私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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5章 復讐は我にあり

5-8 爆発した者に、トドメもさすもの

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「‥‥‥ン?」
「どうした、ゼナ」

 魔獣討伐も終え、ひと汗かいたので風呂の方に入りに行こうかと思っている中、ふとゼナが何かに気が付いた。

「今、何か引っかかりまシタ。弱いですガ、複数の生命反応を感知」
「どういうことだ?」
「何者か、弱った人たちがいるようデス」

 村の近くに、そんな人たちがいるのだろうか?

 魔獣討伐も終えたが、今村に滞在している騎士も魔剣士も全員帰還しているし、村人たちでいなくなった者はいない。

 となると、別の何者かがいるという事になるのだが…‥‥こんな田舎の村の近くで弱るようなことはあるのだろうか?

「いや、あるか?ここに襲撃してきた魔獣の内、来る前に襲撃した‥‥‥無いな」

 魔獣の特性と言うべきか、生きとし生けるものを滅び尽くさせるようなやつがそう簡単に逃すとは思えない。より大きな命を感じて逃したという可能性もなくはないが、それでも目の前にいればしっかりとやりに来るのが魔獣ではある。

「何にしても、考えていても仕方がないか。ゼナ、反応のあったところに行くぞ」
「了解デス」

 竜の翼を広げ、俺はその反応の正体を直接見に行くことにしたのであった…‥‥














「…‥‥うぅ、だいぶ限界ですわね」
「姫様、ですから我々を置いて、一人だけでも先に」
「行っている間に逝ったらどうするの!!それに、わたくしが一人になったところで、対して変わらないほどの速さですわ!!」

 だいぶ疲弊し、目も霞んできた。

 けれども、叫ぶだけの気力はあり、最後まであきらめない心はある。

「こうなったらいっそ、イチかバチかの賭けをしますわ」
「と言いますと…‥何か、あるのでしょうか」
「ええ、わたくしの魔剣を今、最大出力で動かして遠心力を強めてぶん投げますわ。うまいこと行けば、一番近い村に着弾し、下手をすれば遠ざかってきますわね」
「…‥‥不安しかありませぬが、それしかないのでございましょう」
「ならば、我々は従うのみでございます」

 着弾したところで無事に済むかもわからないが、今のわたくしたちの状態を考えればすでに瀕死なので今さら怪我が増えたところで意味がない。

 ならばいっそ、ここで賭けをして生き残ろうかと思っていた…‥‥その時だった。


―――キィィィィン!!

「‥‥‥何ですの、この音?」

 何か風を切り裂くような、鋭い音。
 
 何か魔獣でも迫って来たのかと思ったが、聞こえてくる方向はここから近い村があると思われるところからであり、空を見上げれば遠方から迫ってくる影を見つけた。

「あれは‥‥‥人、ですの?」

 何者かはすぐには分からない。

 けれども、かなり速い速度で飛翔しており、あっと言う間に目の前に降り立った。


キィィィ、ズザァァァァァ!!
「っと、着地成功‥‥‥って、目の前けが人だらけじゃないか!!大丈夫か!?」
「ふむ、重傷者が多いようデス」

 着地と共に砂ぼこりが少々舞い上がりつつも、その姿は目ではっきりと捉えることが出来た。

 見た目こそ青い髪と赤い目をした少年のようだが、その背中には翼があり、頭には角が生えている。

 そしてその背中に合った翼の一部のようなものが姿を変え、侍女のような姿になって降り立った。


「な、何者ですの、あなた方は‥‥‥」
「それはこっちのセリフだ。でも、言っている場合でもなさそうだ」

 言われてみればそうである。ここでお互いの正体がどこの誰だと探り合っている暇はない。

「ええ、そうですわね。わたくしたちは今、かなり不味い状態ですの。何者か探ることはせずに、近くの村へ、早く皆を、っ‥‥‥」

 ようやくここで助けになりそうな人と出会えたことによって気が緩んだのか、ぐらりと足元がおぼつかなくなり、倒れかける。

「っと、危ない!」

 地面に倒れそうなところで、翼の生えた少年がすぐに駆け寄って、わたくしの身体を支えてくれた。

 お兄さまやお父様とは違う殿方の腕で抱かれ、一瞬ドキッとさせられたが、直ぐに悲鳴を上げている体の方が反応し、重度の筋肉痛のような体の痛みが走る。

「ひぐぇっ!!」
「ゼナ、見た目以上にどうやら全員酷い重症のようだ。すぐに治療できるか!!」
「大丈夫デス!ご主人様の胸元に大穴が開いたときに比べれば、十分この場でも治療可能デス!!」

 ちょっと令嬢らしからぬ声が出つつ、少年の言葉に対して、ゼナと言う名でよばれた侍女がぐっと指を上げてそう答える。

 と言うか今、さらっと生きているのが不思議なほどの重傷例が聞こえた気がする。見た感じ、ゼナと言う人(?)のご主人様とやらはこの少年のようだけど、大穴が開くって何があったのだろうか?


「そうか、なら早く頼む!」
「了解デス!とは言え、治療しながら村の方に運んだほうが良いでしょウ。血臭までは消せないので、申しわけないのですが、そこはお願いしマス」
「この人数なら、いけるか?ちょっとそこの人、この人を頼む」
「あ、ああ。分かったが、どうする気だ?」

 フラフラになりながらも、わたくしを受け取り、部下がそう尋ねる。

「全員、一気に運ぶ。一応、驚いて気絶はしないほうがいいが、急いだほうが良さそうだ。完全竜化!!」



―――そう叫んだ声が聞こえたかと思った次の瞬間、少年の体が輝き、あっと言う間に姿を変えていた。

 それは、物語の中でしか、思い描くことが無かった大いなる姿。

 重度の疲労で見た幻覚なのかと疑いたくなったが‥‥‥わたくしたちを一気に手ですくったことで、感じられるその感触から間違いなく現実だと思い知らされる。

「ド、ドラゴン‥‥‥!?え、何ですの、何ですの、コレ…‥‥」

…‥‥人と言うのは容量を超えた出来事が起きたら、何も考えられなくなるのだろうか?

 とにもかくにも、いきなり現れた伝説上の存在のような姿を目の当たりにさせられた上に、その手に持たれたことで、わたくし含め全員が驚愕しすぎて、そのまま意識を彼方へふっ飛ばしてしまうのであった‥‥‥
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