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5章 復讐は我にあり

5-77 竜と竜-1

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『アアアアアアアア!!』

 ぼうっと再び全身を燃やし、真っ赤な炎の塊となって突っ込んでくる少女の竜。

 名称がないとやりづらいのもあるので、見た目そのままな仮称『火炎竜』としつつ、正面からぶつからないように回避を行う。

「とは言え、避けてばっかりいられないな。ゼナ、どうにかできないか?」
「ご主人様と一致する遺伝子のため、センサー混乱状態ゆえに正常動作不可能。対策としてご主人さまの神経に直接接続を行い、反射行動の補佐を行う方へ回らせていただきマス」

 さらっと何かこうヤバそうな回答が出たが、まともにやりにくい相手であれば仕方がない事だろう。
 
 反射神経で言えばゼナの方が良いし、火炎竜のあの攻撃力は馬鹿力と言って良いほど強いので、回避できるようになるのであれば出来るだけやる方が無難なところだ。

「その場合、攻撃の主体をご主人様自身にお願いすることになりマス。大丈夫でしょうか」
「問題ない‥‥‥と断定できないけど、やるっきゃないよな」

 相手が同じ遺伝子だかなんだか使っているようで、違うものも混じっているせいなのか力は負けているだろう。

 だが、勝機がないわけでもない。パワーに振られた分、大振りな攻撃が目立つのようだからこそスピードや技術で対応してやれば良い話だ。

「それじゃいくぞ!!回避や受け流しは任せた!!」
「了解デス!!疑似神経接続開始、センサーシャットダウンから補佐作業へ!!」

 ぶすりっと何か嫌なものが刺さった感触を味わいつつ、回避行動に移りやすいように素早くモードを切り替える。

「グラビティマシンソードモードから変更!!ウイング改め『エンジェリングソードモード』に切り替えマス!!」

 かつては刃の翼であったソードウイングモード。ドラゴンの翼が生えてからは防御や投擲武器などにしていたが、それでは彼女の性能が今一つ活かされないことが問題だった。

 そこでいくつかのモードの統合などに伴い、新しい形態へと変更して一気に性能を桁違いに引き上げることに成功したのである。

 刃の翼は失えども、新たに頭上と背中の方にそれぞれ金色と銀色の色合いの異なる刃のリングが出現し、この重くなる環境にあった身にふわっと浮遊感を感じ取らせる。

 ゼナ曰く、天使のわっかとやらを参考にして作り上げた形態のようで、頭上のわっかが全身に特殊な浮力を帯びさせるようだが、この環境では重さによる制限を撤廃するのに役立つだろう。

「それと背中の方のわっかも武器になるんだ!!『リングブーメラン』!!」

 背中に浮いていた刃のわっかを手に取って投げれば、火炎竜はその危険性に気が付いたのか回避した。

 だが、その後方にあった山の突き出している岩などは避けることもできず、すぱっと綺麗に切り飛ばされていった。

「チャクラムとも言う武器を参考に造りましたが、もう少し命中率が欲しいデス」
「ところでこれ、戻ってきた奴はどうやって受け取るんだ?」
「自動的に頭上に戻りますので、問題ないデス」

 いうが早いが、遠くまで行っていたはずの刃のわっかはいつの間にか頭の上に戻っており、次の投擲を舞っていた。

 頭のものよりも結構大きめに作られているので受け取る時が不安ではあったが、そのあたりが考えられている武器で助かっただろう。

『アアアアアア、アアア‥‥‥ア!!』

 全身の発火を一旦とめ、小さなブレスを口から火炎竜は出し、纏わせる。

『ア、ア、ア、ア、ア、ア!!』

 拳を次々に前に出したかと思えば、拳の炎が細かく飛ばされてきた。

 どうやら口からのブレスから、手や足で纏い放つことでより攻撃範囲を広げる方法を思いついたようで、かなり細かい攻撃を素早く放つようである。

「ついでに炎の威力も強いようだが、このぐらいなら全部撃ち落とす!!『ホーンサンダー』!!」

 バチバチィッと紫電を作り、俺は自分の角から放電を起こして向かってくる炎の拳を防いだ。

 ブレスの性質を変える攻撃も可能だが、やる気になればこの手段も可能で、ちょっとした電撃の防壁となるのだ。

 まあ、ルルシアの魔剣での電撃と比べると汎用性はやや少ないが、それでもこういう多数の遠距離攻撃相手には中々良い防御手段にも転用できる。

「ついでにこれでも喰らえ!!雷撃をリングに集めて方向を定めて『サンダーバズーカー』!!」

 放電していた電撃を再び刃の輪に集中させ、その縁の中心から極太の雷撃と化させて放出する。

 ブレスを電撃に変えての攻撃に比べると、少々威力は低くなるのだが‥‥‥これはあくまでもわっかの方だけの場合だ。

「ブレスも追加!!雷撃性質転換『サンダーブレス』!!」

 そう、わっかのほうと口からで、それぞれ撃ちだせるのが強みとなる。

 二つの攻撃が時間差で交わり、更に極太な電撃となって火炎竜に襲い掛かった。


ズバァァァァァァン!!
『ア”ア”ア”ア”ア”!?』

 直撃した電撃が凄まじい勢いで火炎竜を飲み尽くし、膨大な電撃が襲い掛かる。

 常人であれば確実にやられるのだが、ドラゴンとしてのタフさゆえにギリギリ耐えきった様だ。

『グガア、アア、ア、ア・・・』

 ぶすぶすと黒煙を上げ、ボロボロの状態になる火炎竜。

 元々衣服なんぞ着ていないようなものであり、全身所々黒く焦げたようだ。

『アァァァァァァ!!』

 ぐったりした様子になったかと思えば突然叫び、瞬時にその体の焦げた部分が消えて元の皮膚に戻っていく。

 いや、急激な再生を行ったというよりもこれは…‥‥

『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「鱗が生え、一気にドラゴンになりやがった!!完全竜化か!!」
「前の狂竜戦士なら暴走してましたが、こちらは使いこなしたようですネ。崩壊した様子がないのデス」
「ドラゴンの姿で勝負と来るなら、目には目を歯には歯を、ドラゴンにはドラゴンで答えてやるよ!!『完全竜化』‥‥‥いや、流石にパワータイプと同条件ではやっぱり断る!!完全竜化改め『人竜変化』!!」

 完全なドラゴン同士の対決であれば、力が幾分か上回っている相手と真正面からやりあうと、体を大きくするだけではいい的になってしまう。

 ならばどうすればいいのかと考え、狂竜戦士の経験もあって特訓し、完全に竜化しなくてもドラゴンの力をより強固に使う手段を俺は編み出していた。

 手と足が人のものからドラゴンのものへと変貌し、翼と角が強靭なものへ、尻尾が生えてくる。

 だが、その変化は大型化しておらず、人のサイズに圧縮した状態で、単純に今のドラゴンが混じった姿をより色濃くしただけのような姿へ変貌させる。

「無理やり完全竜化の力を人の身に詰め込みまくっただけだが‥‥それでも大きくなるよりも小回りが利くのが良いんだよな!!魔剣のモードもそのままで扱えるこの状態で相手をしてやるよ!!」
『アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 ぶわっとドラゴンとしての力が溢れるようで、気を抜けば爆発するような気がしなくもない方法。

 だが、この戦闘において抜ける時があるのだろうか?いや、一つの油断が本気でヤバくなる戦いなので、抜くことはない。

 お互いに気合いを入れ直し、よりドラゴン同士としてのまともな戦いへと切り替えるのであった‥‥‥

「本当にミスったら自爆になるけどな!!」
「シャレにならないので、そうならないように調整を助けマス!!」
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