私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

文字の大きさ
146 / 204
5章 復讐は我にあり

5-69 望まぬ者、望む者

しおりを挟む
‥‥‥神造魔剣の強奪の失敗と、試験体狂竜戦士の失敗。

 その報告を聞き、とある黒布を被った人物は溜息を吐いた。

「やはりというか、試験体ゆえに実用化に程遠い代物であったか」

 元々制御がいまいちできていない時点で、失敗作と言ってよかったものだ。

 それなのに無理に稼働させ、挙句の果てに暴走からの肉体崩壊からの、周囲を取り込むような怪物への変貌というのも酷すぎる出来である。

 神造魔剣の強奪のために用意したのだが、それでもまだ早すぎたというべきものだったのだろう。


「とは言え、何も得られなかったという訳でもないのが幸いというべきか‥‥‥」

 破神布という組織を作るにあたり、志が同じ者たちで集まったと言えば集まった。

 だが、必要な能力を持った者たちで集まることはなく、その中には幾分が不必要な類もおり‥‥‥今回の失敗から暴走で出来上がった化け物のデータは、都合の処分場を作るために生かされることになるだろう。



‥‥‥元々、破神布という組織自体は、神を凌駕し、破壊するために生み出した組織。

 であれば、その力を振るうにふさわしい者たちだけの集団の方が、本来の目的に近づきやすいのだ。

 神々の思惑どおりに動かず、むしろ我々のが神々を思い通りに動かし、いや、破壊し尽くすためには犠牲も必要なものだ。

 だが、必要な犠牲以外の不必要な犠牲というのは、余計に馬鹿をやらかすのが目に見えており、無駄なものを省略するために活用できるのであれば、今回の報告は良いデータとなる。

「さてと、医療大国の技術も利用して作り上げた試験体だが、バランスを崩せば都合の良い処理場に転じる事も判明し、成果としては失敗なことがあるが、それでもいくらか得られるものがあったのであれば良しとするか」

 島ひとつ分の拠点を失ったとはいえ、それでも他に数があるので問題が無い。

 今回割いていた人員もいずれは処分するべきものに入っていただろうし、この件で手間が省けたのも問題はない。

 惜しむらくは、強奪がかなわずに自分達の存在がどこかの大馬鹿野郎の手によってバレたことだが‥‥‥いつか起こりうることだとも理解しているので、想定の範囲ではある。

 しかし、正直なところ、自分達のことを馬鹿正直に言ってしまうやつに関してはどうにかしたいところではある。

 こちらの価値を確認してベラベラと話すようなことはさせず、悟られないように動かなければいけないのにその趣旨を分かっていなかったとはどういうあほなのか。

 消す予定があった時点で、そこまで能力もないのだが…‥‥それでも、組織の新人募集体勢から見直す必要があるだろう。少なくとも、秘密を守れる人をまずは確実に欲しいところではある。


「何にしても、当分は思想に関しての教育や、新人募集、再調整に計画の練り直し‥‥‥動けないことが多くなるな」

 だが、重く考えすぎる事もない。ほとぼりが冷めるまでは十分な時間もできるだろうし、その間に組織内の見直すべき点を探し出し洗いまくるには都合が良い。

「あとは、このデータを元にして‥‥‥試験体から余計なものを取り除くことも考えるか。肉体崩壊を防ぐためにドラゴンの力にも耐えられそうな細胞を混ぜ込んだが、それが余計な結果を理解した。

 ならばあとは、色々と必要なものをそろえ、今度こそ強奪のための準備を念入りに進めるだけである。
 
 幸いなことに、今回の試験体以外にもう一体いるので、そちらの調整を行うために必要な実践データも得られたことも、非常に都合が良い。

「さぁ、ならばさっさと行うとするか」

 捨て駒の用意もしているのだが、この報告を見る限り余計な部分を削った方が良い。

 そう思い、黒布の人物は再編成案などを練り込み始めるのであった…‥‥







‥‥‥一方その頃、フィーの方ではあるお知らせが届いており、彼はベッドの上で倒れて撃沈していた。

「…‥‥王国の方からの手紙が来たかと思えば‥‥‥何だよ、王命って。良いのかこれで」
「国王直々の物ですネ。偽造されないように仕掛けられた王家の判もしっかり入っているようですし、間違いないのでしょウ」
「でも本当に良いのですの?彼にはわたくしとの婚約関係もありますわ」

 フィーがぐったりと力なくうつぶせになっている傍らで、事情を聴いていたルルシアがそう口にする。

 確かに、彼との婚約関係は帝国の皇帝直々の物であり、本来はそれ以外のものは来ないはずなのだが‥‥‥今回ばかりは、どうやら事情が違うようだ。

「『報告の結果、次回襲撃があることも備えて万全の警護が可能なように、元第3王女ペルシャの地位を一時的に王籍に入れ直す。一度王籍を自ら抜け出したのであくまでも名ばかりのものと言えるが、それでも多少は安全性の確保のために必要な措置であった。そして、これまでの功績を考慮し‥‥‥現在、ミルガンド帝国の皇女と婚約関係にあり、帝国の公爵家の血もあるため、両国の繋がりの懸け橋となるように新たに貴族家としての地位を与え…‥‥留学生フィーには、ペルシャとの婚約も決定する』‥‥‥ですカ。政略的な意味合いも強そうですし、ご主人様の力も考え両国で共同で見れるようにしたのでしょうネ」
「なぜそうなった」
「何故と言われましても、説明そのままとしか言えなさそうですわね。あと、ココの一文もありますわね」
「『なお、記憶喪失中であった娘の扱いに関して、しっかりお話隠すことなくをするために曝け出せやごらぁ!!、夏季休暇中に一度王城へ出向かれたし』ともありますネ」
「隠せていない本音が思いっきり見えているんだけど!?」

 どうしてこうなった。本当になんでなっちゃったんだ。

 嫌な予感というのはこうも当たってしまうものなのか、神でさえ見放すような運命を持っているせいなのか。

 考えても切りがないのかもしれないが、卒業までに新しい厄介ごとを見事に着きつけられてしまうのであった…‥‥

「そういえば先日、ワールド・メイド・ゼワ商会の方に、ドリマリア王国の国王から直々の注文が入って来たと姉妹から聞きましたネ。何でも、ドラゴンバスター装備一式やその他竜殺しと名高い武器のお買い上げなど‥‥‥」
「がっつり殺す気満々じゃないかなそれ!?というか、何でそんなものを扱っているんだよ!?」
「まぁ、ドラゴン自体伝説の存在と言われるようなだけあって、いわくつきの品は昔からあるようですわ」

 一応、大抵の場合はにそくさんもんの詐称しまくったガラクタであり、実際にドラゴンを討伐したような武器というのはめったに出てこないらしい。

「けれども、商会の方だと伝手がありますからネ…‥‥いくつか本物があってもおかしくはないのデス」
「本当その商会自体何だよ!!」
しおりを挟む
感想 610

あなたにおすすめの小説

勇者辞めます

緑川
ファンタジー
俺勇者だけど、今日で辞めるわ。幼馴染から手紙も来たし、せっかくなんで懐かしの故郷に必ず帰省します。探さないでください。 追伸、路銀の仕送りは忘れずに。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...