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1章 出会いの春風は突風で
1-1 大事な日、その日から運命が動き出す
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―――朝日が差し込み、部屋の中が照らされる。
それとともに起床しようと思ったが、それでも眠い時は眠いもので、いくら習慣づけようと努力していても、睡魔には抗いがたい。
「ううん、あと五分、あとちょっとだけ…」
「お~き~ろ~よフィー兄ちゃん!!」
「起きないのなら、飛んじゃうぞー!!」
「「いっせーの~で!!せいやっさぁぁ!!」」
どずぅん!!
「ぐげっばぁぁぁ!?」
腹部への強烈な一撃に、俺が思わず目を覚ますと、腹の上には弟や妹たちが乗り込んでいた。
「お、お前ら何をやらかして‥‥‥ぐえっ、重さでじぬんだが…‥‥」
「起きないフィー兄ちゃんが悪いんだろー!!」
「しょうよしょうよ、フィーにいちゃまが起きないのがすべて悪いの」
「つまり」
「「「「兄ちゃんが悪い!!」」」」
「そろって言う暇があるなら、全員俺から降りろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
口をそろえて言う様子に、苦しさも相まって俺は怒って叫ぶのであった。
「あらあら、今日は随分と荒れているわねぇフィー。そんなに激しく起こされたのかしら?」
「そんなにどころか、とんでもなくだよ院長先生!!こいつら、加減と言うのを知ってくれないんだけど!!」
身支度を整え、孤児院も兼ねているこのドップルン教会の大広間内で俺はそう叫ぶ。
にこにこと院長先生が微笑むが、正直言って眠りの邪魔をしてきた方法がシャレにならない。
「そう?でも起きないと遅れるわねぇ。ほら今日は、魔剣士選定の日よ」
「‥‥‥そうだった!!」
その言葉に、俺はすぐに怒りの感情を失せて慌て始めた。
ここは、ドルマリア王国内の中でも田舎の方にあるドップルン地方。
とは言えここは俺の出身地ではないようだが、それでもフィーという名を院長先生に名付けられて、生まれ育った場所。
「ぜぇぜぇぜぇ‥‥‥あ、オッサンズ!!まだ魔剣士選定始まってないよな!?」
「「「誰がオッサンだよフィー!!」」」
魔剣士選定の日ということもあって、大慌てで身支度を終えて会場にたどり着けば、そこで警備をしていた昔からのなじみの騎士たちがツッコミを入れてきた。
「大体俺らはまだ40代だぞ!!まだ若いのだ!!」
「いや、ソレはソレで十分オッサンなのでは‥‥‥」
「あほか!!ナイスミドルといえ!!この溢れるダンディな気迫が無ければ、お前を見つける事もできなかったからな!!」
「ダンディ?」
「いやいや、あいつこの間フラれてな、これで見合い30連敗」
「仲間の中では、次もフラれるとして賭けが全然成り立たなくてな‥‥‥フィー、あいつを婿に貰ってくれる将来有望な奴はいないか?」
「いや、それは流石に犯罪でしょ」
「何を好き勝手言ってやがるんだぁぁぁぁ!!」
「あははは!!」
‥‥‥色々とツッコミどころがあったり怒声を浴びつつ、相変わらず変わらない騎士たちに思わず笑い声が出てしまった。
ダンディな気迫とやらがあるのかどうかはさておき、見つけてくれたからこそ今の俺はここで生きているらしい。
何でもまだ俺が赤子の頃、魔獣の襲撃に合った村から俺を見つけ出して拾ってくれたのが、ここにいる騎士たちなのだから。
でも、オッサンズといったのは間違いじゃないからな?「オー」「サー」「ンズゥ」という名前が、今この場にいる3人の騎士の名前だから、合わせてオッサンズと言うだけである。というか、ンズゥさんだけ言い方が難しいんだけど、この人の名付け親は何をもってその名前を付けたのやら。
とにもかくにも、本日はこのド田舎と言って良い場所で年に一度、春の季節にだけ開かれる特別な儀式が行われることになっており、俺も参加するために来ていた。
儀式の名前は『魔剣士選定』。名前がそのままで何のひねりも無いと思うが、無駄に仰々しい儀式名になってないので子供でも覚えやすい。
「よーし、今日はここで受けられるのはこれだけか。良し、14歳になっているガキども、魔剣を手に入れたいかぁぁぁぁ!!」
「「「「「手に入れたぁぁい!!」」」」」
「手に入れて魔剣士になりたいかぁぁぁぁぁ!!」
「「「「「なりたぁぁい!!」」」」」
「そこのナイスミドルなオッサンズのようになりたいかぁぁぁぁぁ!!」
「「「「「‥‥‥嫌だ~」」」」」
「テンションの落差激しいな!?」
「ちょっと待てい!!なんでオッサンズ呼ばわりをお前もするんだよ!!」
「いや、だって毎年この儀式に見に来ているそこの子供がさ、お前らを見るたびにそう口にしていたんで、つい」
「フィーこのやろう!!お前のせいで定着しているじゃねぇぇかぁぁぁぁ!!」
「ぎゃああああああああああああああああああ!!」
チョークスリーパーをかけられ、思わず痛みで俺は叫ぶのであった。本日何回苦痛で叫ばされるんだろうか。
‥‥‥そもそも、魔剣士選定とは何か?それは、名の通り魔剣士になれるかどうかという儀式である。
やり方はいたって簡単で、魔剣を手にできるかどうかと確かめるだけで、手に入れることが出来ればこの国の中心部にある王都とか言う場所で学び、魔剣士として職に就くことが出来る。
手に入れられなければ普通にこの地で学びつつ、他の将来に目を向けることが出来るのだが‥‥‥それでも、魔剣士になりたい奴は多いだろう。
なぜならば、魔剣は唯一にしてこの世界で魔獣への対抗策となるのだから。
いや、その力そのものはかなり強く、魔剣を持てるだけで様々な可能性を開くことが出来るのだ。
だからこそ、魔剣を求めてこの選定に俺も含めて皆気合いを入れて挑むのだが、それでも運命は残酷な道を示すことがある。
何しろ、魔剣と言うのは誰もがこの世界で手にできるという訳ではなく、この儀式によって得られるか否かが決まるのだが、得られる確率は10人受けて1人しか得られないほど低いのだ。
安心安全な目覚めを保証されるかという今の暮らしでの確立に比べると高い方だがな。‥‥‥そうじゃない目覚めの生活と自覚していると、ちょっとばかり物悲しい気がする。
何はともあれ、気を取り直して儀式に目を向けるが、どうやら既に結果が色々と出ているらしい。
「いよっしゃぁぁぁ!!火の出る魔剣だぁぁ!!」
「ぐぁぁぁぁ!!でなかったぁぁぁぁ!!」
「ほげぇぇぇ!!魔剣手に入れられず!!」
「おおおぅ!?雷の魔剣だぁぁぁ!!」
嘆き悲しみ、狂喜乱舞し、人によって反応はそれぞれ。
それだけこの儀式に期待しているからこそ、その期待にこたえられるか否かで変わるのだ。
そしてそんなある意味面白おかしな光景を見ている中で‥‥‥ついに、俺の番が来た。
「と、どうやら今回はお前で最後か‥‥‥毎年ここで他の奴らを見ていた少年か」
選定の場で確認のために来ている検定士と呼ばれる人が俺を見てそうつぶやいたが、どうやら覚えられていたらしい。
無理もない、魔剣を手に入れたくて、毎年ここでどのようにして手に入れているのか見に来ているのだから。
一歩前に出て魔法陣の上に立ち、貰った針で軽く自分の指を刺し、血を出す。
その血を陣の上に落とせば、落ちた場所から陣の線が輝き始めて魔剣を呼びだすために起動する。
手に入れられる確率は、確実ではない。けれども、どうしても手に入れたい代物なのだ。
幼いころの記憶は余り無いが‥‥‥‥いや、そもそも赤子の頃の記憶なんぞ覚えている人がいないだろうけれども、話を聞く限りでは俺にも母がいたようで、その母がいた村丸ごとが魔獣たちの手によって葬られた。
だからこそ、俺は許せない。記憶にない母親だろうと、俺のいるはずだった家族の場所を奪ったやつらを。
今の場所もまた家族のいる場所だが、その家族すら狙える魔獣たちをこの世から消し去りたい。
俺を拾ってくれたオッサンズたちの助けにもなるし、魔獣の犠牲になる人々が無くなるように、力を手に入れたい。
「だからこそ、魔剣よ来い!!」
心からの想いを口に出すと同時に、魔法陣が輝きを増し、その力を発揮する。
俺の言葉に呼応したかのように、バチバチと閃光を上げ始め…‥‥次の瞬間、ドンっと強い音がすると同時にソレは顕現した。
「……って、あれ?何、コレ?」
「なんだなんだ?魔剣が出たはずだが…‥‥何だあれは?」
「あんな剣の形状はあったか?いや、むしろあれは…棺桶?」
現れたソレに対して、周囲の人々の視線が集まる。
魔剣というからにはこう、大きな大剣や両手剣、片手剣などの様々な形があるのはこれまでの儀式の様子を見てきたからこそ分かっていたはずなのだが、目の前にあるのはそれらとは全く異なるもの。
誰かの声にあるものが当てはまっているというか……大きな黒い棺桶が、そこにそびえたっていた。
鏡のように美しく反射するようなつるりとした表面でありつつ、装飾として黒色に映えるようになっているのか、金や白の美しい模様が施されており、ただの棺桶ではないことがうかがえる。
ギギギィ‥シュゥゥゥゥ…
っと、見ている間に棺桶の蓋から煙が噴き出て動き始める。
パカッと開く訳ではなく、カタカタと音を立てて棺桶そのものが小さく折りたたまれて収納されていくかのように変わっていき、最後に残ったのは剣ではなく、一人の女性。
そう、例えば絵本の中でお城などにいるようなメイドとか言う職業の人が着るような格好をした美女。
メイド服ではありつつ、ロングスカートであって清楚そうな雰囲気を持つ。
とはいえちょっとばかり豊かな部分も目につかせつつ、長い黒髪をなびかせ、整った顔があり‥‥‥その瞳が開き、俺の方に目を向けた。
「‥‥‥起動完了、周囲の反応感知及び探知‥‥‥ふむ、なるほド。あなたが私のご主人様という事ですカ」
そうつぶやいたかと思えば歩み寄って来て僕の前に立つ。
そしてスカートをの裾をつかみ、上品な礼を見せる。
「機体番号WSM-07、魔剣名称『ゼナ』。私はあなたの忠実な剣としてこの身を捧げましょウ。どうぞ、よろしくお願いいたします、私のご主人様」
清廉とした振る舞いで魅せるかのように動き、俺に名乗るメイド‥‥‥ゼナ。
「いや、ちょっとまって?今魔剣って名乗ったけど、魔剣なのか?」
「ハイ。魔剣デス。どこからどう見ても、私はご主人様の魔剣デス」
「メイドにしか見えないけど、魔剣?」
「そうデス。魔剣というのは、様々な形を持ち、多種多様な力を持つ存在‥‥‥ゆえに、私のようにメイドの姿を持つ魔剣がいても、おかしくはないのデス」
きりっとした表情で彼女は言い切った。
堂々たる振る舞いに周囲はあっけにとられたが…‥‥うん、どう考えても無理があり過ぎる。
「なので私も魔剣であり、すべての敵を排除するためにご主人様その力を奉げるのデス!!」
「ちょっと待って、剣じゃないよね?見た目どう見てもメイドなんだけど?」
「‥‥‥そう、忠剣というやつなのデス!!」
「それは忠犬って普通言うよね!?そもそも犬でもないだろ!!」
ツッコミを入れた瞬間にそっと目を横にそらしたが、ごまかせていないとは思う。
とにもかくにも、何故か魔剣を求めていたら、自称魔剣のメイドが出てきてしまったのであった‥‥‥なんでこうなるの!?
それとともに起床しようと思ったが、それでも眠い時は眠いもので、いくら習慣づけようと努力していても、睡魔には抗いがたい。
「ううん、あと五分、あとちょっとだけ…」
「お~き~ろ~よフィー兄ちゃん!!」
「起きないのなら、飛んじゃうぞー!!」
「「いっせーの~で!!せいやっさぁぁ!!」」
どずぅん!!
「ぐげっばぁぁぁ!?」
腹部への強烈な一撃に、俺が思わず目を覚ますと、腹の上には弟や妹たちが乗り込んでいた。
「お、お前ら何をやらかして‥‥‥ぐえっ、重さでじぬんだが…‥‥」
「起きないフィー兄ちゃんが悪いんだろー!!」
「しょうよしょうよ、フィーにいちゃまが起きないのがすべて悪いの」
「つまり」
「「「「兄ちゃんが悪い!!」」」」
「そろって言う暇があるなら、全員俺から降りろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
口をそろえて言う様子に、苦しさも相まって俺は怒って叫ぶのであった。
「あらあら、今日は随分と荒れているわねぇフィー。そんなに激しく起こされたのかしら?」
「そんなにどころか、とんでもなくだよ院長先生!!こいつら、加減と言うのを知ってくれないんだけど!!」
身支度を整え、孤児院も兼ねているこのドップルン教会の大広間内で俺はそう叫ぶ。
にこにこと院長先生が微笑むが、正直言って眠りの邪魔をしてきた方法がシャレにならない。
「そう?でも起きないと遅れるわねぇ。ほら今日は、魔剣士選定の日よ」
「‥‥‥そうだった!!」
その言葉に、俺はすぐに怒りの感情を失せて慌て始めた。
ここは、ドルマリア王国内の中でも田舎の方にあるドップルン地方。
とは言えここは俺の出身地ではないようだが、それでもフィーという名を院長先生に名付けられて、生まれ育った場所。
「ぜぇぜぇぜぇ‥‥‥あ、オッサンズ!!まだ魔剣士選定始まってないよな!?」
「「「誰がオッサンだよフィー!!」」」
魔剣士選定の日ということもあって、大慌てで身支度を終えて会場にたどり着けば、そこで警備をしていた昔からのなじみの騎士たちがツッコミを入れてきた。
「大体俺らはまだ40代だぞ!!まだ若いのだ!!」
「いや、ソレはソレで十分オッサンなのでは‥‥‥」
「あほか!!ナイスミドルといえ!!この溢れるダンディな気迫が無ければ、お前を見つける事もできなかったからな!!」
「ダンディ?」
「いやいや、あいつこの間フラれてな、これで見合い30連敗」
「仲間の中では、次もフラれるとして賭けが全然成り立たなくてな‥‥‥フィー、あいつを婿に貰ってくれる将来有望な奴はいないか?」
「いや、それは流石に犯罪でしょ」
「何を好き勝手言ってやがるんだぁぁぁぁ!!」
「あははは!!」
‥‥‥色々とツッコミどころがあったり怒声を浴びつつ、相変わらず変わらない騎士たちに思わず笑い声が出てしまった。
ダンディな気迫とやらがあるのかどうかはさておき、見つけてくれたからこそ今の俺はここで生きているらしい。
何でもまだ俺が赤子の頃、魔獣の襲撃に合った村から俺を見つけ出して拾ってくれたのが、ここにいる騎士たちなのだから。
でも、オッサンズといったのは間違いじゃないからな?「オー」「サー」「ンズゥ」という名前が、今この場にいる3人の騎士の名前だから、合わせてオッサンズと言うだけである。というか、ンズゥさんだけ言い方が難しいんだけど、この人の名付け親は何をもってその名前を付けたのやら。
とにもかくにも、本日はこのド田舎と言って良い場所で年に一度、春の季節にだけ開かれる特別な儀式が行われることになっており、俺も参加するために来ていた。
儀式の名前は『魔剣士選定』。名前がそのままで何のひねりも無いと思うが、無駄に仰々しい儀式名になってないので子供でも覚えやすい。
「よーし、今日はここで受けられるのはこれだけか。良し、14歳になっているガキども、魔剣を手に入れたいかぁぁぁぁ!!」
「「「「「手に入れたぁぁい!!」」」」」
「手に入れて魔剣士になりたいかぁぁぁぁぁ!!」
「「「「「なりたぁぁい!!」」」」」
「そこのナイスミドルなオッサンズのようになりたいかぁぁぁぁぁ!!」
「「「「「‥‥‥嫌だ~」」」」」
「テンションの落差激しいな!?」
「ちょっと待てい!!なんでオッサンズ呼ばわりをお前もするんだよ!!」
「いや、だって毎年この儀式に見に来ているそこの子供がさ、お前らを見るたびにそう口にしていたんで、つい」
「フィーこのやろう!!お前のせいで定着しているじゃねぇぇかぁぁぁぁ!!」
「ぎゃああああああああああああああああああ!!」
チョークスリーパーをかけられ、思わず痛みで俺は叫ぶのであった。本日何回苦痛で叫ばされるんだろうか。
‥‥‥そもそも、魔剣士選定とは何か?それは、名の通り魔剣士になれるかどうかという儀式である。
やり方はいたって簡単で、魔剣を手にできるかどうかと確かめるだけで、手に入れることが出来ればこの国の中心部にある王都とか言う場所で学び、魔剣士として職に就くことが出来る。
手に入れられなければ普通にこの地で学びつつ、他の将来に目を向けることが出来るのだが‥‥‥それでも、魔剣士になりたい奴は多いだろう。
なぜならば、魔剣は唯一にしてこの世界で魔獣への対抗策となるのだから。
いや、その力そのものはかなり強く、魔剣を持てるだけで様々な可能性を開くことが出来るのだ。
だからこそ、魔剣を求めてこの選定に俺も含めて皆気合いを入れて挑むのだが、それでも運命は残酷な道を示すことがある。
何しろ、魔剣と言うのは誰もがこの世界で手にできるという訳ではなく、この儀式によって得られるか否かが決まるのだが、得られる確率は10人受けて1人しか得られないほど低いのだ。
安心安全な目覚めを保証されるかという今の暮らしでの確立に比べると高い方だがな。‥‥‥そうじゃない目覚めの生活と自覚していると、ちょっとばかり物悲しい気がする。
何はともあれ、気を取り直して儀式に目を向けるが、どうやら既に結果が色々と出ているらしい。
「いよっしゃぁぁぁ!!火の出る魔剣だぁぁ!!」
「ぐぁぁぁぁ!!でなかったぁぁぁぁ!!」
「ほげぇぇぇ!!魔剣手に入れられず!!」
「おおおぅ!?雷の魔剣だぁぁぁ!!」
嘆き悲しみ、狂喜乱舞し、人によって反応はそれぞれ。
それだけこの儀式に期待しているからこそ、その期待にこたえられるか否かで変わるのだ。
そしてそんなある意味面白おかしな光景を見ている中で‥‥‥ついに、俺の番が来た。
「と、どうやら今回はお前で最後か‥‥‥毎年ここで他の奴らを見ていた少年か」
選定の場で確認のために来ている検定士と呼ばれる人が俺を見てそうつぶやいたが、どうやら覚えられていたらしい。
無理もない、魔剣を手に入れたくて、毎年ここでどのようにして手に入れているのか見に来ているのだから。
一歩前に出て魔法陣の上に立ち、貰った針で軽く自分の指を刺し、血を出す。
その血を陣の上に落とせば、落ちた場所から陣の線が輝き始めて魔剣を呼びだすために起動する。
手に入れられる確率は、確実ではない。けれども、どうしても手に入れたい代物なのだ。
幼いころの記憶は余り無いが‥‥‥‥いや、そもそも赤子の頃の記憶なんぞ覚えている人がいないだろうけれども、話を聞く限りでは俺にも母がいたようで、その母がいた村丸ごとが魔獣たちの手によって葬られた。
だからこそ、俺は許せない。記憶にない母親だろうと、俺のいるはずだった家族の場所を奪ったやつらを。
今の場所もまた家族のいる場所だが、その家族すら狙える魔獣たちをこの世から消し去りたい。
俺を拾ってくれたオッサンズたちの助けにもなるし、魔獣の犠牲になる人々が無くなるように、力を手に入れたい。
「だからこそ、魔剣よ来い!!」
心からの想いを口に出すと同時に、魔法陣が輝きを増し、その力を発揮する。
俺の言葉に呼応したかのように、バチバチと閃光を上げ始め…‥‥次の瞬間、ドンっと強い音がすると同時にソレは顕現した。
「……って、あれ?何、コレ?」
「なんだなんだ?魔剣が出たはずだが…‥‥何だあれは?」
「あんな剣の形状はあったか?いや、むしろあれは…棺桶?」
現れたソレに対して、周囲の人々の視線が集まる。
魔剣というからにはこう、大きな大剣や両手剣、片手剣などの様々な形があるのはこれまでの儀式の様子を見てきたからこそ分かっていたはずなのだが、目の前にあるのはそれらとは全く異なるもの。
誰かの声にあるものが当てはまっているというか……大きな黒い棺桶が、そこにそびえたっていた。
鏡のように美しく反射するようなつるりとした表面でありつつ、装飾として黒色に映えるようになっているのか、金や白の美しい模様が施されており、ただの棺桶ではないことがうかがえる。
ギギギィ‥シュゥゥゥゥ…
っと、見ている間に棺桶の蓋から煙が噴き出て動き始める。
パカッと開く訳ではなく、カタカタと音を立てて棺桶そのものが小さく折りたたまれて収納されていくかのように変わっていき、最後に残ったのは剣ではなく、一人の女性。
そう、例えば絵本の中でお城などにいるようなメイドとか言う職業の人が着るような格好をした美女。
メイド服ではありつつ、ロングスカートであって清楚そうな雰囲気を持つ。
とはいえちょっとばかり豊かな部分も目につかせつつ、長い黒髪をなびかせ、整った顔があり‥‥‥その瞳が開き、俺の方に目を向けた。
「‥‥‥起動完了、周囲の反応感知及び探知‥‥‥ふむ、なるほド。あなたが私のご主人様という事ですカ」
そうつぶやいたかと思えば歩み寄って来て僕の前に立つ。
そしてスカートをの裾をつかみ、上品な礼を見せる。
「機体番号WSM-07、魔剣名称『ゼナ』。私はあなたの忠実な剣としてこの身を捧げましょウ。どうぞ、よろしくお願いいたします、私のご主人様」
清廉とした振る舞いで魅せるかのように動き、俺に名乗るメイド‥‥‥ゼナ。
「いや、ちょっとまって?今魔剣って名乗ったけど、魔剣なのか?」
「ハイ。魔剣デス。どこからどう見ても、私はご主人様の魔剣デス」
「メイドにしか見えないけど、魔剣?」
「そうデス。魔剣というのは、様々な形を持ち、多種多様な力を持つ存在‥‥‥ゆえに、私のようにメイドの姿を持つ魔剣がいても、おかしくはないのデス」
きりっとした表情で彼女は言い切った。
堂々たる振る舞いに周囲はあっけにとられたが…‥‥うん、どう考えても無理があり過ぎる。
「なので私も魔剣であり、すべての敵を排除するためにご主人様その力を奉げるのデス!!」
「ちょっと待って、剣じゃないよね?見た目どう見てもメイドなんだけど?」
「‥‥‥そう、忠剣というやつなのデス!!」
「それは忠犬って普通言うよね!?そもそも犬でもないだろ!!」
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