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第1章:幼少期~少年期前編
2話 思い出してみて、確認して
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‥‥‥ゆっくりと目を開け、しばし頭がぼうっとする。
少しだけ時間が経ったところでようやく頭が働き、あのごたごたした転生とやらを思い出した。
「そっか、そんなことがあったっけ。今俺は新しい人生になっているんだったな」
体を起こし、今の状況を確認して俺は自覚してそうつぶやく。
生まれてすぐに記憶が戻るのではなく、少し時間が経過して記憶が戻って来たらしい。
中二病とかそういうものではなく、しっかりとした転生のようで、内容をはっきりと覚えていた。
「エルー!!起きたのかしらー?朝ごはんが出来たからさっさと来なさーい!!」
「あ、はーい!!待ってください母さん!!」
起床したてでまだ寝足りない気もしたが、それでも体をググっと伸ばして血流を良くして、部屋の外から聞こえてきた今世の母親の声に返事し、朝食の場へ向かった。
今の俺の名前はエル=アーロスという名前を得た、バリバリの5歳児である。
転生前の精神的な年齢を足すと良い大人と言って良いのだが、あれはあれで別物としての仕切りがあるのが、何となくテレビとかで見ていたような感覚があり、足した精神年齢というよりも、今の肉体のほうに引っ張られている感じがあるだろう。
うん、転生前の記憶を残されていたし、5歳のこの日になって思い出したというのはいいことだ。
というか、産まれてすぐに思い出すようなことがなくて本当によかった!!
生まれたての赤ん坊のころに記憶が戻っていたら、どう考えても離乳食とかおむつ替えとか授乳とかあっただろうし、純粋な0歳児の思考じゃない状態でやったらかなりきついのがわかるだろう。
そう考えると、ちょうどこのぐらいで記憶が戻って来てくれたことには感謝しかない。もしかするとあの聞こえてきた声の主がうまい事調節してくれたのかもしれないし、感謝をささげるならばその主にしよう。
とりあえず部屋を出て朝食の場へ向かえば、今世の母であるルイン=アーロスと、父親のヘルン=アーロスが既にその場にいた。
前世の方の父と母は‥‥うん、まぁ思い出してもここでは会えないから無理か。いや、よくよく考えたらあの両親はブラック企業と大差ないような感じの人達だったような‥‥でも、育ててくれた親なのは変わりはないので、別れたことに惜しい気もするが、区切りをつけて今の両親に目を向ける。
「お、起きたかエル。いつもならあと5分とか言っているのに、今日は早起きだな」
「そうねぇ。いつもは寝坊助だもんね」
「父さん、母さん、僕だってたまには早起きするよ!まぁ、今日はちょっと早く目が覚めただけなんだけどね」
両親にくすりと笑われつつ、俺は、もとい今世の僕はそう反論した。前世の記憶では「俺」と言っていたが、記憶が戻る前は「僕」って言っていたからね。一人称の変更は、もう少し自然と成長して来たら変えればいいだろう。5歳までなんも変わらない子供として成長してきたからこそ、記憶が戻っても違和感を覚えることもない。
朝食の席に着くと、いつもの母さんのお手製の朝食が机の上に並べられていた。
前世とは違う世界だが、基本的な農作物などは大差ないようで、美味しそうな料理だろう。
だが知っている。そこにあるジュースだけは、飲んじゃいけないことを。母さんが美容のために自分で飲むように作ったオリジナルドリンクは、舐めたら死ぬと今日までの経験が覚えているのだ。
なぜか母さんはぴんぴんしているけど、父さんと僕は死んだな…あれ?もしかしてまた転生する可能性もあったりしないよね?
「それじゃ、いただきまーす!」
ひとまず今は、そんな疑問を気にしないようにしつつ、お腹を満たすために朝食の席に着くのであった。
「ふぅ、それじゃまずは情報整理した方が良いかな…」
朝食後、僕は前世の記憶が戻ってから改めてこの世界の事を、記憶が戻る前の知識と合わせて確認していた。料理とかは違和感がないが、それでも所々違う点もあるだろう。
異世界に転生したようだが、お約束というべきか、どうも科学の方がそこまで発達しておらず、かと言って不便すぎる様なほど遅れてもいない、どっちつかずの中途半端な位置にあるらしい。
魔法とかもあると聞くし、色々な要因があるだろうがまだ情報を集めないと分からない点も多い。
でもひとつわかっているのは、なんでも、大昔から何度も何度もこの世界は滅びと再生を繰り返し、時たま古代文明と呼ばれる遺跡が見つかり、さらにその遺跡の中には摩訶不思議な道具がある超・古代文明と言う物があるそうだ。
ロマンあふれるような、なんかヤバそうな世界に転生したような気がしなくもないが‥うん、とりあえず気にしないでおこう。
その話は後にして、今の僕の状況を再確認しよう。
今世の家族がいる、このアーロス家は田舎の小さな村にある、ただの平民の一家だ。
この田舎にある村の名前は「ハウドリア村」で、この村がある領地は「ヘルバリア」。そしてこの領地を含めて所属している国が「ゴルスリア王国」なのだとか。統一性を持たせればいいのにと思うが、何かしらの言葉の意味があるらしい。前世とは違う点なのだろうか。
王国だけにしっかりしている王政の国で、平民、貴族、王族と階級があり、その中には神々に仕えるとされる修道士や神官、巫女と言った者たちがいるのだとか。中世の欧米とか考えると分かりやすいが、厄介事の香りがしなくもないので、深入りしすぎないようにしよう。
まぁ、神に関してはこの世界は多神教でもあり、ありとあらゆることに神々が宿る‥‥‥分かりやすく言うならば、日本の八百万の神というようなものに近いのかもしれない。
一部には、たった一つの神を国教に定める宗教国家なる物があるらしいけど、現在5歳の俺はそこまで知らず、せいぜい村にある教会で神父様が学ばせてくれることしか知らないのだ。絶対に厄介事の予感しかしないし、この世界の教会は大半が治療院兼寺子屋のようだし、気にしないほうが吉だと思う。
他にはこの世界の年月や月日などの数え方は前世の地球の‥‥‥日本と同じところがあるんだよね。絶対俺以外にも過去に転生者がいただろう。まぁ、転生するのが何も俺だけではないかもしれないし、過去に遭ってもおかしくはない。
むしろ、やってくれていて助かった。これで無茶苦茶分かりにくいのだときつかった。
とにもかくにも、ここまでが現状5歳まで過ごしていた記憶が戻る前の僕が知っていることである。
後は、異世界だけにロマンある魔法も存在を確認しているらしいが、現段階では不明な部分が多い。
教えられていないようだが、理由としてはちゃんとしたものがあるようで、なんでも火の魔法とかを使って火災をやらかした幼い子供がいたそうで、そこそこの分別出来るぐらいの年齢、大体の目安としては10歳になるまでは学ぶ機会はないらしい。
そのため、村の大人たちは農作業で畑に水をやったり収穫するときに魔法を使っているようだが、まだ5歳の僕はやり方を知らないのである。
やりたい気持ちはあるけどね。魔法、心をくすぐられる者だろう。
それと、気になる点も一つある。
今世の家族であるアーロス家は平民の家のはずなんだけど、前世の知識を得てから考えてみたら妙なところがある事に気が付いた。
うちの父さん、何の職業についているんだ?
この村は結構人口が少ない農村レベルで、同い年の子供はあまりいない。
とは言え、農村だけに基本的には税を収めるためにそれぞれの家では農家をしているはずなのだが、うちには畑はなく、父さんは朝早くに村に来る定期馬車‥‥‥現代風に言うならばバスの様な交通機関を利用してどこかへ向かい、夕暮頃には帰ってくるのだ。
稼ぎが良いのか、他の家よりは少々裕福なんだけど、一体何をしているのやら?
母さんに尋ねてみたら秘密と言われたけど‥‥‥たまに洗濯の手伝いをしているときに血の香りがしていたし、出来ればヤとかマのつくような職業ではないことを祈りたい。前世の父と考えると、比較にならないほど良い人なのは間違いないと思いたいのだが、やばい職業に就いていて欲しくないなぁ。
そんなわけで、一旦情報整理を終えた後は収集作業へ移るために、家の畑仕事もないから、知識を得るために教会に行って学ぶのである。
まぁ、10歳ごろの魔法を知る時期に学校のような教育機関へ行くことがこの国では義務付けられているそうで、それまでは遊んで暮らしてもいいらしいけれどね。目標であるスローライフを送るためには、きちんとした衣食住の確保のために、この世界の普通の情報を獲得したいところだ。
しかし、こうやって外に出るだけでも分かるけど、前世のブラック企業と比較にならないほど過ごしやすい農村になっていることも分かるだろう。
空気も綺麗でおいしいし、食べ物も安全で、水も良い。本当にのんびりとした田舎のようだ。
ああ、こんなところに転生できたことに関して、本気であの声の主には感謝だな。寝る前に、感謝の祈りをささげた方が良いかもしれない。
そんな事を考えつつ、ルンルンとした気分で足取り軽く教会へ向かうと、神父様が他に来ていた村の子供たちに既に勉強を教えていた。
「おはようございます神父様ー!今日も学びに来ましたー!」
「おお、元気がいい挨拶だと思ったら、朝早くから珍しいなエル君。では、今日も授業をしてあげよう」
挨拶をすればにこやかに返答してくれる、この神父様の名前はハンドランさん。
神父の証らしい帽子を被ってはいるが、少し後頭部にずれていて、無毛の部分が光を反射して眩しい光を頭に輝かせるナイスミドルである。
そういえば、この世界の名前の付け方も特徴がある。
個人名=名字とあり、この名字がその家の一族の名前を示すそうだが、中には個人名=何かのイニシャル=名字という人もいるようだ。
そういう名前の人は大抵貴族だそうで、王族になると名字部分に国名が入るらしい。
その事もあってか、個人名しかない人は単に名字を名乗っていないか、それとも何か訳ありの人らしく、詮索をしないのが暗黙の了解となっているそうな。
つまり、このハンドランさんも断片的にしか名前を知らないが、名だけの可能性もあるようで、過去に何かあった可能性があるけど、むやみに聞けないのだ
まぁ、別にどうでもいいし、今日もきちんと色々学びましょうか。この人疑問があれば本を出してすぐに調べて、分かりやすく説明してくれる人でもあるからね。
「さてと、そろそろ今日は皆にある事を教えようと思って、この本を持ってきたから、読み聞かせようか」
「あることって何ですか?」
神父様が言ったことに対して、来ていた子供の一人が質問した。
「あることって言うのはね、この世界にいる生きとし生けるものすべてに関しての、大まかな分類に関しての話だ。そのことを知ってくことで、互いの理解を深め、皆が平和に楽しくなれるようにするんだよ」
にこやかにそう言いながら、神父様は神話らしい話を交えて語りだした。
――――――――
‥‥‥それはそれは、はるか大昔のことである。
まだ、この世界に何もいなかったとき、とある神が降り立ち、この世界に命の種というものをばらまいた。
そして、この世界は大勢の生命が生まれ、繁栄をした。
だがしかし、命が増えることは望ましいことだが、綺麗なものばかりではなく、愚かなものも増えてしまう時がある。
そして、その愚かな者たちの中で時たま図に乗り過ぎて、世界を崩壊へ導く者がいたそうな。
ただ、その逆に愚か者を成敗し、崩壊を防ぐために導く者もいたそうである。
互にぶつかり合い、力関係によって破壊と再生、その繰り返しをこの世界は行っており、今もなおずっと続いているのだと‥‥‥
――――――――
「それで、その破壊と再生の証明となるのが古代文明や超・古代文明と言われているそうだけど、これはまた今度話そう。今日話すのは、その他の大勢の命についてだ
その命は世界中に多く散らばり、様々な種族などに分かれたらしい。
特徴を踏まえて大きく分けるとしたら、全部で5種類に分かれるそうだ。
「その5種類というのは、これだよ」
そう言いながら、神父様は地面に棒で得や説明文を簡潔に書きながら説明をし始めた。
――――――――――――――
『人間』
別名「ヒューマン」。今いる自分たちであり、この世界で一番数が多く、それでいて他の種族に比べたら弱い種族。けれども、心は誰にも劣らず、勇者と呼ばれるような強き者から、愚者と呼ばれるようなモノまで様々であり、もっともな特徴として、個よりも大勢の方が強いという所である。
あと、他の種族たちの姿のベースのようでもあり、繁殖力も強い(ここは子供にはまだ早い)。
『エルフ』
別名「森の人」と呼ばれており、耳がとがっており、美男美女が多い。魔法や矢の扱いに長けており、反対に力技には少し弱い。頭が固い人と柔らかい人の差が極端でもあり、ハーフエルフやダークエルフなど、種族の中では3番目に細かく分けられる。
また、基本的に長寿と言われるが、年齢を聞くのは注意が必要らしい。気にする人が多いそうだ。
『ドワーフ』
別名「鉄拳の人」。背丈は他の種族よりも低めだが、怪力な人が多く、鍛冶技術などに長けており、豪快な性格と酒豪な人が多い。女性はそうでもないが、男性は大人になると非常に毛深くなり、中には毛玉状態になる人もいるそうで、手入れが欠かせない。
毛玉状態の男性によるケダマリンピックなる祭りも開催されており、人気があるのだとか。
『獣人』
別名「野生の王」。人間ベースに獣の耳や尻尾、牙や爪などがあり、種族の分類は熊に犬など全種族の中でもややこしいほど多い。瞬発力が長けていたり、ドワーフに負けない怪力など他の種族の特徴の良いとこどりをしているようだが、非常に極端でその逆の悪い部分が目立つそうだ。
純粋さもあるようだが、その分真っ直ぐすぎてトラブルになることがあるので注意も必要。
『龍人』
別名「見守りの民」。体のどこかに鱗で覆われた部分があり、どの種族と比べても非常に全体の能力が高くバランスが良い。ただし、数は種族の中でも少なく、争いごとを引き起こしにくく、中立的でもあり不干渉を貫くことが多い。家族愛を非常に大事にしているのだが、恨みを買うと確実にあの世へ逝く。
なお、その鱗に関しては煎じて、薬になることもあるそうだが、基本的に激マズなので危険らしい。
――――――――――――――
おー、中々分かれているというか、思いっきり異世界定番的な種族が多い。少し余計な説明が混ざっているような気がしなくもないが、良い所ばかりではないという事なのだろう。
個人的にケダマリンピックが気になるな。なんだよ毛玉になるドワーフって、ツッコミどころが多いけど、面白そうな感じもするな。
「で、これらをまとめて5大種族だとか言われてはいるが、他にもあるけど‥‥‥一度に多くを覚えられないだろうし、あと一つ重要な事を話そうか」
どうやら他にも種族はあるようだが、それ以外のことを話すようだ。
「この村だと、大人たちで組む警戒隊のおかけで見ることは少ないけど、『モンスター』とよばれるものたちをしっているかい?」
「モンスターというと、この間、タコ助のおっちゃんが髪の毛を喰われたスライムの事なのかー?タコから禿に進化したやつだよね?」
「それ、どう違うの?どっちもつるつるって聞くよ?」
「そのあたりの違いは、個人の尊厳にかかわりそうなので言いにくいかな。まぁ、スライムもそうだね。‥‥‥そうか、先日やけに中央部分だけ禿げていたけど、そんなことがあったのか」
‥‥‥子供の一人が質問したけどさ、何があったその事件。悲劇で喜劇な話だよ。
「えっと、モンスターというのはこの種族に当てはまらなくてだね…」
――――――――――――――
『モンスター』
数や種類が多く、この世界のいたるところに存在する獣とはまた違う存在。
花や木、動植物に似た特徴を持つが、根本的な違いとして体内のどこかに「魔石」と呼ばれるものが入っている。
人を襲うものから、交易によって交流するものまで多種多様であり、中には他の種族と交わり、伴侶となるものまでいるそうである。そうなってくると亜人種族などと呼ばれるようにもなるのだという。
ほとんどの場合、何処からか自然と湧くのだが、繁殖して増えたり、人工的に作られるなど、未だに謎多き存在もである。
『スライム』
モンスターの中でもメジャーでありながら、不思議な特徴が多い生物。
ほとんどが液体状の身体を持ち、ポヨンポヨンと跳ねて移動するものやドロドロに溶けて移動するものなど様々な手段で動き、中には他の生き物を取り込んでどうかしたり、その地域に適応した特徴をもったりする。基本的には液体を好んで捕食するようだが、中には鋼鉄の歯を生やして鉱石を食べる猛者も存在していたりする。
基本的に大半がコアと呼ばれる部分を体に持ち、それを破壊されるとあっけなく逝ってしまうのだが、中にはコアが存在しないスライムもいるなど、定まった特徴を持ちづらい。
大半が非常に弱く、楽に倒せるのだが、大昔には山みたいに巨大なスライムが出現し、国一つを飲み込み、消化・吸収してしまったという記録がある。
――――――――――――――
「スライムは液体を好んで食べるけど、基本的な食事方法は獲物の消化・吸収で、ほぼ雑食でなんでも食えるといった特徴がある。それを活かして都会の方では下水道にわざと放ち、綺麗にしてしまうという荒業もやっているそうだけど中には人を襲うタイプもいるからね。モンスターの中でも最も変わりものがおおいようだね」
「へぇー、じゃああの髪の毛を食べた子もそうなのかー?」
「そういう事だよ。詳しい事は、まだまだよくわからないからスライム専門家とか言う人に聞いてみるのが良いかもね」
いるのかそんな専門家。
様々な種族がいるこの世界。その種族に特化した専門家がいてもおかしくはないけど、スライムの専門家の家ってなんかすごいカオスなことになっていそうだよな。
「ま、この村に出るのは基本スライムだからね。彼らは一匹見かけたら30体はいるというし、見かけたらすぐさま大人たちに知らせて、危険なやつだったらすぐさま退治してもらうことになるね。安全が確認できるようなものならば、遊んであげてもいい。スライムの体液は中には薬にもなるから、捉えて搾り取るのも手だろう」
スライム、この世界では少しG的な扱いと便利な獲物の中間ぐらいの立ち位置なのだろうか。
ちなみに、今世の知識によるとこの世界にもGがいるそうなんだよね。奴らめ、異世界にまで繁殖しているのか。
何はともあれ、今日の教会での授業はこれでお終いらしい。
せっかくなので、村の近くにある森に俺は遊びに行くことにした。
‥‥‥友達を連れず一人で?
いいじゃん。今世友人まだ少ないからね。教会にいた子供、僕よりもさらに幼いし、ちょっと相手にし辛いというか、同い年がほぼいない環境だしなぁ。
少々物寂しさを振り払いつつ、適当に周辺を散歩して情報を集め、整理をして進んでいく。
村の近くにある森は小鳥や野兎程度しかおらず、モンスターとしてもスライム程度で、そうそう危険な生物はいないらしい。よくあるゲームの始まりの街の周辺のような感覚だと思えば良いみたいだが、こういう場所だからこそのんびりできるという利点もあるだろう。
熊とか出たら困るけど、どうやらその類は人が立ち寄らないような深い山とかにしかいないようだし、安全かな?
物騒な童謡があるけどね。「ある貧血日和♪森の中の監獄♪熊さん人肉♪でぶるほどくった♪」みたいな、魔改造されて原型を失ったと思わしきものだが‥‥誰だよ、こんなのに変えた人。
「それにしても、この森は木の実が多いなぁ」
適当に散策して帰る予定だったけど、あちこちの気になる木の実は美味しいのでちょっとずつ取って食べ歩きをする。
この村の近くにある森はどうもかなり美味しい木の実が多く出来るようで、ちょっとしたおやつにも困らないのだ。
食用に向いているものが多く、念のために両親に見せたり、村の大人たちに聞いてみたけどほとんど安全であった。
まぁ、その話を聞いて取りに来たやつらもいるそうだけど‥‥‥どういうわけか、僕しか簡単に木の実を見つけられないようである。
もしかすると、あの時、断ったけど声の主が何かやらかそうとしてできた、チート能力なのかな?
木の実が見つけやすくなる能力‥‥‥微妙過ぎる。いや、スローライフをするうえで、食料確保は大事だし良いのか。
「甘い木の実も良いけど、辛いのも欲しいかな。もうちょっと奥に、ありそうな予感も」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
「!?」
もう少しだけ目当ての木の実を探そうとしていたところで、突然、誰かの悲鳴が聞こえた。
聞こえた感じ、声が高く、女性らしいけど何かこう、人とは違うような違和感を感じ取る。
けれども、悲鳴を上げる人がいるならば何が起きたのか確認をせざるを得ないだろう。
何かヤバい事だったら、こんな子供が向かってもどうにもならないけど、村に危険を知らせるためにかに見た方が良いかもしれない。
そう思いつつ悲鳴があった場所にたどり着いて見た現場は‥‥‥
『ひやぁぁぁぁぁぁ!!入ってこないで!!そして揉みこんでこないでくださいよぉぉぉぉぉぉ!!』
神父様の話にあったスライムらしいものに襲われている、綺麗な女性であった。
なんかこう、エッチな現場にありそうな現場だが、そんな事を思っている場合ではない。
襲われているようだし、襲われている彼女は全体的に白く見えるが、前世でも見たことがないような本当に美しい人で‥‥‥ん?
そこでふと、違和感を覚えたがすぐに気が付いた。
美しい女性なことは女性なのだが、腰回りの方で大きな蜘蛛の身体が‥‥‥あ、これ人間じゃないわ。神父様の話にあったモンスターか亜人の類かもしれない。
前世の知識基準だと、ゲームとかで見るようなアラクネとかいうやつなのだろうか?
何せよ、その綺麗なアラクネの彼女がスライムに襲われているらしいところへ、辿り着いてしまったようであった…
少しだけ時間が経ったところでようやく頭が働き、あのごたごたした転生とやらを思い出した。
「そっか、そんなことがあったっけ。今俺は新しい人生になっているんだったな」
体を起こし、今の状況を確認して俺は自覚してそうつぶやく。
生まれてすぐに記憶が戻るのではなく、少し時間が経過して記憶が戻って来たらしい。
中二病とかそういうものではなく、しっかりとした転生のようで、内容をはっきりと覚えていた。
「エルー!!起きたのかしらー?朝ごはんが出来たからさっさと来なさーい!!」
「あ、はーい!!待ってください母さん!!」
起床したてでまだ寝足りない気もしたが、それでも体をググっと伸ばして血流を良くして、部屋の外から聞こえてきた今世の母親の声に返事し、朝食の場へ向かった。
今の俺の名前はエル=アーロスという名前を得た、バリバリの5歳児である。
転生前の精神的な年齢を足すと良い大人と言って良いのだが、あれはあれで別物としての仕切りがあるのが、何となくテレビとかで見ていたような感覚があり、足した精神年齢というよりも、今の肉体のほうに引っ張られている感じがあるだろう。
うん、転生前の記憶を残されていたし、5歳のこの日になって思い出したというのはいいことだ。
というか、産まれてすぐに思い出すようなことがなくて本当によかった!!
生まれたての赤ん坊のころに記憶が戻っていたら、どう考えても離乳食とかおむつ替えとか授乳とかあっただろうし、純粋な0歳児の思考じゃない状態でやったらかなりきついのがわかるだろう。
そう考えると、ちょうどこのぐらいで記憶が戻って来てくれたことには感謝しかない。もしかするとあの聞こえてきた声の主がうまい事調節してくれたのかもしれないし、感謝をささげるならばその主にしよう。
とりあえず部屋を出て朝食の場へ向かえば、今世の母であるルイン=アーロスと、父親のヘルン=アーロスが既にその場にいた。
前世の方の父と母は‥‥うん、まぁ思い出してもここでは会えないから無理か。いや、よくよく考えたらあの両親はブラック企業と大差ないような感じの人達だったような‥‥でも、育ててくれた親なのは変わりはないので、別れたことに惜しい気もするが、区切りをつけて今の両親に目を向ける。
「お、起きたかエル。いつもならあと5分とか言っているのに、今日は早起きだな」
「そうねぇ。いつもは寝坊助だもんね」
「父さん、母さん、僕だってたまには早起きするよ!まぁ、今日はちょっと早く目が覚めただけなんだけどね」
両親にくすりと笑われつつ、俺は、もとい今世の僕はそう反論した。前世の記憶では「俺」と言っていたが、記憶が戻る前は「僕」って言っていたからね。一人称の変更は、もう少し自然と成長して来たら変えればいいだろう。5歳までなんも変わらない子供として成長してきたからこそ、記憶が戻っても違和感を覚えることもない。
朝食の席に着くと、いつもの母さんのお手製の朝食が机の上に並べられていた。
前世とは違う世界だが、基本的な農作物などは大差ないようで、美味しそうな料理だろう。
だが知っている。そこにあるジュースだけは、飲んじゃいけないことを。母さんが美容のために自分で飲むように作ったオリジナルドリンクは、舐めたら死ぬと今日までの経験が覚えているのだ。
なぜか母さんはぴんぴんしているけど、父さんと僕は死んだな…あれ?もしかしてまた転生する可能性もあったりしないよね?
「それじゃ、いただきまーす!」
ひとまず今は、そんな疑問を気にしないようにしつつ、お腹を満たすために朝食の席に着くのであった。
「ふぅ、それじゃまずは情報整理した方が良いかな…」
朝食後、僕は前世の記憶が戻ってから改めてこの世界の事を、記憶が戻る前の知識と合わせて確認していた。料理とかは違和感がないが、それでも所々違う点もあるだろう。
異世界に転生したようだが、お約束というべきか、どうも科学の方がそこまで発達しておらず、かと言って不便すぎる様なほど遅れてもいない、どっちつかずの中途半端な位置にあるらしい。
魔法とかもあると聞くし、色々な要因があるだろうがまだ情報を集めないと分からない点も多い。
でもひとつわかっているのは、なんでも、大昔から何度も何度もこの世界は滅びと再生を繰り返し、時たま古代文明と呼ばれる遺跡が見つかり、さらにその遺跡の中には摩訶不思議な道具がある超・古代文明と言う物があるそうだ。
ロマンあふれるような、なんかヤバそうな世界に転生したような気がしなくもないが‥うん、とりあえず気にしないでおこう。
その話は後にして、今の僕の状況を再確認しよう。
今世の家族がいる、このアーロス家は田舎の小さな村にある、ただの平民の一家だ。
この田舎にある村の名前は「ハウドリア村」で、この村がある領地は「ヘルバリア」。そしてこの領地を含めて所属している国が「ゴルスリア王国」なのだとか。統一性を持たせればいいのにと思うが、何かしらの言葉の意味があるらしい。前世とは違う点なのだろうか。
王国だけにしっかりしている王政の国で、平民、貴族、王族と階級があり、その中には神々に仕えるとされる修道士や神官、巫女と言った者たちがいるのだとか。中世の欧米とか考えると分かりやすいが、厄介事の香りがしなくもないので、深入りしすぎないようにしよう。
まぁ、神に関してはこの世界は多神教でもあり、ありとあらゆることに神々が宿る‥‥‥分かりやすく言うならば、日本の八百万の神というようなものに近いのかもしれない。
一部には、たった一つの神を国教に定める宗教国家なる物があるらしいけど、現在5歳の俺はそこまで知らず、せいぜい村にある教会で神父様が学ばせてくれることしか知らないのだ。絶対に厄介事の予感しかしないし、この世界の教会は大半が治療院兼寺子屋のようだし、気にしないほうが吉だと思う。
他にはこの世界の年月や月日などの数え方は前世の地球の‥‥‥日本と同じところがあるんだよね。絶対俺以外にも過去に転生者がいただろう。まぁ、転生するのが何も俺だけではないかもしれないし、過去に遭ってもおかしくはない。
むしろ、やってくれていて助かった。これで無茶苦茶分かりにくいのだときつかった。
とにもかくにも、ここまでが現状5歳まで過ごしていた記憶が戻る前の僕が知っていることである。
後は、異世界だけにロマンある魔法も存在を確認しているらしいが、現段階では不明な部分が多い。
教えられていないようだが、理由としてはちゃんとしたものがあるようで、なんでも火の魔法とかを使って火災をやらかした幼い子供がいたそうで、そこそこの分別出来るぐらいの年齢、大体の目安としては10歳になるまでは学ぶ機会はないらしい。
そのため、村の大人たちは農作業で畑に水をやったり収穫するときに魔法を使っているようだが、まだ5歳の僕はやり方を知らないのである。
やりたい気持ちはあるけどね。魔法、心をくすぐられる者だろう。
それと、気になる点も一つある。
今世の家族であるアーロス家は平民の家のはずなんだけど、前世の知識を得てから考えてみたら妙なところがある事に気が付いた。
うちの父さん、何の職業についているんだ?
この村は結構人口が少ない農村レベルで、同い年の子供はあまりいない。
とは言え、農村だけに基本的には税を収めるためにそれぞれの家では農家をしているはずなのだが、うちには畑はなく、父さんは朝早くに村に来る定期馬車‥‥‥現代風に言うならばバスの様な交通機関を利用してどこかへ向かい、夕暮頃には帰ってくるのだ。
稼ぎが良いのか、他の家よりは少々裕福なんだけど、一体何をしているのやら?
母さんに尋ねてみたら秘密と言われたけど‥‥‥たまに洗濯の手伝いをしているときに血の香りがしていたし、出来ればヤとかマのつくような職業ではないことを祈りたい。前世の父と考えると、比較にならないほど良い人なのは間違いないと思いたいのだが、やばい職業に就いていて欲しくないなぁ。
そんなわけで、一旦情報整理を終えた後は収集作業へ移るために、家の畑仕事もないから、知識を得るために教会に行って学ぶのである。
まぁ、10歳ごろの魔法を知る時期に学校のような教育機関へ行くことがこの国では義務付けられているそうで、それまでは遊んで暮らしてもいいらしいけれどね。目標であるスローライフを送るためには、きちんとした衣食住の確保のために、この世界の普通の情報を獲得したいところだ。
しかし、こうやって外に出るだけでも分かるけど、前世のブラック企業と比較にならないほど過ごしやすい農村になっていることも分かるだろう。
空気も綺麗でおいしいし、食べ物も安全で、水も良い。本当にのんびりとした田舎のようだ。
ああ、こんなところに転生できたことに関して、本気であの声の主には感謝だな。寝る前に、感謝の祈りをささげた方が良いかもしれない。
そんな事を考えつつ、ルンルンとした気分で足取り軽く教会へ向かうと、神父様が他に来ていた村の子供たちに既に勉強を教えていた。
「おはようございます神父様ー!今日も学びに来ましたー!」
「おお、元気がいい挨拶だと思ったら、朝早くから珍しいなエル君。では、今日も授業をしてあげよう」
挨拶をすればにこやかに返答してくれる、この神父様の名前はハンドランさん。
神父の証らしい帽子を被ってはいるが、少し後頭部にずれていて、無毛の部分が光を反射して眩しい光を頭に輝かせるナイスミドルである。
そういえば、この世界の名前の付け方も特徴がある。
個人名=名字とあり、この名字がその家の一族の名前を示すそうだが、中には個人名=何かのイニシャル=名字という人もいるようだ。
そういう名前の人は大抵貴族だそうで、王族になると名字部分に国名が入るらしい。
その事もあってか、個人名しかない人は単に名字を名乗っていないか、それとも何か訳ありの人らしく、詮索をしないのが暗黙の了解となっているそうな。
つまり、このハンドランさんも断片的にしか名前を知らないが、名だけの可能性もあるようで、過去に何かあった可能性があるけど、むやみに聞けないのだ
まぁ、別にどうでもいいし、今日もきちんと色々学びましょうか。この人疑問があれば本を出してすぐに調べて、分かりやすく説明してくれる人でもあるからね。
「さてと、そろそろ今日は皆にある事を教えようと思って、この本を持ってきたから、読み聞かせようか」
「あることって何ですか?」
神父様が言ったことに対して、来ていた子供の一人が質問した。
「あることって言うのはね、この世界にいる生きとし生けるものすべてに関しての、大まかな分類に関しての話だ。そのことを知ってくことで、互いの理解を深め、皆が平和に楽しくなれるようにするんだよ」
にこやかにそう言いながら、神父様は神話らしい話を交えて語りだした。
――――――――
‥‥‥それはそれは、はるか大昔のことである。
まだ、この世界に何もいなかったとき、とある神が降り立ち、この世界に命の種というものをばらまいた。
そして、この世界は大勢の生命が生まれ、繁栄をした。
だがしかし、命が増えることは望ましいことだが、綺麗なものばかりではなく、愚かなものも増えてしまう時がある。
そして、その愚かな者たちの中で時たま図に乗り過ぎて、世界を崩壊へ導く者がいたそうな。
ただ、その逆に愚か者を成敗し、崩壊を防ぐために導く者もいたそうである。
互にぶつかり合い、力関係によって破壊と再生、その繰り返しをこの世界は行っており、今もなおずっと続いているのだと‥‥‥
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「それで、その破壊と再生の証明となるのが古代文明や超・古代文明と言われているそうだけど、これはまた今度話そう。今日話すのは、その他の大勢の命についてだ
その命は世界中に多く散らばり、様々な種族などに分かれたらしい。
特徴を踏まえて大きく分けるとしたら、全部で5種類に分かれるそうだ。
「その5種類というのは、これだよ」
そう言いながら、神父様は地面に棒で得や説明文を簡潔に書きながら説明をし始めた。
――――――――――――――
『人間』
別名「ヒューマン」。今いる自分たちであり、この世界で一番数が多く、それでいて他の種族に比べたら弱い種族。けれども、心は誰にも劣らず、勇者と呼ばれるような強き者から、愚者と呼ばれるようなモノまで様々であり、もっともな特徴として、個よりも大勢の方が強いという所である。
あと、他の種族たちの姿のベースのようでもあり、繁殖力も強い(ここは子供にはまだ早い)。
『エルフ』
別名「森の人」と呼ばれており、耳がとがっており、美男美女が多い。魔法や矢の扱いに長けており、反対に力技には少し弱い。頭が固い人と柔らかい人の差が極端でもあり、ハーフエルフやダークエルフなど、種族の中では3番目に細かく分けられる。
また、基本的に長寿と言われるが、年齢を聞くのは注意が必要らしい。気にする人が多いそうだ。
『ドワーフ』
別名「鉄拳の人」。背丈は他の種族よりも低めだが、怪力な人が多く、鍛冶技術などに長けており、豪快な性格と酒豪な人が多い。女性はそうでもないが、男性は大人になると非常に毛深くなり、中には毛玉状態になる人もいるそうで、手入れが欠かせない。
毛玉状態の男性によるケダマリンピックなる祭りも開催されており、人気があるのだとか。
『獣人』
別名「野生の王」。人間ベースに獣の耳や尻尾、牙や爪などがあり、種族の分類は熊に犬など全種族の中でもややこしいほど多い。瞬発力が長けていたり、ドワーフに負けない怪力など他の種族の特徴の良いとこどりをしているようだが、非常に極端でその逆の悪い部分が目立つそうだ。
純粋さもあるようだが、その分真っ直ぐすぎてトラブルになることがあるので注意も必要。
『龍人』
別名「見守りの民」。体のどこかに鱗で覆われた部分があり、どの種族と比べても非常に全体の能力が高くバランスが良い。ただし、数は種族の中でも少なく、争いごとを引き起こしにくく、中立的でもあり不干渉を貫くことが多い。家族愛を非常に大事にしているのだが、恨みを買うと確実にあの世へ逝く。
なお、その鱗に関しては煎じて、薬になることもあるそうだが、基本的に激マズなので危険らしい。
――――――――――――――
おー、中々分かれているというか、思いっきり異世界定番的な種族が多い。少し余計な説明が混ざっているような気がしなくもないが、良い所ばかりではないという事なのだろう。
個人的にケダマリンピックが気になるな。なんだよ毛玉になるドワーフって、ツッコミどころが多いけど、面白そうな感じもするな。
「で、これらをまとめて5大種族だとか言われてはいるが、他にもあるけど‥‥‥一度に多くを覚えられないだろうし、あと一つ重要な事を話そうか」
どうやら他にも種族はあるようだが、それ以外のことを話すようだ。
「この村だと、大人たちで組む警戒隊のおかけで見ることは少ないけど、『モンスター』とよばれるものたちをしっているかい?」
「モンスターというと、この間、タコ助のおっちゃんが髪の毛を喰われたスライムの事なのかー?タコから禿に進化したやつだよね?」
「それ、どう違うの?どっちもつるつるって聞くよ?」
「そのあたりの違いは、個人の尊厳にかかわりそうなので言いにくいかな。まぁ、スライムもそうだね。‥‥‥そうか、先日やけに中央部分だけ禿げていたけど、そんなことがあったのか」
‥‥‥子供の一人が質問したけどさ、何があったその事件。悲劇で喜劇な話だよ。
「えっと、モンスターというのはこの種族に当てはまらなくてだね…」
――――――――――――――
『モンスター』
数や種類が多く、この世界のいたるところに存在する獣とはまた違う存在。
花や木、動植物に似た特徴を持つが、根本的な違いとして体内のどこかに「魔石」と呼ばれるものが入っている。
人を襲うものから、交易によって交流するものまで多種多様であり、中には他の種族と交わり、伴侶となるものまでいるそうである。そうなってくると亜人種族などと呼ばれるようにもなるのだという。
ほとんどの場合、何処からか自然と湧くのだが、繁殖して増えたり、人工的に作られるなど、未だに謎多き存在もである。
『スライム』
モンスターの中でもメジャーでありながら、不思議な特徴が多い生物。
ほとんどが液体状の身体を持ち、ポヨンポヨンと跳ねて移動するものやドロドロに溶けて移動するものなど様々な手段で動き、中には他の生き物を取り込んでどうかしたり、その地域に適応した特徴をもったりする。基本的には液体を好んで捕食するようだが、中には鋼鉄の歯を生やして鉱石を食べる猛者も存在していたりする。
基本的に大半がコアと呼ばれる部分を体に持ち、それを破壊されるとあっけなく逝ってしまうのだが、中にはコアが存在しないスライムもいるなど、定まった特徴を持ちづらい。
大半が非常に弱く、楽に倒せるのだが、大昔には山みたいに巨大なスライムが出現し、国一つを飲み込み、消化・吸収してしまったという記録がある。
――――――――――――――
「スライムは液体を好んで食べるけど、基本的な食事方法は獲物の消化・吸収で、ほぼ雑食でなんでも食えるといった特徴がある。それを活かして都会の方では下水道にわざと放ち、綺麗にしてしまうという荒業もやっているそうだけど中には人を襲うタイプもいるからね。モンスターの中でも最も変わりものがおおいようだね」
「へぇー、じゃああの髪の毛を食べた子もそうなのかー?」
「そういう事だよ。詳しい事は、まだまだよくわからないからスライム専門家とか言う人に聞いてみるのが良いかもね」
いるのかそんな専門家。
様々な種族がいるこの世界。その種族に特化した専門家がいてもおかしくはないけど、スライムの専門家の家ってなんかすごいカオスなことになっていそうだよな。
「ま、この村に出るのは基本スライムだからね。彼らは一匹見かけたら30体はいるというし、見かけたらすぐさま大人たちに知らせて、危険なやつだったらすぐさま退治してもらうことになるね。安全が確認できるようなものならば、遊んであげてもいい。スライムの体液は中には薬にもなるから、捉えて搾り取るのも手だろう」
スライム、この世界では少しG的な扱いと便利な獲物の中間ぐらいの立ち位置なのだろうか。
ちなみに、今世の知識によるとこの世界にもGがいるそうなんだよね。奴らめ、異世界にまで繁殖しているのか。
何はともあれ、今日の教会での授業はこれでお終いらしい。
せっかくなので、村の近くにある森に俺は遊びに行くことにした。
‥‥‥友達を連れず一人で?
いいじゃん。今世友人まだ少ないからね。教会にいた子供、僕よりもさらに幼いし、ちょっと相手にし辛いというか、同い年がほぼいない環境だしなぁ。
少々物寂しさを振り払いつつ、適当に周辺を散歩して情報を集め、整理をして進んでいく。
村の近くにある森は小鳥や野兎程度しかおらず、モンスターとしてもスライム程度で、そうそう危険な生物はいないらしい。よくあるゲームの始まりの街の周辺のような感覚だと思えば良いみたいだが、こういう場所だからこそのんびりできるという利点もあるだろう。
熊とか出たら困るけど、どうやらその類は人が立ち寄らないような深い山とかにしかいないようだし、安全かな?
物騒な童謡があるけどね。「ある貧血日和♪森の中の監獄♪熊さん人肉♪でぶるほどくった♪」みたいな、魔改造されて原型を失ったと思わしきものだが‥‥誰だよ、こんなのに変えた人。
「それにしても、この森は木の実が多いなぁ」
適当に散策して帰る予定だったけど、あちこちの気になる木の実は美味しいのでちょっとずつ取って食べ歩きをする。
この村の近くにある森はどうもかなり美味しい木の実が多く出来るようで、ちょっとしたおやつにも困らないのだ。
食用に向いているものが多く、念のために両親に見せたり、村の大人たちに聞いてみたけどほとんど安全であった。
まぁ、その話を聞いて取りに来たやつらもいるそうだけど‥‥‥どういうわけか、僕しか簡単に木の実を見つけられないようである。
もしかすると、あの時、断ったけど声の主が何かやらかそうとしてできた、チート能力なのかな?
木の実が見つけやすくなる能力‥‥‥微妙過ぎる。いや、スローライフをするうえで、食料確保は大事だし良いのか。
「甘い木の実も良いけど、辛いのも欲しいかな。もうちょっと奥に、ありそうな予感も」
『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
「!?」
もう少しだけ目当ての木の実を探そうとしていたところで、突然、誰かの悲鳴が聞こえた。
聞こえた感じ、声が高く、女性らしいけど何かこう、人とは違うような違和感を感じ取る。
けれども、悲鳴を上げる人がいるならば何が起きたのか確認をせざるを得ないだろう。
何かヤバい事だったら、こんな子供が向かってもどうにもならないけど、村に危険を知らせるためにかに見た方が良いかもしれない。
そう思いつつ悲鳴があった場所にたどり着いて見た現場は‥‥‥
『ひやぁぁぁぁぁぁ!!入ってこないで!!そして揉みこんでこないでくださいよぉぉぉぉぉぉ!!』
神父様の話にあったスライムらしいものに襲われている、綺麗な女性であった。
なんかこう、エッチな現場にありそうな現場だが、そんな事を思っている場合ではない。
襲われているようだし、襲われている彼女は全体的に白く見えるが、前世でも見たことがないような本当に美しい人で‥‥‥ん?
そこでふと、違和感を覚えたがすぐに気が付いた。
美しい女性なことは女性なのだが、腰回りの方で大きな蜘蛛の身体が‥‥‥あ、これ人間じゃないわ。神父様の話にあったモンスターか亜人の類かもしれない。
前世の知識基準だと、ゲームとかで見るようなアラクネとかいうやつなのだろうか?
何せよ、その綺麗なアラクネの彼女がスライムに襲われているらしいところへ、辿り着いてしまったようであった…
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