私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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5章 復讐は我にあり

5-74 思い通りにいかないのは、どこの誰だとしても同じなのです

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―――コポ、コポポ…

 息苦しくもないが、自由も感じない浮遊感。

 纏わりつくような感覚を味わされつつ、自由に動かない体の中、周囲に耳を澄ませて音を聞く。


「---それで、主任。本当にここの計画は一時凍結になるのでしょうか」
「ああ、そうだ。いや、凍結どころか一旦全部廃棄だな」

 目を開けてはおらず、周囲に見えるのは闇ばかり。

 けれども音は伝わるし、うっすらとどのような相手なのか、どのような形をしているのかというのは意識を集中させれば理解できる。

「魔剣強奪もそうだが、うまくいけば強力な兵士の量産もできたかもしれない『狂竜戦士計画』‥‥‥惜しいが、試験体の暴走の話もあったからここにあるのは全部廃棄処分となる。次に造られるのは、出来るだけ暴走の原因となるような細胞を排除して培養したものになるだろうが、それ以外のここにあるすべての培養肉共は処分だ。きれいさっぱり掃除して、使いまわすからな」
「もったいないですねぇ、ここまで大きく出来た試験体もあるのに」
「まぁ、無理もないだろう。何処で手に入れたのか、トップの方から流れて来たドラゴンの血を引く人間の血肉の一部を使ったが‥‥‥ほぼ成長する前に死に絶えたからな。いや、肉人形とでも言うべき、魂無きただの人形どもだったがゆえに生命活動すらも起こせなかったのだろう」

 そう言いながら周囲を見渡しているようだが、どうやらこの身も同じ様な肉人形と思われているようだ。

「それにしても、同じドラゴンの血肉を使っているのに、魔獣の肉で補填した分あちこち違う形態になるのが多いですよね。この試験体なんて、性別すらも反転してますよ」
「そこは合う肉、会わない肉があったのだろう。ここのデータ自体も色々と貴重なものが取れたが‥‥‥明日には培養液を抜き取り、制御装置で万が一に備えて動けないように細工してから全て腐らせて廃棄することになる。その作業をするためにも、全部の肉の状態を確認するぞ」
「了解しました。では、始めていきましょう」


‥‥‥そこで会話も途切れ、彼らは目的を果たすために作業を行い始めたようだ。

 明日には処分ということで、ここにいる者たちのデータを出来るだけ取って、廃棄しても良い様に準備しているようだが‥‥‥そう大人しく従う訳もない。

 ここにいるだけ、無駄だろう。ああ、でもちょっと感謝するのであれば、この身を生み出してくれたことぐらいか。

 培養液とやらが無くては駄目な様な事を言っているのだが…‥‥自分自身については、この身が一番理解している。


『‥‥‥ア、ア、アア』

「あれ?主任、試験体の一体の口、なんか動いてません?」
「む?何だ‥‥‥いや、まて!!おい逃げろ!!」
「ほへ?」

 うっすらと目を開ければ、全身に気持ち悪い模様で覆われた布を着込んだ者たちの姿が目に入り、嫌悪感を強く覚える。

 そしてその気持ちを吐き出すかのように、一気にエネルギーを放出した。

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
パウァ、ジュドォォォォォォォォォォォォン!!

 








『‥‥‥ア、ア、ァァァ』

 残念ながら、まだうまいことこの身は動かせないようだ。声一つすら満足に出せず、先ほどまで入っていた容器から液体と共に流れ出し、初めて立った足を震わせながら周囲を見渡す。

 先ほどの叫びですべてが吹き飛んだようだが、運が良かったのか先ほどまで会話していた嫌悪感を感じ取る生物たちは気絶しているだけで済んだ様子。

 だが、その周囲にいた同胞たちは‥‥‥ああ、駄目だったのか。最初からすべて何もなかったようで、何も感じ取るものがないので問題はないだろう。


 ふらふらと歩みを進め、そのうち立つよりも飛んだ方が良いと気が付き、翼を広げて浮遊する。

 そして先ほどの叫びと同様の攻撃を真上に解き放ち、周囲が崩れ行く中抜け出して、大空に身を飛びださせる。




 感じ取れる、自由の空の風を。

 見て取れる、美しい自然の光景を。

 そして気が付く、この身に使われた者と同じ血肉の物と抑えきれぬ魔獣の本能を。

 ああ、そうか。自由なのか。何もなく、ただこの衝動に抗うことなく動けばいい。

『アアアアアア、アアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 咆哮を上げ、声が響き渡った後、すぐにある方向へ向けて体が勝手に動き出す。

 造られたものゆえに、その元となったものが気になるのだが、会ってどうするのか。

 話をするか?違う。

 この身はやつらが魔剣とやらを強奪するために造ったと言っていたが、魔剣を奪うか?それも違う。

 色々と考えた結果‥‥‥シンプルに、一つの思考にたどり着く。

 そうか、争ってみたいのだと。どれだけの力を振るえるのか、この体全体が試したいと叫んでいるのだろう。

 ならばこの身に任せて従うだけだ…‥‥全てを消し飛ばすのは、その後でも十分に時間はある。

 そう思い、風を切り裂き本能の赴くままに突き進む。

 そこで息絶えても構わない。この衝動を解放できるのならば悔いはないのだから。






‥‥‥今、ある組織の重要な建物が崩落し、組織は大損害を被った。

 そして同時に、逃げ出した存在に気が付き、どうしたものかと一瞬考えさせたが、制御できない可能性は十分データとして残っていたので、放棄をした結果、その怪物は解き放たれてしまった。

 ああ、鎖から解き放たれた本能の赴くままに蠢く怪物は目的地へ寸分違わず進んでいくのであった‥‥‥





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