私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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3章 静けさもほのぼのも、何かの前触れに?

3-9 噂話は、あてにならないことが結構多い

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「‥‥‥えっと、つまり母の、青薔薇姫の周知されている事実って、まだ上があると?嘘だよね?お爺ちゃん?」
「残念ながら嘘ではないのだ、孫よ‥‥‥これでも実はまだ、数多くのぶっ飛びすぎる話が封じられており、一部関係者以外は知らぬことなのだ。いや、知ったところで理解できるのか分からないほどの事なのだがな」

 村に到着し、護衛の人達が周辺へ散らばって守りを固める中、俺の祖父であるアルガン公爵家当主ガンドールは、そう口にした。


 現在、身分をちょっと隠して何の変哲もない、ちょっとした血縁者として祖父ガンドールはこの教会に泊ってくれることになったのだが、お互いの苦労話を語り合っていた中で、とんでもない情報が出て来たのである。

 誇張のように見えて、実はまだ抑えていた話。

 しかし、その話ですらまだまだ控えめにしたものであり、家族として思いっきり至近距離にいた親族やその他近しい人たちは、青薔薇姫のとんでもないやらかしなどを間近で見ていたというのだ。

「まぁ、今となっては懐かしいとも思えるが、少なくとも一つや二つ、適当な話しでさえも為政者を速攻で病院送りにできる類が多いのだ。高いくらいに立ちつつ、相応の器をもつものであればあるほど、常識外のことに関してストレスを抱え込むからなぁ‥‥‥」
「そ、そんなに‥‥‥」

 知りたくなかった、母親のそんな吹っ飛び過ぎた事実。

 歩く災害発生機、悪人善人まとめてぷちゅっと踏みつぶす人などの話も聞いていたが、どうやら人の想像や語彙を軽く凌駕するようなことばかりやらかしていたそうである。

 いや本当に、そこまで言われると余計に謎になってくることもある。


「というか、そんな母だと確実に死亡したという話は無さそうだよなぁ。ゼナ、確かに死体も無くなっていたんだろ?」
「ハイ。確認のために調べましたが、痕跡も無くなってまシタ。オッサンズの話も聞きつつ調べたのですが、どうも不審すぎる点が多いので…‥‥亡くなったと確定できないでしょウ。いえ、それどころかまだ生きている可能性の方が非常に大きいデス」
「それなのに、姿を見せずにどこかにいるのか…‥‥我が娘ながら、本当に分からないことが多い。不審すぎる点から何者かが絡んでいる可能性もあるが‥‥‥その何者かの思考すらも超えて、何かをしでかす爆弾を仕掛けているようにしか思えないのぅ」

 誰がどの様な企みをしているのかは定かではないが、やはり誰から見ても不審な点が多すぎる母の謎の死。いや、死体が無い時点で密かに生きている可能性も非常に大きく、常人では計り知れないようなことが起きているのかもしれない。

 だがしかし、常人だからこそ理解することもできないので、どうすることも無い。

 ただできる事とすれば、その何かが進行するのを待つだけぐらいか…‥‥


「ちなみにお爺ちゃんとしては、母がひょっこり無事に出てきてほしいのか?」
「…‥‥複雑かもしれないな。親心としては娘が心配だが、長い事を顔を見せてないとなるとその分莫大な量のやらかしが待ち受けているようで、もしもそれが発覚したらその時点で逝くかもしれん‥‥‥」

 深刻そうな顔で、そう答える祖父。

 それがふざけているわけでもなく、本気で心の底から思っているようなので母に会いたい気持ちがこちらとしては同じように複雑なものになってくる。

 そもそも今でさえ、魔剣なのに色々やり過ぎるゼナの事でこちらも少々胃が…‥‥それで噂話以上のポテンシャルを秘めた母に再会できたとしたら、待ち受けているのは喜びかはたまたは死なのか。

 そう思うと、お互いに胃がキリキリしてきたようで、はぁぁっと深いため息を吐くのであった‥‥‥‥











 翌日、一応貴族としての仕事があるのでガンドールは孫との別れを惜しみつつ、帰路に就いた。

 だいぶ隠居した生活をしているとはいえ、今もなおアルガン公爵家当主としての立場があるので、留守をしている間に仕事が溜まっているのが明白であり、消化できるうちに帰還することにしたのである。

 本音を言えば、孫を連れて帰りたくもあったが、立場的にそうはいかなかった。


「…‥‥まぁ、ドルマリア王国の国民として今は登録されているからな。正式な血縁関係を公表したくとも、手続きも多いか」

 フィーの現在の国籍はこの王国であり、立場としては教会で育った平民の孤児。

 同じような立場になっている貴族家の隠し子はそれなりに居たりもするが、それでもそうやすやすとその貴族の家に入ることはない。

 よく物語であるような、実は高位の貴族家の子供で、貴族としての生活の仲間入りにできる様な話などもあるのだが、現実は甘くはないのだ。


 貴族としての所作や付き合い方、勉学の量。当主として勤めるのであれば領民との付き合い方や他領との商売などの付き合い方など、平民の身分では学ばないものが多い。

 夢見るような生活を望んでも、しっかりとした現実が待ち受けているのである。

「それに、公爵家という立場上敵も多いからな…‥‥」

 高い地位を目指す野心家はどこにでもいるもので、公爵という地位も狙われるだろう。

 現状、今代の当主であるガンドールで公爵家は断絶して、国へ領地や身分を返上する予定はあるのだが、それは後継ぎがいなければの話。

 外から養子縁組を望む輩も多かったが、それは領地を狙う目的が多く‥‥‥そこに、正当な血縁のものが突然現れたのであれば、どうなってくるのかは火を見るよりも明らかだろう。



 だからこそ、正式な血縁者出るという声明も今は出せず、孫として連れ帰る事もかなわない。

 いや、今の身分と生活、魔剣を所持して魔剣士として過ごす生活をフィーが選ぶのであれば全力でそれを応援したいとは思うのだ。

「‥‥‥何にしても、今になってか。情報の動き方などにも何者かが隠れている可能性があるのは目に見えているし、警戒を怠らずに注意深く、調べるとするか」



 気になることが色々出来つつも、ひとまず今は、正式に発表できないとはいえ孫とのひと時を楽しむことが出来たただの祖父という立場。

 その時間をかみしめつつ、将来に備えてガンドールは動き出す。

 ミルガンド帝国の刃、その他色々な異名を持ちつつも隠居間近であったはずの老いた獅子は今、今世の最後の仕事として孫のために、ゆっくりと牙と爪を研ぎつつ振るう用意を始めたのであった…‥‥

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