憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波

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285 意気込みは買って

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…‥‥ダンジョンに挑むのは、もう慣れている。

 モンスター・パレードにも対応したし、コアの部分まで向かったこともある。

 あとは学園の授業の一環として組まれていたり、新しいダンジョンに挑んで組織の手に渡らないようにと思ったけど、中身がいやらしすぎて撤退したこともあったが…‥‥


「洞穴って感じはしたけど、奥に入るとそこは‥‥‥」
「密林が広がってましたわね。うん、中々環境的には悪くはないですけれども、ちょっと湿度が高いですわね」

 ダンジョンの内部って、ダンジョンによっては結構変わる。

 でも、今回潜り込んだこのダンジョンは、奥へ進むと密林が広がっていた。


「というか、洞穴内のはずなのに、青空があるのもどうなんだろうか‥‥‥」
「でも、これ空に見せかけた天井だったでござるよ‥‥‥うう、痛かったでござる」

 大きなたんこぶを作ったルビーが、天井を見て恨めしそうにそうつぶやく。

 無理もない。どこまでも広がっていそうな空なのに、ダンジョン内部故か限りがあったのだから。

 しかも、普通の視覚ではわからないほどのカモフラージュのような物があったようで、ゴッスゥ!!っとかなり痛そうな音が響き渡ったほどである。

「採取して調べましたが、これ苔の一種ですネ。ダンジョン独自のもののようですが、位置によって細かく変わる特性を持っていたようデス」

 ルビーの大きなたんこぶと引き換えに、落ちてきた天井の一部を持ちながらノインがそう分析した。

「しかし、わざわざこんな苔が生える必要があるのか?」
「ダンジョンだから、という理由しかないじゃろうなぁ。まぁ、ここのダンジョンコアが何かの意思を持って、こんな密林を作り上げつつ再現度を高めようとしたということも考えられるのじゃが…‥‥暑いのぅ」
「夏場/熱いのに/ここムシムシ」
「ジトッとしていて、ちょっと嫌になるぜ」

 密林に見合った環境というべきか、夏場に入るべき環境ではない。


 じっとりむわむわむしむし…高湿気、高温という最悪の環境である。

「まぁ、この周辺の植物にとっては居心地が良いようですわね。わたくしとしては暑いのですけれども‥‥‥」
「というか、じっとりしすぎて嫌になるんだが…‥‥ルビー、全員に風を頼む」
「分かったでござるよ」

 ばさばさっとルビーが思いっきり翼を動かして羽ばたき、その風が全員にいきわたる。

 これである程度湿気が吹き飛ばせればいいと思っていたが…‥‥ダンジョンはそう甘くはなかったらしい。



――ゴロゴロ、ゴロロロロロ!!
「ん?なんの音だ?」
「雷雲のような音がしたぜ?でも、ここダンジョン内なのに…‥‥あ、あっちだぜ」

 ティアが指をさした方向をみれば、文字通り暗雲が立ちこみ始めていた。

 バチバチっと音も立てつつ、嫌な予感がする中でそれが一気に天井を覆い…‥‥


ぽつぽつ‥‥‥どざばぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「な、なんじゃこりゃぁ!?」
「す、スコールのようデス!!」

 一気に大量の大雨が降り注いできた。

 しかもその水の量は半端ではなく、しかも雷が周辺へ落ちてくるというおまけつき。

「とりあえず一旦リリスの中へ避難!!全員入れ!!」
「「「「了解!!」」」」

 冠水してくるうえに雷での感電の危険もあり、慌てて安全なリリスの中へ避難するのであった‥‥‥



「うわぁ‥‥‥海とか川に飛び込んだわけでもないのに、滅茶苦茶濡れているんだが‥‥‥」
「下着まで、全滅しましたわね…‥‥」
「お、溺れるかと思ったでござる…‥‥」
「あの量だと滝登り出来そうだったけど、流石に無理があったぜ」

 全員中に入って確認すれば、ものの見事にずぶぬれ状態。

 びちゃびちゃになりつつも、ノインが腕を変形させて乾燥機に切替え、ルビーも火を吐いて補助をする。

 他の男子が見ればこれはこれで良い光景と思うかもしれないが、当事者になるとそれどころではないなぁ…‥‥全身ずぶぬれ過ぎて、さっさと乾かしたい。

「グゲェ、グゲェェ」
「え?外まだ降っている状態?しかもなんか流され始めただと?」
「変なところに流されても困りますし錨を打っておきましょう」

 ダンジョン内の面倒なところに流される危険性もあり、今も外が大雨だが、箱の隙間から流されないように錨を投げて地面に突き刺しておく。

「しかし、大雨が何でダンジョンで降るんだよ…‥‥なんかただの水じゃない変な液体とかじゃないよな?」
「それは無いようデス。分析したところ、普通の水デス。とはいえ、雷とセットのダンジョン内の自然トラップのようで、電気を通す性質が異常に高いデス」

 リリスの箱の中に入った判断は正しかったようで、あのまま外にいれば感電は免れなかったようだ。

 どうやらこのダンジョン、仕掛けてあるトラップというよりも、自然そのものがトラップとなって襲い掛かるような類のようである。

「こりゃ一筋縄ではいかないな…‥‥また面倒なのが出来たなぁ」

 とにもかくにも、まずは雨がやまないことには進めそうにもないので、衣服を乾かしながら待つのであった‥‥‥

「…‥‥そう言えばノイン、お前のメイド服は濡れてないよな?」
「メイドたるもの、常にメイドの正装をという事ですが…‥‥まぁ、これの防水機能は私が施せるレベルのものではないので、どうやら濡れなかったようデス」
「ああ、ワゼ製ってことか‥‥‥」


‥‥‥そう言えば、俺たちの服もノインが前に防水加工したとか言っていたのに、見事に濡れたな。

 でも、彼女の姉妹機の施した衣服は濡れなかったということは…‥‥そちらの方が彼女よりも技術力は上なのか?

 ふと思ったが、そう考えるとそれだけの技術が必要なメイドって何だろうか…‥‥いや、考えるときりがなさそうなのでやめておこう。













…‥‥ノインの姉妹機が働く世界って、どれだけの物なのかという疑問をディーが振り払っていた丁度その頃。

 村の方では、残されていたセラがウルバリーの容態を見ていた。

「んー、お兄ちゃんたちが帰ってくるのは時間がかかりそうだけど‥‥‥こっちも見ておかないといけないのー」

 本音を言えば、召喚獣たちとディーだけで行動はさせたくはない。

 なんとなく女の勘だが、ずっといさせるとそれはそれで何か不味いような気がするからだ。

 とはいえ、わざわざ助けようとして来たこの綺麗な蝶のモンスターも放置できないので、治療後に目を覚ますまで待つことにした。

 一応、ウルバリーを傷つけた相手が出ないとも限らないので、万が一に備えた緊急連絡用のボタンがあるので、それを押してすぐに帰ってきてほしい気持ちもあるのだが…‥‥

「‥‥目はまだ覚めないの?」

 ツンツンっと触って見るが、反応はない。

 死んでいるかのように寝ているが…‥‥治療を施した面子の内、リザ曰く体力が回復するまで絶対に目覚めないようになっているらしい。

「でも、この子ってモンスターだし…‥‥普通の蝶とは違うはず。体力もさらに上かもしれないのに…‥‥まだなのはどういうことなの?」

 単純にこのウルバリーの体力が多いだけか、はたまたは回復速度が遅いだけか。

 どういうことなのかは不明だが、まだ時間はかかりそうなのは間違いない。

 けれどもそう考えると、このウルバリー自体の体力が相当消耗していたことにもなるのだが…‥‥大怪我を負っても確かに体力は減っても、ここまで起きないほどになるのだろうか?


「…‥‥不安かも」

 考えれば考えるほど、何か嫌な予感しかしない。

 ダンジョン挑戦中のディーの無事を祈り、セラはそっと手を合わせて願うしかないのであった‥‥‥‥







‥‥‥なお、村にはディーと同じく、帰郷してきたバルンもいたのだが、彼は今、違ったピンチを迎えていた。

 ダンジョン挑戦する話をディーから聞き、誘われたが彼は彼なりの家での仕事があるので、断っていた。

 ディーが声をかけた理由としては、悪友でもありつつバルンの武闘家としての職業の強さも知っていたので、ちょうどいいと思ったが…‥‥バルン自身としては、面倒ごとの予感がしたのである。

 そしてその後に、ちょっと木々を取ってこようと思って、村近くの森に来ていたのだが…‥‥


「…‥‥おいおい、どうすればいいんだ、これは」

 森の木々を切り倒そうと、手斧をもってやってきていたバルン。

 だがしかし、目の前の光景を見て冷や汗を流しまくる。

 というのも、うっそうと茂っていたはずの木々は今、目の前でかなりの数がなぎ倒されており…‥‥それをなぎ倒したと思わしきモンスターがいたのだ。

 そして地面には、バルンと同じ目的で来ていたらしい村の人達がいたのだが‥‥‥全員倒れ伏している。

「気が付かれないように逃げたいのに…‥‥思いっきり目を付けられているしぃ…‥‥」

 ギラリと光った視線の先が、自分に向いていることをひしひしと感じ取るバルン。

 職業「武闘家」ゆえに、相手の戦う意思がなんとなくわかってしまうのだが、どうやらやる気十分。

 いや、やる気というよりも殺す気満々なのが眼に見て取れるようであり…‥‥このまま逃走しても、村の方に危害を加えそうなのが理解できてしまう。


「うう、やるしかないのか!!」

 ばっと身構え、少しでも役にたつように手斧を持ち、バルンは戦闘態勢になる。

 これでも成績としては座学はさっぱり気味ではあるのだが、体術関係に関しては優秀ではある。

 その点を見て、ディーが今回ダンジョンに誘ったのだろうが、断ってよかったのかもしれない。

「さぁ、かかってこいやぁぁぁぁぁあ!!」


 奮い立たせるかのように叫び、バルンは目の前の相手から挑まれた戦いを受けるのであった…‥‥
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