私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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5章 復讐は我にあり

5-66 響かせる音は、種火となりて

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…‥‥ゴゴゴゴゴゴっと地面が小さく揺れ始め、爆発までの時間がそう長くはないと悟らせる。

 いや、爆発どころかあの様々なものをすべて呑み込もうというような勢いのあった液状の何かしらの生物が飛び出す時間が迫って来て、そちらの移動がこの振動を伝えているのかもしれない。

 どちらにしても、私達に出来る手段は今ここに残されていないだろう。


「‥‥‥ドラゴンさんの力では、どうにもならないのでしょうか」

 ここに至るまで数多くの彼の様々な力を見せられたので、その強大な力で現状を打破できないかと提案する。

 だが、彼の側にいるメイドが代わりに答えた。

「無理ですネ。そもそもご主人様は本日短い間に完全竜化を繰り返し、なおかつ相手側の攻撃も受けてかなり消耗した状態デス。今日はこれ以上の無理は禁物でショウ」
「いや、まだ出来るぞ。奴らが出てくる前に島ごと凍らせるようなブレスで動きを止めてそこから脱出すれば時間は十分にあるはずだ。『完全竜、』ガッ!?」
「!?」

 メイドさんの言葉に反論するかのように、ドラゴンさんがあの巨大な姿になろうとした。

 だが、言葉を言い終える前にびりっと痺れたような感じになり硬直する。

「な、何今の感じ…‥‥竜化、全然できないんだが」
「ご主人様の体の方が、自己防衛のために働きましたネ。これ以上無理をすると壊れかねないので、生体防御として自ら律したのでしょウ」

 動けなくなったドラゴンさんに対して、そう分析するメイドさん。

 今の状況がかなり時間の無い切羽詰まったものではあるが、それでも冷静に分析をすることはできているらしい。

「ちなみに、いつもの心臓串刺しによる力の開放もアウトですネ。通常時ならまだしも、この状態になると理性も何もかも吹っ飛んだ暴走状態でやらかす可能性が非常に大きいデス。まだ最善の可能ですガ、最悪の場合肉体が耐えられずに爆散する可能性もありマス」
「そうなると、現状やれそうなのはわたくしの魔剣かしら?でも、嵐や雷を引き起こしても、どうにもならない気しかしないですわ。となると打つ手はないのかしら?」
「無いとは言えませんネ。一つだけ、方法はありますネ」

 もうすぐあの液状生命体が出ようか出まいかとしている中、メイドさんはなぜか私の方を向いた。

「魔剣ボンバード、こちらをペルシャさんが使えば、遠隔爆発で外へ飛び出るのを防ぐことはできるでしょウ。また、この島の自爆に関しても爆発を引き起こすところだけを狙って破壊が出来ればどうにかできるはずデス」
「え?」

 そう言いながら、メイドさんはどこからともなく記憶を失う前の私が持っていたという魔剣を取り出し、手渡してきた。

「いやいやいや!!無理ですよ!!なんとなく手にしっくりとは来ますけれども、私は扱えませんよ!?」
「そう言われても、現状打破できそうなのがその魔剣での爆破なんですよネ。私のモードでも色々とできそうですガ、ご主人さまの手に取られないと真価を発揮できないので、意味がないのデス。魔剣としての力は単体でも発揮できないことはないのですガ、持ち手がいないと無理なことも多いのですヨ」
「そう言われましても、無理ですってばーー!!」

 魔剣ボンバード。それは私が記憶を失う前‥‥一人の魔剣士として戦っていた時に使っていたという魔剣。

 手に持った感覚は確かになじむようなものがあるのだが、精々それだけのもの。

 どのようにして扱っていたのか、どうやって振るえば良いのか、その力に関して今の私は全く知らない。

 そう、本当にただ何も知らないだけの普通の女の子で、魔剣士としてはとても‥‥‥‥


「‥‥‥いや、無理じゃないと思うぞ」
「…‥‥ドラゴンさん」

 弱気になっている中、ふと、その声が私に届いた。

 まだ痺れて動けない状態のようだが、それでもドラゴンさんがこちらに真っ直ぐ目を向けた。

「記憶が無いのは十分理解している。だが、それでも現状やれるのは‥‥‥ペルシャだけなんだ。ルルシアの魔剣も、メイド魔剣のゼナの力も強いけど、この状況だとその方法しかない」
「無理ですってば。私なんかではできないですよ」
「出来る。それは確信を持って言える」

 ぶんぶんと首を振って否定する中、ドラゴンさん‥‥‥彼は、力強く断言する。

「何故なら、貴女だけしかできないことだから。竜の力を持ち、なおかつ色々と無茶苦茶なゼナの力を持っていても、在学中に俺が貴女と勝負して勝利を得た覚えはない」

「生徒会長として、第3王女の‥‥‥いや、王族の席は投げ捨てたとしても、魔剣士としての志を、その誇りを、勇気を、覚悟をもっていた。そんな人が、記憶喪失だけで全てを一気に失うか?それはない!!」

 ぐぎぎぎっと痺れていた体を起こし、びしっと改めて私に指を彼は向けた。

「いつか勝利をしてみせようと思ったが、叶わなかった相手。逆に言えば貴女は、王族として籍を抜けたのであればただのペルシャという名をもつ少女だとしてもドラゴンにも打ち勝ったもの!!様々な物語に出る様な存在だとしても、それすら倒して見せた者に就く称号ドラゴンバスターのようなものが付くような者なのが、その力を簡単に失うものなのか!!」
「…‥‥」

‥‥‥‥そうかもしれない。私が記憶を失っているだけで、本当は体の方は覚えているのかもしれない。

 魔剣の柄を握れば不思議となじむ感覚はあり、その重さは既に慣れたものとして認識もできる。

 そして私の魔剣自身も、この私に使われることを望むような気配を感じ取ることが出来る。


「見せてみろペルシャ!!元デュランダル学園の生徒会長にして、爆裂姫などの異名を持ちし魔剣士よ!!この俺を、ドラゴンの身を持つ者に勝利を握らせなかったその力を、今ここに呼び起せ!!忘れている記憶ならば、思い起こせその経験を!!」
「分かった、分かった、分かったわよ!!やるしかないってことはもう、十分に理解させられているのよ!!」

 
 恐れている、知らぬ自分の力を。しかし、それは本当の自分の力であり、恐れるものではない。

 忘れている、その時の記憶を。でも、失ってはいけない大事なもの、私そのものなのである。


「----っ!!だったら全部引き出して、ここで盛大に使うしかない!!ドラゴンさん、いえ、フィー!!私は元生徒会長にして、その異名を持つ者!!ココで全力を出して、全てを爆破する勢いでやるのよ!!」

 魔剣を掲げ、私は叫ぶ。

 この全身を使って、気合いを入れて、思いを込めて奮い立たせる。

 やらなければ結局は何事にもならないし、ならばその全てを、私の記憶その物に蓋をしているようなものすらも爆破してしまえば良いだけの話だ!!


「魔剣ボンバード、最大出力開放!!忘れたこの力を思い出すために、私自身をすべて取り戻すために、全力を出しなさい!!」

 私の叫びに対して、魔剣が答えるかのように装飾品の一部が一瞬輝いたように見えた。

 ああ、この魔剣も待っていたのだ。再び振るわれるこの時を。主が記憶を失っていたとしても、その剣として最後まで仕える思いを持って。

 その想いを感じ取り、彼の叫びに身が喚起し、熱い血潮が巡るように私自身を再構成していくのを感じとっていく。


「そうだ、そうだ、そうだ!!なぜ私は私を忘れていたのか!!」

 液状生命体を吹き飛ばす?島の爆破装置を続けて爆破する?それだけでは不十分だ。

 ただ爆破するだけでは、周囲が巻き込まれるだけだろう。ならば、その存在のみを狙い撃ちして、被害を最小限にとどめる必要がある。

 何故だろう、何故忘れていたのだろう。この魔剣で及ぼせる爆破の力は、ただ全てを破壊し尽くすだけではない。

 自分が切った部分を爆破する、それだけではなく、自分の望んだ・・・・・・ものだけを・・・・・爆破する・・・・ことがこの魔剣の本当の力なのだ。

 その事を思い出させてくれた、不思議な魔剣と竜の力を持つ彼、フィーの姿を目にして私は口角を上げる。

 先ほどまでの私は自信が無かったが、今の私ならばもうすでにどのように動いたとしても、確実に成しとげてみせるという確信ががあふれ出てくる。

「魔剣ボンバード!!久しぶりに働きなさい!!ただし液状爆破、爆弾爆破、2回も必要ない!!」

 ギラリと魔剣がその身を光らせ、応えたように思う。

 そして私は振るうのだ。思い出し、今までできていなかった魔剣の攻撃を、再び蘇らせるために。


「全力集中大爆破『デストロイ・ボンバー』!!」

 ざぁん!!っといきおいよく魔剣を振り下ろし、地面に突き刺した瞬間、凄まじい爆発音がしたから鳴り響き、その振動が足元を伝わってくる。

 けれども全てを巻き込むような破壊ではなく、狙った場所のみをこの一撃で爆破し尽くしたと分かるだろう。


ゴゴゴゴッと、少々空いた隙間分を埋める様な地鳴りが鳴り響いたが、剣を抜いたこの瞬間、既に全てを爆破し終えたことを感じ取ることが出来た。


「…‥‥ふぅ、成功したはずよ。メイドさん‥‥‥ゼナ、どうかしら?」
「分析中‥‥終了。ハイ、狙った個所のみの爆破を確認しまシタ。ラグサの生命反応も停止し、自爆熱量も消失を確認できまシタ」

 カタカタと音をたてて、そう告げるメイド魔剣ゼナ。

 相変わらず彼の魔剣として不思議な人でもあるが、信じられる人でもある。


「それと記憶が帰ってきたことを確認。記憶喪失からの自力での取り戻し、おめでとうございマス」
「あ、そういえば勢いで色々と出たけれど、全部思い出したわね」

 さっきから熱く燃え滾っていた体の熱も収まり、冷静な思考に戻って私は気が付いた。

 失っていた記憶もすべて取り戻し、私は私自身に再び戻れたのである。

 そう、何もかもであり、なおかつ記憶喪失中の私はいなくなっておらずしっかりと全部が私の中に統合されたような、いうなればネオ・ペルシャとでも名乗りたくなるような感覚が…‥‥んん?

「…‥‥あ、駄目、駄目駄目ぇぇぇ!!なんか喪失中の私まで全部詳細に思い出せてしまうのだけれども、なんか恥ずかしくなってきたんだけど!?」
「あれ?記憶を取り戻したのは良いけど、どうしたんだ?」
「あー‥‥‥なんか分かりましたわね。同情しますわ」

 統合されて失っていた間のことも覚えているので、どうしてこういう状況になっているのかということもしっかりと理解できるのはまだ良いだろう。

 だがしかし、今の私ではない私というか、過去にあったはずだけれどもどこかに置いて来たものが勝手に浮上して動き回っていた時のものまで出て来るのはいかがなものなのだろうか。

 それも友人たちに、彼にも全部見られていたというか、記憶を失っていたけれども今の私がいなかった分余計に酷いというかなんというか、そんなことまで同時に私の中に刺激を与えてくる。

「いやああああああああああああああああああああああああ!!今すぐ私に、もう一を記憶を消してほしいほどだぁぁぁ!!消えて消えて消えてぇぇぇぇぇ!!」
「おいぃぃぃ!?ペルシャ、そんなにガンガン頭を打ち付けたら記憶喪失どころじゃなくなるぞ!!」
「思い出せたのだから今は落ち着いた方が良いですわ!!」
「全部思い出さないでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 全部を思い出したのは良いのだが、余計なところまで出てしまった悲しい事態。

 最悪のものをここで屠れたのは良かったのだが、その代償に私は酷い羞恥心に晒されまくるのであった‥‥‥

「ああああああ!!これが魔剣士として力を持った代償ならば、魔剣を放棄したくなりますわぁぁぁ!!」
「そんなことに代償は使わないって!!」
「ぐえっ!?押さえつけなくても良いですよフィー!!私はただ単純にここから身投げして世に思いをはせながら旅立つだけですーーー!!」
「旅立つ先が一生帰ってこれなくなる場所じゃねぇかぁぁl!!」
「友人が目の前で亡くなるのはやめてほしいですわぁぁ!!」
「ゼナ、とりあえず彼女を落ち着かせて!!やっぱり限界が来ているせいか、結構キツい!!」
「了解デス。では軽めにスタンガンを使いましょウ」
「ぴぎぃ!?」

…‥‥幸い、そんな羞恥心の嵐は短い間だけで、なんかちょっとばかり痺れて私の意識は沈んでくれたのであった。
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