私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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1章 出会いの春風は突風で

1-3 実力は、後のお楽しみという事で

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‥‥‥一応、魔剣ということは確認できた。

 腕そのものが剣にされるから、扱うことに関しては後でしっかり確認していく必要があるだろう。通常の手に持って使うような類ともまた感覚が異なるし、そこは練習あるのみである。

 
「でも、魔剣選定の儀式で登録されたし、3日後に王都行きの馬車が来るのか…‥‥」

 魔剣を手に入れたからって、直ぐに魔剣士になれるという事ではない。

 この国の王都にある学び舎でしっかりと学び、魔剣士として必要なものをしっかり身に付けなければいけないだろう。

 魔剣は基本的に魔獣という存在を滅ぼすが、扱いようによっては強い力になるゆえに、常識人がいないと困ることにもなるのだ。非常識な人が、下手に強大な力を持った魔剣を手にして暴れたらそれこそ考えたくないような最悪の事態にもなりかねないからな。

 そう言う訳で、王都へ向かうための準備のために、帰宅したとはいえ‥‥‥流石にゼナに関しては驚かれた。

「うわぁ、フィー兄ちゃんが女の人を連れて帰ってきちゃった」
「凄い凄い、絵本の中で見るメイドさんだ!」
「綺麗な人、兄ちゃんやるじゃん!」


「人ではなく、魔剣なのですが…‥ご主人様、この子たちは?」
「俺の妹や弟たち。といっても、血のつながりのない孤児同士だけどな」

 ドップルン教会へ戻ってきて早々、ゼナの姿を見て皆驚いていた。

 無理もない、魔剣を持って帰ってくると思っていたら、まさかのメイドを連れて帰ってくるからな。俺が皆の立場だったら同じように驚いていたよ。

「兄ちゃん、魔剣を手に入れたんだ」
「正直、駄目で落ち込むかと思っていた」
「むしろ本当に魔剣なの?フィー兄ちゃん、連れ去って来たとかないよね?」
「手に入れられないと思っているやつもいたんかい!!」

 酷い言われようである。本日何回ツッコミを入れたのか、人生の中での最高ツッコミ回数を記録させる気なのだろうか?

「あらあら、フィーお帰りなさい。無事に魔剣を‥‥‥あら?メイドさんを連れてきちゃったのかしら?」
「院長先生、この人これでも魔剣です」
「初めまして、本日よりご主人様の魔剣となりましたゼナというものデス」
「驚きねぇ、あなたが魔剣を手に入れたいのはずっと分かっていたけれども、手に入れられないかもと思っていたのよねぇ」
「院長先生まで!?」







 何にしても、どうにかこうにか自室まで俺は辿り着いた。

 ドップルン教会は孤児院を兼ねているから身寄りのない孤児が来るけれども、それでも成長して俺のように魔剣を手に入れて王都に向かったり、手に入れられなくとも自分の道を考えて出ていく人はいるので、満室にはならず、自室を手に入れられるのは非常にありがたい事だ。

「3日後の移動でよかったかも…‥‥今日は色々とあり過ぎて、もう疲れた」
「ご主人様、お疲れでしたらマッサージをいたしましょうカ?メイドたるもの、ご主人様の疲労を癒すのも仕事ですからネ」
「いや、肉体的疲労じゃなくて、精神的なほうだから意味が無いと思う」

 ベッドにぐったりと脱力しながら倒れ込み、改めて本日あったことを振り返ったが、おそらく俺の人生の中では1、2位を争う様な濃密な日だった。覚えていない赤子の時に、魔獣の襲撃に遭っているという事実が今まで一番だと思っていたが、今日の出来事も十分濃すぎるからな。

 一応、ゼナが魔剣であるという事はあの魔剣選定の儀式で認められはしたが、それでもこういう魔剣が出てくるとは誰が予想できたのだろうか?

「何にしても、今日はもう疲れたからぐっすり寝たい‥‥‥でも、その前に、風呂に入るか」
「ム?この教会にお風呂場があるのですカ?」
「あるんだよ。いや、孤児院も兼ねているからあるというべきか‥‥‥」



‥‥‥行き場のない、身寄りのない、そういった子供たちを引き取る場所だからこそ、その孤児たちの状態は最初悪いことが多い。

 病気になっていたり、何かしら怪我をしていたりすることもあって、俺みたいなまだ満足な状態でやってくるのはそうそうないのだ。

 だからこそ、来てすぐに悪化しないように、まずは病気の予防なども兼ねて清潔にすることが推奨されており、毎日の掃除や入浴によって清潔さを保つことによって悪化するような要因を寄らせないようにしているのである。

 まぁ、広い風呂場でもなく、女子と男子て時間を分けて入浴しているけれどね。それでも毎日の入浴があるからこそ習慣づいているとも言えるだろう。

「そうですカ。では、お風呂の準備を進めておきましょウ。メイドたるもの、ご主人様の日々の習慣を大切にするために万全を尽くすことが必要ですからネ」

 そう言って、ゼナはすぐに部屋から出ていった。

 どうやら院長先生や弟や妹たちに聞いて、まだ少し時間が早いかもしれないけれど、さっさと風呂を用意してくれるらしい。

「‥‥‥魔剣だという実感はまだあまり無いけど、メイドという面ではありがたいかもなぁ」

 まだ色々と心の整理がつかない部分もあるが、気遣って行動してくれるのはありがたいかもしれない。

 本日ようやく実感した、ちょっとした安心感にこれほどまで感謝をしたくなったのは初めてかもしれないと思うのであった‥‥‥‥


‥‥‥しかし、その感謝は即座に吹っ飛ぶことになった。

「ではご主人様、お風呂へ入りましょウ。背中を流しますヨ」
「いや一人で入れるからな!?」
「メイドたるもの、ご主人様の快適のためにも、全力を尽くすベシ。風呂においても、しっかりとお世話をするのデス」
「尽くすところが違うってばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 まず、快適にするために尽くす気があるなら、ツッコミを入れさせるな!!










 お風呂場にて、フィーが全力のツッコミをしている丁度その頃。

 魔剣士選定の儀式のために、新たな魔剣を手に入れた者たちの確認も兼ねてこのドップルン地方へ来ていた、ドルマリア王国に所属する魔剣士たちは宿屋にて報告会を行っていた。

「----で、以上を持って本日の魔剣士選定儀式によって確認された魔剣の数は12ほど。辺境ともいえるこの地方でここまでの数が出たのは、久しぶりのようです」
「今日の魔剣選定では、色々出たからなぁ。火や雷はそれなりにいたが、水や氷などもいたからな」
「しかも今日は、その中でもさらに目立つのがいたよな」
「あのメイドの魔剣だよな」
「「「「それだよなぁ‥‥‥」」」」

 一人の魔剣士の言葉に対して、他の魔剣士たちは頷きつつ、遠い目をする。

 そして自分達が持っている魔剣を手に取った。

「‥‥‥魔剣バンド、お前は今もこの会話を聞いているのか」
「魔剣ブレーメン、お前も意志があったのか‥‥‥」
「色々と、知りたくなかった事実も出たからなぁ」
「特にターツやザッハが一番酷かったな」
「「うるせぇ!!」」

 魔剣に見られていたことで、自分達の今後に関してやるべきことなどが分かりつつも、知りたくないこともあった。

 まさか自分以外の人についていたり、所有物を親にとられていたり、挙句の果てには厳重注意をされる奴が出るなど、彼等もまた色々と本日の間にあり過ぎたのである。

「まぁ、なんだ。それでも相棒や生涯の友と言える魔剣が色々と見てくれていたのが分かったのは良かったか。中には日ごろの感謝もあるようだし、こういうことを知れた件は良かったと思おう」
「うんうん、過ぎ去った事というか、今後頭が痛くなりそうな部分は、魔剣で切り捨てるつもりで考えないでおこうよ」
「それが一番か」

 うんうんと頷き合いつつ、近い未来確実にやらなければいけない事から今は目をそらしまくる魔剣士たちの友情は、今日一日でかなり深まったのかもしれない。

 自分だけではなく、他の人もそうであったという事実というのは、時として慰め合うことが出来るのだから。

「それにしても、魔剣でメイドで…‥‥あの少年はどうなるのかなぁ」
「魔剣士として学ぶために王都行きは決定したが、王都の学び舎であの子がどう扱われるかが気になるところだ」

 一旦話を切り替え、そもそもの原因になった者に関して、彼らは話し合う。

「腕が剣になったのも驚いたが、あの魔剣メイドの口ぶりからすると、もしかすると基本は彼女が動くかもしれんな」
「とは言えメイドだろう?メイドが戦闘できるのか?」
「疑問に思うが、そこは実力を見てみなければわからない。まぁ、王都へ着けば各地から選定して魔剣を得た子供たちが集まるから、そこで確認できるだろう」
「でも、何故だろうか?あの少年へ喧嘩を売る奴がでるのは予想できるが‥‥‥それをした途端に、あのメイドにバッサリと切り飛ばされる犠牲者が目に浮かぶんだが」
「「「「‥‥‥」」」」

 その言葉に、魔剣士たちはちょっと考え、同じような想像が容易に出来てしまった。

 魔剣を扱っている年月が長い彼らだからこそ、ある程度の魔剣の実力は見て分かるが‥‥‥あの選定の儀式の場では口にしなかったことが一つある。

「‥‥‥魔剣であろうとなかろうと、底が見えない雰囲気もあったな」
「ああ、見た目は美女なんだが‥‥‥あのタイプは非常に危険な奴だと、断言できる。忠剣と言っていたが、その言葉に嘘偽りはないだろう」
「だからこそ、敵には容赦しない‥‥‥それが必要かそうでないか、即座に判断して切り捨てる実力者の目をしていた」

 多くの魔獣を屠るためにいくつもの戦場を駆け抜け、前線に立ち続ける彼らだからこそあのメイドのまだ見せない実力に感づき、色々と察することが出来たのだ。

 あれは敵にして良い存在ではなく、常にその身は主のために動く者だと。

 だからこそ、主への危機に対してはその力を尽くすだろうと。

 その力を振るわれる相手がどのようなものだとしても‥‥‥あの時聞こえて来た「最低でも消滅」という言葉を有言実行しかねない存在だと。


「出来れば何も面倒事はないといいなぁ」
「場合によっては止めるために動く必要があるだろうが、相手にしたくねぇ」
「気のせいか、我々の魔剣も彼女とは敵対したくないと訴えかけてきたような…‥‥」

 何にしても、どの様な事が起こるのかはその時になって見ないことには分からない。

 ひとまず今は、魔獣討伐の日々からも離れたこの時を、大事に過ごしたいと彼らは思うのであった‥‥‥


「‥‥‥そう言えば、王都の学び舎だと確か、寮生活だったよな?」
「ああ、今も覚えているぞ。男子寮、女子寮と別れていて‥‥‥あれ?となるとあの子の場合どうなるんだ?」
「魔剣だから所有者として同室になるかもしれないが、見た目が完全に美女というかメイドだから、別室の可能性もある」
「でも、あのメイドがそう簡単に引き下がるようにも見えないし、そこはもう他人へ投げつけるか‥‥‥」



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