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面倒事は、何故やってくる

#49 誰がやらかしたのデス

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SIDE???

――――――ああ、足りない。足りない、足りナイ、足リナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ、タリナイ!!


 その生物、いや、既に命がないのに動いているアンデッドたちは、心の中で狂ったように叫び始める。

 たった今、遂に追いついた、自分たちを作り上げた元凶を喰らおうとしたところまでは良い。

 だが、喰らおうとした寸前で、何者かの・・・・手によって不快な爆発が起き、どさくさに紛れてその場から消失してしまったのである。

 寸前に、超・強力な恨みを込めた呪いを一気に注げたので、まぁ良いだろう。

 だがしかし、いざやろうとしたところで逃れられてしまったその悔しさは、埋め合わせることができない。

【ジェガジェガジャゲェェェェェェッ!!】

 悔しさ、恨み、憎悪……それらを合わせ、彼らは叫ぶ。

 晴らしようのない雄たけびを上げ、自らのその叫びに崩壊をしかける。


……そう、そのアンデッドの集合体たちは、もはやその体を維持する限界に来ているのだ。

 あまりにも多くの死骸を取り込み、自身を維持するだけの魔力が足りないのである。



 だが、足りぬその魔力をどうすればいいのか、その集合体……もとい怪物は知っていた。

 足りぬなら、喰らって奪えば良いと。


「いたぞ!!あれだ!!」
「なんだあの怪物は!!どう見てもやばいやつじゃないか!!」
「恐らくアンデッド系統のモンスターだ!!光魔法や聖魔法などで討伐できるはずだ!!それらが使える魔法屋を呼べぇ!!」

 なにやら矮小な生き物が動いていることに、ソノ怪物は気が付く。

―――――丁度良イ。

 その足りないものを喰らう対象として、大勢いるようだ。

 その怪物が持つ、体中にあるすべての顔がにやりと不気味な笑みを浮かべ…‥‥動き始めるのであった。


―――――――――――――――――
SIDEシアン

……濛々と立ち上る煙。

 それが意味するところは、何かしらの襲撃があったのだろう。

 明らかな異常事態の中、ワゼが動いた。

「ご主人様、非常事態が起きた模様。直ちに馬車へ戻る事を推奨いたしマス」
「いや、言われなくても分かっている」

 こういう時は、とりあえず逃げたほうがいい。




 とりあえずは、馬車へ向かって…‥‥ん?

 ふと、その煙の挙がっているところを見れば、何かが下からのぼってきていた。

 煙ではない、ニュルニュルとした腕のような‥‥‥いや、違う。

 距離はまだあるとはいえ、大きいのかその部分は良く見えた。

【ゲジャゲジャゲジャァァァァァ!!】
「っ!?大量の顔の集合体!?」

 大きな声で叫ぶそれを見て、シアンはそう叫んだ。

 見れば、その腕のような、いや、触手のようなもののすべてに、びっしりとこれでもかと詰め込んでいるように、顔があったのだ。

 人間、ただの動物、モンスターの顔などがあり、不気味な声を上げ…‥‥さらに細かく分裂し、人々へ向かっていった。


【ゲジャゲェェッェェェェ!!】
「うわぁぁ!!なんだあれはぁぁぁ!?」
「ば、化け物が強襲してきたぞぉぉぉ!!」

 突然の強襲に、人々はパニックになる。

 そしてそのパニックをあざ笑うかのように顔触手は手当たり次第に体を伸ばし、一人、また一人と巻き付いては持っていく。

【なんですかあれ!?明らかに気持ち悪いんですが!!】
「それはこっちが聞きたいよ!!とりあえず皆逃げろぉぉぉ!!」

 謎の顔集合触手から逃げ出すべく、僕らはその場から走り出した。

「って、ハクロ、その背中に乗せてくれ!!そっちの方が早い!!」
【了解です!】

 自分の足よりも、糸を自由に使って逃げるハクロの方が早い。

 僕とワゼは素早く彼女の蜘蛛の部分の背中にしがみ付き、その場を離脱し始める。

「ちっ、後方から伸びてきたぞ!!」
【なんか嫌ですよ!!】
「お任せくださいませ、ご主人様。こういう事もあろうかと…‥‥」

 そう言うと、ワゼは腕を変形させた。

 その変形した先は‥‥‥ガトリング銃?

「『多重連射弾』発射デス」


ズガッガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!

 両腕がその武器へ変形し、ワゼは容赦なく顔触手へそれらを撃ちまくった。

 弾丸はどうやら体内で生成されている物らしく、エネルギーがある限り無尽蔵に降り注げるらしい。

……今どこぞやのフェンリルが、この光景を見て顔を青くする姿が見えたような気がするか、気のせいだろうか。

 とにもかくにも、銃弾の雨あられが降り注ぎ、その顔触手は次々と殲滅されていくが切りがない。

 しかも、すぐに再生しているようだし、これはもう元凶のほうを叩かねばしつこく生えてくるだろう。

……色合いとしぶとさ的に、どこの世界にも存在する黒き混沌油虫orGぽい。



 それはそうとして、いくら殲滅してもきりがない。

「元凶確認……しかし、私では殲滅不可能デス」

 ワゼがその元凶を見つけたようだが、その言葉はひどく苦々しいような声になっていた。

「どういうことだ?」
「距離的に、あちらの根元の方に見える大きな物体……アンデッドの集合体のような物が元凶と確定。ですが、私の武装ではアンデッド系に効果があるモノを取れまセン」

 意外と言うか、悪霊とかも冷酷に薙ぎ払いそうなワゼであったが、どうもアンデッド系に対しての対策が出来ていないらしい。

 自己進化と言う機能で可能になるかもしれないが、時間がなく、現時点では対応不可能のようだ。

【ワゼさんが無理な相手って絶望すぎませんかね!?】

 思わずハクロがそうツッコミを入れる。

「いえ、一応相手はアンデッド系なので聖・光などの魔法で対応可能。ただし、私にはどちらも使用不可能であり、武装を付けるには少々時間がありまセン」
「魔法で対応可能か…‥‥でも、その魔法使えるかな?」

 水や火ならば試したことがあったが、光は‥‥‥うん、明かり代わりにしか使ったことがない。

 だが、それでも効果がありそうならば、試す価値があるだろう。



 とは言え、全力でやると山をふっ飛ばした前例のような事が起きかねない。

 ならば、遠距離からの狙撃かつ被害が出ないように…‥‥

「‥‥‥ハクロ、少し高い所へ向かえるかな?」
【わかりました。えっと‥‥‥あの建物上で良いですかね?】
「ああ、そこで良い」
【了解です!】

ばしゅんっ!!と糸を出し、某巨人狩り並みの立体起動を見せて、触手から逃れつつ、ハクロの背に乗って僕らはそれなりに高い建物の上に到着する。

 近づいてくる触手はワゼが殲滅しつつ、その本体を僕は目に収めた。


 その本体の身体は、無数の顔のような物がうごめいており、それぞれの口からとらえた人たちを捕食しようとしている怪物だ。

 だが、この都市の人達がそう簡単に捕食されるだろうか?いや、その答えは否である。


 見れば、魔法で根性で妨害していたり、触手に噛みついたりして、なんとか抵抗している状態だ。

 そして幸いなことに、今から狙撃する位置からだと、巻き添えになる人はいないだろう。


「本体までは真っ直ぐ、着弾時に内部を貫き、そこから爆散するように…‥‥」

 集中し、一気に中で爆発するイメージを考える。

 とは言え、スナイパーでもないので命中性には不安が残る…‥‥けれども、僕は一人ではない。

「ワゼ、この一から魔法を当てるとして、命中するか?」
「いえ、誤差修正右30度、左へ3cmデス。‥‥‥後、下へ2度、斜め右上10度…‥‥そこデス」

 ワゼの指摘により、魔法の発射角度を調整する。

 あとは、運を天に任せるだけだ。

「一応、反動もそれなりにあるし……二人とも、支えてくれ」
「了解デス」
【わかりましたよ】

 威力的に細い軌道を通ることになっても、使う力は大きい。

 後ろから二人に支えられつつ、怪物へ狙いを定め……そして魔法を放つ!!

「『ライトカノン』!!」


 魔法の発動と同時に、それなりに太い光の束が一直線に怪物の下へ向かう。

 その速度は素早く、怪物の触手がそれに気が付いたときには、すでに遅かった。

 

 着弾し、その皮膚を貫き、内部に侵入し…‥‥そこで、一気に爆散。


ドドドドドドッガバァァァァァァァァン!!

 ぶぅっと膨れたかと思うと、怪物の身体が内部から爆散し、飛んでいく。

 触手に抵抗していた人たちも少々巻き添えになってしまったが‥‥‥見る限り、たぶん問題ない。

 何にしても、謎の怪物はこれで沈黙させられたようであった



 ‥‥‥‥しかし、あれはどこで、どのようにして発生したのだろうか?

 ワゼの分析だと、アンデッドの集合体らしいけれども、アンデッドってあんなのになるのかな?

 

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