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45 目を離すとこれである
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――モフン
―――モフンモフン
――――モフモフフワフワ~ン
「…‥‥いや、なんかおかしい感触だろぉぉぉぉぉ!!」
なにやらフワフワモコモコした感触に気が付き、ディーは思わず大声でツッコミを入れた。
「メェェェ!?」
「メェェェ!!」
「メメェェメ!?」
「うわっ!?」
その声に驚いたのか、気が付けば周囲にいた謎のフワフワモコモコ生物たちが声を上げたことに俺は気が付いた。
「く、『クラウドシープ』の群れ…‥?」
―――――――――――――――――
『クラウドシープ』
大空に浮かぶ雲のようにフワフワした見た目であり、その触り心地は極上の羊毛以上のものを誇る、羊のような見た目でありながらも、実は牛の方に近いとされるモンスター。
ミルクも絞る事も可能であり、召喚士たちにとっては癒しと食料の面で役立つ点で召喚獣にしたいモンスターとして挙げられている。
―――――――――――――――
どうやら俺は今、このシープたちの上に乗り込んでしまっているらしい。
「って、いやいやいや、まずは何で俺はここに‥‥‥あ」
そこで、何故この状況になっているのか、俺は思い出した。
‥‥‥ダンジョン調査中に、俺は落とし穴に落ちて、落下中に気を失っていた。
結構落ちたような気もするが、どうもこのシープたちの上に運よく当たったようで、下の方の硬い地面とかにあたらず、怪我無く無事でいたらしい。
群れがぎっしりと詰まっていて、その上ゆえに足の踏み場もないどころか、体がその極上の毛に包まれて沈み込んでいるが‥‥‥とにもかくにも、命拾いしたことは間違いないだろう。
ダンジョンの落とし穴には、串刺しにされたり、毒沼に落ちたりする者が多いという話もあったし‥‥‥今回ばかりは、運が良かったに違いない。
「でも、ここはどこだ‥‥?」
気絶したとはいえ、それなりに落下していたのは間違いないだろう。
元の階層から1~2階層以上は落ちているとみて良いだろうが‥‥情報がないと、どうも心元がない。
「っと、そうだ!召喚してノインたちを呼べばいいか」
相当落下して距離が離れていると思えるが、召喚獣を召喚するのに支障はない。
彼女達さえ呼べば、落下した後の調査班の状況なども分かるだろうし、さっさと呼ぶべきだろう。
「ノイン、カトレア、ルビー、召喚!!」
一度召喚したからこそ、詠唱分を省け、彼女達を召喚する。
さぁ、これで時間の経過などもしっかりと‥‥‥
「メェェェ!!」
「メェェェ!!」
「ンメェェェ!!」
「っと!?」
突然召喚陣が現れ、発光したことに驚いたのかシープたちが動きはじめ、ぐらっと足場になっていたシープが揺れてバランスが崩れる。
そしてその次の瞬間に、彼女達が召喚され…‥
「ご主人様!!無事でよかッ、」
「マスター!!ご無事で何よ、」
「主殿やはり無事でござっ、」
全員が言い終わる前に、彼女達の着地場所にされてしまったシープたちも動き、とっさのことすぎてバラスを崩す。
しかも、召喚した位置は俺の目の前であり、思いっきり前のめりに‥‥‥
ぼすんぼよんぽよん!!ごきぃ!!
「ぎゃあああああああ!!」
「…‥‥おおぅ…‥く、首が‥‥‥関節が‥‥‥」
「‥‥‥筋の部分が、少々痛みましたネ。手当はこれで良いですが、痛みが引くまでしばらく安静にした方が良いデス。良いものを使ってますので、20分ほどデス」
「念のために、薬草を多く持って来ていてよかったですわね」
「主殿、支えになりそうなものも持って来ていて、良かったでござるよ」
‥‥‥事前準備で用意された、大量の薬草やら廃棄武器。
それらは全てノインのポケットに収納されており、今回思いっ切り役に立った。
でも‥‥‥できれば役に立つようなことが起きて欲しくなかったなぁ。
「というか、その胸の重みで首が逝くって‥‥‥不運すぎる」
重みとは、時として武器になるのだと俺は身をもって学ぶことが出来た。
夢と希望が詰まっていると言い切るやつもいるが、それに潰されるのはシャレにならない。
というか、見事に関節部分‥‥‥首と手首、足首の部分に直撃を喰らい、ひねってしまったのと同じように痛めてしまった。関節が逆に曲がる感覚なんぞ、味わいたくなかった。
いや、ルビーの場合はその尻尾か。彼女もあると言えばあるが、尻尾の重量の方がはるかに重かった。
とりあえず曲がったのであればもう一度別方向に曲げれば良いという荒療治でゴキッと再び戻され、薬を塗られ、固定され、動かせない状態にされ、即席で作られたベッドに俺は寝かされつつ、状況について彼女達から報告を受けた。
どうやら俺が落とし穴に堕ちてから半日ほどが経過しているようで、その落ちた直後に彼女達は後を追おうとしたらしい。
だがしかし、ダンジョンのトラップは一度発動すると消滅するらしく、素早く穴を掘れども俺の落ちたものに入り込めない。
どうしたものかと考えこみ…‥‥ダンジョンの下層に落ちたのであれば、そこまで迎えに行けばいいと結論付けたらしい。
そして、そのために邪魔だったタンクマンたちを数名ほどふっ飛ばして全速力で駆け抜け、階層を下りまくっていたようであった。
「道中のモンスターの種類などを記録しつつ、邪魔をするのであれば容赦なく消し飛バシ」
「森のようになっている部分で、迷わせる気が合った木々を支配して横へどかし」
「毒沼もあったでござるが、飛行しつつ焼き払って無事な道に直し」
「「「その道中で、召喚に応じま(シタ)(したわ)(したでござる)!」」」
‥‥‥色々とやらかしている光景が目に浮かぶが、一生懸命であったのは間違いないだろう。
「そっか…‥‥ごめんな、それだけ心配かけて」
「いえいえ、私達が油断して、ご主人様を失いかけたのが悪いのデス」
「マスターの非はありませんわ」
「最も悪いのはこのダンジョン自体でござるし‥‥‥」
「「「だから、ここを殲滅・滅殺・粉砕・破壊して駄目でしょうか?」」」
「それ、やり過ぎ‥‥‥」
このダンジョンよ、お前に意識があるのかどうかは分からないけど、多分逃げた方が良いと思う。
彼女達の目がマジになっているし、確実に可能だと言えるような感じがする。いや、感じどころか確定か。
とにもかくにも、全員合流できたのであれば、まずはここから脱出するのが先であろう。
俺自身は20分ほどで直る治療をされたらしいが、それまではこの即席ベッドで寝かされた状態で運ばれるかな。
「と言っても‥‥‥どのぐらいかかるかな?」
「半日は降りましたが、それでもご主人様の元へは結局召喚でなければダメでしタ」
「30階層は降りたはずですわよね」
「そこから召喚によって結構飛ばしたことになるでござるし‥‥‥明確な位置が分からないでござるよ」
「そうか」
まぁ、時間がどれほどかかるのかは分からないが、少なくとも脱出できないわけではなさそうだ。
道中の毒沼とかそう言う部分は気になるが、彼女達がいれば大丈夫に違いない。
「ベッドの改造、完了デス。押して進むことが可能デス」
「それじゃ、さっさと移動しようか」
話しているだけじゃ、現状は変わらない。
だからこそ、今は先を進んで‥‥‥
カチッ!
「「「「ん?」」」」
…‥なんか今、変な音が聞こえたような。
スイッチというか、何か仕掛けを動かしたような音が‥‥‥
「あ、ベッドの下部分に、何かへこんだ後がありますわね」
「ここ、スイッチになっていたでござるか?」
――――ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴ!!
「‥‥なんだろう、すっごい嫌な予感が」
「ご主人様、それ当たってマス」
なにやら地響きのような音が聞こえ始め、周囲が震えはじめる。
そして次の瞬間‥‥‥
ドッバァァァァァァ!!
「濁流かぁぁぁぁ!!」
「いえ、鉄砲水のようなものですネ」
「どっちにしてもこれ逃れられないですわよ!?」
「ひややああああああ!?」
なんでこうなるんだという想いを抱きつつ、俺たちはその流れてきた大量の水に飲み込まれてしまうのであった…‥‥
―――モフンモフン
――――モフモフフワフワ~ン
「…‥‥いや、なんかおかしい感触だろぉぉぉぉぉ!!」
なにやらフワフワモコモコした感触に気が付き、ディーは思わず大声でツッコミを入れた。
「メェェェ!?」
「メェェェ!!」
「メメェェメ!?」
「うわっ!?」
その声に驚いたのか、気が付けば周囲にいた謎のフワフワモコモコ生物たちが声を上げたことに俺は気が付いた。
「く、『クラウドシープ』の群れ…‥?」
―――――――――――――――――
『クラウドシープ』
大空に浮かぶ雲のようにフワフワした見た目であり、その触り心地は極上の羊毛以上のものを誇る、羊のような見た目でありながらも、実は牛の方に近いとされるモンスター。
ミルクも絞る事も可能であり、召喚士たちにとっては癒しと食料の面で役立つ点で召喚獣にしたいモンスターとして挙げられている。
―――――――――――――――
どうやら俺は今、このシープたちの上に乗り込んでしまっているらしい。
「って、いやいやいや、まずは何で俺はここに‥‥‥あ」
そこで、何故この状況になっているのか、俺は思い出した。
‥‥‥ダンジョン調査中に、俺は落とし穴に落ちて、落下中に気を失っていた。
結構落ちたような気もするが、どうもこのシープたちの上に運よく当たったようで、下の方の硬い地面とかにあたらず、怪我無く無事でいたらしい。
群れがぎっしりと詰まっていて、その上ゆえに足の踏み場もないどころか、体がその極上の毛に包まれて沈み込んでいるが‥‥‥とにもかくにも、命拾いしたことは間違いないだろう。
ダンジョンの落とし穴には、串刺しにされたり、毒沼に落ちたりする者が多いという話もあったし‥‥‥今回ばかりは、運が良かったに違いない。
「でも、ここはどこだ‥‥?」
気絶したとはいえ、それなりに落下していたのは間違いないだろう。
元の階層から1~2階層以上は落ちているとみて良いだろうが‥‥情報がないと、どうも心元がない。
「っと、そうだ!召喚してノインたちを呼べばいいか」
相当落下して距離が離れていると思えるが、召喚獣を召喚するのに支障はない。
彼女達さえ呼べば、落下した後の調査班の状況なども分かるだろうし、さっさと呼ぶべきだろう。
「ノイン、カトレア、ルビー、召喚!!」
一度召喚したからこそ、詠唱分を省け、彼女達を召喚する。
さぁ、これで時間の経過などもしっかりと‥‥‥
「メェェェ!!」
「メェェェ!!」
「ンメェェェ!!」
「っと!?」
突然召喚陣が現れ、発光したことに驚いたのかシープたちが動きはじめ、ぐらっと足場になっていたシープが揺れてバランスが崩れる。
そしてその次の瞬間に、彼女達が召喚され…‥
「ご主人様!!無事でよかッ、」
「マスター!!ご無事で何よ、」
「主殿やはり無事でござっ、」
全員が言い終わる前に、彼女達の着地場所にされてしまったシープたちも動き、とっさのことすぎてバラスを崩す。
しかも、召喚した位置は俺の目の前であり、思いっきり前のめりに‥‥‥
ぼすんぼよんぽよん!!ごきぃ!!
「ぎゃあああああああ!!」
「…‥‥おおぅ…‥く、首が‥‥‥関節が‥‥‥」
「‥‥‥筋の部分が、少々痛みましたネ。手当はこれで良いですが、痛みが引くまでしばらく安静にした方が良いデス。良いものを使ってますので、20分ほどデス」
「念のために、薬草を多く持って来ていてよかったですわね」
「主殿、支えになりそうなものも持って来ていて、良かったでござるよ」
‥‥‥事前準備で用意された、大量の薬草やら廃棄武器。
それらは全てノインのポケットに収納されており、今回思いっ切り役に立った。
でも‥‥‥できれば役に立つようなことが起きて欲しくなかったなぁ。
「というか、その胸の重みで首が逝くって‥‥‥不運すぎる」
重みとは、時として武器になるのだと俺は身をもって学ぶことが出来た。
夢と希望が詰まっていると言い切るやつもいるが、それに潰されるのはシャレにならない。
というか、見事に関節部分‥‥‥首と手首、足首の部分に直撃を喰らい、ひねってしまったのと同じように痛めてしまった。関節が逆に曲がる感覚なんぞ、味わいたくなかった。
いや、ルビーの場合はその尻尾か。彼女もあると言えばあるが、尻尾の重量の方がはるかに重かった。
とりあえず曲がったのであればもう一度別方向に曲げれば良いという荒療治でゴキッと再び戻され、薬を塗られ、固定され、動かせない状態にされ、即席で作られたベッドに俺は寝かされつつ、状況について彼女達から報告を受けた。
どうやら俺が落とし穴に堕ちてから半日ほどが経過しているようで、その落ちた直後に彼女達は後を追おうとしたらしい。
だがしかし、ダンジョンのトラップは一度発動すると消滅するらしく、素早く穴を掘れども俺の落ちたものに入り込めない。
どうしたものかと考えこみ…‥‥ダンジョンの下層に落ちたのであれば、そこまで迎えに行けばいいと結論付けたらしい。
そして、そのために邪魔だったタンクマンたちを数名ほどふっ飛ばして全速力で駆け抜け、階層を下りまくっていたようであった。
「道中のモンスターの種類などを記録しつつ、邪魔をするのであれば容赦なく消し飛バシ」
「森のようになっている部分で、迷わせる気が合った木々を支配して横へどかし」
「毒沼もあったでござるが、飛行しつつ焼き払って無事な道に直し」
「「「その道中で、召喚に応じま(シタ)(したわ)(したでござる)!」」」
‥‥‥色々とやらかしている光景が目に浮かぶが、一生懸命であったのは間違いないだろう。
「そっか…‥‥ごめんな、それだけ心配かけて」
「いえいえ、私達が油断して、ご主人様を失いかけたのが悪いのデス」
「マスターの非はありませんわ」
「最も悪いのはこのダンジョン自体でござるし‥‥‥」
「「「だから、ここを殲滅・滅殺・粉砕・破壊して駄目でしょうか?」」」
「それ、やり過ぎ‥‥‥」
このダンジョンよ、お前に意識があるのかどうかは分からないけど、多分逃げた方が良いと思う。
彼女達の目がマジになっているし、確実に可能だと言えるような感じがする。いや、感じどころか確定か。
とにもかくにも、全員合流できたのであれば、まずはここから脱出するのが先であろう。
俺自身は20分ほどで直る治療をされたらしいが、それまではこの即席ベッドで寝かされた状態で運ばれるかな。
「と言っても‥‥‥どのぐらいかかるかな?」
「半日は降りましたが、それでもご主人様の元へは結局召喚でなければダメでしタ」
「30階層は降りたはずですわよね」
「そこから召喚によって結構飛ばしたことになるでござるし‥‥‥明確な位置が分からないでござるよ」
「そうか」
まぁ、時間がどれほどかかるのかは分からないが、少なくとも脱出できないわけではなさそうだ。
道中の毒沼とかそう言う部分は気になるが、彼女達がいれば大丈夫に違いない。
「ベッドの改造、完了デス。押して進むことが可能デス」
「それじゃ、さっさと移動しようか」
話しているだけじゃ、現状は変わらない。
だからこそ、今は先を進んで‥‥‥
カチッ!
「「「「ん?」」」」
…‥なんか今、変な音が聞こえたような。
スイッチというか、何か仕掛けを動かしたような音が‥‥‥
「あ、ベッドの下部分に、何かへこんだ後がありますわね」
「ここ、スイッチになっていたでござるか?」
――――ゴ、ゴゴゴゴゴゴゴ!!
「‥‥なんだろう、すっごい嫌な予感が」
「ご主人様、それ当たってマス」
なにやら地響きのような音が聞こえ始め、周囲が震えはじめる。
そして次の瞬間‥‥‥
ドッバァァァァァァ!!
「濁流かぁぁぁぁ!!」
「いえ、鉄砲水のようなものですネ」
「どっちにしてもこれ逃れられないですわよ!?」
「ひややああああああ!?」
なんでこうなるんだという想いを抱きつつ、俺たちはその流れてきた大量の水に飲み込まれてしまうのであった…‥‥
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