憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
78 / 373

75 うまい空気は限られており

しおりを挟む
…‥‥学園を出発し、公共機関の馬車を乗り継いで3日。

 ヴィステルダム王国の辺境地‥‥‥とある田舎の村『ヌルングルス村』前で馬車が停まり、ディーたちは下車した。

 この村に帰って来たのは良いのだが、馬車はいくつかあり、どうやらタイミング的に同郷へ帰る人たちは俺とバルンしかいなかったらしい。

 降りたのがノインたちも含めて他にいないし、どうも先に来れたような気もするが‥‥‥

「久し振りに帰郷したのは良いけど、この後話すのが大変だなぁ‥」
「腹くくれ。ああ、家はこっちで別れているからな。また後で合おうぜ!」

 俺のつぶやきに対してバルンはそう答え、彼の家の方へ向かってしまった逃げやがった


‥‥‥そう、村に帰って来たのは良い。

 田舎の村とは言え、森が近くに合ってそれなりに恵みもあるし、川も流れており、暑くなってくる季節には涼める場所として人気がある。

 だがしかし、村のいい点ばかりを考えるよりも‥‥‥今のこの状態、どう説明したものか。


「頭が痛くなるというか、帰ってきたけどごまかしようがないな」
「ここは覚悟を決め、堂々とするべきでしょウ」

 そうするしかないかと思いつつ、俺たちは実家の方へ歩みだすのであった‥‥‥ああ、説明しようにもどう説明すべきか。玄関前までに思いついておきたい。








「ふ~ん♪ふふ~ん♪」
「あらあら、ご機嫌な鼻歌ね」
「ええ!だって兄ちゃんがもうちょっとで帰ってくると思うと、楽しみなんだもの!」

 村の一軒家‥‥‥ディーの実家にて、母親の問いかけに、ディーの妹であるセラはそう答える。

 つい昨日、村長の家の方にも遊びに行く中で、村の方に学園から帰ってくる生徒たちの情報を聞き、そこから近いうちに彼女の兄が帰ってくる予想が立ち、その事を考えると非常に楽しみになっているのだ。

「モテないバルンも一緒だと思うけど、あれはどうでもいい!今は兄ちゃんの方が先に来てくれると嬉しいなー!」
「そうねぇ、早く帰って来てほしいわね」

 セラの嬉しそうな、楽しみに待つ様子を見て、母はにこやかに答える。

「ああ、帰ってきたら後でお父さんの方に報告しましょ?」
「うん!」

 その問いかけに、セラが元気よく答えた後である。


「…‥‥ただいまー」
「あ!兄ちゃんだー!!」

 玄関先の方で帰宅を知らせた声が聞こえ、セラは瞬時に移動して素早く駆け抜ける。

 だだだっと急いで駆け抜け、玄関の方へ来てみれば‥‥‥彼女の兄であるディーが、そこに立っていた。

「お帰り、兄ちゃぁぁぁん!!」
「うおっと!?」

 駆け抜けるその勢いそのままで、ディーに飛びつこうとジャンプする。

 そのまま抱きつけるはずだと、思っていた‥‥‥次の瞬間であった。


ぼよん!
「あぶっ!?に、兄ちゃんやけに柔らか…‥‥あれぇ?」
「‥‥‥危ないデス。その勢いですと、ご主人様が受け止めきれまセン」
「いや、これでもしっかりと受け止めることはできたけどな、ノイン」

‥‥‥妙に柔らかい感触に正面衝突し、見れば山があった。

 いや違う、ディーの前に誰かが立ち、彼の代わりにセラを受け止めたのだ。

 
「‥‥‥だ、誰!?というか、女の人!?」

 ばっと柔らかな胸元から離れ、スタっと降りたって彼女は距離を思わず取った。

「おお、見事な身のこなしデス。ご主人様よりも運動神経は良さそうデス」
「さらっと酷いこと言ってない?」
「まぁまぁ、マスターもそれなりにありますから、大丈夫ですわよ」
「ふむ、状況を見ると、この方が主殿の妹でござろうか?」
「‥‥‥うん、普通じゃのぅ。儂の妹よりも可愛げがあるというか、邪気がないのぅ」
「グゲェグゲェ?」


 そしてぞろぞろと、彼女の兄の後ろから他の女性たちが出てきて、セラは驚愕する。

 絵本の中に出るような侍女の服装をした人に、木の椅子のようなものに座り込んでいる人。

 翼と羽を生やした人に、杖を持つ人に、箱の中に入っている人。

 そのどれもがこの村では見たことが無いような者たちであり、美女ばかり。人外的な部分がちらほらと見えるところがあったが…‥‥今の彼女には、ある一点だけが一番の驚愕点であった。

「に、に、に、に‥‥‥兄ちゃんがなんかきれいな女の人を連れてきちゃったぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」

…‥‥その驚愕の声は、あっという間に村中に響き渡るのであった。








「あらあら、まぁまぁ。驚くべきことね。息子がこんなにかわいい子たちを連れてくるなんてねぇ」
「全員、召喚獣だけど…‥‥母さん、あっさりと受け入れたね」
「いや、結構驚いているわ。でも、召喚士として何か変なものを呼びだしていない点に安心したのよ」

‥‥‥変なものは確かに呼び出してないよな。いや、まぁ、能力とかがおかしい点は変なのかもしれないが。

 実家に帰って早々、大声を上げつつ、そのまま気絶した妹セラ。

 彼女をそっと部屋の方へ寝かしつつ、母さんに説明したところ、案外あっさりとノインたちの事を受け入れてくれた。

 俺の母親、懐大きい…‥‥彼女達を召喚したさいに驚愕したおれとは違って、落ち着いているその様すごい。

「召喚獣として、息子についてくれたのね。母として、感謝するわ」
「いえ、感謝されるようなものでもありまセン。私たちは、ご主人様の召喚獣であるだけなのデス」
「マスターのためにというのがありますからね」
「主殿の妹殿が何故か気絶した点に関しては、申し訳ないでござるけどな」
「いやまぁ、普通の反応があれじゃないかのぅ?」
「グゲェ?」

 母さんがペコリをと頭を下げると、ノインたちがそう答える。

 悩んでいたとはいえ、こう打ち明けると思いのほか受け入れられていることに、取り越し苦労していたのかもしれない。

 まぁ、それは母の方に関してだが…‥‥


ドドドドドドドドドド!!
「お?」

 っと、ここで駆け抜ける音が聞こえ、扉が勢いよく開いた。

「‥‥‥や、や、やっぱり夢じゃなかったぁぁぁぁぁぁ!!兄ちゃんが、なんか女の人達を連れこんでいたぁぁぁぁぁ!!」
「落ち着け、セラ。彼女達は俺の召喚獣だ」
「召喚獣!?うっそ!?兄ちゃん昔から召喚士を目指していたけど、召喚するのはドラゴンを願いたいとか言って居なかったっけ!?100歩譲ってそこの人はそれっぽい翼と尻尾をしているけど、それ以外、いや全員がわたしから見て綺麗な女性なのはなんなのよーーーーーーーーー!!」

‥‥‥あわただしく、そう叫ぶ妹のセラ。

 まぁ、指さしたほうのルビーはヴイーヴル‥‥‥ドラゴンの仲間なので間違ってないけど、すごい叫んでいるな。

 妹の混乱ぶりに、説明は大変そうかなと思うのであった…‥‥取り越し苦労がなかったわけではないことに、ちょっと安心したような気がしなくもないが…‥‥
しおりを挟む
感想 771

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

処理中です...