私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
57 / 204
3章 静けさもほのぼのも、何かの前触れに?

3-8 言われましても、実感と言うのはね

しおりを挟む
‥‥‥孫に会えたのは嬉しいだろう。けれども、表立って言うには、まだ難しい時だったとガンドールは思った。

 なぜならば、孫の立場はドルマリア王国の平民であり、平民と貴族では位に差がある。

 いくら血がつながっていようとも、貴族という立場はそれだけ複雑なものもあり、大きな責任も伴う者で、今さらであったところで何が出来るのかということがある。

 例え話をするとしよう。ある日突然、あなたはすごい貴族家の子供でしたから、どうぞ今日からその貴族家に籍を置いてくださいと言われて、その子供はまともに過ごせるだろうか?いや、そうはならないだろう。

 平民の好む物語の中には、そのような成り上がり方で夢をつかむ者もあるが、それは物語の中だけのご都合主義な話しであり、現実は甘くない。

 所作、決まり事、付き合いから先を見据えての行動…‥‥軽く見る大馬鹿者もある程度はいるようだが、それでも貴族家という立場はそう簡単に受け入られるものではないのだ。



 ゆえに、こうやって今、出会ったとしても立場はお互いに貴族と平民であるという壁はあり‥‥‥そうやすやすと家族としての付き合いもできないのである。

 いや、そもそもの話、今日に至るまで接点のなかった相手を、家族と言えるのだろうか。生まれた時から違う場所で育ち、出てきたところで簡単に受け入れてくれることはないだろう。

 けれども、そんな事を思っても…‥‥こうやって直接孫に出会えたと思うのであれば、それだけでも非常に大きな幸運としか言いようがないのであった。








「…‥‥つまり、あなたは俺の祖父、だと?」
「ああ、そうだ。儂はアルガン公爵家当主のガンドール…‥‥既に色々と事情を知っているのであれば、察しているだろう?我が娘の残した、孫よ…‥‥」

 護衛に守られた馬車が魔獣たちと交戦しており、手助けしたあとに出て来たのは、まさかの祖父。

 そう告げられて俺は驚きつつ、信じられない思いがあった。


「ゼナ、本当だと思えるか?」
「目の前でいきなり祖父発言は怪しみたくなりますが、間違いないようですネ。馬車にある徽章は、確かにアルガン公爵家のものデス。貴族家の馬車を示す徽章を偽造すれば最悪の場合死刑がありますので、よっぽどの図太い人でない限りやる人はいないでしょうし…‥‥失礼、確認させてくだサイ」

 ゼナに問いかけてみたところ、彼女は動き、俺とアルガン公爵家の当主、ガンドールと名乗る人物と見比べ、カタカタと何か音を鳴らした。

「…‥‥間違いないようですネ。魔剣はしっかり持ち主に関しての情報を確認するのですが、遺伝的な情報なども確認していマス。そして今確認した結果なのですが、一致率の高さから見て…‥‥確実に、ご主人様の祖父であると断言できるでしょウ」
「ほぅ?魔剣はそんなことができるのか?」
「可能と言えば可能ですネ。血だけで判別して特殊な力を発動する魔剣も存在しているので、案外ありふれた判別手段でもあるのデス」

 そんなありふれた判別手段と言われても、見たことがない気がする。

 そもそも見るだけで何をどう調べたのかと思いたいが、ツッコんだところで理解できない話なような気がする。

 けれども、そんなツッコミをしなくとも、この場でゼナが嘘を言う事もあるまい。

 という事は、彼女の言う通り…‥‥目の前の人物は、俺の祖父だという事だと理解させられるのであった。







「‥‥‥そうか、母の我が娘記憶に関してはない、か。そこは寂しいな」
「そう言われましても、産まれてすぐに離別したような者ですからね‥‥‥」

 とにもかくにもずっとその場にいるわけにもいかず、どうやら村の方に向かうようなので馬車に招かれ、乗りつつ話し合う。

 目の前の祖父という人物は母の話を聞きたいところがあったようだが、生憎ながら俺には母の記憶はほとんどなく、少し寂しそうな顔をしていた。

「まぁ、それも無理もないだろう。こちらもある程度情報を把握していたが…‥‥それでも、孫であるお主を見れるだけでも、満足できた」
「そうですか?」
「ああ、そうだ。最も嬉しいのはその話だろう。孫が出来たというところと言うべきか、あの娘の相手となった男がいたことが、本当に、本当に生まれてきてくれてありがとう…‥‥」

 涙をこらえるように、それでいて嬉しそうにそう口にする祖父。

 泣きそうになるほどなのかと思ったが、どうやら俺の母‥‥‥青薔薇姫の事を考えると相手が出来て子供を成すほど中を深める様な人物が、いや、この場合ドラゴンというべきかそんなものだとしても孫が出来るほどのことがよっぽど嬉しかったらしい。

「何しろ、あの娘だったからな…‥‥無理を言ってきた相手が自ら自滅したとはいえ、それでも結婚のチャンスとしてはそれぐらいしかないほどだった。大なり小なり娘に求婚するような男は居たかもしれないが、それでも娘の素のありようについていけぬものが多くて、生涯独身で過ごすのではないかと親心で物凄く心配をしていたのだ…‥‥」
「そ、そこまでですか‥‥‥」
「そこまで、それ以上、もっと言いようはあるだろう。だが、それで言い切れないほどのとんでもないものを持っているのが、青薔薇姫の名を持った我が娘だったからな…‥‥」

 遠い目をして祖父が口にするが、どれだけ母がとんでもない人だったのか、少々見えたような気がした。

 
「とにもかくにも、娘が子を成していたのは嬉しい話だったが…‥‥こんな爺の話を聞いても、孫よ、お前にとってはぴんと来ないだろう」

 無理もない。ずっと会うことの無かった、血のつながりのある人なのだから。

 ずっと教会に預けられ、後から身寄りのない弟や妹たちが出来て一緒に過ごしたが…‥‥それでも、今さら祖父が出て来たとしても感じるものはない。


 でも、ちょっとそれはそれで寂しい気持ちもするだろう。ようやく目にすることが出来た血縁者なのに、こうやって出会って何も起こせるようなことがないのは、どことなく寂しいのだ。

「‥しかし、孫よ。そのドラゴンの血を引いている部分は話に聞いてみたが、こうやって目にしてもそこには驚かないな。あの子はもっと、とんでもないものと知り合いまくっていたからな‥‥‥」
「というと?」
「例えばどこかの邪神だとか、蠢く光の玉だとか、幻覚でも見てると疑いたくなるような怪物だとか、もっとすさまじいものを色々とみせられていたから、慣れてしまったのかもしれない」

 本当に何をやっていたのだろうか、俺の母よ。


 色々ツッコミどころができつつも、到着までの間俺たちは青薔薇姫もとい母に就いての話を、その親であった祖父から聞かされるのであった‥‥‥‥



「…‥‥何と言うか、祖父も苦労していたんですね。何かこう、他人事ではないという実感がわいてきました」
「わかるのか?」
「ええ、俺の方もこっちの魔剣が…‥‥」
「いや、いわずとも何かもう分かったぞ。どちらかと言えばお前は父親寄りなのかもしれないが‥‥‥色々引き寄せる力は我が娘のものなのかもしれない。それでも、娘ほどの豪胆さはなく、苦労しているのが‥‥‥その気持ちが、心底分かるぞ…‥祖父と言わずとも、気軽にお爺ちゃんと読んでも構わんから、その胸の内を出して良いのだ‥‥‥」
「お、お爺ちゃん…‥‥」



「…‥‥何故でしょウ。共通の話題で盛り上がり始めたようで良さそうですガ、物凄い疎外感を感じマス」



しおりを挟む
感想 610

あなたにおすすめの小説

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...