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とある悪魔の記録Ver.2 その6
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…‥‥悪役令嬢が、舞台から退場したらどうなるのか。
それこそ、恋愛ゲームの最後の場であり、退場後にはエンディングがあるだろう。
まぁ、そもそもそのゲーム自体が悪役令嬢の破滅ばかりだったが…‥‥
「‥‥‥全部の破滅ルートは消えたのは良いが、その変わりにこれはひどいな」
「ヒロインは、終わるまでなら全部良かったけれども、その後のことを考えていなかったのかしら‥‥?」
あの原作から改悪し、駄作にし過ぎた断罪劇から数年が経過し、俺たちはあの後どうなったのか久々に確認するために国へ戻って見たのだが‥‥‥そこはもう、国の体を成してなかった。
割とそれなりに整備されていたはずの道が荒れ放題であり、家の外壁などもボロボロになっており、あちこちで煙が上がったまま、燃えたまま。
暴動でも起きたかのように悲惨な状況であり、あちこちにネズミや野犬の巣ができあがっている。
それなのに、国はその状況を見向きもせずに…‥‥
「閉じこもったか…‥‥まぁ、あの様子だと、もう間もなく落城するだろうな」
「騎士たちがなんとか収めようとしていますけれども‥‥‥ああ、駄目ね。完全に堕落し切って民衆を抑えきれていませんわ」
王城周辺の最終防衛ラインというべきか、騎士たちが重装備で押し寄せる民衆をなんとか跳ねのけようとしているのdがあ、数の暴力にはかなわない。
いや、そもそも今の国の騎士たちの練度も低すぎるがゆえに、自身を守ってしまったからこそ逆に長い苦しみを傍受することになっているようだ。
‥‥‥どんなゲームでも、大抵の場合エンディングが済めば、それでお終いとして切り上げる。
二周目、三周目を楽しむような者たちもいるだろうが…‥‥生憎ここはゲームではなく、現実ゆえに命が亡くなるまでこの状況は終わることが無い。
「というか、まさかそのまま国王すらも篭絡して、国を掌握し切ったヒロインもある意味すごいなぁ‥‥‥ここまでの大暴動が起きている時点で、もうダメになったんだろうけれどな」
「本当に魅了の魔法とかは無いのですわよね?」
「無いようだな。あれぞ真正の魔性の女ってことだったんだろう」
何にしても、腑抜けきった国は結果として、一番わかりやすい末路を辿ったことぐらいは良く理解させられるだろう。
自分達が楽しむだけに、自分達の世界だけに閉じこもり、その外を見なくなった彼らはこの状況を知らないだろう。
遊び惚け、色欲に溺れ、己が欲望のなすがままに動いた結果が…‥‥国の破滅か。
そう思いつつ、俺たちはその場からいったん空に飛びあがり、王城の方を覗いたが…‥‥様子を見る限り、彼らがこの状況を知るのは最後の時ぐらいか。
「このままヒロインがリセットボタン探しになるほど焦れば、それはそれで面白いかもしれないが、当然そんなものはない」
「というか、あのヒロイン、何をもって本当にここまで堂々たる破滅の道を歩んだのかしら…‥‥」
…‥‥実はあのゲーム、この数年の間に解析したところ、悪役令嬢だけに破滅ルートがあるわけではなかった。
何と、ヒロインの方にもしっかりと破滅ルートがいくつか用意されていたようなのだ。
ゲームでよくあるバッドエンドと言うやつなのだろうが、どうもそのエンドの類ではない。
「というかそもそも、それ自体が表に出ないようにされていたようだが…‥‥そのうちの一つを、思いっきりあのヒロインは自らの手で開いちゃったようだな」
「ヒロインの破滅ルート‥‥‥『傾国の女』かしらね」
長い年月をかけて、こちらは破滅ルートをすべて取り払いまくったというのに、あのヒロインはその努力を怠っていた。
いや、そもそも前世にプレイした記憶があるだろうけれども、普通はあるとは思わない破滅ルートを自然に歩みまくったのだろうが…‥‥‥何にしても、盛大にその破滅への道を突き進んだことに驚愕してしまう。
あのヒロイン、本当は人が持つ倫理観だとか、そう言うものが無かっただけではなかろうか‥‥‥?
全てがゲームであると認識していたとしても、普通はやらないようなことにまで手を染めているし‥‥‥もしかしたら、魂の根底から腐れ切った救いようのないものだったのかもしれない。
そう思いつつも、ヒロインをそこまで観察する趣味はない。
どうせもう、防衛ラインは越えられており、怒りに満ちた民衆が王城へ突き進んでいるのだから。
あの様子を見る限り、革命として血が流れるだろうが‥‥‥‥まぁ、そんなことはもう俺たちには関係ないか。
恋愛ゲームだの、攻略対象、ヒロイン、そして悪役令嬢というものはもう消えうせたようなものだからな‥‥‥‥
「…‥‥とは言え、最後の方にちょっとは姿を見せたいんだろ?」
「ええ、そうね。わたくし立派な魔女になりましたもの」
悪魔ゼリアスがそう問いかけると、元悪役令嬢であったシアは機嫌よく答える。
黒いドレスのような格好をしているが、これが彼女にとっての魔女の服装‥‥‥‥衣服のセンスだけは手出しができないから何とも言えんが、似合っているとは思う。ちょっと扇情的だけどな。
この数年で残っていたであろう微細な破滅ルートも消え失せ、契約が履行されて彼女は魔女となった。
契約時に言った代償は支払ってもらったが…‥‥うん、本当に堂々とするとは思わなかった。
「魔女となって見返したいという願いも、これで成就出来るだろう。最後に奴らに顔を見せ、やりたいことはやってしまえ」
「ええ、そうね。ついでにお礼も言っておきましょう」
「お礼?」
「そうよ。わたくしがそもそも魔女になりたいと言ったのは、破滅ルートから逃れるため…‥‥その破滅ルートの元凶でもある彼らがいなければ、わたくしはその道を選択しなかったもの」
それもそうか。貴族の令嬢であった彼女からしてみれば、そのまま何もなければ本当にただの貴族令嬢としての人生を‥‥‥いや、破滅しかない悪役令嬢としての人生を送ってそれで終わりになっていたからな。
でも、そんな人生の選択をせずに彼女は俺を呼び出し、契約し、魔女となった新しい人生を歩んでいる。
貴族家のファミリーネームも消え失せ、新しい魔女シアとして、順調に道を歩みだしているからな。
「ええ、魔女になって破滅を免れて、人生としては順風満帆になり始めましたわ。ああ、でも…‥」
「どうした、シア?」
ふと、彼らの元へ向かって本当に彼女がお礼を言いに行こうとしていたところで、足を止めてこちらに向いた。
「ねぇ、ゼリアス。一つ尋ねていいかしら?わたくしの破滅ルートってもうないと言えるわよね?」
「徹底的に解析したが‥‥‥もう無い様だ。あとは普通に、魔女としての人生を送れると思うぞ」
そもそも、魔女の場合人生という言葉が当てはまるのかという疑問があるが…‥‥そこは置いておくとしよう。
「破滅しないで済むのであれば、それで良いわ。ええ、彼らの元に行ってももう関係ない人物となり果てるでしょうし…‥‥その後のことで、ちょっと聞きたいなと思って」
にこやかにそう言いながら、彼女はそう告げる。
今はしない話だが、後でするようだしその時にでも話を聞くか。
そう思い、俺たちは改めて人生の終焉を迎える彼らの元へ、向かうのであった‥‥‥‥
…‥‥それから数日後、俺は彼女にやらかされた。
「‥‥‥あとが怖いというか、これなんて破滅ルートだろう」
「んー、でもその一度の破滅を乗り切れば、破滅ではないですわよね?」
「乗り切る前に俺が殺されかねないのだが!?」
少なくとも、悪魔ゼリアスはそのルートによって破滅しかけたのはまた別のお話。
いや、破滅とも言い難く、その後にきちんと話し合いなどによって乗り切ることは出来たともいえるが…‥元悪役令嬢と付く彼女の、見せなかった悪役の片鱗を見たような気にはなったのであった…‥‥
「‥‥ええ、破滅ではないですもの。それに、わたくしとしては非常にいい結果で終わりましたしね」
「お前のそのつやつやとした笑顔が今、一番悪役令嬢としての笑みに近いと思うんだが‥‥‥‥」
それこそ、恋愛ゲームの最後の場であり、退場後にはエンディングがあるだろう。
まぁ、そもそもそのゲーム自体が悪役令嬢の破滅ばかりだったが…‥‥
「‥‥‥全部の破滅ルートは消えたのは良いが、その変わりにこれはひどいな」
「ヒロインは、終わるまでなら全部良かったけれども、その後のことを考えていなかったのかしら‥‥?」
あの原作から改悪し、駄作にし過ぎた断罪劇から数年が経過し、俺たちはあの後どうなったのか久々に確認するために国へ戻って見たのだが‥‥‥そこはもう、国の体を成してなかった。
割とそれなりに整備されていたはずの道が荒れ放題であり、家の外壁などもボロボロになっており、あちこちで煙が上がったまま、燃えたまま。
暴動でも起きたかのように悲惨な状況であり、あちこちにネズミや野犬の巣ができあがっている。
それなのに、国はその状況を見向きもせずに…‥‥
「閉じこもったか…‥‥まぁ、あの様子だと、もう間もなく落城するだろうな」
「騎士たちがなんとか収めようとしていますけれども‥‥‥ああ、駄目ね。完全に堕落し切って民衆を抑えきれていませんわ」
王城周辺の最終防衛ラインというべきか、騎士たちが重装備で押し寄せる民衆をなんとか跳ねのけようとしているのdがあ、数の暴力にはかなわない。
いや、そもそも今の国の騎士たちの練度も低すぎるがゆえに、自身を守ってしまったからこそ逆に長い苦しみを傍受することになっているようだ。
‥‥‥どんなゲームでも、大抵の場合エンディングが済めば、それでお終いとして切り上げる。
二周目、三周目を楽しむような者たちもいるだろうが…‥‥生憎ここはゲームではなく、現実ゆえに命が亡くなるまでこの状況は終わることが無い。
「というか、まさかそのまま国王すらも篭絡して、国を掌握し切ったヒロインもある意味すごいなぁ‥‥‥ここまでの大暴動が起きている時点で、もうダメになったんだろうけれどな」
「本当に魅了の魔法とかは無いのですわよね?」
「無いようだな。あれぞ真正の魔性の女ってことだったんだろう」
何にしても、腑抜けきった国は結果として、一番わかりやすい末路を辿ったことぐらいは良く理解させられるだろう。
自分達が楽しむだけに、自分達の世界だけに閉じこもり、その外を見なくなった彼らはこの状況を知らないだろう。
遊び惚け、色欲に溺れ、己が欲望のなすがままに動いた結果が…‥‥国の破滅か。
そう思いつつ、俺たちはその場からいったん空に飛びあがり、王城の方を覗いたが…‥‥様子を見る限り、彼らがこの状況を知るのは最後の時ぐらいか。
「このままヒロインがリセットボタン探しになるほど焦れば、それはそれで面白いかもしれないが、当然そんなものはない」
「というか、あのヒロイン、何をもって本当にここまで堂々たる破滅の道を歩んだのかしら…‥‥」
…‥‥実はあのゲーム、この数年の間に解析したところ、悪役令嬢だけに破滅ルートがあるわけではなかった。
何と、ヒロインの方にもしっかりと破滅ルートがいくつか用意されていたようなのだ。
ゲームでよくあるバッドエンドと言うやつなのだろうが、どうもそのエンドの類ではない。
「というかそもそも、それ自体が表に出ないようにされていたようだが…‥‥そのうちの一つを、思いっきりあのヒロインは自らの手で開いちゃったようだな」
「ヒロインの破滅ルート‥‥‥『傾国の女』かしらね」
長い年月をかけて、こちらは破滅ルートをすべて取り払いまくったというのに、あのヒロインはその努力を怠っていた。
いや、そもそも前世にプレイした記憶があるだろうけれども、普通はあるとは思わない破滅ルートを自然に歩みまくったのだろうが…‥‥‥何にしても、盛大にその破滅への道を突き進んだことに驚愕してしまう。
あのヒロイン、本当は人が持つ倫理観だとか、そう言うものが無かっただけではなかろうか‥‥‥?
全てがゲームであると認識していたとしても、普通はやらないようなことにまで手を染めているし‥‥‥もしかしたら、魂の根底から腐れ切った救いようのないものだったのかもしれない。
そう思いつつも、ヒロインをそこまで観察する趣味はない。
どうせもう、防衛ラインは越えられており、怒りに満ちた民衆が王城へ突き進んでいるのだから。
あの様子を見る限り、革命として血が流れるだろうが‥‥‥‥まぁ、そんなことはもう俺たちには関係ないか。
恋愛ゲームだの、攻略対象、ヒロイン、そして悪役令嬢というものはもう消えうせたようなものだからな‥‥‥‥
「…‥‥とは言え、最後の方にちょっとは姿を見せたいんだろ?」
「ええ、そうね。わたくし立派な魔女になりましたもの」
悪魔ゼリアスがそう問いかけると、元悪役令嬢であったシアは機嫌よく答える。
黒いドレスのような格好をしているが、これが彼女にとっての魔女の服装‥‥‥‥衣服のセンスだけは手出しができないから何とも言えんが、似合っているとは思う。ちょっと扇情的だけどな。
この数年で残っていたであろう微細な破滅ルートも消え失せ、契約が履行されて彼女は魔女となった。
契約時に言った代償は支払ってもらったが…‥‥うん、本当に堂々とするとは思わなかった。
「魔女となって見返したいという願いも、これで成就出来るだろう。最後に奴らに顔を見せ、やりたいことはやってしまえ」
「ええ、そうね。ついでにお礼も言っておきましょう」
「お礼?」
「そうよ。わたくしがそもそも魔女になりたいと言ったのは、破滅ルートから逃れるため…‥‥その破滅ルートの元凶でもある彼らがいなければ、わたくしはその道を選択しなかったもの」
それもそうか。貴族の令嬢であった彼女からしてみれば、そのまま何もなければ本当にただの貴族令嬢としての人生を‥‥‥いや、破滅しかない悪役令嬢としての人生を送ってそれで終わりになっていたからな。
でも、そんな人生の選択をせずに彼女は俺を呼び出し、契約し、魔女となった新しい人生を歩んでいる。
貴族家のファミリーネームも消え失せ、新しい魔女シアとして、順調に道を歩みだしているからな。
「ええ、魔女になって破滅を免れて、人生としては順風満帆になり始めましたわ。ああ、でも…‥」
「どうした、シア?」
ふと、彼らの元へ向かって本当に彼女がお礼を言いに行こうとしていたところで、足を止めてこちらに向いた。
「ねぇ、ゼリアス。一つ尋ねていいかしら?わたくしの破滅ルートってもうないと言えるわよね?」
「徹底的に解析したが‥‥‥もう無い様だ。あとは普通に、魔女としての人生を送れると思うぞ」
そもそも、魔女の場合人生という言葉が当てはまるのかという疑問があるが…‥‥そこは置いておくとしよう。
「破滅しないで済むのであれば、それで良いわ。ええ、彼らの元に行ってももう関係ない人物となり果てるでしょうし…‥‥その後のことで、ちょっと聞きたいなと思って」
にこやかにそう言いながら、彼女はそう告げる。
今はしない話だが、後でするようだしその時にでも話を聞くか。
そう思い、俺たちは改めて人生の終焉を迎える彼らの元へ、向かうのであった‥‥‥‥
…‥‥それから数日後、俺は彼女にやらかされた。
「‥‥‥あとが怖いというか、これなんて破滅ルートだろう」
「んー、でもその一度の破滅を乗り切れば、破滅ではないですわよね?」
「乗り切る前に俺が殺されかねないのだが!?」
少なくとも、悪魔ゼリアスはそのルートによって破滅しかけたのはまた別のお話。
いや、破滅とも言い難く、その後にきちんと話し合いなどによって乗り切ることは出来たともいえるが…‥元悪役令嬢と付く彼女の、見せなかった悪役の片鱗を見たような気にはなったのであった…‥‥
「‥‥ええ、破滅ではないですもの。それに、わたくしとしては非常にいい結果で終わりましたしね」
「お前のそのつやつやとした笑顔が今、一番悪役令嬢としての笑みに近いと思うんだが‥‥‥‥」
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