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312 結局は同じ道で

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‥‥‥ハザード内のダンジョンを別れて進むディーたち。

 迷宮といっていいほど入り組んだ道だが、互に通信機で確認し合い、正解の道を選んでいたはずだが…‥

「‥‥‥結局、入り組み過ぎて合流する訳か」
「そのようですわね。前からくるとは思いませんでしたけれども‥‥‥」
「どっち言っても、ここまで来るようだぜ」

 入り組みまくっていたせいか、別方向から進んでいたはずなのに、とある通路で真正面から合流してしまった。

 どうやらこのダンジョン、相当厄介なというべきか、別れてい進んでいても結局合流するというか‥‥‥

「むぅ、この様子じゃと、コアへの道は無いのかもしれぬ」
「経路を確認したのですが‥‥‥どうしてもこうなりますネ」

 一旦周囲を蔓や氷で覆って安全地帯を作り出し、俺たちは再び話し合いをし始めた。

 各自が向かっていた通路を確認し、どこにどのように繋がっていたのかをまとめ上げ、地図として書き上げていく。

 ノイン御手製の通信機にも記録装置とやらも付けていたようで、そこから経路を浮かび上がらせたのだが‥‥‥その予想は当たっていた。


 迷宮といっていいほど、入り組みまくったダンジョン。

 普通であれば次の階層や部屋にたどり着いているのだが、どの経路から行っても同じような場所へ辿り着き、最終的には元の場所に戻るようになっているようだ。

 つまり、いくら別れて進んだとしても、最終的には元の場所へ合流する…‥‥出口のないダンジョンと化していたのである。

「というかそれなら、ここに入る前にドリルでぶち抜けていたのはどうなんだろうか‥‥‥」
「一応、壁を剥がせば生体組織が見えますし、ダンジョン自体が生きた状態なのでしょウ。もしかすると、ハザード自身が私達の位置を感知して、ダンジョンの通路の配置を移動させているのかもしれまセン」

 ならば、どう進めばいいのだろうか?

 相手の意思によって姿かたちが変わる可能性があるのならば、コアまでたどり着けない可能性が非常に大きい。

 かと言って、貫いて突き進もうにもドリルへの耐性を付けられている可能性もある。

「…‥‥ノイン、一応聞くが、コアの位置は把握できるか?」
「センサーを最大出力で探索させてみれば可能かと思われマス」
「なら、まずは位置を正確に把握して見てくれ」
「了解デス」

 命じると、ノインは頭のアホ毛を大回転させる。

 ぐるりぐるりと勢いよく動かし‥‥‥びぃんっと上に向かって伸びた。

「‥‥‥どうやら、この上部の方に位置が確認できまシタ。ですが、このダンジョンの形状を見る限り、上への道は無さそうデス」
「上か…‥‥」

 天井を見上げれば、大きく広がる石造りの外見。

 ただし、その裏面は分厚い肉の塊が予想でき、そう容易く進めなさそうだ。

「全員の最大火力での遠距離攻撃手段を集中させて、直接向かう道は出来るか?」
「計算して見ますガ‥‥‥ン?おかしいですネ?」
「どうした?」

 かたかたたっと音を立ててて早々に、ノインがそう口にした。

「ココへ突入前に目測で見たハザードの全長を今、当てはめていたのですが‥‥‥ダンジョンコアの位置がそれを超えていマス」
「というと?」
「頭がさらに巨大化して成長したのか‥‥‥いえ、それにしては、上部に上がり過ぎていマス」

 ノインいわく、どうやらセンサーを最大感度にして探索したところ、ダンジョンコアの位置がおかしいらしい。

 飲み込まれる前にできていたハザードの頭部の大きさを考えると、その頂上部に位置してもおかしくは無いのだが…‥‥それにしてはやけに高い位置に存在するそうだ。

 考えられるのは、ハザード自身が急成長して巨大化したか、もしくはコアがそれ以上に高い位置にふっ飛ばされて空中浮遊しているか…‥‥あるいは、最も何か別の理由があるのか。

 それを分析したくとも体内では今一つ分からず、外部から見ない限り不明らしい。

「状況が変化しているってことか…‥とはいえ、外の様子は見れないのだが‥‥‥」
「‥‥‥あ、そうデス。頭から抜けてまシタ」

 っと、ここでぽんっと手を打ってノインが言うには‥‥‥‥

姉さん母さんが、ダンジョン跡地の建設工事に利用した私の姉妹機が、現在各地へ散らばっているはずデス。ココからなんとか通信を取って、外部から目測できる姉妹機に頼み、今の状態を観察してもらえばいいのデス」

 忘れていたようだが、そう言えば現在、ノインの姉妹機でもあり製造者でもあるワゼというメイドと、その主が観光しに来ていたのだが、そのちょっとした間にダンジョン跡地での観光地建設の際にシスターズという名称でくくられる大量のノインの姉妹たちもまた、各地に散らばって色々見ているそうだ。

 なので、そのシスターズとやらに連絡を取って、外部からハザードの様子を見て貰えば良いのではないかという案を出したのである。

…‥‥頭から抜けていたけど、その手段は使えるか。

 でも、まず何でそのシスターズとやらがこの世界の各地に散らばっているのかが疑問だが…‥‥気にしたらきりがなさそうだし、放置しておこう。

「なら、やってみろ」
「了解デス。センサーを感知モードから通信モードへ、姉妹機へのチャンネルを全部開きまして…‥‥」

 うぃぃんっと音が変わり、ノインの目に細かい文字が浮かび上がり始める。

 全部を読み取ることはできないが、ハザードの体内から各地へ散らばったシスターズとの連絡を試みて…‥‥そして数分ほどで、話が付いたようだ。

「機体番号119及び233、7897に29567がちょうど近辺にいたようデス。あと数十秒で、現在地の様子を映像化してくれますので、壁に投影しマス」
「ノインの姉妹、なんか想像以上に多くないか?」
「機体番号が数を示すとなると、既に5ケタはいるようなのじゃが…‥‥」

 ワゼの事も考えると、ノインと同じようなスペックのメイドがそれだけいるのか…‥‥その世界、ちょっと怖くないか?滅茶苦茶なメイドが圧倒的な桁数で存在する世界ってどうなんだ?

 色々とツッコミを入れたいが過労死そうなのでしないでおき、数十秒後にノインの目から光が出され、外部の映像が映った。

 4か所からの同時撮影による立体化映像らしいが…‥‥その映し出された映像を見て、俺たちは目を見張った。

「‥‥‥あれ?ハザードの姿が無いんだが」
「というか、塔の映像ですわね」
「これ、喰いつくされた塔、でも、なんか違う?」

 巨大な化け物の頭部が映し出されるかと思いきや、出てきたのは塔のダンジョンの映像。

 ハザードによって喰らいつくされたはずだが、どういう訳かその映像が出てきたのだ。

「どういう事でありんすか?ハザードが塔になったのでありんすか?」
「どんどん謎を生み出す気かのぅ‥‥‥」
「もしかして、コアを食べたから自分がコアになって塔のダンジョンを作ったのではないか?」
「その可能性もあるぜ」

 つまり、暴食の化けと化していたハザードではあったが、塔のダンジョンのコアも喰らったことにより、自身の体内をダンジョン化させるだけではなく…‥‥その肉体すらも、一つのダンジョンとして形成され直したのではないだろうか?

 ただし、その周辺の様子は明らかにハザードが喰らい始めるよりも酷い状態になっていた。

 大地がひび割れ、あちこちから色が消えうせ、ありとあらゆる生気がすいつくされたかのような、荒廃した光景。

 しかも、塔のダンジョンだった時と比べれば、不気味な分厚い根が生えており、どくんどくんと脈を打っている。

「通信に寄れば、周囲の生命力を喰らっているようデス。直接かみ砕くよりも、自分自身で吸収することを選んだのでしょウ。現在進行形で大地そのものの力を喰いつくしているようデス」
「‥‥‥喰い尽くされたらどうなる?」
「生きとし生けるものが住めない地になるだけデス」

…‥‥絶対に長期滞在できないというか、放置できない問題が発生した。

 周囲への物理的被害だけならばまだどうにかなりそうだが…‥‥そのための土台と言うべき部分から
奴は喰いつくし始めたらしい。

 このまま放置すれば広がっていき、王国や帝国、森林国までもが何もない大地へと変貌し‥‥‥滅亡が待ち受けているようだ。

「なんてとんでもない怪物になってんだよ、このダンジョンの怪物は!?」
「暴走しまくっているようデス。それを自分の力に変えているようですし‥‥‥‥このままでは、あと3日もしないうちに全世界を喰らい尽くすでしょウ」

 たった一つの組織の幹部が生み出した化け物が、まさかの全世界滅亡のきっかけになり得る事態。

 人知を超えたものを作るというが、先ずその人知を滅ぼしかねない怪物を作ってどうするんだというツッコミを入れつつ、現状の不味さを確認させられたのであった…‥‥

「って、ツッコミ入れている場合じゃねぇ!!どうにかならんのかこれ!!」
「流石にシスターズでも、無理ですネ。倒せば生命力が還元されるでしょうが、どうや手倒すのかが、不明ですし…‥とりあえず、姉さん母さんに相談して見ましょウ」
「相談してどうにかなるのかのぅ?お主の姉というか母というか、ワゼというメイドの無茶苦茶さは前にも見たのじゃが…‥‥」
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