は本来人とは交わることをせず、離れて暮らしているのだが、どうやら次々と仲間たちが消えうせているという話であった。
なんでも、ある国で国王陛下の大事な娘の王女様が病にかかったそうで、特殊な翅をした妖精を煎じて飲むしかないという噂が流れ、求める者たちが密漁しているというものであった。
妖精たちはそんな話を知らないし、本当にそうなのかもわからない。
だがしかし、人の欲望とは恐ろしいもので、困っている物にはむしろつけ込むような悪人もおり、そのために妖精を求める者たちがいるのだとか。
ゆえに、身の危険を感じた妖精たちが次々と安全そうな場所へ隠れていく中、ディアだけは何もしていなかった。
自分はちょっとばかり変な翅の色をしており、その噂話に当てはまりそうだが、人間に捕まるほど馬鹿ではないと、自身を持っていたのである。
そして数日前、自身を見つけて求めあう人たちをからかいながら逃れ、少し休憩をと思って休む場所を探していたら、美味しそうなチーズを見つけ、いただいてトンズラしようとしたところで……
バチンッ!!
『いったぁぁぁぁぁぁぁあ!?』
「おお!!ついにいたずら鼠が捕まって‥‥‥あれ?」
……何やらそこには最近鼠が出没していたようで、捕縛用の罠が駆けられており、それにかかってしまったのであった。
―――――――――――――――――――――
あまりにもマヌケすぎる自分の捕まり方に顔を隠したくなるほどの恥ずかしさを覚えたが、今はそうしてもいられない。
あれよあれよという間に準備が整えられ、逃げられないように瓶詰めされ、オークションとやらに賭けられてしまったのである。
『ううっ、どうしたらいいのー』
嘆くのだが、どうにもならず、どうやらついにオークションの方では決着がついたようであった。
「おおっと!!金貨3000枚!!これ以上の価格が無いのであれば、競り落とさせられまーす!!・・・・・いませんね?では、これで終了!!」
「ぶはーはっはっはっはは!!僕ちんが競り落とせたのでブゥ!」
なにやら不快な声が聞こえ、見てみれば、その競り落としたのは油まみれの男…‥‥いや、中年とかではなく、まだ若そうなのに、完全にでっぶぅんと肥えたおっさんであった。
「ぐふふふふ!!これで妖精が手に入ったでブゥ!!」
馬車の中に連れ込まれ、ディアが怯えている間にも得意げそうにそのおっさんはそう口にした。
「国王陛下にすぐさま届け、煎じるのも悪くない……だが、しかし、もったいないでぶぅな」
にやぁっと見る人が見れば不快感を与えるであろう不気味な笑みをおっさんは浮かべる。
「まだ生きの良いうちに、ちょっとばかり遊ぶのも悪くないでブゥ!!そう、例えば重りを付けた上で犬に追わせるとか、四肢をもぐとか‥‥‥」
『いやぁぁぁぁぁー!!』
色々と最悪すぎる言動に、ディアは後ずさりをするが瓶の中にいるがゆえにそれ以上下がれない。
「ああ、その恐怖に歪んだ顔もいいでブゥ!!さっさと邸へ帰り、もっと色々と‥」
怯えるディアに対して、サディスティックな感性が刺激されたのか、続々と震わせながらそのおっさんが言葉を続けようとした…‥その時である。
「‥‥‥そうされると、色々と困るな」
「!?だ、だれで」
「眠れ豚」
突然、誰かの声が聞こえ、おっさんが振り向こうとしたところで、その顔面にキレのいい右ストレートが直撃する。
馬車のからおっさんは壁をぶち抜け飛び出し、そのまま後方へ吹っ飛んでいった。
『…‥だ、誰ー?』
先ほどまで馬車にはあのおっさんしかいなかったというのに、突然現れた人物にディアは目を丸くする。
ぶちぬかれた馬車に日差しが入り、その姿をあらわにした。
日の光に反射して輝く銀色の髪に、赤い目。
美青年と言うべきなのだろうけれども、人間とは違う雰囲気。
「俺か?ただの気まぐれで、お前を助けようとした者だ。名乗るほどでもないが‥‥‥」
その言葉に悪意はなく、一生懸命助けよ撃としたわけでもなく、本当に気まぐれな感情をディアは感じ取った。
「まぁ、ついでにあの豚おっさんを殴ったらどれだけスカッとするか、ちょっとばかりストレス発散するために来たというのもあるがな」
『……それが本音だねー?』
少々呆れる様な声が出たが、少なくとも敵ではなさそうである。
ふと気が付けば、どうやら馬車が停止しており、外にいたおっさんの仲間たちの気配がしたが、その者はそっとディアが入った瓶を懐に入れる。
次の瞬間、景色が反転したかともうと、何処かの森の中にいた。
『え……?ど、どうなっているのー?』
馬車から飛び降りたわけでもなく、ぶち抜かれた場所から見えた風景の場所でもない。
本当に一瞬で、どこか別の場所へ来てしまったことに、ディアは驚愕する。
「転移しただけだが‥‥‥まぁ、今は適当にここへ来ただけだ。とりあえず、お前、帰りたい場所があればここから自力で帰れ」
そういうと、その青年はパチンと指を鳴らした。
すると、ディアがいれられていた瓶が消えうせ、外の空気に直接触れる。
そして、その青年はその場から姿を消したのであった…‥‥‥
『……なんだったのー?』
助けられたのは良いのだが、どうもあとは放置らしい。
色々と驚愕しすぎて、しばらく彼女は動けず、そしてすぐ後にこの場所が全然わからない場所であるということに気が付くのであった。
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