私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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5章 復讐は我にあり

5-73 重さは枷にも、武器にも転じる

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‥‥‥普段以上の体の重さになる山は動きが鈍くなりやすく、行動が制限される。
 
 それなのになぜか、ここで出現する魔獣たちはその重さをものともせずに来るので、通常であればかなり苦戦するのは間違いないだろう。

 この5合目の時点で25倍以上の重さになるらしいが‥‥‥正直言って、この時点で結構きつくもある。

「でも、素早さを発揮できなくなると、今度は無理やり力づくで行けるから案外やりやすくもあるか?」
「わたくしのような遠距離攻撃が主体になりがちの魔剣士にとっては辛い所もありますけれども、至近距離でやるのも手ですわね」

【ゴラボゼァァァァ!!】

 登山中、どうやらようやく魔獣が出てきたようで、団体客でおいでなすったようだ。

 その中で先陣を切るかのようにズゾゾゾゾゾっと地面をはいずり、こちらに迫って来る巨大なミミズのような魔獣ヘビーワーム。

 この山でさらなる重さを獲得し、体当たりするだけでもかなり威力の高いものになるのは間違いない。


「だが、正面から突進するならこっちのものだ!!『グラビティナックル』!!」

 新形態グラビティマシンソードモードで得た、ガントレットモードから転じた鎧の腕にドゥッと勢いよく火が噴き出し、拳の突きを加速させる。

ドッゴォォォォォォンバァァン!!
「‥‥‥うわぁ、はじけ飛んだ」
「断末魔を残すことなく、一気に滅しましたネ」

 かなりえげつない攻撃というか、相手がはじけ飛ぶレベルの拳とはこれいかに。

 けれどもこれだけが、このモードの能力ではない。

【ゴゲボォォォォイン!!】
【ドモワァァァンス!!】

「今度はメタルゥナァアントか。ちょうどいい、スクリューから新しく空気じゃなくて重力波とかいうのを利用した重みのある嵐を受けてみろ!!『グラビティサイクロン』!!」

 腕部分に装飾されていた刃が形状を変え、回転をして猛烈な突風を噴き出す。

 スクリュー時代の背負っていた大筒の攻撃とは異なり、両腕で生み出される風は合わさってさらに巨大な竜巻となって相手を包み込み、吹き飛ばす。

【【ゴゲボドワァァァンス!?】】

 ただの風ならばいざ知らず、重みのある風圧に抗うすべなく吹き飛ばされ、宙に舞い上がる。

「ふっ飛ばしてからの、『ジェットナックル』発射!!」

 両腕の刃が収納され、今度は肘から先が切り離されて鋼の拳が撃ちだされる。

 吹き飛んだアントたちの上に先回りし、拳を合わせて一気に力づくで叩きつけた。


ドッゴォォォウス!!

 哀れ蟻たちは、叩きつけられてぺちゃんこになった。

 山が重さを倍増させた要因もあるのだろうが、それでもかなりの威力となっているだろう。


【ゲルベバァァァ!!】
「っと、フィー!!そっちにダルダンゴリラが殴りかかって来てますわ!!」
「こっちの拳がまだ飛んだままなの見て、攻撃の隙が出来たと思ったのだろうけれども‥‥‥生憎このスタイルはレッグの特性も受け継いで足までも魔剣の状態だ!!『スピンスラッシュ』!!」

 手が飛んだままの状態だと攻撃が出来ないだろうと思っただろうが、そうは問屋が卸さない。

 足のほうにあった刃が素早く立ち上がりまくり、蹴りを入れると同時に相手を一瞬にして切り裂いた。

【ゲルベバァァン!?】
「致命傷にならないなら、もう一撃!!重力玉からのブレスを詰め込んで、喰らえ『ブレスクラッシュ』!!」

 切り裂いただけではまだ倒れぬというような顔になったが、もうすでに詰んでいる状態だ。

 ここに来るまでに、倒れていた生徒たちを運んだ重力玉を作り上げ、内部に限界までブレスを一気に詰め込みまくり、相手に叩きつけて距離をとった次の瞬間、その中身が解放される。

ボゴォォォォォォォォォウ!!
【ゲバァアアアアアアアアアアアアアアアアア!?】

「かなり強烈な火柱があがったが…‥‥うん、派手さの割には、これ一番威力低いな。まだ辛うじて原型留めているというか、やっぱり魔剣での攻撃判定になってないのか、ギリギリ耐えられているな」
「ですが、これでお終いですネ。腕が戻って来たので、とどめを刺しましょウ」
「ああ、大人しく散れ!!」

 腕が戻って来たので、こちらの刃を再び形状を変化させ、鋭く広げさせる。
 
 そのまま刃の方をつかって抉り取る形で切り裂き‥‥‥魔獣を絶命させるのであった。





「…‥‥新しいモード、ガントレットやスクリュー、レッグのいいとこどりばかりだな」
「そうなるように、組み合わせましたからね」

 戦闘を終え、5合目と6合目の間にある宿泊所へ向かう中、俺がつぶやくとゼナはそう答えた。

 まだモードは解除しておらず、拳を握り直して感触を確かめるが、これでさっき腕が飛んでいた状態だったのだ。

 正直、普通のソードモードの時点で腕が変わる感触は慣れていたのだが、今度は一気に両腕が射出された感触に関しては、まだちょっと慣れることはない。

 すぐに対応できるとは言え、どう考えても無茶苦茶な攻撃だからなぁ‥‥‥しかも、各モードにあった欠点をこのモードが色々と改称しているので特に文句を言うことがないとはいえ、複雑な部分がある。

「ガントレットの片腕だけ、スクリューの放出方向、レッグの足場次第な部分‥‥‥そういったものを全部どうにかするとは、本当に何をどうやったのやら」
「私も色々改造してますからネ。初めてご主人様に仕えた時に比べてパワーアップしたなと我ながら思うのデス」

 魔剣の状態のままなので表情が見えないが、声からなんとなく自信にあふれた表情になっているのが読み取れるのはだいぶ付き合いが長くなっているからだろうか。

 そう考えると、初めのころよりも明らかに強くなっていることには喜ばしい事だと思うべきなのかもしれない。

「だが、ここでの修行の意味は自分が強くなること‥‥‥魔剣だよりにならないように、もうちょっと頑張ろうかな」
「そうしたほうが良さそうですわね。フィーのほぼ独壇場でしたし、もっと幅広い相手をしたほうが良さそうですわ」

 俺のつぶやきに対して、意見を述べるルルシア。

 彼女は彼女で、この地では嵐や雷鳴が山の方にかなり引っ張られて普段以上に魔剣が扱いにくいようだが、その分をカバーするかのように戦っており、成長の仕方ではより先を進んでいるかもしれない。

「なら、そうするか。魔獣が発生次第すぐに潰すのは変わらないけど‥‥‥もうちょっと色々と試して、ゆっくり強くなっていこう」
「ええ、そうですわね」

 強くなりたいのはあるが、その強さに見合うだけのものを身に付けねばならないだろう。

 だからこそ、せっかくの修行の時間となるこの試験の時を、存分に俺たちは活かさせてもらうことにするのであった‥‥‥


「あの、二人ともすでに試験の必要がないほどなんだが‥‥‥」
「いや、言うな。引率している我々の立つ瀬がないのは十分わかっているのだ‥‥‥」

‥‥‥何やら教員たちの方がぼそぼそ言っているようだが、聞かないでおこう。うん、俺たちはまだまだ学ぶことが多いからな。

「…‥‥苦労しているようですし、重ければ重いほど軽くなる胃薬でも渡すべきでしょうカ」
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