私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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1章 出会いの春風は突風で

1-2 探りつつ、探られつつ

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 魔剣選定で、魔剣を得ることが出来たのは良かっただろう。

 できない確率だってあったのだし、これで一応魔剣士の資格を有したとも言えるはずである。

 だがしかし、魔剣は魔剣でも人型の魔剣とは聞いたことも見たことも無いんですが…‥‥



「…‥‥見たことも聞いたことも無いという以前に、そもそも記録にもないのだが」
「そもそもあれは本当に魔剣なのか?普通にメイドのようにしか見えないぞ」
「人型の魔剣…‥‥そもそも、あれは魔剣のくくりに入れて良いのだろうか?」

 魔剣選定の儀式にいる人たちのひそひそ話が聞こえてくるが、同感である。

「あー‥‥‥一つ、尋ねても良いだろうか」

 っと、この何か言いにくい空気の中で、手を上げてそう問いかけてきたのは魔剣選定の儀式にて確認作業を行う検定士の一人。

「ム?何でしょうカ」
「魔剣‥‥‥その少年の魔剣ゼナといったか?本当に魔剣なのか、この場にいる全員が疑わしいと確実に思っているのだが、何か証拠はあるのだろうか?」
(((((まったくもって、そのとおりです)))))

 その言葉に、俺も含めたその場にいる全員の心が思わず一致して心の中で同意し合う。

 忠犬じゃなくて忠剣だとか言われても、そもそも容姿が剣じゃなくてメイドな時点で全員が疑いたく野茂無理はないだろう。俺自身も滅茶苦茶疑いたいからな。

「ふむ、確実に私が魔剣である証拠となると‥‥‥そうですね、良い例としては一つ、誰か本日魔剣を得た人ではなく、以前から魔剣を得ている魔剣士の方がいませんかネ?」

 ゼナの要求に対して、この場にいた人たちが顔を見合わせる中、一人が前に出て来た。

「魔剣士を求めているのならば、この私が出よう」

 新しい魔剣士となる者たちを見るために来ている、魔剣士の方々。

 その中でも何やら立派なカイゼル髭をしたおっさんが出て来た。

「魔剣『ベラドゥール』を扱う魔剣士、モンドゥだ。私がいる事で、何か証拠を示せるのであれば、示してほしいのだが」
「では、その魔剣をちょっと抜いて、触らせてください」
「良いだろう」

 ゼナの言葉に対して、すっと自身が持っていた魔剣ベラドゥールを抜くモンドゥ。

 その魔剣は植物の魔剣と言うべきなのか、蔓が覆っており、刺々しい形をしていた。


 そんな魔剣に対してゼナは近付き、刃先に手を触れる。

 すると、ぽうっと彼女の指先が一瞬だけ光った。

「‥‥‥なるほど、大体わかりまシタ。モンドゥさん、あなたの扱うこの魔剣から聞けましたが‥‥‥この間は、大きな蛇のような魔獣を討伐したのですネ」
「ほぅ?当たっているが…‥」
「さらに言えば昨夜、新しい魔剣士がどれだけいるのか気になって、楽しみで夜も眠れなかったそうですネ」
「当たって‥‥‥いやちょっと待て、なんでそんな事を貴様が知っているんだ!?」

 ゼナの言葉に、ぎょっと目を向けて驚愕するモンドゥ。

 その様子から見ると当たっているようだが‥‥‥何故、今日この場で出現したての彼女がその事を知っているのだろうか?


「いやいや、まだ偶然かもしれないぞ?お嬢さん、私も試してほしい」

 こんどは別の魔剣士の人が出てきた。

 再び魔剣を出してもらい、その葉先に彼女が触れるとまた指先が光る。

「‥‥‥魔剣『アヴ』を扱う、魔剣士ターツさんですね。えっと‥‥‥この場で言って良いのでしょうカ?」
「何をだ?」
「遊びに行く際に、魔剣を置いていくのは自由なので別に良いでしょウ。ですが、あなたの彼女が不倫をしている現場を、この魔剣は見ていたようですネ。しかも、お相手は3人ほどで‥‥‥」
「おぃぃぃぃぃ!?嘘緒だろミーシャが不倫をしているだと!?」
「ああ、その上あなたが1週間前に購入してあげたWZ商会製バッグを、偽物にすり替えて本物は売り払って金にしたとも言ってますネ。しかし、そのバッグ自体はそもそも偽物だったようで二束三文の価値しかなかったようデス」
「まじかよ!?あのバッグ自体凄い高かったのにぃぃぃぃ!?」

 ゼナの口から語られる言葉に、体をのけぞらせて絶叫する魔剣士。

 その様子から見るとどうやら本当っぽいのだが、内容がやや客観的と言うべきか、本人たちではなく…‥


「ゼナ、まさかとは思うけど魔剣と会話したのか?」
「ハイ、その通りデス。私も魔剣ですので、魔剣同士の瞬間的な会話が可能なのデス」
「その前に、魔剣にまずそんな見る事や話すことの意思がある事実の方が、驚愕するのだが…‥‥」

 最初に質問してきた検定士の声に、全員まずはその事実から驚愕させられる。

 火を吐き、水を出し、冷気を打ち出す多種多様な魔剣に、まさか意志があるとはだれが想像できただろうか。

「そりゃそうでしょウ。そうでなければ私たちは他者には扱えないようにできませんからネ。『魔剣は己の主以外には力を貸さない』…‥‥その決まりごとがあるからこそ、他人に私達魔剣は扱えないように、意志を持ちしっかりと見ているのデス」
「え、そう言う決まりごとがあるのか?」
「ああ、そう言えばそうだった‥‥‥何故か魔剣は、所有者以外が扱うことができないという話が合ったが、意志があって区別が出来ているというのであれば、納得もいくか」
「言われて見れば、意志があるようにも見えなくもないが‥‥‥おい、他のやつの魔剣もまさか、様々な状況を見ているのだろうか?」

 魔剣士たちの一人が、そう口にする。

 その言葉に対してゼナは肯定するように頷いた。

「ええ、そのようですネ。ですがちょっと‥‥‥うるさいデス」
「どういうことだ?」
「私に介してもらって、色々伝えて欲しい魔剣が多いのデス。触れないと直接の会話がなせないのですが、それでも何かとあるようですネ」
「頼む、今この場で良いから、その伝えてほしい魔剣の話を聞かせていただきたいのだが」

「‥‥‥うーん、ご主人様どういたしましょうカ?」
「え?俺に判断をゆだねるの?」
「エエ。私はご主人様の魔剣であり、その指示に従って動くのデス。今のは単純に、私自身の証明のために動いたのですが、これ以上は判断が必要と思いまシタ」
「魔剣と話せるだけで、魔剣と認めれるのかは分からないけど‥‥‥ひとまず、気になっている人が多そうだから一人一人、ちょっとやってみてくれ」
「了解デス」

 一旦魔剣選定の儀式の場から離れ、まだ残っている人たちは魔剣を入手するために動き出しつつ、この場にいる他の魔剣士たちの魔剣から話を聞き始める。

「魔剣士エーンガルドさん、先日泥棒に入られてますネ。ほおっかむりをした人のようですが、魔剣は人を容姿で判断せずに人そのもので見ますので、犯人が分かるそうデス」
「だ、誰が泥棒に入った?」
「弟さんですネ。金目の物を目当てにしていたようで、魔剣も狙っていたようですが洗濯ものの山の中に紛れていたおかげで、助かったようデス。でも、洗濯物はもうちょっと綺麗に洗ってほしかったそうデス」
「うぉぉぉい!?あの愚弟かぁぁ!!」

「魔剣士ザッハさんは‥‥‥あー、これは残酷な事実と言うべきなのでしょうか、伝えるのに迷っているようデス」
「何を目撃したんだ?」
「えっと、実家に帰省した際に、タンスの裏に隠していた秘蔵本をあなたのお父さんがこっそり持っていったようデス。ハードな内容を特に‥‥‥」
「親父ぃぃぃぃ!?あんた息子の私物に何をしていやがるんだぁぁぁ!!」

「ふむ、魔剣士デードさん、あなたは魔剣を肌身離さず持っているようで、魔剣としては嬉しがっているようですネ」
「お?本当かい?」
「ですが、何故あなたは男性ですのに女性の風呂場へのぞき込みに‥‥‥」

「「「「思いっきり犯罪じゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
「はぁぁぁぁぁ!?なぜ喋りやがったんだ!?」
「覗くための作業として、場所を作るための草刈りをさせられたのが不満のようですネ」

 出るわ出るわ、魔剣たちの日ごろからちょっと話したかった数々の話。

 知りたくなかったこともあれば、やらかした秘密を暴露するなど、混沌極まりない状況になっている。


「あのちょっと光るだけの指先で、どれだけの情報を得ているんだよ」
「かなり多くの情報デス。ほんの一瞬ですが、あれでかなり会話をしているのデス」

 ほんのわずかな時間でも、多くの情報をやり取りしているせいか色々なものが出てきてしまう。

 それは人によっては幸か不幸かなんとも言えないが、とりあえず魔剣の扱いに関しては今後厳重に注意をしておこうと魔剣士たちは心に刻んだようである。

「ううっ、ジャーニィちゃん信じていたのに‥‥‥」
「あいつのイカサマを知れて感謝する!!今度警備隊通報しよう!!」
「魔剣側も見ているんだなあ、手入れをしっかりして機嫌を取っておくかぁ…」


 大体の知りたい魔剣士たちは満足したようだが、ちょっと心の傷を持った者が増えたかもしれない。

 一部犯罪者まがいという事で、厳重注意などを受けているようだが、なんとか場としては収まったと言えるだろう。

「しかし、魔剣との会話が出来る事実は驚いたけど、ゼナ自身が魔剣であるという証拠にはちょっと足りないんじゃないか?」
「そうなのですカ?では、これならどうでしょうカ?」
「え?」


 俺の方に寄って来て、そっと右手に触れた瞬間、彼女の身体がその場から失せる。

ずしっ!!
「うおっ!?な、なんだか急に腕が重‥‥‥って、なんじゃこりゃぁぁぁ!?」

 彼女が消えた瞬間、俺の右腕に違和感が生じたので見てみれば、肘先から上が鋭利な刃物に変わっていた。

 まるで腕そのものが剣になったようで、指先の感覚などがあるのに、それでも腕にはものしか見えない状態になっていた。

『「ノーマルソード」モードデス。ご主人様が武器を振るいたい時は、私がこうやってご主人様の手に宿って武器になるのデス』

 口も何もないはずなのに、自然と伝わってくる彼女の声。

 どうやら俺の腕そのものに同化し、剣へと転じたようだ。

「な、なるほど‥‥‥魔剣の中には戦闘で使用する時のみに、所有者と一体化する類もあるのだが、どうやらその類と同じ魔剣‥‥‥ん?いや、ちょっと待ってくれ?最初からそうしてくれれば、心に傷を負う魔剣士が増えることが無かったのではないのかね?」

 変化を見て、検定士の人がそう口にする。

「言われてみれば、そうだよな?ゼナ、何故これを最初にしなかったんだ?」
『‥‥‥こちらの方が、もしかして魔剣であるという証明が出来たのでしょうカ?』
「「え?」」

‥‥‥回答に対して、何とも言えない沈黙が漂った。

 どうやら彼女、この俺自身の腕に剣となって変化する手段が魔剣証明としては早かったとは思わなかったらしい。

 どうしてくれるんだろうか、この空気。

 沈黙の中、証明できたからという事で再びメイドの姿にゼナは戻ったが、もうちょっと早くその事に頭を使ってほしかったように思える。

 そう思いながらも、一応魔剣としての証明は出来たようなので、メイドの姿でもれっきとした魔剣であると認識しなければいけないのであった。


「とは言え、ソードモードではなく、通常時の姿の方が楽なんですけれどネ。ご主人様を守るのは私であり、動かずとも敵をすべて排除するのデス」
「メイドの姿で、戦闘できるの?」
「出来ますネ。『メイドたるもの、ご主人様をお守りするためにも必要最低限の戦闘能力を有さなければいけない』というものデス。最低でも、敵をこの世からの消滅させるほどですネ」
「普通のメイドは戦闘しないと思うんだけど!?しかも、最低で消滅なら最高はどうなるんだよ!!」


 いや、魔剣だから普通じゃないんだけど、ああもう、どうツッコミを入れろと言うのか…‥‥
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