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188 普段見ないものほど物珍しく
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‥‥‥ノインの体内。それは未知の場所。
小さくする技術もそれはそれで謎が大きすぎるが、そもそも彼女の体の構造はどうなっているのか?
もらった地図を頼りに、口の中から入り込み、胃に当たると思われる部分でハッチらしきものを開けて、外部に出たのは良いのだが…‥‥
「‥‥‥うわぁ、地図があっても、滅茶苦茶迷いそう」
「どうなっているんでありんすかね、この構造」
明かりがあるのか、それとも何かの方法で明るいだけなのか、周囲が見渡せるのは良いだろう。
けれども、あちこちで歯車や脈打つ部品などが存在しており、複雑な迷宮のようになっていた。
「赤い点滅部分が目的地で‥‥‥ああ、この地図、俺たちの場所も青い点滅で出るのか」
渡してもらった、ノインの体内地図。
どうやら普通の地図とは異なるようで、知りたい場所を指で触れば名称や説明などが出てきて、非常に分かりやすい。
ただ、これを知っても彼女と同等のゴーレムを組み立て上げられる人はいないだろうなぁ‥‥‥なんか、外見とは違うほど中身が広大すぎるようだし。
そこはノインの御手製の各自の部屋と同じ構造なのかと思いつつ、地図に出てきた矢印に俺たちは従い始める。
「普通に頭まで一直線に進めば早そうなものなのに、何でこの液体を泳ぐことになるんだろう?」
「『流体エネルギー配管』‥‥‥血管のようなものでござろうか?」
「まぁ、この程度は特に大丈夫でありんすね」
「さっさと泳いでやるぜー!」
どうも彼女の内部にはそれなりに仕掛けも多くあるようで、安全なルートをこの地図は矢印で示してくれるようだ。
この液体が何なのかはよくわからんが…‥‥ここを進まないと、どうもやばい箇所が多いらしい。
高圧配線、固体エネルギープレス場、弾薬精製工場‥‥‥説明を見る限り色々と物騒な類が多いようだ。
しかも、無機質な物が多いのかと思っていたら、生体部品とかいう項目もあるようで、そちらは生々しいものもあるようだし‥‥‥どうなっているのかよく分からない。
「ここを出て‥‥次は、そっちの通路か」
液体から上がると、衣服が濡れていなかった。
この液体自体も謎が多いが、気にしたらもうツッコミ切れないので深く考えない。
「えっと、位置的には人間の心臓当たりだけど‥‥‥ノインのここは『動力炉』か」
「おおぅ、赤く光っているでござるなぁ」
眩しいというか、何と言うか。真紅の光が内部からあふれている機械があった。
地図にある説明だと、ノインの体を動かすために必要な動力源の一つのようで、ここで全身にエネルギーを回すなどをしているらしい。
‥‥‥他にも複数あるらしい。色々な事態を想定して、動力源もその生み出すエネルギーなども変えているようなので、対応可能にしているそうな。
とはいえ、この動力炉まで来ると後の道は単純だ。
「あとは、この炉につながっている赤いパイプを辿っていけばいいようだ」
「赤い奴赤い奴っと‥‥‥お、見つけたぜ!」
ティアが指さした先にあったのは、真っ赤なパイプ。
それに沿って歩いていくと、細かく枝分かれもしていたが、それでも太いものを追っていけばいいので迷わずに行ける。
そうこうしているうちに、俺たちを示す青い点滅が頭部の方に到達し‥‥‥どうやらもうじき目的地のようだ。
「えーっと、この先らしいけれど‥‥‥」
「‥‥‥分厚い扉のようでありんすな」
その先に存在していたのは、巨大な扉。
小さくなっている俺たちの縮尺率などを考慮しても‥‥‥どう考えても頭の中に入らないサイズだと思う。
というか、下手すると家より大きいよね、コレ。本当に彼女の体の中ってどうなっているんだよ?
とにもかくにも、その先にあるのがこの赤い点滅部位であり、ここにたどり着かないことには分からない。
「‥あれ?あそこ、変じゃねぇか?」
「ん?」
っと、ふとティアが何かに気が付き、その方向を見て見れば‥‥‥巨大な扉の一部に、破損した後があった。
「なんかこっち側から無理やり入ったような跡があるような‥‥‥もしかして、これか?」
「いや、でもこの中に入るのって何がいるのでありんすかね?」
とりあえず、入れそうなこの穴から侵入してみる。
そして、その先にあったものを見れば…‥‥
「「「「なんじゃこりゃああああああああああ!?」」」」
そこにあったのは、巨大な真紅の宝石。
でも、それよりももっと驚くべきなのは、それには無数の気持ちの悪いぶよぶよとした物体が群がっており、へばりついていた。
「これだよな!?どう考えてもこのぶよぶよが原因にしか思えないんだが!?」
「スライムっぽいけど、なんか違うでありんすよ!!」
「ヘドロみたいな色合いというか、きもいでござるよ!?」
「あれ?なーんかあれ見たことがあるような…‥‥あ」
ティアが眉を顰め、それをじっくり見た後‥‥‥何かを思い出したように、ぽんっと手を打った。
「そうだ、思い出したぜ。あれ確か、研究所の中で、ちょっと問題になっていた奴だ」
‥‥‥ティアがまだハイガドロンとして組織の研究所に囚われていた時。
その囚われていた水槽の外で、ちょっとした騒動が起きていたらしい。
「何でも、実験体の怪物が暴走して、職員が呑み込まれたとか言う騒ぎがあって‥水槽前に横切って、消毒されたやつがいたんだけど、それにくっ付いていた奴に似ているぜ」
「ってことは、仮面の組織の実験体というか、怪物かよ!!」
どうやら廃棄処分したと思われていたようだが、おそらくは一部が生き延びていたのだろう。
そして、ティアたちが脱出する際に紛れて、外に出てきたのかもしれない。
だがしかし、当時の話を聞けばそれなりのサイズだったようだが‥‥おそらくは環境の変化や色々な要因が組み合わさり、非常に小さくなっていたのだろう。
で、それが雪の中に紛れていて‥‥‥雪合戦時に偶然にもノインの中に入り込み、彼女のこの部位でやらかしたことで、異常な発熱を引き起こしたのだろう。
「というか、それだったらあの赤い宝石のようなやつに纏わりついているやつらを討伐すれば解決するってことか?」
「だったら、急いで掃除したほうが良さそうでありんすな」
うねうねと気持ち悪く蠢く、スライム状の怪物たち。
そしてそれに纏わりつかれている、ノインの体の一部と思われる真紅の宝石は抵抗しているように点滅しており、所々が欠けている。
「‥‥‥なら、さっさと討伐するぞ!!」
とはいえ、どうやって討伐すべきだろうか?
まとめて攻撃しようにも、あの真紅の宝石は重要部品みたいだし‥‥‥ああ、地図だと『賢者の石(複製変貌品)』って載っているけど、あれを破壊されると不味いっぽい。
ならば、どうにかして引きはがせばいいかもしれないが…‥‥欠けていたりする部分が見える以上、下手に触るのも危険だ。
「炎で焼き切りたいが、まとめてしまうでござるな」
「はがせればいいんでありんすけれどねぇ」
「ナイフも鎖鎌も、傷つけかねないから使えず、もどかしいぜ」
「ああいうのって、へばりついているからなぁ‥‥‥引きはがすとか、吹き飛ばせれば…‥‥待てよ?」
自分の言葉に、俺はふとひらめくものがあった。
迂闊に触れないなら、吹き飛ばしてしまえば良い。
そしてそれができる道具が、装備品の中にある。
「えっと、確か…‥‥これだ!!『ホバーブーツ』!!」
空気を噴射して飛行するための道具だが、これなら猛烈な風を起こして吹き飛ばすことができるかもしれない。
そう考え、さっそく履かずに手の方に持って、スライム共に照準を合わせ‥‥‥スイッチを入れる。
ぶしゅううううううううううう!!
猛烈な勢いで空気が噴射され、凄まじい風が引き起こされる。
そしてその風に、スライムモドキな怪物どもは必死になって抵抗しようとへばりついたが‥‥‥べりべりぃっと、見事に一体、また一体と吹き飛ばされていく。
「今だ!!ルビー!!」
「了解でござるよ!!」
吹き飛び宙を舞ったスライム共めがけて、ルビーがノインの内部を傷つけないように注意しつつ、強力な炎を吐き出し、焼き払っていく。
するとあっという間にスライム共は燃え去り、塵も残らずに消滅していく。
「良し、この方法ならいけるぞ!!」
次々と吹き飛ばしては焼き払い、変な方向へ吹き飛ばないようにティアが水の魔法でキャッチして水分すら残さずに焼き払い、時々リザがルビーの顎をツボ押しして疲れを癒して焼き払いさせつつ、大掃除が続いていく。
「ラスト一体!」
「せやぁでござる!!」
最後の大物がぶっ飛び、それを一気に焼き払うルビー。
焼ききれて消し飛んだのを確認しつつ、地図の方を見れば‥‥‥赤い点滅部位がだんだん小さくなり、消え去った。
そして、憑りつかれていた真紅の宝石の方は、齧られた部位にブクブクと泡だったかと思うと、綺麗に直っていた。
「‥‥‥これで、直ったのかな?」
外に出て確認しないことには分からない。
なので、ノインの体から出ないといけないだろう。
「さてと、帰りのルートは‥‥来た道を戻ればいいだけか」
地図を見れば、きちんと帰りのルートも表示されており、迷うことはないようだ。
ただ気になるのは、一部ちょっと来た道とは違うようだが‥‥
『免疫システムが作動してますので、そちらは通行止めになっているだけデス』
「へぇ、そんなのが‥‥‥ん?」
なにやら後ろから聞こえた声に、俺たちが振り向くと、そこには誰かが立っていた。
「‥‥‥誰?」
そこにいたのは、ノインに似てはいるけれども、所々が違っている女性。
メイド服を着つつも、ノインのようなアホ毛もなく、耳の部分も形状が違い‥‥‥あと、どこがとは言わないけど、明かに無い。
うん、何と言うか直感的に口を出せば絶対に不味いと思ったので言わなかったけど‥‥‥
『私は、この「万能家事戦闘人型ゴーレム09」のサブシステムデス。オリジナルの01のコピー体であり、情報送受信用のシステムを担当しておりマス』
「サブシステム?」
見れば実体が無いような‥‥‥ちょっとゴーストとかそう言う類に近い、半透明な姿をしていた。
話によれば、このノインの作った人のコピーとかそう言うものであるそうで、普段はそのオリジナルの機体とやらに情報を送受信しているらしい。
ノインと同じようなメイドゴーレムはいるようで、全てと繋がって経験などを共有しているそうだ。
まぁ、今はノイン側のつながりが切れているようだが‥…俺が召喚したことが原因ではなく、他の様々な要因があるそうで、今まで連絡も出せず、休眠状態だったらしい。
ただ今回、あのスライムモドキの影響でシステムがダウンして、全機能が壊れる前のバックアップ‥‥‥要は彼女の記憶の保存などを急いで行うために、休眠状態から目を覚まし、動いたようである。
それならあのスライムモドキを取り除くために動けなかったのかと言いたかったが、生憎彼女に実体はなく、あくまでもシステムの一つであり、手が出せなかったそうな。
『なので、全て退治をしてくださり、非常に助かりまシタ』
そう言いながら深々とお辞儀をしてきた。
「仲間だし、大事な召喚獣だからね…‥‥礼を言われるようなことも特にないとは思うんだけど」
『いえ、それでもオリジナルにとっては姉妹でもあり、娘のような存在ですから非常にありがたいデス。それに、今回のシステムダウンからの復旧により、一部の回線が再起動し、オリジナルとのつながりも回復。データのアップデートを行うことができるようになりまシタ』
「データのアップデート?なんでありんすか、ソレ?」
「聞いた感じ、何か足りないものがあったとかそういう風に聞こえるぜ」
『大雑把に言えば、その通りデス』
‥‥召喚によって、ノインがこの世界に呼び出されているが、彼女の本来の世界でも時間が流れており、かなり色々と変わっているらしい。
で、どうも色々な箇所で変更が必要になった個所が多く存在しており、できればそのアップデートとやらをした方が良いそうなのだ。
「一応聞くけど、記憶が無くなるとかはないよな?」
『ハイ。システムの向上及び各部位の改良ですので問題ありまセン。メイドとして、より機能を向上させる程度デス』
「改良って、何か部品でも付け足すのでござろうか?」
『イイエ。自己進化改良システムがありますので、そこで行うだけデス。外装はほとんど変わりませんが、内部構造がまた大幅に変化いたしマス』
なお、アップデートとやらには時間がかかるそうで、先ほど直ったばかりだが、直ぐには動けないらしい。
どうやら3日ほど眠る必要があるようだが‥‥‥‥無事に目が覚める保証があるなら、大丈夫か。
『ついでに装備品の各機能も拡張し、戦闘時における武器も増加させますので、万が一の緊急事態にもご安心くだサイ』
‥‥‥いや、大丈夫じゃないか?なんか今、すっごい物騒な言葉が聞こえたような気がする。
とにもかくにも、今はお礼とお知らせを言うためだけに、サブシステムの彼女は出てきたらしい。
『では、以上で終わりマス。これよりシステム更新などを行うために、体内からの素早い脱出をお願いいたしマス』
「素早い脱出?のんびりしていたら?」
『問答無用で、免疫システムが排除に移りだしマス。アップデート後は襲いませんが、今はまだ未完成状態なので、全てを消し飛ばしマス』
「急いで出るぞお前らぁぁぁ!!」
「「「了解!!」」」
取りあえずは別れの挨拶をしつつ、俺たちは超特急で体内からの脱出へ移るのであった‥‥‥‥
「ぎゃああ!!なんかビームを打ってくる蜘蛛っぽいゴーレムがいるんだけど!?」
「きゃぁぁ!?着物破かれるというか、ハサミ状のゴーレムってなんでありんすかぁぁ!!」
「あいたたた!?つついてくるのはいたいでござるぅぅ!!」
「はうぅん!?ヌメヌメした床で滑るんだけどぉ!?」
‥‥‥無事に脱出できるかなぁ、コレ。
小さくする技術もそれはそれで謎が大きすぎるが、そもそも彼女の体の構造はどうなっているのか?
もらった地図を頼りに、口の中から入り込み、胃に当たると思われる部分でハッチらしきものを開けて、外部に出たのは良いのだが…‥‥
「‥‥‥うわぁ、地図があっても、滅茶苦茶迷いそう」
「どうなっているんでありんすかね、この構造」
明かりがあるのか、それとも何かの方法で明るいだけなのか、周囲が見渡せるのは良いだろう。
けれども、あちこちで歯車や脈打つ部品などが存在しており、複雑な迷宮のようになっていた。
「赤い点滅部分が目的地で‥‥‥ああ、この地図、俺たちの場所も青い点滅で出るのか」
渡してもらった、ノインの体内地図。
どうやら普通の地図とは異なるようで、知りたい場所を指で触れば名称や説明などが出てきて、非常に分かりやすい。
ただ、これを知っても彼女と同等のゴーレムを組み立て上げられる人はいないだろうなぁ‥‥‥なんか、外見とは違うほど中身が広大すぎるようだし。
そこはノインの御手製の各自の部屋と同じ構造なのかと思いつつ、地図に出てきた矢印に俺たちは従い始める。
「普通に頭まで一直線に進めば早そうなものなのに、何でこの液体を泳ぐことになるんだろう?」
「『流体エネルギー配管』‥‥‥血管のようなものでござろうか?」
「まぁ、この程度は特に大丈夫でありんすね」
「さっさと泳いでやるぜー!」
どうも彼女の内部にはそれなりに仕掛けも多くあるようで、安全なルートをこの地図は矢印で示してくれるようだ。
この液体が何なのかはよくわからんが…‥‥ここを進まないと、どうもやばい箇所が多いらしい。
高圧配線、固体エネルギープレス場、弾薬精製工場‥‥‥説明を見る限り色々と物騒な類が多いようだ。
しかも、無機質な物が多いのかと思っていたら、生体部品とかいう項目もあるようで、そちらは生々しいものもあるようだし‥‥‥どうなっているのかよく分からない。
「ここを出て‥‥次は、そっちの通路か」
液体から上がると、衣服が濡れていなかった。
この液体自体も謎が多いが、気にしたらもうツッコミ切れないので深く考えない。
「えっと、位置的には人間の心臓当たりだけど‥‥‥ノインのここは『動力炉』か」
「おおぅ、赤く光っているでござるなぁ」
眩しいというか、何と言うか。真紅の光が内部からあふれている機械があった。
地図にある説明だと、ノインの体を動かすために必要な動力源の一つのようで、ここで全身にエネルギーを回すなどをしているらしい。
‥‥‥他にも複数あるらしい。色々な事態を想定して、動力源もその生み出すエネルギーなども変えているようなので、対応可能にしているそうな。
とはいえ、この動力炉まで来ると後の道は単純だ。
「あとは、この炉につながっている赤いパイプを辿っていけばいいようだ」
「赤い奴赤い奴っと‥‥‥お、見つけたぜ!」
ティアが指さした先にあったのは、真っ赤なパイプ。
それに沿って歩いていくと、細かく枝分かれもしていたが、それでも太いものを追っていけばいいので迷わずに行ける。
そうこうしているうちに、俺たちを示す青い点滅が頭部の方に到達し‥‥‥どうやらもうじき目的地のようだ。
「えーっと、この先らしいけれど‥‥‥」
「‥‥‥分厚い扉のようでありんすな」
その先に存在していたのは、巨大な扉。
小さくなっている俺たちの縮尺率などを考慮しても‥‥‥どう考えても頭の中に入らないサイズだと思う。
というか、下手すると家より大きいよね、コレ。本当に彼女の体の中ってどうなっているんだよ?
とにもかくにも、その先にあるのがこの赤い点滅部位であり、ここにたどり着かないことには分からない。
「‥あれ?あそこ、変じゃねぇか?」
「ん?」
っと、ふとティアが何かに気が付き、その方向を見て見れば‥‥‥巨大な扉の一部に、破損した後があった。
「なんかこっち側から無理やり入ったような跡があるような‥‥‥もしかして、これか?」
「いや、でもこの中に入るのって何がいるのでありんすかね?」
とりあえず、入れそうなこの穴から侵入してみる。
そして、その先にあったものを見れば…‥‥
「「「「なんじゃこりゃああああああああああ!?」」」」
そこにあったのは、巨大な真紅の宝石。
でも、それよりももっと驚くべきなのは、それには無数の気持ちの悪いぶよぶよとした物体が群がっており、へばりついていた。
「これだよな!?どう考えてもこのぶよぶよが原因にしか思えないんだが!?」
「スライムっぽいけど、なんか違うでありんすよ!!」
「ヘドロみたいな色合いというか、きもいでござるよ!?」
「あれ?なーんかあれ見たことがあるような…‥‥あ」
ティアが眉を顰め、それをじっくり見た後‥‥‥何かを思い出したように、ぽんっと手を打った。
「そうだ、思い出したぜ。あれ確か、研究所の中で、ちょっと問題になっていた奴だ」
‥‥‥ティアがまだハイガドロンとして組織の研究所に囚われていた時。
その囚われていた水槽の外で、ちょっとした騒動が起きていたらしい。
「何でも、実験体の怪物が暴走して、職員が呑み込まれたとか言う騒ぎがあって‥水槽前に横切って、消毒されたやつがいたんだけど、それにくっ付いていた奴に似ているぜ」
「ってことは、仮面の組織の実験体というか、怪物かよ!!」
どうやら廃棄処分したと思われていたようだが、おそらくは一部が生き延びていたのだろう。
そして、ティアたちが脱出する際に紛れて、外に出てきたのかもしれない。
だがしかし、当時の話を聞けばそれなりのサイズだったようだが‥‥おそらくは環境の変化や色々な要因が組み合わさり、非常に小さくなっていたのだろう。
で、それが雪の中に紛れていて‥‥‥雪合戦時に偶然にもノインの中に入り込み、彼女のこの部位でやらかしたことで、異常な発熱を引き起こしたのだろう。
「というか、それだったらあの赤い宝石のようなやつに纏わりついているやつらを討伐すれば解決するってことか?」
「だったら、急いで掃除したほうが良さそうでありんすな」
うねうねと気持ち悪く蠢く、スライム状の怪物たち。
そしてそれに纏わりつかれている、ノインの体の一部と思われる真紅の宝石は抵抗しているように点滅しており、所々が欠けている。
「‥‥‥なら、さっさと討伐するぞ!!」
とはいえ、どうやって討伐すべきだろうか?
まとめて攻撃しようにも、あの真紅の宝石は重要部品みたいだし‥‥‥ああ、地図だと『賢者の石(複製変貌品)』って載っているけど、あれを破壊されると不味いっぽい。
ならば、どうにかして引きはがせばいいかもしれないが…‥‥欠けていたりする部分が見える以上、下手に触るのも危険だ。
「炎で焼き切りたいが、まとめてしまうでござるな」
「はがせればいいんでありんすけれどねぇ」
「ナイフも鎖鎌も、傷つけかねないから使えず、もどかしいぜ」
「ああいうのって、へばりついているからなぁ‥‥‥引きはがすとか、吹き飛ばせれば…‥‥待てよ?」
自分の言葉に、俺はふとひらめくものがあった。
迂闊に触れないなら、吹き飛ばしてしまえば良い。
そしてそれができる道具が、装備品の中にある。
「えっと、確か…‥‥これだ!!『ホバーブーツ』!!」
空気を噴射して飛行するための道具だが、これなら猛烈な風を起こして吹き飛ばすことができるかもしれない。
そう考え、さっそく履かずに手の方に持って、スライム共に照準を合わせ‥‥‥スイッチを入れる。
ぶしゅううううううううううう!!
猛烈な勢いで空気が噴射され、凄まじい風が引き起こされる。
そしてその風に、スライムモドキな怪物どもは必死になって抵抗しようとへばりついたが‥‥‥べりべりぃっと、見事に一体、また一体と吹き飛ばされていく。
「今だ!!ルビー!!」
「了解でござるよ!!」
吹き飛び宙を舞ったスライム共めがけて、ルビーがノインの内部を傷つけないように注意しつつ、強力な炎を吐き出し、焼き払っていく。
するとあっという間にスライム共は燃え去り、塵も残らずに消滅していく。
「良し、この方法ならいけるぞ!!」
次々と吹き飛ばしては焼き払い、変な方向へ吹き飛ばないようにティアが水の魔法でキャッチして水分すら残さずに焼き払い、時々リザがルビーの顎をツボ押しして疲れを癒して焼き払いさせつつ、大掃除が続いていく。
「ラスト一体!」
「せやぁでござる!!」
最後の大物がぶっ飛び、それを一気に焼き払うルビー。
焼ききれて消し飛んだのを確認しつつ、地図の方を見れば‥‥‥赤い点滅部位がだんだん小さくなり、消え去った。
そして、憑りつかれていた真紅の宝石の方は、齧られた部位にブクブクと泡だったかと思うと、綺麗に直っていた。
「‥‥‥これで、直ったのかな?」
外に出て確認しないことには分からない。
なので、ノインの体から出ないといけないだろう。
「さてと、帰りのルートは‥‥来た道を戻ればいいだけか」
地図を見れば、きちんと帰りのルートも表示されており、迷うことはないようだ。
ただ気になるのは、一部ちょっと来た道とは違うようだが‥‥
『免疫システムが作動してますので、そちらは通行止めになっているだけデス』
「へぇ、そんなのが‥‥‥ん?」
なにやら後ろから聞こえた声に、俺たちが振り向くと、そこには誰かが立っていた。
「‥‥‥誰?」
そこにいたのは、ノインに似てはいるけれども、所々が違っている女性。
メイド服を着つつも、ノインのようなアホ毛もなく、耳の部分も形状が違い‥‥‥あと、どこがとは言わないけど、明かに無い。
うん、何と言うか直感的に口を出せば絶対に不味いと思ったので言わなかったけど‥‥‥
『私は、この「万能家事戦闘人型ゴーレム09」のサブシステムデス。オリジナルの01のコピー体であり、情報送受信用のシステムを担当しておりマス』
「サブシステム?」
見れば実体が無いような‥‥‥ちょっとゴーストとかそう言う類に近い、半透明な姿をしていた。
話によれば、このノインの作った人のコピーとかそう言うものであるそうで、普段はそのオリジナルの機体とやらに情報を送受信しているらしい。
ノインと同じようなメイドゴーレムはいるようで、全てと繋がって経験などを共有しているそうだ。
まぁ、今はノイン側のつながりが切れているようだが‥…俺が召喚したことが原因ではなく、他の様々な要因があるそうで、今まで連絡も出せず、休眠状態だったらしい。
ただ今回、あのスライムモドキの影響でシステムがダウンして、全機能が壊れる前のバックアップ‥‥‥要は彼女の記憶の保存などを急いで行うために、休眠状態から目を覚まし、動いたようである。
それならあのスライムモドキを取り除くために動けなかったのかと言いたかったが、生憎彼女に実体はなく、あくまでもシステムの一つであり、手が出せなかったそうな。
『なので、全て退治をしてくださり、非常に助かりまシタ』
そう言いながら深々とお辞儀をしてきた。
「仲間だし、大事な召喚獣だからね…‥‥礼を言われるようなことも特にないとは思うんだけど」
『いえ、それでもオリジナルにとっては姉妹でもあり、娘のような存在ですから非常にありがたいデス。それに、今回のシステムダウンからの復旧により、一部の回線が再起動し、オリジナルとのつながりも回復。データのアップデートを行うことができるようになりまシタ』
「データのアップデート?なんでありんすか、ソレ?」
「聞いた感じ、何か足りないものがあったとかそういう風に聞こえるぜ」
『大雑把に言えば、その通りデス』
‥‥召喚によって、ノインがこの世界に呼び出されているが、彼女の本来の世界でも時間が流れており、かなり色々と変わっているらしい。
で、どうも色々な箇所で変更が必要になった個所が多く存在しており、できればそのアップデートとやらをした方が良いそうなのだ。
「一応聞くけど、記憶が無くなるとかはないよな?」
『ハイ。システムの向上及び各部位の改良ですので問題ありまセン。メイドとして、より機能を向上させる程度デス』
「改良って、何か部品でも付け足すのでござろうか?」
『イイエ。自己進化改良システムがありますので、そこで行うだけデス。外装はほとんど変わりませんが、内部構造がまた大幅に変化いたしマス』
なお、アップデートとやらには時間がかかるそうで、先ほど直ったばかりだが、直ぐには動けないらしい。
どうやら3日ほど眠る必要があるようだが‥‥‥‥無事に目が覚める保証があるなら、大丈夫か。
『ついでに装備品の各機能も拡張し、戦闘時における武器も増加させますので、万が一の緊急事態にもご安心くだサイ』
‥‥‥いや、大丈夫じゃないか?なんか今、すっごい物騒な言葉が聞こえたような気がする。
とにもかくにも、今はお礼とお知らせを言うためだけに、サブシステムの彼女は出てきたらしい。
『では、以上で終わりマス。これよりシステム更新などを行うために、体内からの素早い脱出をお願いいたしマス』
「素早い脱出?のんびりしていたら?」
『問答無用で、免疫システムが排除に移りだしマス。アップデート後は襲いませんが、今はまだ未完成状態なので、全てを消し飛ばしマス』
「急いで出るぞお前らぁぁぁ!!」
「「「了解!!」」」
取りあえずは別れの挨拶をしつつ、俺たちは超特急で体内からの脱出へ移るのであった‥‥‥‥
「ぎゃああ!!なんかビームを打ってくる蜘蛛っぽいゴーレムがいるんだけど!?」
「きゃぁぁ!?着物破かれるというか、ハサミ状のゴーレムってなんでありんすかぁぁ!!」
「あいたたた!?つついてくるのはいたいでござるぅぅ!!」
「はうぅん!?ヌメヌメした床で滑るんだけどぉ!?」
‥‥‥無事に脱出できるかなぁ、コレ。
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