私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
6 / 204
1章 出会いの春風は突風で

1-4 自分が出たいが、それはどうなのか

しおりを挟む
 王都へ向かうまで時間はあるが、それまで魔剣を入手した者たちにはやるべきことがある。

 それは、ある程度の魔剣のコントロールであり、中々重要な事だったりするのだ。

 考えてみよう。仮に火を出す魔剣を得た人が、うっかり室内で炎上させたら火事になるだろうし、雷を落とす魔剣の持ち主が濡れてしまって自爆のようなことになってしまう可能性がある。

 魔剣の持つ力が大きいからこそ、習うよりも前にまずは魔剣の力に慣れる必要性があるのだが…‥‥


「‥‥‥本来、ご主人様を守るのは私の役目なので、ご主人様は戦う必要がありまセン。ですが、私を魔剣として使う想いがあるのならば、それに答えるのが魔剣としての私の正しい方法なのでしょウ」
「それはもっともな正論のような、何かおかしいようなものが混ざっている気がしなくもないんだが…‥一つ良いか?」
「何でしょうカ?」
「確かにさ、今朝起きた後に慣れたいから剣として使わせてくれとは頼んだ。でも、慣れるためとはいえ…‥その動き方の感覚をしっかり学ばせるためにという名目で、俺の身体を勝手に動かすなよ!!というか、どうやって俺を操っているんだよ!!」
「そこはこう、魔剣としての力デス」
「説明が雑だぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 俺のツッコミへの微妙な対応に、思わず叫んでしまった。




 魔剣に慣れるために、魔剣を獲得した者たちが練習をする場所はどこの地方にもある。

 そしてこの辺境の田舎ともいえる場所にも用意されており、本日はそこである程度の感覚をつかもうと思ってやって来たのだが‥‥‥何をどうしたのか、現在俺の片手がゼナの手によって剣に変化しつつ、体の自由が利かない。

 いや、自由が利かないではなく、魔剣そのものに乗っ取られていると言って良いだろう。しかも気持ち悪いぐらいに拘束感が無いどころかヌルヌル体が勝手に動き、確かに剣を振るう感覚は掴めそうなのだが精神的に来るものがある。

「メイドたるもの‥‥‥いえ、ここは魔剣として、ご主人様が扱いやすいように、自身の扱い方を覚え込ませる必要があるでしょウ。無駄な動きを無くし、より効果的に動きやすい身体の扱い方を実感させるのデス」
「確かに実感しやすいけど、魔剣に操られるって相当ヤバい字面をしている気しかしないんだが!!」
「言われてみればそうですが、大丈夫デス。そう、例えご主人様が気絶していても、私が代わりに動くこともできるのデス」

 乗っ取って勝手に操るのは魔剣というよりももっと禍々しい呪われた代物ではなかろうか?

 そう思いたいのだが、確かに彼女に体を操られているとはいえ、それとなくどう動かせばいいのか分かる部分もあり、色々とツッコミが追い付かない。っておい、今のジャンプで地面が踏み砕けたんだが、俺の力以上の何かも出てないか?

「いえ、純粋にご主人様の力デス。常人は大抵自身の力をどこかでセーブしているので、こうやって操った時に限って普段以上の力を振るうことが可能になるのデス」
「それってつまり、ゼナが操ってない状態だと力がそこまで出ないということにもならないか?」
「そんなことは無いのデス。熟練になれば、意識して出せるようになりますからネ。ご主人様の呑み込み具合から見ても、中々のものですし、そう長くかからないとは思いますヨ」
「でも、普通じゃ出ない力を出させているってことは、後で反動があるんじゃ?」
「‥‥‥大丈夫デス。筋肉痛になったとしても、マッサージしてお世話いたしますからネ」
「その間に不安しかないんだが!?」

 頼む相手を間違えたというべきか、魔剣として何かを盛大に間違えているというか、ツッコミ力を上げられている気しかしない。

 しかし、そんなやり取りをしている間にも彼女は俺の身体を自由自在に動かし、様々な動きを覚え込ませてきている。

「んー、それにしてもご主人様は本当に呑み込みが早そうデス。初めて魔剣を持ったにしてはやけにスムーズに動きやすいのですが、何かやっていたのでしょうカ?」
「話を逸らすな!!‥‥‥まぁ、やっていたのかという質問に関しては、理由はあるけれどな」





‥‥‥魔獣を倒すために、魔剣を得るために何もしてこなかったわけではない。

 ただその日偶然に手に入れたとしても、魔剣を扱うことができなければまさに宝の持ち腐れであり、持っている意味がない。

 だからこそ、魔剣を手に入れた仮定と、入手できなかった場合の道も考えそれなりに自主的な特訓を密かに積み重ねていたりするのである。具体的には剣を振るう人の動きを真似ていたりするし、弟や妹たちの相手をしていれば否応なく体力も付くからな。

「なるほど‥‥‥隠れて努力をしているとは、感心デス。ご主人様のその想いが私を呼び寄せたのであれば、ソレはソレで運命的な出会いと言えるでしょウ」
「手に入れた結果が、メイドで現在俺を操っている魔剣だというのはすごい複雑だけどな」

 誰が手に入れる事の出来た魔剣の姿がメイドで、使用時に所有者の身体を操る事が出来るような代物になると想像できただろうか?いや、普通はできない。

 そもそもどうやって俺の身体を自由自在に動かしているのかも分からないし、魔剣としては異常としか言いようが無いだろう。

「でもちょっと、耳に挟むようなちゅうに…‥‥いえ、何でもないデス。ご主人様の努力のおかげで、やりやすいのであれば喜ばしい事なのデス」
「今ちょっとだけ、何か変な言葉を言いかけなかったか?」
「何でもないのデス。ああ、それはそうとしてそろそろ扱いに慣れてきたようですし、ここはひとつ私が直接相手をして実践してみませんカ?」
「え?」

 何かをごまかそうとしているような気もするが、その言葉に操られた状態ながらも俺は首を傾げた。

 今、彼女は俺の腕で剣になっているというのに、どうやって相手になるつもりなのだろうか?

「簡単な事デス。模造刀をご主人様に付けてもらうだけなのデス」

 そう言うが早いが、体の操られていた感覚が消失し、腕から剣が消えて彼女がその場にメイドとしての姿に戻る。

 そしてすぐに胸元からどこにどうやって入っていたんだと言う様な木製の刀を取り出してきた。


「‥‥‥確かに、ゼナの剣になった姿とうり二つの木刀なうえに、重さなんかもほぼ同じだな‥‥‥いつ用意した?」
「昨晩の間にデス。ご主人様がぐっすり眠っている中で、夜なべをして作ったのですヨ。まぁ、魔剣なので元々眠る必要性もないので、時間を有意義に使えたので良かったのデス」

 準備が良いようで、しっかりと僕の腕に模造した木刀を装着させ、彼女が少し離れて前に立った。


「さぁ、ご主人様。せっかく今の動きで感覚をつかめたのですし、忘れないうちにしっかり復習しましょウ。私が相手をするのデス」
「魔剣とは言え、メイドというか女性相手に切りかかりたくもないんだがな‥‥‥まぁ、相手をしてくれるのであれば、やってもらおうか」

 あとちょっと、操られていたところの不満もぶつけたい。大体の動き方を理解できたけど、いい気分でもない。

 そう言う訳で、俺は彼女に挑ませてもらうことにした。覚えさせられたからこそ、どうやって動けばいいのかしっかりと理解しているし、そうそう負ける事なんぞ‥‥‥








「あれぇ?ゼナ姉ちゃん、フィー兄ちゃんを背負っているけど、どうしたの?」
「フィー兄ちゃん、気絶しているし何があったの?」
「‥‥‥えっと、ちょっと興が乗り過ぎて、励み過ぎただけデス。私もまだまだメイドとして甘かったのもありマス」

‥‥‥それから日々の日課に、密かに自主的な特訓を追加するのであった。

 うん、一つ目標が出来た。絶対に、彼女に圧勝するほど実力を高めてやる‥‥‥‥
しおりを挟む
感想 610

あなたにおすすめの小説

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...