絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波

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少し広がっていく関係性

log-143 教えはするが、結果は覚えている者次第

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…テスト勉強は、誰もがバッチリできたと思うだろう。

 だが、結局のところそれを活かすのは自分自身であり、いかにしてその全てを発揮できるかはその人次第。

 だからこそ、彼女たちは見守るしかできないというか…

【そもそも、私たち従魔扱いでテストを受けなくていいですが…ジャックが無事に良い点数を取れるように、祈りたいですね】
【なぁに、我が君ならば問題あるまいよ。我らが出せることを出し、それを受け取ってもらった。あとはそれを、活かしてもらうだけだぜ】
【なの~、こっそり窓から見たけど、皆ものすっごく頑張っていたのなの!】

 テスト時間中、ハクロ達は寮室に集まり、ジャックが無事にテストを乗り切れるかどうか、少しばかりやきもきしていたり、あるいは自分たちの主だからこそ信じればいいとどっしりとしたりと、それぞれの反応を見せていた。

 彼女たちはテストを受ける必要がないからこそ、見守るだけで良い。
 受けないからこそ、受けるジャックを思うことしかできない。

 色々と学びを与える立場になっているからこそ、与えられた者たちを思う。

【ところでファイは?】
【今日はギルドの監査らしいのなの。他国のほうから年に数回のもので、出張扱いだけどここのギルド員としての対応しているらしいなの】










【---ふむ、ここの資料は問題ないようですネ】
「良かったぁ、いや本当にこういう監査の資料って、ちゃんと見ないとやばいのよねぇ…」

…エルメリア帝国の帝都ギルド内。

 ギルド内での監査日が来てあちこち必要な資料をまとめなおし、職員と一緒にファイは監査を受けていた。

「ふむ、ここの数値はあってますが、こちらの資金の流れは?」
【ここは郊外復興費用のための特別基金でして、流れはこちらでより細分化されテ…】

「こちらの契約書類、89%は書式に問題ありませんが、残りのほうで不備があるようです」
【ふむ、ああ、これは34号のほうの計算にしてあるので、こちらであっているかト。でもこっちは…】



「…ファイさんがテキパキしてくれるおかげで、物凄く楽」
「本当に、助かるな…」

 監査に対して適切な対応を素早くとるファイの姿に、そうつぶやく職員たち。

 モンスターであり、他国のギルド職員でもある彼女とは言え、出張でここに来てたった数日で仕事を覚えてしまい、ここでもその仕事ぶりを発揮しているのだ。

「本当に、ああいう職員スライムが欲しくなるが…うちに本気で引き込めないか?」
「いや、あの人、人と言うかスライムだけど他国の職員かつ、他国の従魔だから。れっきとした人の者だからそれはできない」
「ぐぅっ、ならば彼女のようなスライムを作るように、要請して…」
「「「それが出来たら苦労はしないんですよね…」」」

 職員の言葉に対して、重い溜息を吐くものたち。

 スライムは人工的に製造可能なモンスターとしては代表格と言って良いのだが、ファイのようなスライムを作れと言われても、そううまくできるわけがない。

 そもそも、ジェリースライムとしての分類になっている以上、一度は進化しており、この知性が最初からあったかどうかは定かではないのだ。

「あの、監査の者ですが…先ほどから聞こえてますが、彼女はここの職員ではないのでしょうか」
「正確に言えば、他国の出張扱いの職員ですが…何か、ありましたでしょうか?」
「いえ、監査している側が言うのもなんですが、本当にその手際が良くて…こっちでも雇えないかなと思いまして」

 調べている側からしても、欲しくなる人材、いや、スライム材。
 しかし、そう簡単に手にできないからこそ、惜しくもある。

「いつか、彼女の開発者を探し出して、どうにか二号三号四号と…」
「それが、グラビティ王国側のギルドも密かに捜索しているようで、こちらとの協力を模索すれば…」

 知らぬところで、ファイの開発者への捜索願がより強化されて行ったのであった…





「…ここの公式はハクロ達が教えてくれたところで…なんだろう、気のせいか他のほうに意識が向くような…?」

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