転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波

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1章 これから始まる物語

1-4 何事が起きても意味はなく

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‥‥‥我が家にハクロを連れて帰り、森への行き来はしなくてよくなった。

 ついでに、薬の効果時間も測ってみたが、どうやら永続という事もなく、小さくなる薬の最大効果時間は24時間程度のようだ。


「まぁ、効いている間に飲み直せば延びるようだけど‥‥‥薬漬けのような字面は嫌だし、時々元のサイズになろっか」
【キュルル】

 部屋の中に戻って色々と確かめた後、手のひらサイズから枕サイズになるように調整した薬を飲んだハクロにそう問いかけると、ハクロは頷いた。

 うん、賢い蜘蛛である。モンスターだからというのもあるのだろうけれども、こうやって話が通じると色々楽だからね。にしても、蜘蛛がコクコク頷く光景って苦手な人が見たら恐怖だろうが‥‥‥まぁ、割とデフォルメのような感じの姿だし、そこは平気か。

 
 ハクロの種族が相も変わらず不明ではあるが、現状問題は無さそうである。

 

「それに、このサイズなら枕にちょうど良いか…‥‥いや、全身ずぼっと埋もれるようなのが一番いいけど、これはこれで‥‥‥」
【キュルル?】

 もふっとその柔らかい蜘蛛のお腹部分が、ちょうどいい枕となっている。

 あの元のサイズで全身で寝っ転がれるのも素晴らしいが、枕サイズなら枕サイズで、極上の枕となっている。

 一応、苦しくないのかなどと聞いてみたが、特にそう言う事もないようだ。

 むしろ、頭の熱が温かいのか、ハクロの方にとっても居心地が良いようで、互いに悪くない関係。

 これはこれで良い生活になりそうだと僕は思うのであった。








 それから薬の実験や、ハクロとの触れ合いの日々を過ごしていくと、あと3日ほどで僕自身が帝都の教育機関へ向かう時期となった。

 教育自体が義務付けられているようではあるが、全寮制でありつつ、教育機関での費用は国が持つそうで、あらかじめ教科書などを購入する必要はない。

 ついでに言うのであれば、バイトも認められているようで、小遣い稼ぎもしやすくはなるだろう。


「まぁ、仕送りしろとか言われたらそれはそれで面倒そうだけど‥‥‥ハクロの方は準備はいいかな?」
【キュルルルル!!】


 びしっと前足を掲げて返答しながら、荷造りをしているハクロ。

 自身の出す糸で布を織って、何かと作っていたのだ。


「ペットは許可されているらしいけれど、下手にやらかすのも不味いからね。いざとなればぬいぐるみとして変装できるようにガワとかも作っておいて損はないからね」
【キュルゥ】

 いや、ぬいぐるみというよりも着ぐるみかな、コレ。

 まぁ、サイズ的にはぴったりフィットのようだし、やり過ごすこともできるはず。

「一応、この家から出て行けるってのもありがたいしね…‥‥最近、父も母も厄介事が多くなったし、寮にいる間にうちがつぶれなければいいんだけどなぁ…‥‥」




 悲しいかな、この時期になって父と母の関係が更に悪化していた。

 ギャンブルにのめり込み始めるわ、借金を抱え込み始めるわ、愛人にばかり目を向けるわで‥‥‥家庭崩壊待ったなしな状態。

 下手すれば男爵家の存続自体が危ういのだが…‥‥どうせ僕は独立するつもりだし、気にしないほうが良いか。

 今のうちに縁を切っておくのもありかもしれないがそう言う手続きはまだわからないし、理解してから手続きを行う方が良いだろう。

「あとは、兄二人がいるはずだし、あっちでどうなっているのかも気になるが‥‥‥ま、それは着いたらでいいか」
【キュルキュル】

 うんうんとハクロは頷き、同意してくれる。

 長いことあっていない兄たちだけど、どうなっているのかは気にすることもないし、今はただ単純に教育機関がどのようなものか気になるだけだ。


「さてと、帝都行きの馬車が来る日まで、待っていようか」
【キュルゥ!】

 考えていても仕方がないし、向かうその時までの楽しみにしておくのであった…‥‥









―――――――――――――――――――
【‥‥‥キュルル】

‥‥‥その晩、すやすやと眠るアルスの枕になっていたハクロは、ふと目を覚ました。

 寝ているアルスを起こさないようにそっと動かしつつ、なんとなく感じ取った自身の変化に対応するために、机の上に置いてあった小さくなる薬の解除薬を飲んだ。



ぐびっぐびっ
【キュルルルル…‥‥】

 薬を飲んで元のサイズに戻るハクロ。

 部屋の大半を占める大きさになっていたが…‥‥窓から月明かりが差し込む中で、その体に変化が現れる。


ビシィッ!!

 蜘蛛の体の各所に亀裂が入り、隙間が出来上がる。

 そして丁寧に、ハクロは今まで自分を覆っていた皮を脱ぎ始めた。





 それは脱皮。

 カニやザリガニなどと同じように、蜘蛛もまた脱皮をするのだが、モンスターであるハクロも大きいとはいえ蜘蛛には間違いないので、脱皮をしないわけではない。

 ただ、その脱皮はいつもとは何か違うと、ハクロは感じ取っていたが‥‥‥ややてこずっていた。

【キュルル、キュルルルル…‥‥】

 よいしょよいしょと丁寧に脱ぎ去っていくので、やけに手間取ってしまう。

 というか、何か違うなぁっとハクロは思った。

 自身の大きかった身体が、何かこう、一回りも二回りも小さくなったかのような感覚。

 そして脱皮をし終えて見れば、何やら視点がいつもより高いような気がしていた。


【キュル?】

 ふと気が付いた、感覚の変化に首をかしげるハクロ。

 なんとなく前の方も重いというか、全体的にバランスが変わったような気がしなくもない。

 その変化が何なのか、自身の身体をペタペタと触り‥‥‥‥そこでようやく気が付いた。

【…‥‥キュルルル!?】

 先ほどまで、自分の頭だったものが下の方にあるというか、蜘蛛の体を腰をひねって見下ろせる状態に。

 触感を確かめていたのが前あしではなく、新たに生成されただということに。


【キュルルルル!!キュルルルル!!】
「んー‥‥‥何ハクロ?なんかあったのか…?」

 慌て過ぎて思わず頼れる相手として、アルスをゆすり起こしたが、彼は眠そうな目をこすりながらこちらを見て…‥‥驚愕したかのように目を見開いていた。

 そしてその目に映っていた自身の姿を、ハクロも改めて客観的に見ることができて驚愕した。


「‥‥‥え?ハクロ、だよね?」
【キュ、キュ】
「何で、人の体が刺さって…‥‥いや、生えているの?」
【キュ‥‥‥キュゥ?】

 互いに驚愕しすぎて何が起きたのかは理解できないが、これだけは言えるだろう。

 今の脱皮でハクロの巨大な蜘蛛の容姿が変化し…‥‥人の体を頭部に生やしていたことを。

 いや違う。どちらかと言えば、腰を掛けるような形になって、人の体が座っているかのような状態になっていたことを。


 しばし時間が停止したかのように思ったが、残念ながら時間は流れ、これが現実だということを二人に受け止めさせるのであった‥‥‥‥
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