私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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5章 復讐は我にあり

5-16 仕様変更で、ミスないように

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‥‥‥日数もある程度経過し、いよいよ明日、ミルガンド帝国にある魔剣士を育成する学び舎へ向けて王国を経つ時が来た。

「こちらがデュランダル学園なら、帝国のはダーインスレイヴ学園か‥‥‥慣れた学園から出るのは、正直緊張するな」
「慣れ親しんだ場所と言うのは居心地が良いですからネ。私としては、あちらにもあるという寮のお風呂が気になりますけれどネ」

 まだ眠気はないので適当にベッドの上で寝転がりながらつぶやくと、ゼナはそう返答した。

 そういえば、忘れそうにもなるがこの学園のお風呂に関して、ゼナはわざわざ許可をもらって自力で全部改装しまくって作り上げるほど、風呂に関してのこだわりを持っていたんだった。

「でも、ここの初期の風呂場とは違うようですネ。設備もかなり整えられていて、また違った雰囲気がありそうで楽しみデス」
「帝国の方が色々と進んでいるらしいからな」

 もともと軍事面で発展していたミルガンド帝国だが、近年は学に関して力を注いでいるようで、技術の発展ぶりは他国を抜く。

 その恩恵としていろいろと便利になっていることが多いらしく、お風呂もしっかりと他国以上の施設が用意されているというのだ。

「でも、帝国に関しての色々なものを読むと、薬湯や医学関係が他よりもさらに発展しているらしいんだよなあ。軍事面より何故そっちの方が、より発展しているのやら」
「うーん、戦争などで治療するためにという目的ならばまだわかるのですが、軍事関係を重点にしていたさいは怪我人も少なかったようで、治療関係に需要は特になかったようデス。それでもなぜか、昔から薬関係の発達が他よりも抜いて来たようですネ」

 謎だとは思うが、イメージとは異なる部分が強い国と言うのは、案外多いものだ。

 それに、軍事系の物騒なことよりも人々を癒すような事業に力を注いでいるということならば、良いことだし、気にする必要もないかもしれない。


「まぁ、薬は裏を返せば毒にもなりますし、度が過ぎれば依存の危険性もありますが‥‥‥その事に関しての対策などもしているようで、黒い方面で考える必要はないでしょウ」
「そういうもんか」

 何にしても、変なことがないのであればそれで良い。厄介事が無い方が気が楽なのだから。


「だからこそ、明日出発するまでにしっかりと睡眠をとって英気を養って、この目でしっかり見ていきたいんだけどなぁ‥なんか、目が冴えるな」
「ありますよ、そんな日」

 寝たい気分にはなるのだが、体に眠気はない。

 こういう時に無理に寝ようとすればするほど、余計に眠れなくなるのは分かっている。


「‥‥‥眠くなるように、また何か話でもしてくれ、ゼナ」
「了解デス。ご主人様が眠りやすいように、話せる内容は随時増やしていますからネ。その内、本に出もまとめて『どんな人も、読めばあっという間に眠れマス』みたいなものを出版してもいいかもしれませんネ」
「うわ、凄い売れそうな気がする」

 普段の無茶苦茶ぶりを考えると、そんな効力の優れた本もかなり売れそうなのが目に見えるだろう。

 というか、その本を買って読んだほうがより楽に寝られるような気がするのだが…‥‥まぁ、楽しみに待ったほうが良いのかもしれない。

 ひとまず今は、生で聞ける眠れる話に耳を傾け、ゆっくりと意識を沈めていくのであった…‥‥











「‥‥そして、その祠を抜けて巫女ピヨマロは‥‥‥あ、ご主人様、もう寝てますネ」

 すやすやと寝息を立てて、いつのまにか寝ているフィーをみて、ゼナはそうつぶやいた。

 今晩話した眠れる話も中々好評のようで、眠気がしっかりと来たのだろう。


「さて、ご主人様も寝ましたし、私も明日に備えておいたほうが良いですカネ。帝国仕様のモードのいくつかの、最終チェックを‥ット」

 部屋の明かりが消えて真っ暗になる室内。

 それでも魔剣には関係なく、音もたてずに作業をしようとしていたところで、ふとゼナは気が付いた。

「…‥‥またデスカ、リスクも発動していないのに、出てきたのですカ」
『だからこそ、肉体を持たない状態で抜けているのよね』

 ゆらりゆらりと、フィーの身体から出てきたのは、ぼうっとしている白い光。

 照らすほどでもないのだが、暗闇の中だからこそはっきり見えるその姿に、ゼナは少々呆れたような声を出す。

『まぁ、これはこれで楽でいいのよね。肉体を持たない軽さで、滅茶苦茶楽だわ~』
「うーんと白玉の状態で伸びても、同感しづらいデスネ。そしてなぜ、出てきたのでしょうか‥ご主人様のお母様、青薔薇姫」

…‥‥そう、フィーの身体から出てきたのは、実態を持っていない状態だがかつては青薔薇姫と呼ばれた存在。

 それでいてフィーの母でもあり、ドラゴンを夫にしてみせた、帝国で走る人が知る恐怖の存在でもある青薔薇姫なのだ。

 本来は、ゼナを突き刺すことで発動するリスクをもとにして出てきそうなのだが‥‥‥

『このぐらいできなくて、何が元管理神よ。神だからこそできる荒業だから、アリでしょ』
「それでもその状態で、普通に意思疎通ができるというのは無茶苦茶だと思われマス」

 リスクをどうやら逃れて出てくる手段を獲得してしまったらしい青薔薇姫。

 けれども、結局は体を持たないからこそ不安定な状態でしかなく、そう長くは出てこないことを理解させられる。

「そもそも、何故出てきたのでしょうカ?」
『そりゃもう、可愛い息子が眠れなかったのなら、子守唄を歌って眠らせてあげるのが母の役目でしょ?でも、もうやられたから意味ないのよねぇ…‥残念』
「ご主人様の意識が失われないと、出てこれない時点で意味がないのデハ?」
『あら、それもそうね。うっかりしていたわ』

 天然なのかそうでないのか、文字通り掴みにくい状態の相手にゼナは対応しづらい。

 今回はフィーの身体を乗っ取って出てきているわけではないようだが、それでも何かこう、言いようのないやりにくさを感じさせられるのである。

『それにしても、帝国に留学‥‥‥息子の中から見ていたけれども、懐かしいわねぇミルガンド帝国。私が出て行ってから、どう変わったのか正直楽しみよ』
「聞いた話では、青薔薇姫復活の話が出たことで、恐怖におびえ、夜逃げする悪人が増えて治安向上したようですけれどネ」
『それはそれでよかったかもしれないわね。悪人が減ると刺激も薄くなるけれども、厄介なことをしでかす人がいなくなるのは歓迎したいわ。ずっと見ていたけれども、この子本当に苦労しているようだしね』

 実体がないので触れることができないが、それでも愛おしそうに眠るフィーの身体を撫でる青薔薇姫。

 帝国では色々と言われる存在ではあるが、それでも母としての立場を得たからこそ、息子が可愛いのかもしれない。

『だからこそ、息子には幸せになってほしいんだけれどもねぇ…‥‥ねぇ、ゼナちゃん、やっぱり息子のお嫁さんに来てくれないかしら?貴女ならおもしろコホン、確実に支えになると思えるのよ』
「‥‥‥今さらっと本音を漏らしませんでしたカ?」
『言ってないわ。でもまんざらでもないのでしょう?‥‥‥そうじゃなきゃ、今ちょっとだけ沈黙して赤くなった理由がないもの』
「なってまセン。黙ってまセン。そもそも私はご主人様のメイドにして魔剣であり、側仕えするのは変わっていないのデス」
『あらあら、素直じゃないわねぇ。あの機械神さんやその他の親族ともまた違うわぁ。でも、乗り気じゃないなら無理することも無いわ。他にもちょっと狙えそうな子がいるもの』
「誰でしょうカ」
『ひ・み・つ!こういうのは相手が自覚してくれた方が、より面白いわ!ああ、走ね、元管理神だからこそできるように、色々と細工しようかしら?』
「ちょっと待ってください、本気でやらかされるのは困りマス!!」

 体も失い、ほとんど力もないと思われるが、それでも出て来るだけの力があるのならば何かやらかしかねないと思い、思わず青薔薇姫をつかむゼナ。

 けれども、実体がないのでつかみどころがなく、宙をすり抜けてしまう。

「くっ、実体無しの存在をつかむ技能はまだ、取得できていないのが悔しいデス」
『むしろ、そんなのを取得出来たらどうするきなの?相変わらず無茶苦茶ねぇ、貴女を含む一族は』

 色々と言いたいこともあるようだが、どうやらそろそろ時間切れとも言うように、青薔薇姫の体がフィーの中へ引っ込み始めた。

『残念、今日は無理ね。また出るまでかかりそうだけど…‥‥それでも、考えてほしいわね。そうでないなら、私の方が色々とやっちゃうわね』
「だから本気で、やめてくだサイ」
『じゃあ、今息子を襲っちゃえばいいんじゃない?何かやるよりも、今なら思いっきりやりたい放題よ?』
「‥‥‥」

‥‥‥提案されて一瞬固まるも、直ぐにどこからともなく箒を取り出して叩きつけるゼナ。

 しかしながら今度も宙をすり抜け、結局言いたいだけ言われてしまい、何もできないのであった。



「…‥‥やりたいほうだいと言われても、やりまセン。ご主人様の魔剣でもメイドでもある身だからこそ、好き勝手する気はないのデス」
―――今なら、唇も奪えるわよ
「頭の中に直接響かせないでくだサイ!!」

 なお、先ほどから結構大声で叫んでいるようだが、一応フィーを気遣って超小さな声で何とか返答しているのは言うまでもなかった。



「‥‥‥うう、調整どころじゃないのデス。必要はないのですガ、鎮めるために私も寝たほうが良さそうデス」




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